Radio Thailand

  Radio Thailandはタイ国広報省(Public Relations Department:PRD)が所轄する国営の放送機関National Broadcasting Services of Thailandのラジオ放送部門であり、タイ国内では中波・FMで放送している。その海外放送部門がRadio Thailand World Serviceで、日本語を含む10カ国語で短波放送を実施している。

 PRDが国内向けラジオ放送を開始したのは1938年コールサインHSPJ、現在と同じ「Radio Thailand」の名称であった。海外向放送もほぼ同時にタイ語・英語・フランス語により開始されている。これは当時の日本がNHK海外向短波放送 Radio Japanを正式に開始した1935年のわずか3年後に当り、アジアで早期に海外向放送を行った放送局といえる。当時の放送の送信は1930年より実験用 に設置されていたBangkok市内の送信所よりPhillips社製2.5kW短波送信機で行われていた。多分国内向・海外向とも同一 周波 数での運用であったと推測される。終戦直後も1948年迄はこの送信機を使用し、HS8PDのコールサインで、6000kHzにて国内・海外 向放送が行われていた。1948年になり小出力の短波送信機が増備され、HSP8PD 6000、HS8PJ 7105、HSP3 9790、HSP5 11720kHzの4波が使用されるようになった。海外向放送には6000kHz、7105kHzが使用された。1953年にはBangkok 北郊のPatumthani送信所より短波送信を行うようになり特に海外向放送用にはこの年に新規導入された50kW送信機がコールサ インHSK9、周波数11670kHzで使用されるようになった。同時に国内向短波放送のコールサインもHSK~に変更された。海外向放 送には1964年に50kW送信機1基が追加され、その後100kW送信機も追加された。年々海外向放送の時間や言語数も増加し、日本が BCLブームに湧いていた1978年には日本語放送も開始されて現在に至っている。

  一方国内向放送も短波で継続され、長らく4830、6070、7115kHzが定番周波数であり、国内向・海外向ともに日本で良好に受信 された。

 タイの短波放送に転機がもたらされたのは1994年である。この年北部のUdon Thaniに米国VOAと共同で500kW短波送信機(Marconi社製B6128型)7基を擁する巨大短波送信所(現IBB Thailand Transmitting Station)が建設され、米国VOAの新たな対アジア放送拠点として活用されることになった。同時に
Patumthani送信所は短波運用を停止し、海外向短波放送はすべて UdonThani送信所から出ることになった。また中波・FM放送網が充実したため国内向短波放送は中止された。UdonThani 送信所は強力でメンテナンスが行き届いているため、日本では非常に安定した受信状態 が得られる点が強みである。

 2010年に上部組織の改組が行われ、PRDの下部組織であるOffice of the National Broadcasting and Telecommunications Comissionが運営する放送となった。海外向放送はニュース報道に力を入れることになり、Radio Thailand World Serviceと称するようになった。

 1953年に海外向放送用周波数に付与されたコールサインHSK9が短波放送ないしは海外放送の代名詞となっている模様で現在でも使用され ている。またQSLカードは放送局だけでなく、Udon Thani送信所からも発行される。

 受信報告の宛先:
      放送局   Radio Thailand World Service(HSK9), Public Relations Department, Royal Thai Government, 236 Vibharadi Rangsit
Road, Din Daeng, Bangkok 10400, Thailand
      送信所      IBB Thailand Transmitting Station, P.O.Box 99, A. Muang, Udonthani 410000, Thailand

  E-mail:   feedback @ hsk9.org

 TEL:  +662 2771814

 FAX:  +662 2776139

  URL:  https://www.hsk9.org/


(左)1966年に発行されたQSLカード 国内向6070kHzの受信に対してであるが海 外向HSK9(当時の周波数は11910kHzー当時はkHzではなくKcsーで固定印刷されている!)のものが使用されている。時刻もUTCで はなく、GMTが使われている。タイの地図、パゴダ、送信鉄塔を図案に用いた秀逸なデザインである。左上にはガルーダをモチーフとしたタイの国章 が印刷 されている。地色の黄色は当時のプミポン国王(ラーマ9世)の生まれた曜日(月曜日)にちなんだ色と思われる。右端の赤・白・紺・白・赤の帯はタイの国旗 に使われているもので、赤は「国家」、白は「仏教」、紺は「王室」を表す。発行者は当時の海外放送局長Sirit Apgaivon氏。大きさ 155×106mm。
(右)2017年に発行されたQSLカード 依然としてHSK9のコールサインが使用されて いる。背景はBangkok市内のWat Suthat寺院(別名「バンコク大仏」、官庁街の近くにある)の礼拝堂扉に描かれた絵の写真 ー 実物は現在国立博物館に保存されている。大きさ 140×90mm
  


2017年に発行されたQSLカードの裏面 発行者は局長の Kesemsiri Pengpis女史。左上はWorld Serviceのロゴ 送信所や送信機・アンテナの記述もある。



(左) IBB Thailand Transmitting StationのQSLカード(見本)裏面(表面は絵葉書) 左下にVOAと並んでRadio ThailandとRadio Sarandomのロゴが入っている
(中) 局舎のあるBangkokのVibharadi Rangsit通 Don Muang高速道路が上を通っている。(Wikipediaより)
(右) 2017年現在のWorld Service局長Kesemsiri Pengpis女史 (同局HPより)
     




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