中国科学院国家授時中心 (China)
Time Signal Station BPM/BPL/BPC


 時報局の世界でもWWV/WWVHの閉局など暗いニュースが多い中、中国科学院国家授時中心(NTSC:National Time Service Center)の時報局は短波、長波共に健在である。中国で時報局の業務が始まったのは1958年で、上海天文台がBPVのコールサインで開始した。当時の周波数は5/10/15MHzの他海岸局XSGの9368kHzも使用されていた。一応24時間報時の形をとっていたが報時信号は毎時55-00分のみに発射されていたようだ。また周波数・時刻共に精度は低く日本のJJYと比べてずれていると指摘されていた。

 1966年に標準電波局を陝西省西安市内の臨潼(Lingtong)に移転することが決定された。理由は不明だが、当時は文化大革命の最中で、悪名高い四人組」が支配していた上海から標準電波局を移すことで中国の科学水準を守ろうとしていたのかも知れない。西安郊外の蒲城(Pucheng)送信所に4基の50kW短波送信機(実際の送信出力は10-20kW)が設置され、当時の周恩来総理の承認の元1970年12月15日より現在も続くBPMのコールサインで 5/10/15MHzの短波報時信号の発射が開始された(当時は09:00-23:00 10/15MHz、23:00-09:00 5/10MHzであった)。その後2.5MHzも追加された。現在の出力も10-20kWであり、4周波数の内の最低3周波数で報時信号が発信される体制となっている。

 上海のBPVはBPMが出るようになっても時報の発信を継続し、正式に停止したのは文化大革命終結後5年を経た1981年7月1日であった。

 短波のBPMが起動に乗った1973年には同じ蒲城送信所に長波標準電波局BPLも新たに建設され100kHzで小電力の送信を開始し、1983年には大電力送信(800kW)を開始した。当時電波航法の重要手段であったロランCを意識したもので、ロランCと同一のフォーマットで出ている。米国中心のロランCへの対抗措置として建設されたとも思われるが、ロランCが廃止された現在でも送信を続けている。更に2007年には電波時計に対応した近代的長波時報局として河南省商丘(Shangqiu)にBPCが建設され、68.5kHzで運用を開始した。日本ではBPCに対応した電波時計(JJYの40/60kHz、BPCの68.5kHzを自動受信)が開発され、日中韓の何れの国でも自動的に標準時に合うようになった。

  送信所となっている蒲城は唐時代、商丘は戦国~宋時代の遺跡が豊富なところで、文化的背景を持った土地から標準電波を送信しようという意図も感じられる。 中国では全土が北京時間であり、サマータイムの制度はない。「国家授時中心」の名前の通り標準時は国家が国民に授けるものである。

 現在の送信スケジュールは次のようになっている。
 BPM 2500kHz 10kW 16:30-10:00
           5000kHz 20kW 24H
         10000kHz 20kW 24H
         15000kHz 20kW 10:00-18:00
  BPL    100kHz 800kW 14:30-22:30
  BPC   68.5kHz 90kW 09:00-06:00

 BPMの現在の送信内容は毎時00-10分 秒パルス1(1000Hz 10ms) 10-15分 キャリア 15-25分 秒パルス1 25-29 分  秒パルス2(1000Hz 100ms) 29-30分 局名ID(BPMのモールス符号の後、女性の音声で「BPM标准时间标准频率发播台」) 30-40分 秒パルス1 40-45分 キャリア 45-55分 秒パルス1  55-59分 秒パルス2 59-00分 局名ID である。

  上海にあったBPVは送信終了間際には英語・中国語によるQSLカードを発行していた模様だが、残念ながら小生は獲得していない。BPMになってからは印刷されたQSLカードが発行されるようになり、現在も継続されている。日本ではBPMの短波信号(AM)の他、夜間はBPCもCWモートで受信出来る。BPLも入感している筈だが識別が難しい。報告は中国語か英語、返信料としてIRCまたは10元程度を同封することが望ましい。

 受信報告の宛先: 中国  710600 陕西省西安市临潼区书院东路3号 中国科学院国家授时中心 授时部
                              または National Time Service Center, Chinese Academy of Sciences, P.O.Box 16, Lintong 710600, China
 URL: http://www.ntsc.ac.cn/
  E-mail: kyc @ ntsc.cas.cn
 電話: +86 29 83890326
 FAX: +86 29 83890196



1981年の送信開始直後のQSLカード 「陝西天文台」の発行となっている CSAOはChina Shaanxi Astronomical Obsevatoryの略か?
発行者は天文台科学技術部長の楊怀旭氏  大きさ 149×104mm





左:2018年BPC(68.5kHz)の受信報告に対するQSLカード表面 臨潼の庁舎写真 右上にはQRコードが 大きさ 169×102mm
右:同裏面 BPMの送信パターンが右半分に記載されている 発行者は刘長虹氏 下中央には別のQRコードが

 

左:蒲城送信所の送信棟(百度百科より) 中:BPM用短波送信機群(百度百科より) 右:BPM短波アンテナ群(NTSCのHPより)
  

左:BPL(100kHz)のアンテナ(NTSCのHPより) 右:商丘送信所BPC(68.5kHz)の送信棟とアンテナ(百度百科より)
 

Top Page