Sentech (南アフリカ)


  Sentechは南アフリカの送信管理会社で、同局の公共放送であるSouth African Broadcasting Corporation(SABC)の国内にある送信所の運営管理をすべて行っている。また同社はMeyerton短波送信所の管理も行っており、国内・ 国外向短波放送の送信業務も行っている。従来南アフリカの海外向短波放送はSABCがRadio RSAという名称で行っており、短波送信所も自分で管理していた。しかしアパルトヘイトの時代が終わった1992年にSABCは改組され、短波を含む送信業務はほぼ同時期に創設された送信管理会社Sentchに移管された。同時に海外放送もChannel Africaという名称に改名され、アフリカのみをターゲットとするようになった。1994年にSentchは国が株主の営利会社となり、自己努力による営業が求められるようになった。Meyerton短波送信所は海外放送Channel Africa、SABCの国内向放送Radio Sonder Grense、Radio Orange、Radio 2000の短波送信を行うとともに、豊富な送信施設を背景に短波送信ビジネスに乗り出し、BBC、VOA、TWR、RFI、RNW(Radio Netherlands Worldwide、その後局自体が廃止された)等の大手の海外放送局の他、秘密放送、商業放送の送信も手がけて、アフリカを代表する大送信所としての地位を築いた。

  Meyerton送信所の陣容は2012年8月の同社発表によれば100kW送信機10基、250kW送信機4基、500kW送信機2基、カーテンアレイアンテナ34基、Periodicアレイ9基、従業員は45名という大規模なものである。但し導入時期を調べると、新しいものを優先して使っていると仮定した場合、100kW送信機3基は1990年代(8基あったが5基はAWR-Guamに売却された)、6基は1970年代、1基は1960年代、250kW送信機はすべて1960年代、500kW送信機はすべて1970年代で、導入後30~50年が経過しており老朽化していることは否めない。メンテナンスをうまく行うことで現在まで維持してきたことが分かる。

 B18シーズンではChannel Africa、BBC、AWR、DW、SARL(Amateur Radio Today)、Radio Dabanga、Radio Sonder Grense(SABCの国内向放送)の送信が行われていた。Sentechの年次報告書によれば2017年現在Meyerton送信所は国外放送の中継で毎年4%程度売上が伸びていた。また2018年度以降は送信機のデジタル化の必要性が述べられていた。現状通りであれば今後も運用可能であった筈だが、2018年末になって廃止論が浮上し、ついに2019年3月31日でMeyerton送信所からの短波送信は停止されることになってし まった。原因については色々な意見が述べられているが、主因は大手ユーザーであったBBC-WSがA19での送信大幅削減を通告してきたことにあるらしい。短波送信停止後Channel Africaはインターネット放送に、BBC-WS(アフリカ向放送の送信時間全体は減らさないとしている)、AWR、DWは他の送信所に移行、Radio Sonder GrenseはFM放送のみになる。SARLは不明である。

 最盛期と思われる1996年と2018年末の平日送信時間(概算)を主要ユーザーについて見てみると、Channel Africa 26→18H/D、SABC国内向 47.5→24H/D、BBC-WS 50.5→26.5H/Dとなっており、何れも減少している。外部大手ユーザーのBBC-WSの更なる大幅削減で今後ビジネスとして成立しなくなると判断されたものであろう。

 老朽化した設備を持つ巨大送信所は維持コストがかさんで行く、今後の需要や現在の財政状態では新規設備に切り替える余裕は少なくなる。しかも余剰設備をかかえる)他の送信所とはコスト競争となる。同様のビジネスを行っている送信所も設備の老朽化にうまく対応しないと今後続々と同じ運命を辿ることが懸念される。

  Channel Africaは今世紀になってからはQSLを発行せず、Meyerton送信所からの短波送信に関しては他局の中継も含めてSentechから独自のQSLが発行されている。掲載したのは1997年に中継していた「The Investment Channel」(1997-2004年に放送)の受信報告に対するものである。QSLカードではMeyerton送信所のアンテナ群が写っている「タワーカード」が有名であるが、これにも一応タワーが写っている。また最近はレター形式のQSLやeQSLも発行されている。

 3月中にSentechからの送信を受信しようとすると、アフリカ向のみのため意外と可能性が少ない。良い状態は期待できないが、狙い目としては平日15:00-16:00 11925kHzのChannel Africa英語放送か、早朝のRadio Sonder Grense 3320kHz(6時からはPyongyangが出てくる)くらいである。A18の全送信スケジュールがBulgarian DX blog 2/25(https://swldxbulgaria.blogspot.com/2019/02/bye-bye-meyerton-all- transmissions-will.html)に掲載されている。


 受信報告の宛先: Private Bag X06, Honeydew 2040, South Africa

 E-mail:  support @ sentech.co.za  (Channel Africaの場合はinfo @ channelafrica.orgに送付してもSentechに転送されるという報告がある)

  URL:  http://www.sentech.co.za



(左)1997年発行のQSLカード表面 夕日に照らされるSentechのFM送信塔(Meyerton送信所ではない) 左下のロゴと「SENTECH」の文字は金色 大きさ 149×105mm
(右)同裏面 この時期に放送されていた投資家向放送「THE INVESTMENT CHANNEL」の受信に対するもの 発行者はKathy Otto女史(長くQSL発行業務に携わっていた)

  


(左)Meyerton送信所のカーテンアンテナ(Sentech社「Corporate Profile」より) 
(右)Meyerton送信所の送信棟内部(2012年8月Sentech社「SHORTWAVE SERVICES: The Gateway to Africa」より)
 


(左)Johannesburgの送信塔(Wikimediaより) (右)QSLカードにも描かれた Sentech社のロゴ
 


 
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