KFI-Los Angeles (米国)


  8月に放送されたNHK大河ドラマ「いだてん」の中で1932年に行われたロスアンゼルス五輪の際にKFIのスタジオから「実感放送」が行われたことが演じられていた。当時は短波で実況放送をできる技術があったが、放送権料の問題で米国放送界と五輪委員会との間の協議が決裂し五輪の実況放送が米国の放送局にも認められなかったことが原因とされている。NHK放送研究所の小林利行氏によると、当時NBCはNHKに対して配下のKFI局のスタジオの使用を毎日1時間確保してくれたので、やむなくアナウンサーが競技を観戦し、その後スタジオに移動して記憶を元にあたかも中継しているように放送する「実感放送」を行った。KFIのスタジオからの音声は電話線でサンフランシスコのBolinasにあった短波無線局に送られ、日本向に短波で発信されそれを埼玉県の岩槻受信局で受信し、NHKを通じて全国に放送された。Bolinasの無線局とは当時のMCI Communications社(現Globe Wireless社)が運用していたKPH局でアルデコ調の送信棟は現在も残っている。

 KFI局は米国では早期に放送を開始した局で、放送は企業家で博愛事業家でもあったEarle C. Anthony氏(1880-1961、National Association of Broadcastersの会長も務めた)によって1922年4月16日に開始された。これはNHK東京放送局開局の3年前であった。KFIのコールサインは当時申請の順番に与えられたものだが、1924-1956年まで農家向けに霜情報の番組を届けていたため「Farmers Information」と理解する向きもあったという。周波数は1934年以降は現在の640kHzが使用されており、50kWという当時としては高出力で放送を行っている。米国では他局との混信を避けるために指向性アンテナを使用することが普通だが、KFIは全指向性アンテナを当初から使用、伝播し易い低い周波数と高出力のため、当時から全米、日本を含む外国でも広く受信された。1948年建設の750フィートのアンテナ鉄塔を誇っていたが、2004年12月19日に航空機が衝突して大破し、一時放送が中断、その後は200フィートの予備アンテナを使用し、出力を25kWに落として放送することを余儀なくされた。2008年に684フィートの新アンテナが完成し、出力も50kWに戻り現在に至っている。現在でもサービスエリアは非常に広く、聴取者数は全米一位を誇っている。

 当初は同氏の自宅ガレージから50Wの送信機から放送、後には氏の経営する自動車販売店の屋上にアンテナが設置された。送信所は1931年にLa Miradakに移され、当時としては画期的なRCA製の50kW送信機(RCA 50B 後日改造して50C)が設置された。当時の送信棟(KPHと同様なアルデコ調)は現在も残っている。1944年にはFM・TV放送用の送信所を Mt.Wilsonに建設し、KFI-FMの放送も開始されたが、当初のFM放送は1951年で終了した。1926年以降はNBCのネットワークに入り、この地域の中心的な放送局となった。野球中継に力を入れ、1960-1973年には地元のLos Angeles Dodgersのフラグシップ局となっていた。1973年にジョージア州に本拠地を置くCox Broadcasting社(現Cox Media社)に買収され、同時に現在放送中のFM放送KOST局も買収で取得した。その後は音楽番組に力をいれたが、音楽番組の中心がFM放送に移行した1988年に音楽番組を止め、現在はニュース・トークの専門局として放送している。

 日本でも関東以北の太平洋岸では現在でも受信できることがある局だが、大都市東京では中々難しい。1990年代の初頭に米国西海岸に行く機会があり、その折りに現地受信を行い、後日獲得したのが掲載のQSLカードである。

 受信報告の宛先: KFI AM 640, 3400 W Olive Ave Ste 500, Burbank, CA 91505-5544, USA

  URL:  https://kfiam640.iheart.com/


左: 1990年に現地受信した際のQSLカード 送信アンテナが描かれている 発行者はレジェンドChief EngineerのMarvin Collins氏、名前が印刷されている  大きさ 86×140mm
中: 同裏面 当時の住所と現地受信である旨が記載されている
左: 1970年代導入のContinental 317-C1送信機(現在は1992年導入のHarris DX-50となっている)を説明するMarvin Collins氏 1974-2000年にChief Engineerを務めた (KFIのHPより)

    


左: 当時のロゴが描かれたステッカー
中: 現在のロゴ
左: スタジオの入り口、放送局はハリウッドの近くに位置する (KFIのHPより) 

    


KFIの夜間サービスエリア、他の米国局(640kHz)と比べて格段に大きいことが分かる(Radio Timetravellerによる)




TopPage