Trans World Radio - Europe 

 Trans World Radio(TWR)の創始者Paul Freed氏(1918-1996)は1954年にモロッコのTangierからVoice of Tangierという宗教放送を短波で開始した。この放送はカトリックが大勢を占めるスペインに向けてプロテスタントの布教を目的とするものであった。 当初スペイン語と英語のみの放送であったが、翌年には言語数をフランス語、ドイツ語など6カ国語に増やして欧州・北アフリカ・中近東をターゲットに放送を行うようになった。言語数は更に増えて欧州の殆どの国の言語で放送を行うようになったが、1959年にモロッコ政府の方針が転換され、外国の短波放送はVOA中継局を除いて禁止され、Voice of Tangierからの送信は中止せざるを得なくなった。

 そこでPaul Freed氏は新たな欧州での送信拠点としてモナコに着目した。当時地元から放送していたRadio Monte Carlo (現在はフランスに本拠地を移している)によって管理されていたMont Agel送信所にフランスThomson&Houston社(現Ampegon社)製THR875型100kW短波送信機2基をTWRが設置し、送信所は借用するという形で1960年10月16日に、局名を現在のTrans World Radioに変えて短波放送を再開した。放送局の拠点もモナコのMonte Carloに置き、モナコからの唯一の国際短波放送となった。なおMonte Agel送信所は第二次大戦中にナチスが宣伝放送用に建設した送信所であった。
 その後TWR-Bonaire(1964年、現在は中波のみ)、TWR- Africa(1974年、Eswatini)、TWR-Pacific(1977年、Guam)他が新たに開局しそれぞれのターゲットエリア向に送信所を持つようになった。そのためこれらの新しいTWR送信拠点と区分するために、名称がTWR-Europeと改められた。Mont Agel送信所には1982年にフランスThomson社(現Ampegon社)製TRE2351型500kW短波送信機が導入され、欧州・北アフリカ・中東向に16か国語で送信を行う拠点として2011年まで使用された。Mont Agel送信所が使われなくなったのは、短波送信機の老朽化、短波中継ビジネスの活発化がその背景にあるとされる。

 送信所自体はその後も海岸局Monaco Radio用に使用されているが、拠点は一時オランダ及びオーストリアに分散し、更にオーストリアのViennaに一本化された。連絡、QSLの発行等は Viennaで行われた。また送信はMoosbrunn他のレンタル送信所から行われるようになった。その後名称は「TWR Europe and CAMENA 」と変更された。CAMENAとはCentral Asia Middle East North Africaの略で中央アジア・中近東・北アフリカという意味である。2019年6月にはキルギスタンのBishkek送信所に「Silk Road transmitter」と称する最大出力200kWの中波送信機(周波数612kHz、100kW送信機2基で200kWを出す)を60万ドルの費用を投じて導入、同国のKTRKと共同運用を開始した。ちなみにキルギスタンからの中継放送は「Silk Road transmitter」612kHzと旧来からある「Pani transmitter」1467kHzの2系統がある。ただしこの頃には中波放送のみとなり短波の放送はなくなってしまった。

 同じ2019年にTWR-EuropeのViennaオフィスは閉鎖され、TWRの欧州中心拠点は消滅してしまった。現在でもTWR-Europeとしての求人募集が行われており、スイスまたはキプロスで再編成される可能性もあるが、2020年現在は TWR米国本部がその役割を引き継ぎQSL発行などを行っている。この地域のTWR各言語の放送は各国のTWR支部や関連団体で制作されており、それをレンタル送信所(しかも中波放送)や地元FM局から送り出すかインターネット放送を行えば良いので、短波送信拠点を管理する従来のTWR-Europeはその役割を終わったものとも考えられる。現在も米国本部からは「Trans World Radio - Europe」のQSLカードが発行されるが、新型コロナウイルスの影響で郵便事情が極めて悪いためeQSLでの発行となっている

   TWR-Europeとしてのスケジュールは現在ではWRTHに掲載されていない。スケジュールを探すにはhttps://www.twr.org/listen/schedule/にアクセスしてTWR-Europeの対象地域向放送をサーチする必要がある。現在はBishkek(612kHz 200kW 22:57-01:30、1467kHz 150kW 22:30-02:30)、Grigoriopol(999kHz 150kW 03:00-05:00、1548kHz 500kW 04:00-06:10)、Gavar(864kHz 1000kW 01:10-02:40、1350kHz 1000kW 02:45-05:55、1377kHz 1000kW 02:00-04:00 )、Romoules(1467kHz 1000kW 04:45-06:45) 中継の中波放送、FM中継、インターネット放送となっており、短波BCLの立場から言えば「過去の局」になっている。


受信報告の宛先: P.O.Box 8700, Cary, NC 27512, U.S.A.
E-mail: info @ twr.org
URL:  http://www.twr.org
旧TWR-EuropeのURL:  http://www.twreurope.org
Facebook:  https://www.facebook.com/twreurope/


モナコMont Agel送信所の鉄塔群(2010年にTWRのHPに掲載された写真)



1967年にTWR Monte Carlo局から発行された薄紙2つ折りのQSL 基本的にはこの形式で緑色で印刷されたものも発行された。発行者はA.Stewart氏。大きさ189×160mm。
左端に掲載されたロゴは現在のものとは異なっている。左の部分には1964年に開局されたTWR Bonaireに関する記述もある、当時の送信所は100kW短波送信機×2基+400kW中波送信機×1基(1466kHz)であることも記述されている。
 


(左)2009年にViennaのTWR-Europeから発行されたQSLカード表面、オーストリアと思われる中欧の町の写真、左上には讃美歌59:17の歌詞が記述されている。大きさ 143×100mm。
(右)同裏面 右端に大きくQSLと記述してあるのが特徴、送信所の記述(この頃はMoosbrunn送信所等から短波で放送していた)もある、オランダの拠点は消されている、発行者はKolra Doborさん。
 


(左)2019年夏新設されたばかりのSilk Road Transmitterからのロシア語放送(612kHz)をウズベキスタンにて受信し、米国本部に送付した受信報告に対して2020年にE-mailで送られてきたTWR-EuropeのeQSLカード。送信所の写真だがどこのものかは不明。下部に讃美歌57:11の歌詞が記述されている。大きさ158×114mm と上記のカードより一回り大きい。
(右)同裏面 上記のカードと同じ形式だが若干文言が異なる。発行者はBroadcast Montoring部門のKalman Bobos氏で、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務中のCalifornia州の自宅から送信してくれた。Silk Road transmitterの送信地は色々な理由で「中央アジア」としか公式には記述できないそうである。
 



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