Radio CJSC (Armenia)
アルメニアはトルコとアゼルバイジャンに挟まれた内陸国である。キリスト教国(アルメニア正教会、3世紀に世界で初めてキリスト教を国教とした)であるため、イスラム教国の両隣国とは仲が悪く、2020年にアゼルバイジャンとの間で起きたナゴルノ・カラバフ戦争では事実上敗退し支配地域を奪われた。
首都Yerevanの北西約60kmのセヴァン湖の湖畔Noratusの地に大規模短波放送施設が設けられたのはソ連時代の1965年で、ソ連の重要なプロパガンダ送信地点の一つとなった。
ソ連製の高出力送信機RV-571・572・573・574等が累計で7基投入され1990年の独立時には1760エーカーの敷地に3つのマストを備えた短波・中波の大送信所となっていた。
1991年にソ連が崩壊し、アルメニアが独立した後、送信所の管理は民間会社Radio
CJSCに受け継がれ、送信所名もNoratusに隣接する都市Gavarの名前をとってYerevan-Gavar送信所となった。社名のCJSCは
Closed Joint Stock
Companyの略で、限定された株主が非公開株を有する会社形態をいい「非公開株式会社」とも訳されている。事実上は国営Public Radio of
Armenia(Radio Armenia)の送信所管理会社である。
Public Radio of Armeniaは当初この送信所から海外放送(Radio ArmeniaまたはRadio
Yerevan、ソ連時代から行われていた)を大規模に行っていたが、予算不足から次々と縮小されて行き、短波放送は最近まで4810kHzのみが残っていた
がこれも廃止され、2021年現在は中波の1395kHz(500kW)による近隣諸国向放送が残っているだけである。また国内向放送はFM化が終了しており、この送信所の需要はない。
現在でもソ連時代の送信施設を温存しており、中波は1000kW1基、500kW1基、短波は100kW3基、1000kW3基分の送信能力を有している。Public Radio of
Armeniaからの需要が殆ど無くなった現在は、他局への送信時間切り売りビジネスで体制を維持している。欧州QRP局の臨時送信等BCLにとっては大変有り難い送信所だが、ソ連からの譲渡後30年以上を経て施設の老朽化による送信の不具合等が目立つようになり、今後が懸念される状況である。
Radio Armeniaは受信報告に対して返信のない局であったが、送信所の方は返信を送ってくる。下記は2019年にTWR-Indiaの中継を受信した時のもので、ロシア語の受信報告に対して同封したロシア語のPFCで返信が行われた。
アルメニアに限らず旧ソ連の各国は、独立後30年を経ても共通語はロシア語(ロシアからの観光客が多いことにもよる)であるため、受信報告にはロシア語を使用するのが効果的である。
受信報告の宛先:Radio Quarter 5, 1213 Noratus, Gegharqunik Region, Armenia
URL:: http://www.radio-int.am
E-mail: info @ radio-int.am
電話番号: +374 99 70 67 67
(左)ロシア語PFCによるQSL 局印とサイン(達筆で判読できない)がある
(右)封筒に貼られた2010年バンクーバー冬季五輪の記念切手 海抜2820mのテゲニス山にはスキーリゾートのツァグカゾールがあり冬は観光客で賑わう
(左)局のロゴ (中)3本の短波用アンテナマスト近景 (右)3本のアンテナマスト遠景 (何れも同局のwebサイトより)
北方から望んだセヴァン湖(右が首都Yerevan方面) 送信所は右側の半島の付け根付近にある (Wikipediaより)
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