Time Signal Station WWVB (USA)


 米国NIST(National Institute of Standards and Technoolgy)の時報局としては短波局WWVとWWVHが有名であるが、今回は周波数が60kHzで日本のJJYと重なるため、あまり知れていない長波時報局WWVBである。


 NISTによる長波時報の送出は1956年7月にKK2XIのコールサインで当時時報局WWVがあったコロラド州Boulderから40W(後に1.4Wに削減)で送信を開始したのが初めである。1日4.5時間のみ、無変調キャリアと20秒おきのCWコールサインが放送された。この時の知見から長波は短波に比べて周波数の安定度が抜群であることがわか り、1960年4月コロラド州Sunsetに全世界カバー用の超長波時報局WWVLが設置され20kHzで送信を開始した。またKK2XIはコールサインをWWVBと変えて全米向カバー用の時報局として送信を続けた。WWVBの最後の”B”は当時の送信地Boulderにちなんでつけられたという説と当時の技術者で後に行われるFort Collins移転の立役者W.W.Brown氏にちなんでつけられたという説もある。


 1962年に時報局全体がBoulderより80km離れたFort Collinsに移転した。理由はFort Collinsの方が標高が高く周囲の山の影響を受けにくいため全世界向の送信がし易いためと、土壌がアルカリ性で設備が劣化しにいためとされている。


 WWVBは1963年7月よりFort Collinsから60kHz、5kWで送信を開始、出力はその後13kWまで増力され1997年12月までその設備が利用された。一方WWVLは500Wで送信を開始しその後2kWまで増力されたが1972年7月に廃止された。そのため現在ではWWVLのQSLカードは珍品に属する。


 WWVBには電波時計制御用のデジタルコード信号が1965年7月に搭載されるようになった。当時の電波時計の利用は研究施設だけでありまだ一般には使 用されなかった。欧州で電波時計の利用が広がっていた1994年にWWVBの送信アンテナに付着した霜が凍結して長時間送信不能となる事故が発生した。米国での電波時計の普及を目指していたNISTはこれを機に設備を一般向け電波時計用に更新し、全米をカバーできるように出力を上げることを決定した。 1997年末にWWVBの出力は25kWに増力され、1999年からは、送信機及びアンテナ双方を二重化し送信停止が起らないようにした。出力は現在 70kWに増力されて現在に至っている。現在の送信機はContinetal社製FRT-72、アンテナは高さ122mのphased arrayが使用されている。

 
 
信号は1分単位で分・時・日・閏秒の情報・夏時間かどうかの情報等が秒単位で区切られたバイナリーコードで提供されている。米国は複数の時間帯を有するため時間情報はUTで提供されている。信号を一般受信機で受信すると一応タイムパルスのような音が聞こえる。Kiwi SDRなどバイナリー信号を解析する機能がついている受信機ではビット情報を得ることが出来る。

 WWVBは60kHzと、日本のJJY(はがね山)と同じ周波数であるため日本での受信は困難である。またサービス範囲は送信所から半径3000kmの範囲(米国本土)なので、電波が届く確率も高くない。米国まで60kHzの受信できる受信機を持参するのも大変である。米本土で受信できるのは当たり前なので、今回は敢えてハワイMaui島KahekuolaにあるリモートKiwi SDRを利用して受信を試みた。このリモートSDRのアンテナは北方向にビームのある75mのBeverageアンテナであり大変有利である!ハワイは WWVBのサービス範囲外だが、Beverageアンテナの威力で充分な信号強度で受信することができ、ビット情報も得ることができた。そこで受信画面・バイナリーデータ・受信音ファイルをつけてE-mailで受信報告を送ったところ、1ヵ月後に郵便でQSLカードが送られてきた。


 受信報告の宛先: NIST Radio Station WWVB, 2000 East Country Road 58, Fort Collins, CO 80524-9499, USA
 E-mail: <nist.radio @ boulder.nist.gov>
 URL: https://www.nist.gov/pml/time-and-frequency-division/time-distribution/radio-station-wwvb

(左)QSLカード表面 冬のロッキー山脈の景色 中央の山はコロラド州にあるロッキー山脈最高峰のElbert山(4401m) 大きさ140×90mm
(右)同裏面 シリアルナンバーは822、発行者はMidula Smith氏
 

(左)Continental FRT-72送信機2基 (右)厳冬期霜に覆われて真っ白となったアンテナ2基 (何れも同局HPより)
 
 
 
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