Mongolian National Broadcaster / Voice of Mongolia (モンゴル)

 モンゴル唯一の公共国営放送がMongolIa National Broadcaster(MNB: Монголын Үндэсний Олон Нийтийн Радио Телевиз)で、モンゴル全国に放送網を持っている。この放送の歴史は勿論モンゴルでは最も古く、社会主義時代の1931年5月に首都Ulaanbaatarでラジオ放送が開始された。長らく一系統のみの番組(第一放送)を放送していたが、1960年代初めにUlaaanbaatar ローカル放送と第二放送が開始された。長らくUlaanbaatarからのみの放送(164/990kHz)であったが、1965年にÖlgii(209kHz)、1978年にAltai(227kHz)、 Dalanzadgad(209kHz)、Choibalsan(209kHz)に高出力の長波送信機が、更に1982年にはMörön(882kHz)に高出力中波送信機が設置されて全土をカバーできるようになった。短波による国際放送は「Radio Ulan Bator」として1964年に開始され、1989年には日本語放送も開始された。国際放送は1997年には現在の「Voice of Mongolia」に改名された。2000年代初めには日本の援助でMörön(4895kHz)、 Altai(4830kHz)に10kW、Ulaanbaatar(7260kHz)に50kW短波送信機が国内向放送用に導入され、長波・中波用送信機も更新された。そのため一時国際放送、国内向長波・短波放送ともに日本では良好に受信されたが、送信機の劣化が進み徐々に出力が弱まって聞きづらくなってきている。それでも国際放送は昔から使用されていた25mbで何とか受信できる。国内向短波放送については一時すべて受信できなくなってしまったが、7260kHzのUlaanbaatarのみが復活(出力は10kWに減力)しており、Mörön、Altaiは廃止されてしまった模様である。またUlaanbaatarから990kHzで放送されていた国内 向放送も2010年頃廃止された。現在AMで残っているのは以下の周波数のみである(出力は公称)。
 国内向長波 Ulaanbaatar 164kHz 250kW  Altai 227kHz 40kW  Ölgii 209kHz 40kW Dalanzadgad 209kHz 40kW  Choibalsan 209kHz 40kW 
 国内向中波 Mörön 882kHz 40kW
    国内向短波 Ulaanbaatar 7260kHz 10kW
    海外向短波 Ulaanbaatar 12015 12085kHz 250kW 178/116°

 2023年7月に現地でモニターした結果では上記の長波及び中波放送は全局受信でき、実際に放送を行っているのが確認された(209kHzはどの局か判別はできなかった)。AMで行われているMNBの放送ではすべて第一放送の番組が流れている。長波放送は世界的には廃止傾向だが、この国ではまだ必須である。首都Ulaanbaatar近郊でも30km位離れればFM放送は聞こえなくなり、聞こえるラジオ放送は長波の164kHzのみとなる。モンゴルでは人口約330万人の内、約150万人が首都Ulaanbaatarに暮らしており、地方都市も少数であり、日本の4倍近い国土(大半が草原や砂漠)の中で、羊やヤギを連れて移動式住居ゲルを携え遊牧生活を営んでいる人も多く存在する(減少傾向だが約40万人程度)。都市から離れた場所を移動する遊牧民にとって聞こえるラジオ放送は長波で行われているMNB第一放送のみであるため他の国のように廃止する訳には行かないのである。第一放送の放送時間は現地時間の06:00-23:00と比較的早く終了する、遊牧民のゲルの中は最近は太陽光発電があるとはいえ基本的には夜間真っ暗であるので、深夜になれば寝るしかなくなる。従ってラジオ放送も早く終了するというのがその理由らしい。なお164kHz(2013年製のTayfun型送信機)を初めとする長波送信機は設置後10年以上経ているものが大半で劣化が進んでおり、現在公称出力の半分以下しか出ていないようで、音も歪んでいて音質が非常に悪い状態である。同じ事は海外向短波放送にもいえ、出力はやはり半分も出ていない模様である。

 モンゴルでも携帯電話(国土が広いため特に衛星携帯電話)の利用が盛んで、遊牧民も必ず持っている。2016年の調査では日頃ラジオを聞いている人は10%ほどで、ラジオを持っていない人は60%近くにのぼり、情報や娯楽の中心はもはや携帯電話であり、人々はいつもスマホを見ている。もうラジオはあまり重要視されなくなってきているようである。他の国のようにラジオのFM化やDAB化は国土が広すぎて簡単にはできないので、今後全土をカバーする短波や長波をどのように維持して行くのか注目したいところである。
 
 MNBでは国内向放送にも海外向放送にも、Ulaanbaatarの本局から同じQSLカードが発行されている。1960年代は「お礼のカード」にすぎなかったが、1980年代には凝ったデザインのものが発行されるようになり、更に21世紀になるとモンゴルの風物を写した絵葉書が使われるようになった。

 UlaanbaatarからのAM放送は、中心部から東約15kmにあるKhonkhor(Хонхор)送信所から行われている。Khonkhorには炭鉱があり、また貨物駅が設置されているため鉄道員も多く住んでいる。現在はUlannbaatar市Nalaikh区の一部となっているが、郊外の丘の西麓に拡がる標高約1500mの平原に設置されている。地元では「共産主義時代のプロパガンダ放送局の跡」と言われているが現在も使われている!送信所の東側をロシアに向かうモンゴル縦貫鉄道 (Транс-Монголын төмөр зам)が通っており、送信所の北端近くにBumbat(Бумбат)駅がある、その次の駅がKhonkhorである。この鉄道は中国とロシアを結ぶ重要な路線として世界地図にも掲載されているが、実際は単線非電化で、緑色をした旧ソ連製ディーゼル機関車が同じく緑色の客車数両を引いてゆっくりと走るのどかな路線である。西側に北方に向かう舗装されたNalaikh街道が通っている。送信所の北側には2本の100m級マストが立っている。一番北側の高い鉄塔は旧990kHz用で現在は使われていない、その隣にある二番目に高い鉄塔が164kHz送信用である。外からはよく見えないがこの2本の鉄塔の中間あたりに7260kHz用のダイポールアンテナが設置されている。2本の高い鉄塔から少し南に離れたところに赤色に塗った8本の低い鉄塔群があるが、これが国際放送用短波鉄塔で、178°と116°の2方向のビームが出せるようになっている。
   なおこの送信所の国際放送用アンテナの保守状況を写したビデオが以下のサイトで公開されている。なおビデオの最初に出てくる送信機は164kHz用のものと推測される。
 https://vk.com/radioko?z=video-161080476_456239086%2F2a6a880ab3905f392f%2Fpl_wall_-161080476。


 受信報告の宛先: P.O.Box 365, Ulaanbaatar 13, Mongolia 
 MNB本部の住所: Khuvisgalyin zam 2, Ulaanbaatar, Mongolia
 E-mail:   <vom_en @ yahoo.com> (Voice of Mongolia) <contact @ mnb.mn> (MNB)
 URL: http://www.vom.mn (Voice of Mongolia) http://mnb.mn(MNB)

(左)1960年代後半の「お礼カード」 裏面には当時の国際放送スケジュールが書いてある 赤地にモンゴルの象徴である「ソヨンボ」が金色で印刷されている 大きさ 146×92mm
(右)MNB本部ビル Ulaanbaatar市中心の北部第11副区、モンゴル国立大学の北側にある 後方に立っているのはTV・FM放送用鉄塔 (JAMCOのHPより)
    

(左)1989年にÖlgii送信所からの国内向長波放送放送209kHzの受信報告に対して発行されたQSLカード 当時の英語の局名は「RADIO ULAN BATOR」、中心にはモンゴルの象徴「ソヨンボ」が銀色で印刷されている 気に入っているデザインである 大きさ 106×146mm
(右)同裏面 英語だがフォントは当時旧ソ連で使われていたもの 当時のモスクワ放送のカードのようだ 1990年までモンゴルは社会主義国で旧ソ連の衛星国のような存在であった 完全ベリで送信所Ölgiiも記入されている GMTの表示が古めかしい
   

(左)2017年にUlaanbaatar局からの国内向短波放送7260kHz の受信報告に対して発行された絵葉書利用のQSLカード 絵柄はモンゴルの仏教寺院にある経典を入れた「摩尼車」、これを回すとその回転数だけ中身の経典を読誦したのと同じ功徳があるという 大きさ 146×103mm
(右)同裏面 英語の手書きで記入してあるが、残念なことに年(2017年)が漏れている そのまま切手を貼って送られてきている
  

左)Khonkhor送信所北部にある2本の高い鉄塔 左が使用していない990kHz用 右が164kHz用 この中間に7260kHzのダイポールアンテナがある筈だが見えない(筆者撮影)
(右)Khonkhor送信所南部にある8本の低い鉄塔 国際放送用固定2ビームアンテナ(筆者撮影)
 

(左)Khonkhor送信所の送信棟 (中)同長波送信機 (右)同短波送信機(NEC製) (何れもWolfgang Bueschel氏提供)
  

(左)Ulgii送信所の送信棟と長波用アンテナ (右)同長波用ドイツTRANSRADIO社製150L送信機 (何れもWolfgang Bueschel氏提供)
 

(左)Voice of Mongoliaのロゴ (右)MNBのロゴ
 


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