Estación 4940 (ベネズエラ)/ Radio La Montaña(コロンビア)
南米ベネズエラはかつてはDX局の宝庫であり、夕方から夜の60mbで珍局(今ではすっかり死語になったが)を釣り上げたBCLも多い。Ecos del Torbes、Radio
Rumbos、Radio
Yaracuyなどの局を覚えいてる人も多い筈だ。隆盛を誇っていた同国の短波局は1990年代に続々と短波から撤退し、21世紀初めにアクティブな局と
して残っていたのはEcos del
Torbesの4980kHzのみとなり、同局が短波を廃止してからは事実上短波放送局のない国となった。その後国営局Radio
Nacional de
Venezuelaが一時短波放送を行った時期があったがこれはキューバの送信所からであった。短波から中波に移った局はその後中波も廃止しFMに移行してしまった。現在のマドゥロ政権は民間放送局への統制を強めており、伝統のある放送局の中には廃局させられた局も多数あり「放送局の墓場」と言われる状況である。Ecos del
Torbesも780kHzの中波に転換したあと、2019年には廃局となった。同国政府はラジオ放送に対して冷酷で「ラジオが聞きたければ隣国コロンビアの放送でも聞けば良い」としている。
2021年夏頃4940kHzに不明コロンビア局が出現し、南米だけでなく北米でも受信された。当時この局の名称は「Radio La
Montaña」ないしは「La Montaña
Colombia」、所在地はマラカイボ湖の西側でベネズエラとの国境にあるMicaoとされた。この名称とされた理由は同局が番組内で「La
Montaña」という名称のコロンビア映画を頻繁に宣伝していたからとされているが真偽のほどは確かではない。番組内で住所・連絡先を一切明らかにして
いなかったので「隣国コロンビアの放送でも聞けば良い」というベネズエラ政府の方針に対応して出現した海賊局ではないかとされた。信号は安定しており、24時間放送であった。番組のほと
んどはコロンビアの政党「Fuerza de Paz」有する放送局で流しているものと同じであったため、一時「Fuerza de
Paz」の地方局と誤認されたこともある。事実2022年版WRTHにはコロンビアのAraucaにある地方局「Radio
Fuerza de
Paz」、出力1kWと掲載しており、同国の有名DXerであるRafael
Rodoriguez氏がQSLマネージャーであるとしている。ところが2022年にRafael
Rodoriguez氏自身がこの情報を否定し、方向探知の結果北緯7°20’、西経
69°00’のベネズエラ南西部コロンビア国境付近にから送信されていると報告した。これを受けて2023年版WRTHではベネズエラのApure州にある「Fuerza de Paz Radio」 と掲載されている。
その後聞こえたり中断したりしていたが、スペインのManuel
Mendez氏が2023年9月に詳細な確認を行ったところ「El saludo a nuestros oyentes en Venezuela,
América y el mundo, Estación 4940」というIDでが出て、局名は「Estación
4940」であることが判明した。また連絡先をアナウンスしており、<estacion4940 @
gmail.com>であることが分かった。放送で使用されている時刻はコロンビア時間(UTC-5時間)ではなくベネズエラ時間(UTC-4
時間)であることも分かり、ベネズエラのリスナー向であることもはっきりした。これで結論が出たように思われたが、2023年9月に「Radio La
Montaña」からQSLを受け取ったというBCLが出現し<radiolamontana @
gmail.com>という連絡先が紹介され事態が混沌としてきた。そこでManuel
Mendez氏は2つのアドレスに同時に同じ受信報告を送ったところ、何と両局から返信があり、更に「Estación 4940」からは「Radio
La Montaña」は知らないし関係ないと言ってきた。そこで「Estación 4940」が正当で「Radio La
Montaña」はイタズラ・虚偽だという推論も立てられたが、そこまで欺いてニセのQSLを発行するか?という疑問もある。
ベネズエラでは経済が混乱を極めており、地方への電力供給が不安定なため同局はしばしば中断したが、電波が出ていれば周辺では受信ができた。出力が小さいために日本での直接受信は無理であるが、幸いなことにベネズエラ沖のカリブ海にあるオランダ領BonaireにTrans World
RadioがリモートSDRを設置してくれており、これを利用すると比較的良好に受信できることが分かった。そこで昨年11月にこのSDRで受信した報告をスペイン語で上記の2アドレスに同時送付して見た。その結果2ヶ月後にEstación 4940から、4ヶ月後にRadio La
Montañaから返信があった。前者はお礼のメール、後者はeQSLのみを送付してきた。両者とも発信元はgmailなので、本当にベネズエラやコロンビアか来たのどうかは判断できない。
Estación
4940自体はどうもベネズエラ国内から本当に送信しているらしい、送られてきたメールには小型短波送信機の写真が添付されていた。fmscanによる
と、ベネズエラApure州Elorza(マラカイボ湖の南東)近郊のコロンビア国境近くに送信所があるらしい。このElorza(人口は約2.5万人)
では人々の生活行動範囲はコロンビアにまたがっているといわれている。局が存在するのはオリノコ川流域の熱帯草原地帯なので、その場所で番組制作ができる筈はなく、地理的な関係から番組供給はコロンビアから行わざるを得ないであろう。
全くの推論だが、「Radio La Montaña」が番組の供給元、「Estación
4940」が国境を越えた送信所でないだろうか。「Estación 4940」が関係を否定している理由は、ベネズエラ側から見れば「越境違法局」(WRTHには載っているが正式に認可されていない局の可能性が強い)であるため、コロンビアとの関係を認めることが国際関係に支障をきたす懸念があるためと思われる。「Radio
La Montaña」から見れば自局の番組を流してしている局なので、当然のこととしてQSLを発行しているのであろう、更に送信所は隣国にあるのでコロンビア当局の追求を受けることもない訳だ。「Radio La Montaña」から送られてきたQSLカードは洗練されたデザインでRafael
Rodoriguez氏の影響を受けたBCLなどが関わっている可能性さえも何となく感じられる。
受信報告の宛先
Estación 4940 : <estacion4940 @ gmail.com>
Radio La Montaña : <radiolamontana @ gmail.com>
Estación 4940から届いたお礼メールをプリントアウトしたもの
添付されているのは小型の短波送信機の写真、「4940kHz Shortwave Transmitter」と書いてある、木造の小屋内で粗末なラックに収納されている
Radio La Montañaから届いたeQSL 送信鉄塔風景(本当に4940kHzの送信用かどうかは不明)と所在地近辺の地図が描かれているが正確な所在地は記入されていない 受信データも記入されている
発行者はCacique Mayor氏 デザインが良い「完全QSL」でBCLを熟知した人間が制作・発行しているように見える
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