Wai FM (マレイシア)

 Wai FMは現在マレイシアのサラワク州Kuchingから101.3MHzで放送しているRadio Televisien Malaysia(RTM)のイバン語放送である。イバン語はこの地域のイバン(ダヤン)族(昔は「ボルネオの首狩り族」として有名であった)を中心にボルネオ島の西北部の約200万人が話しているローカル言語である。101.3MHz(1kW)のFM送信所はKuchingから約20kmの地点にあるセラピ山(標高 911m)にあり、Kuching市内とインドネシアの西カリマンタン州の一部などの比較的広い地域をカバーしている。更に数カ所にFM中継局も設置されている。しかし広大なサラワク州全部をくまなくカバーすることは困難である。そこで国際放送の廃止で不要となったKajang送信所からボルネオ向に短波で放送を行い全土をカバーすることが考えられ、21世紀初頭から短波一波(9835kHz)をSarawak FM用(マレイ語)、もう一波(11665kHz)をWai FM用に使用して放送することとし効果をあげている。なおWai FM放送の「ワイ」は親しい人や目下の下に呼びかける時の「おーい」というような意味で、イバン語だけでばくサラワク州では話される他のローカル言語とも共通の言葉である。
 
 Wai FMの前身はRadio Malaysia - Sarawakの「グリーンネットワーク」で、20世紀にはKuchingからの他、SibuやMiriといったイバン族の多く住む地域からも短波で放送されていた。特にSibu局は日本のNEC製送信機HFB-215から10kWの出力で5005、6050kHzで放送されており、日本でも弱いながら受信できた。
 
 Wai FMは過去四半世紀近くにわたり11665kHzで中継されてきたが、更に2023年末に現存のContinental社製の418G型100kW送信機 (2010年導入)に対してドイツRFmondial社により変調器のアップグレード作業が実施された(アップグレードした部品のメーカーは既に存在せず苦労があったという)。その結果AM波の品質が向上したことに加えてDRM送信も可能 となった。そして状態さえ良ければ日本でも必ず安定して受信できる局となった。2024年現在の放送時間は07:00-23:00である。日本では21:00-23:00の時間帯が狙い目である。FM波も携帯電話の電波も届かない広大な地域をカバーするにはやはり短波放送が最適なのであろう。短波の将来に光を投じる活用法である。

 Kajang送信所はマレイシアの首都Kuala Lumpurの南部郊外に位置するが、周辺の市街地化が進み今ではス-パーの駐車場が隣にできてしまった!Kajang送信所は従来Sarawak FM(9835kHz)のQSLカードを発行していたが、最近はWai FMのQSLカードも発行している。

  アップグレードされた送信機からの放送を11665kHzで受信し、Kajang送信所に受信画面と録音を添付してE-mailにてレポートしたところ何と1時間後にeQSLを添付したメールによる返信が来た。

 受信報告の宛先(Kajang送信所): Transmitter Technical Section, RTM Kajang Transmtting Station, Kajang, Malaysia
    E-mail(Kajang送信所):    <pnk_rtmkajang  @ rtm.gov.my>

 Wai FMの所在地: Jabatan Penyiaran Malaysia, Bangunan R.T.M., Jalan P. Ramlee, 93614 Kuching, Sarawak, Malaysia
    Wai FMのE-mail:  <waifmiban @ gmail.com>

    URL(オンライン放送あり): https://waifmiban.rtm.gov.my/

(上)QSLカード表面 左下にWai FMのロゴ、右下にRTMのロゴが入っている。背景はボルネオではなくマレイシア本土のPenangにあるテーマパークKampung Agon!
(下)QSLカード裏面 発行者はChief Assistant DirectorのMohd Fauzi Bin Hassan氏 発行番号は2024年第100号 局印、50セントの切手の映像もある!

 



(左)標高911mのセラピ山頂上のFM送信鉄塔 (Gunung Baggingより)
(右)Kajang短波送信所の鉄塔群 となりのスーパーの駐車場より (redditより)

 


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