Latvijas Radio  (ラトビア)

 Latvijas Radioは「ラトビアの放送」の意味で、ラトビアの国営ラジオ放送である。現在はラトビア公共放送(LSM)のラジオ部門という位置づけとなっている。

 バルト三国の一つであるラトビアは、18世紀には ポーランド、19世紀にはロシアの支配下にあったが、第一大戦後の1918年にようやく独立を実現した。しかし第二次大戦勃発に伴い1940年には当時の ソ連(ロシア)に占領され、更に一時はナチス・ドイツが占領した、1945年にはソ連に再占領され、ソ連内の一共和国とされてしまった。そしてソ連が崩壊 した1991年にようやく独立を取り戻した国である。現在はEU、NATOに加盟し完全に西側の国となっている。ソ連時代はラトビア語の使用は禁止され、 国民のかなりの数(首都リガでは約1/3)が虐殺されるかシベリア送りとなり、代わりにロシア人が流入してロシア化が推進された(現在でも人口の約25%はロシア系)。歴史あるカトリック教会なども活動を禁止され、一部は取り壊されるなど、民族として苦渋の歴史を経験してきた。

 ラトビアでラジオ放送が開始されたのは、最初の独立国であった時代の1925年11月1日であり日本と同じ年であった。ソ連占領以後はソ連の一国内放送局となったが、ソ連の西側に対するプロパガンダの一環で1960年代には当時のRadio Moscowの姉妹局として5935kHzで独自の海外向短波放送Radio Rigaが開始された。当初はロシア語、スウェーデン語(1995年まで)であったが、1980年代にはラトビア語も追加された。、ソ連支配の中でも何とかラトビアの存在を 示そうとする抵抗の姿勢が感じられる。5935kHzの海外放送は独立後もしばらく行われていたが、1990年代末に財政難から廃止された。 5935kHzの信号は混信が多く、日本で受信するのは容易ではなかった。筆者もとうとう受信できないで終わってしまった。なお5935kHzに対する受信報告にはリガ市の絵葉書を利用した英語のQSLカードが発行され、これは珍品とされ現在でもオークションなどで見かける。

 2024年夏バルト三国を旅行した際にこのことを思い出し、リガでLatvijas Radioの第一放送(LR1)をFM(ラトビアでは放送局のFM化が終了している)で受信して帰国後IRC、PFC同封で受信報告を送って見たところ、3か月後に返信があった。

 Latvijas Radioは現在第一放送(LR1 ニュース・トーク中心の一般向)、第二放送(LR2 若者向ラトビア音楽)、第三放送(LR3 Klasika クラシックジャズ専門)、第四放送(LR4 Doma laukumus ロシア語などの国内少数民族語)、第五放送(LR5 Poeci.lv 若者向一般音楽)、第六放送(LR6 Radio NABA ラトビア大学運営)の6系統のラジオ放送をFMで行っている。今回受信したのは最も中心的なリガ第一放送の90.7MHzであった。

 Latvijas Radioの局舎はアールヌーボー様式の建物で、Rigaの世界遺産地区の中心、大聖堂前の広場に大聖堂と相対して立っている。ソ連時代は国家の宣伝機関 で あったが、1986年ソ連にゴルバチョフ政権が成立した後は積極的に民族自立を支援する役割を演じた。1989年8月にソ連からの独立を求めてバルト三国 の人々が巨大な「人間の輪」を作った時はこれを積極的に報道し、また1990年5月に自治政府が独立宣言を行った時には実況中継を行った。ソ連は独立を認めず1991年1月には軍事侵攻を行い再占領を試みた。その時Latvijas Radioの建物や内務省の建物を占領しようとしたため、Latvijas Radioは大聖堂前広場に集結してバリケードを築いて抵抗するように放送で市民に呼びかけ約3万人が集結した。これは流血の惨事に発展し、一時ソ連軍はラトビアを再占領したが、放送は地下に潜り別の施設から継続された。しかしソ連自体が同年8月に事実上崩壊(正式には12月)したしため、ソ連国家評議会は9月には独立を認めざるを得なくなり、ラトビアは実質的に独立を回復した。

 受信報告の宛先: Doma laukums 8, LV-1505 Riga, Latvia
 E-mail: <radio @ latvijasradio.lv>
 URL:     https://www.latvijasradio.lsm.lv/lv/lr/


PFC利用のQSLカード 左上は局のロゴ 右上はラトビアの紋章 サインはUye Lupau氏


(左)世界遺産リガ歴史地区・大聖堂の前に位置するアールヌーボー様式の局舎全景(Wikipediaより)
(右)局舎の細部「LATVIJAS RADIO」の文字が見える、夜間にはイルミネーションで文字が浮き上がって見える(局より提供)

     

(左)LR1の番組収録中のスタジオ風景(局のHPより)  
(右)リガの中心を横切って流れるダウガバ川沿いのリガ・ラジオ・TV塔 ソ連時代の建設で1986年完成 TV局5局、Latvijas Radioを含むFM局12局、DAB+局1局の電波を発信している 高さ368m、内部には展望台やレストランもある リガ市内で現在見られるソ連が残した数少ない建物のひとつ (Wikipediaより)

   


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