Radio Blacksmith Knoll (フィンランド)
フィンランドに2024年にできた「面白短波局」である。「Blacksmith
Knoll」とは「丘の鍛冶屋」の意味、「トンテンカン トンテンカン」とひたすら短波を出し続けて鋼のように強くなるというような意味合いであろうか。この局の主催者は今年
(2025年)52歳のMarco “Mac”
Johansson氏("Mac"はあだ名)である。氏は生来のラジオファンで、無償で放送しているスウェーデンのScandinavian
Weekend Radioに深く啓発され、2010年代後半のある夏の夜、2006年末に短波放送を廃止したRadio
FinlandのPori送信所が放置され、当時固定的に使用されていた6120kHzの周波数の権利も放棄されていることに思いをめぐらし「何故自分がやらないのだろう!」とPori(首都Helsinkiの西北約200kmのボスニア湾岸に位置する)に短波局設立を思い立ったという。
フィンランドでラジオ放送が開始されてから100年となる2024年、ついにこの計画を実現することにし早速無線当局(運輸通信庁)に申請を出したとこ
ろ、すんなりと認められ、フィンランドが権利を有している6120kHz(252kHzの長波もそうだが、ある国が長く使用していた周波数は国際的にその国に使用権が継続して認められるようだ)の使用も認められた。免許が公開されてから数時間後に友人から「やっぱりお前か?」という最初の問い合わせが届いた。アマチュア無線機を改造した送信機と簡易マルチバンドアンテナにより免許に記載された指定期日である現地時間2024年6月1日の午前零時すぎに伝統の地
Poriより最初の電波を出すことができた。当初の出力は非常に小さく、音声帯域は3kHzと不十分なものであったが、欧州各地から受信報告が寄せられた。
2025年5月1日にはプロ使用のAM送信機
(50W)とサウンドプロセッサーを導入して音域を10kHzまで広げることができ、アンテナも
6120kHz専用の半波長ダイポール(指向性東西)に変更して受信状況の改善を図った。また送信周波数の熱ドリフトをうまく制御し、SDR受信機の
ウォーターフォール画面に「RBSK 6120」の文字と受信機の映像が浮き上がるように工夫(同局では局の「指紋」と称している)して同じ周波数を使用してる他局と間違えないよう工夫している。
免許は半年おきに更新が必要で、その間は24時間放送が許可されているが、放送は1ヶ月に数回週末の2日間であることが多い。番組はJohansson
氏自身とAIの相棒"Macs”、別名「Operator」とで作成している。内容は1920年代から現代の電子音楽に至る各種音楽の他、最近の話題、昔
TVで見たあの番組、など最近のリスナーがあまり出会う機会がないような番組を中心にしている。「若い世代にもこの趣味の面白さに気づいてもらいインターネット以前のノスタルジックな生活を共有できると良い」と氏は述べている。
50Wでは日本での直接受信はほぼ不可能であるため、リモートKiwiSDRを利用して8月末の放送を受信して見た。利用させていただいたのはPoriから約800km、スウェーデン西部のArvikaにあるアマチュア無線家SA4BNA
所有のシャックで、アンテナは何と100mのBevarageである!当然受信状態は最良で10kHzの帯域幅で音声も楽しめたし、局の「指紋」も確認できた。E-mailで受信報告を送ったところ約3週間後に「丘の鍛冶屋」らしいeQSLと暖かいメッセージ(Johansson氏は2023年に半月間来日したことがあるそう)がE-mailで送られてきた。21世紀の短波BCLのあり方を先取りしたような局であり、今後の健闘を期待したい。
所在地: Pori, Finland
E-mail: rbsk6120 @ rbsk6120.radio.am (受信報告はこちらに送る)
URL: https://rbsk6120.radio.am
左:送られてきたeQSL 「丘の鍛冶屋」の風景そのもので、たたき台(金床)の上には古風な短波ラジオが置いてある 後には木に掛けたダイポールアンテナ!
右:Kiwi SDRのウォーターフォール画面上に表示された局の「指紋」(帯域幅10kHz)

左: 2025年5月導入の新50W AM送信機
右: ON AIR中のMarco “Mac” Johansson氏 (何れも局のHPより)

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