『酒』
「酒知己に逢へば千鐘も少なし。話、機に投ぜられば半分も多し。」と明末の『琵琶記』にでています。
会心の友にあって盃を傾ける時には、何ぼでも入っていくが、次元の低いのと同席すると半句喋るのも
もったいない、と言う意味です。酒を飲むときの実感ですね。
−安岡正篤
「兄、明道は『眼前、妓あり。心中妓なし』 弟、伊川は『眼前、妓なし。心中妓あり』。以って、二人の差を
知るべし」
兄弟とも大学者で「ニ程」と称され、その学問は朱子に受け継がれたほどだったが、酒席で、芸者とのやりとりを
観察し、兄の程明道は、洒脱な会話で大いに芸者衆を遊ばせ、本人も楽しそうに酒を飲むが、心の中では、いかに
美妓が侍(ハベル)っても、全く意に介していなかった。
弟の程伊川は、芸者の存在など、とんと眼中にも置かぬような顔をして、難しそうな話をしているが、内心では
もてたくて、もてたくてしようのない気持ちがありありと態度に現れていた。
−「唐土名妓伝」
♪酒をのむなら大丈夫(おとこ)とのみやれ
十年かけた読書にまさる
−竹中半兵衛
♪さびしがりやが一升さげて
さみしがりやに逢いにくる
−都々逸
♪酒の相手に 話の相手
苦労しとげて 茶の相手
−都々逸
♪酉の市からいきなり冬に
なって恋しい酒の味
−都々逸
♪冷たく悟った 色即是空
多情一切 過去の夢
−都々逸
♪とぼけてもダメ お狸さんの
ハラはよめてる かおのいろ
−都々逸
♪口説き上手の この文ご覧
どうせ狸の 筆のさき
−都々逸
♪口説き上手のネ 口説き上手の この文ご覧
どうせ狸の筆のさき とはしりつつもネ
十に一つの 誠を願うて 読みかえす さのさ
−さのさ
♪だまされているのが遊び
なかなかに
だますお前の手のうまさ
水鶏(クイナ)きく夜の酒の味
酒席では刑事みたいに戸籍しらべをやらぬことである、さらりと遊んでこその遊びの醍醐味がある
あまり本気になって女の子を追っかけまわさぬことである。
酒を捉(ト)るには須(スベカ)らく、韻友(インユウ・誌心)と結ぶべし
−不明
酒に溺れて、呂律のまわらぬ舌で訳のわからぬ事を喚き散らす友はいくらでもできるが、そんなのは
何人いても真の友ではない。
ドイツの諺にも「酒がつくりだした友情は酒のように一晩しかきかない」とあるが、一緒に飲みあったり、
麻雀を楽しむだけのことで、相手を親友と考えるのは、考えるほうがどうかしている。
酸いも甘いも噛み分け、人間もかなりの奥行きができてこないと「清茶談話」などはとてもやれない。