帰ってきたウルトラマンのページ

 なぜか「帰ってきたウルトラマン」のシナリオを作りました。
シナリオと言っても、正式な物ではなく、以前発売されたLDからセリフを拾った物で
セリフ以外の演技の部分は、必要最小限しかまとめていません。
また、セリフも聞いて判断したので、聞き取りにくい部分等もあり
誤った表記もきっとあると思います。
さらに、作品のクオリティの差も激しいので、
とりあえず代表作と言えるような物のみとしました。
とりあえずと言っても、今や手元にLDがないので、先へ進むのは難しいのですが。
まずは試作程度にて。


第1話  『怪獣総進撃』

◎東京港。
N「世界各地が異常気象に覆われている。日本列島でも、毎日のように起こる小地震が不気味な地核の変動を示す。そして、ついに怪獣たちが一斉に目を覚ました」
海中より出現するタッコングとザザーン。戦い始める2大怪獣。勝鬨橋を破壊する。倒れたタッコングに攻撃を加えるザザーン。

◎MAT基地。
N「M・A・T。MATとは、モンスター・アタック・チームの略称である」
◎MAT司令室。
 N「国際連合機構の地球防衛組織に属し、地球の平和を守るためにあらゆる怪事件にいどむ特別チームなのだ」
入ってくる加藤。
加藤「勝鬨橋が破壊された。怪獣を都心に入れたら大惨事になる。南」
南「はい」
加藤「岸田」
岸田「はい」
加藤「上野」
上野「はい」
加藤「君たちは空から攻撃しろ」
三名「はい!」
南「出撃します」
敬礼して出ていく三名。
加藤「丘くん、出発だ」
丘「はい」
◎格納庫。
発進するMATアロー。
◎東京港。
 戦う二大怪獣の前に到着する。
◎南機。
南「発射!」
上野「発射!」
◎岸田機。
岸田「発射!」
攻撃を加えるMATアロー。

◎坂田自動車修理工場。
次郎「怪獣だ!怪獣だよ!怪獣だ!」
レースカーを整備している坂田と郷。次郎がかけこんでくる。
アキ「どうしたの、次郎」
次郎「怪獣だってさ」
アキ「怪獣?」
次郎「兄ちゃん!この車、怪獣に壊されたらどうする?」
郷「怪獣?」
次郎「本物の怪獣だよ。ようし」
スパナをもってかけだす次郎。
坂田「おーい、次郎!次郎!やめるんだ!」
アキ「危ないわよ!」
郷「よし、おれがつれてくる」
アキ「郷さん!」

◎東京港。
攻撃を続けるMATアロー。
◎道路。
 走る次郎。
◎東京港。
 タッコングの攻撃で倒れるザザーン。
◎道路。
 走る郷。警官が人々を整理している。
警官「さあ、これから先は危険です。さあ」
警官をすり抜けて進む次郎。
警官「おーい!危ないぞ!おっ死んだって知らんぞ!」
追う郷。
郷「おーい。次郎!」
◎東京港。
タッコングの再三の攻撃で、またも倒れるザザーン。もがいて息絶える。港を破壊するタッコング。攻撃するMATアロー。
◎倉庫。
郷「次郎」
次郎「郷さん、怪獣」
郷「ああ。さあ、帰るぞ」
◎公園。
逃げる人々。加藤らが先頭にいる。
母親「子供を、子供を助けてください!」
加藤「どこです」
母親「あのアパートです!鳩を逃がすって聞かないんです!」
加藤「まあ、落ち着いて」
怪獣を見る加藤。
加藤「丘くん」
丘「はいっ」
かけだす加藤。後に続く丘と母親。
◎倉庫。
 迫るタッコング。郷と次郎の所へ加藤たちがかけつける。
母親「ひろし!」
加藤「あっ、危ない」
丘「私、行きます」
母親「ひろし!ひろし!」
丘「行ってきます」
かけだす丘を郷が止める。
郷「待てよ。女じゃ無理だよ。待ってろよ」
加藤「君!」
◎アパート。
屋上へかけつける郷。鳩を逃がしている少年。
郷「君!怪獣が見えないのか」
少年「だから逃がしてんだよ」
郷「よし!」
少年「ほら!早く逃げろ!ほらほらほら」
手伝う郷。
◎東京港。 
 港を破壊するタッコング。
◎アパート。
 逃げる郷と少年。少年がつながれた犬に気づく。
少年「あっ、チビだ」
郷「君は早く逃げろ。おれがつれてくる」
くさりをはずす郷。
少年「あっ、お兄ちゃん。怪獣だよ!怪獣が来たよ!」
迫ってくるタッコング。アパートを破壊する。
郷「伏せろ!」
少年にかぶさる郷。その上にガレキが降り注ぐ。
郷「うっ」
◎東京港。
突然、タッコングが光輝く。
◎倉庫。
加藤「今の光は何だ?」
◎東京港。
海へ飛びこむタッコング。
◎アパート
ガレキから抜け出す郷。
郷「大丈夫か」
少年「うん。ありがとう」
郷「よかった」
倒れる郷。

◎病院・廊下。
病室に運ばれる郷。
アキ「先生。献血ならいくらでもします。郷さんを助けてあげてください」
医師「静かに」
加藤「どうですか」
医師「今の所、何とも」
加藤「この青年を死なせてはいけません。子供の命、いや小犬の命まで助けたんです。死なせてはいけません」
医師「我々も全力を尽くしている」
病室に入る医師。
少年「お兄ちゃん」
母親「大丈夫。大丈夫よ、きっと」
次郎「郷さんが死ぬもんか」
ドアが閉まる。
◎病室。
治療する医師。かけつける坂田。
アキ「兄さん」
坂田「郷。流星号は完成したぞ。いつでも走れるんだ。いつでもOKなんだぞ。聞こえるか、郷」
祈るアキ。
N「子供を愛し、生き物のすべての命を愛し、人を助けるためには自分の命をも投げ出した青年、郷秀樹。今、郷青年の命は風に揺れるろうそくの火のように消え去ろうとしている。郷、がんばれ。死ぬな、郷よ」
アキ「郷さん」
医師「御臨終です」
次郎「郷さん、死んじゃいやだ。死んじゃいやだよ。郷さん」
泣き出すアキ。うろたえて背を向ける坂田。黙って一礼する加藤。郷の上に自分の十字架のネックレスを置くアキ。
◎坂田家・ガレージ。
完成した流星号を見る坂田三兄弟。
郷『優勝して賞金もらったら、田舎の母さんよんで、一緒に暮らそうかな』
◎空き地。
流星号に花束を入れるアキ。流星号にガソリンをかける坂田。
坂田「郷。おれがおまえにしてやれるのは、せいぜいこの程度だ。あんまり飛ばすんじゃないぞ」
 ライターで火をつける坂田。
次郎「さよなら、郷さん」

◎アイキャッチ。

◎安置室。
安置されている郷。その上に光が輝く。
ウルトラマン『郷秀樹。私は君の勇敢な行動を見た。自分の危険もかえりみず、子供を助けようとした君に感動した。』
ガレキに埋まった郷の光景が浮かぶ。ウルトラマンがかけつけ、タッコングに攻撃を加える。スペシューム光線を与えると、タッコングは海中へ逃げる。
ウルトラマン『私は、このままの姿では地球上にとどまることはできない。だから、君に命を預ける。一緒に地球の平和と人類の自由のためにがんばろうではないか』
郷に乗り移るウルトラマン。目がさめる郷。
郷『ここはどこだ。おれはいったいどうしたんだ』
ドアが開き、看護婦が花を持って入ってくる。
郷「やあ」
看護婦「きゃあー」

◎MAT司令室。
加藤「おう、どうだった」
南「はあ。探知機でくまなく探ってみたんですが、反応はありませんでした」
上野「金星に火星がかぶっている」
加藤「んっ?」
上野「三凶だ。地球は呪われている」
岸田「やめないか上野。星占いなんかしてる場合じゃないんだ」
電話が鳴る。
丘「隊長」
加藤「何だ?」
丘「郷さんが、郷さんが生き返ったそうです」
加藤「何だって?」

◎空き地。
燃えた流星号を見る郷。
アキ「送り火にしたのよ。流星号にあなたの魂を乗せて、天国に向けて走らせたんだわ」
◎坂田自動車修理工場・事務所。
坂田の所へ行く郷。
郷「坂田さん。もう一度初めからやり直しましょう。流星2号」
坂田「その必要はないよ。君は今日から、あの人の所へ行くんだ」
到着する加藤。
坂田「君をMATチームの一員として、ぜひほしいとおっしゃている」
入ってくる加藤。
加藤「やあ、坂田さん」
坂田「いらっしゃい」
加藤「郷くん、聞いてくれたね。坂田さんから。君は灰の中からフェニックスのようによみがえった。君のその不屈の精神力、強靭な肉体は我がMATチームにふさわしい。来てくれるね」
郷「急にそんなこと言われても、おれ……」
突然、郷の耳に怪獣の叫び声が聞こえる。
アキ「どうしたの?」
郷『誰かがおれをよんでいる』
車に飛び乗る郷。
アキ「郷さん」
走り出す車。トランシーバーが鳴る。
加藤「私だ」
 丘『隊長、朝霧火山に怪獣が出現したそうです。南、岸田、上野隊員が現場へ急行しました』
加藤「了解、すぐ帰る」

◎山中。
山中を進む怪獣アーストロン。
◎山村。
 逃げる人々。
◎山中。
 急行するMATアロー。攻撃を加える。かけつけるMATジャイロ。こちらも攻撃する。
◎岸田機。
岸田「発射」
火を吐く怪獣。辛くも逃れるMATジャイロ。
◎南機。
南「発射」
上野「発射」
◎道路。
車を飛ばす郷。
郷『どうした。おれはいったいどこへ行くんだ』
◎山村。
村を襲う怪獣。
◎南機。
加藤『南、村へ近づけるな。正面攻撃だ』
南「了解。行くぞ」
上野「んっ」
◎山村。
攻撃するMATアロー、MATジャイロ。
◎加藤機。
加藤「MAT2号。村民を安全な場所に誘導させるために着陸せよ」
岸田『了解』
◎山村。
逃げる人々。着陸し、降りて走るMAT隊員。迫るアーストロン。釣橋の上で村民を誘導するMAT。MATシュートで攻撃する隊員。火を吐く怪獣。村が燃える。
加藤「退避」
一同「はっ」
怪獣が迫り、老人が倒れた木の下敷になる。
娘「あっ、おじいちゃん」
老人「早く逃げろ」
娘「おじいちゃんと一緒じゃなきゃやだ」
助けようとする娘。かけつける郷。
郷「どうした」
娘「おじいちゃんがはさまれて」
郷「よし」
テコでどかそうとする郷。火を吐く怪獣。煙に巻かれて娘が倒れる。
郷「おい、しっかりしろ。我慢するんだ」
その時、上空に光が輝き、郷は両手を上げる。ウルトラマンに変身する郷。

◎山中。
 アーストロンにキックを加えるウルトラマン。倒れるアーストロン。さらに攻撃するがはねかえされる。倒れたウルトラマンをアーストロンが襲う。
◎山村。
 倒れた老人と娘をMAT隊員が救出する。
加藤「おい、大丈夫か」
◎山中。
もみ合う怪獣とウルトラマン。アーストロンの攻撃を両手で食い止めるウルトラマン。立ち上がった怪獣に向かって、キックやチョップを応酬をする。だが、簡単に反撃を受ける。火を吐く怪獣。避けるウルトラマン。怪獣の突進を受ける。上から叩くウルトラマン。だが、弾きとばされ、足で攻撃される。
N「ウルトラマンのエネルギーは3分間しか続かない。カラータイマーが青から赤に変わると危険信号だ。ウルトラマンがんばれ」
怪獣の腹へキックするウルトラマン。怪獣がよろめいたスキに立ち上がり、攻撃を加える。怪獣を投げ飛ばすウルトラマン。逃げる怪獣に飛びかかる。だが、弾きとばされる。覆いかぶさろうとする怪獣を何とか食い止め、持ち上げるウルトラマン。怪獣を投げ飛ばす。逃げる怪獣に馬乗りになるウルトラマン。上から攻撃を加える。はらって逃げるアーストロン。ウルトラマンは、怪獣の尾をつかんで振り回し、投げ飛ばす。もがく怪獣にスペシューム光線を加える。倒れる怪獣。飛び去るウルトラマン。

◎河原。
上野「おおい。早く出せよ。腹ペコだよ」
丘「ダメ。手を洗いましたか」
上野「こんな手どうだっていいだろ」
丘「ダメよ。ほら」
加藤「早く洗った方がいいようだな」
南「行くぞ」
丘「ほら早く」
川へ向かう隊員たち。川辺に男が倒れていることに気づく。
南「隊長」
加藤「おい、郷くんじゃないか」
郷「隊長」
加藤「かけつけてくれたんだな」
郷「いや、ボクはいったい……」
加藤「大丈夫か」
立ち上がる郷。
加藤「何百キロもはるばる来てくれたじゃないか。諸君に紹介しよう。今日からMATの一員になる郷秀樹くんだ。勇敢な青年だよ」
丘「歓迎しますわ。はじめまして、丘です」
郷「ああ」
南「やあ、南だ。よろしく」
郷「郷です」
岸田「岸田です、よろしく」
上野「上野です。よろしく」
加藤「さあ、おにぎりにありつくか」
丘「どうぞ」
加藤「一緒に食おう」
郷「はい」
空を見る郷。
ウルトラマン『郷秀樹。私はウルトラマンだ』
郷『ウルトラマン?』
ウルトラマン『君は一度死んだ。そこで私の命を君に預けたのだ』
郷『そうだったのか。一度死んだ人間が生き返るなんて、おれも不思議に思っていたんだ』
ウルトラマン『君はもうウルトラマンなのだ』
郷『おれがウルトラマン?』
ウルトラマン『これは君と私だけの秘密だ。人類の自由とと幸福を守るためにともに戦おう』
郷『おれはウルトラマン。おれの使命は人類の自由と幸福を脅かすあらゆる敵と戦うこと』
第2話 『タッコング大逆襲』

◎MAT基地・剣道場。
上野と剣道をする郷。
上野「遠慮はいらん。どこからでも打ちこんでこい」
上野の面を打つ郷。
加藤「勝負あり」
南「どうした上野」
上野「くそう」
南「おまえ、それでもMATの一員か」
上野「ちくしょう」
南「郷は新入生だぞ」
上野「強いなこいつ」
南「バカ言え。郷は今日初めて竹刀を手にしたんだぞ」
丘「私がお相手します」
上野「丘隊員は4段の腕前だ。おれに勝つようにはいかんぞ」
加藤「勝負一本。はじめ!」
丘の小手をとる郷。
加藤「勝負あり」
丘「初めて竹刀をもったというのはウソね」
郷「本当です」
丘「そうだとすると、私は素人に負けたことになるわ」
南「郷。今度はおれと勝負だ」
◎同・柔道場。
柔道で南と対戦する郷。
加藤「勝負一本。初め!」
南に投げられる郷。だが、回転して着地する。アゼンとする隊員たち。
郷『まったく負ける気がしない。そうか、おれはウルトラマンなんだ。ウルトラマンとしての超能力がおれの力になっているんだ』
郷につかみかかる南。しかし、郷はそれを投げ飛ばす。そして南を受け止める。
加藤「一本」
南「いやあ、すさまじい技だ。おまえがもし受け止めてくれなかったら、首の骨を折るところだったよ」
岸田「郷、おれとこい」
◎同・射撃場。
射撃で岸田と勝負する郷。岸田が撃つ。まん中に集中しているが、それでもばらつきはある。岸田から拳銃を受け取る郷。撃つ郷。中心の一転にしか命中しない。標的を見比べる加藤。
加藤「テストの結果、郷隊員はすべての面において相当な実力を持っている。私の目に狂いはなかったわけだ。これからもMATの一員として一層努力してくれよ」
郷「はい」

◎東京港。
港に現れるタッコング。
◎MAT基地・格納庫。
出撃するMATアロー、MATジャイロ。
N「海上オイルプラント襲わるの情報は、ただちにMAT本部に届いた」
◎南機。
郷「南隊員。この前、海に逃げたやつですよ」
南「ようし。今日こそしとめてやるぞ」
◎東京港。
攻撃するMATアロー、MATジャイロ。
◎岸田機。
上野「発射」
◎東京港。
海中へ逃げるタッコング。

◎MAT司令室。
南「やつは、東京湾をすみかにし始めた。MATサブで海底攻撃を加えるべきだと思う」
岸田「もし、攻撃に失敗したらどうなる」
南「じゃあ、このまま放っておけというのか。いつまたプラントが襲われるかもしれないんだ」
岸田「しかし、確実に撃退できる可能性がないかぎり、海底まで追う必要はないと思う。街に上陸しないだけマシだ」
加藤「だが、放っておくわけにもいかん。作戦はこうだ。MATサブ1号、2号でふたてに分かれて、海底を探査する。発見次第互いに連絡をとりあって挟撃作戦だ。Z弾をできるだけ接近して口の中へ撃ちこめ。わかったな、郷」
郷「わかりました、隊長。安心して見ててください」
岸田「実戦は射撃場とは違う。甘く見るなよ」
郷「まかせておいてください」
上野「こいつ。いやに自信満々だな」
加藤「作戦はあくまで冷静沈着に。協力してな」
一同「はいっ」
◎MAT基地。
N「これがMAT本部ご自慢の海底基地である。司令室、作戦室、格納庫、訓練所などMATのすべてがこの海底基地の中にある」
◎海底。
発進するMATサブ。ふたてに分かれる。
◎MAT基地。
 基地から様子を見る加藤と丘。
◎南艇。
南「ん?」
レーダーの異常に気づく。
郷「あっ、南隊員」
南「うん。近くにいる。こちら1号。1キロ以内に怪獣をとらえる」
岸田『了解。ただちに、そちらに急行する』
郷「南隊員、見つけ次第やっつけちゃいましょうよ」
南「作戦は、あくまでも忠実に守るんだ。おれたちだけでやって、失敗したらどうするんだ」
不満そうな郷。岩影からタッコングの姿が見える。
郷「出やがったな」
Z弾のレバーに手をのばす郷。
南「まだ撃つな。2号を待って攻撃開始だ」
接近するMATサブ。
郷「怪獣の一匹や二匹、何ですか」
レバーを引く郷。
南「あっ、郷!」
Z弾が怪獣に当たり、暴れ始める。タッコングの攻撃を受けるMATサブ。
南「郷、大丈夫か」
海底に落ちるMATサブ。
郷「南隊員、しっかりしてください。南隊員。よし、こうなったらウルトラマンになってやる」
手をのばす郷。だが変身できない。
郷「ウルトラマンになれ」
去っていくタッコング。
郷「どうしたんだ。ウルトラマンになれ。ちきしょう。どうして変身しないんだ」

◎MAT司令室。
岸田「どうして、おれたちが到着するのを待てなかったんだ。勝手に攻撃して、その上逃がすなんて、なってないぞ」
南「すまん」
岸田「すまんですむ問題じゃないと思うな」
丘「南隊員は負傷しているのよ」
岸田「しかし、責任は責任だ。怪獣は手負いのまま逃げた。今度現れたら、ものすごいことになるぞ」
郷「すいません」
南「1号の艇長はおれだ。おれが撃てと言ったから郷が撃ったんだ。責任はすべておれにある」
郷「そんな」
南「おまえは黙ってろ。隊長、すべての私のミスです。処分は私だけに」
加藤「そうはいかん」
テープのスイッチを入れる加藤。艇内の会話が録音されている。
郷『出やがったな』
南『まだ撃つな。2号を待って攻撃開始だ』
郷『怪獣の一匹や二匹、何ですか』
南『あっ、郷』
テープを止める加藤。
郷「すいません」
加藤「坂田さんが君の入隊を許してくれた時、私は正直言って心の中で手を合わせた。それほど君がほしかったんだ。だが、どうやら私の目は狂っていたようだ。君は作戦を無視して勝手な行動をとった。したがって隊員としての資格はない。ただちにやめてもらう」
郷「隊長」
加藤「坂田さんの所へ帰りたまえ」
南「隊長、郷は初めての出撃で気が動転していたんです。誰にでもあるミスじゃないですか」
加藤「郷のとった行動はミスではない。身勝手な思い上がりだ」
郷「わかりました。坂田さんの所へ帰ります」
出ていく郷。
南「郷」
加藤「ほっとけ」
南「でも隊長」
通路を歩いていく郷。
郷『おれはウルトラマンになれなかった。やめてマシンを組み立ててる方がいいんだ』

◎アイキャッチ。

◎ブティック。
アキがブティックで働いている。通りがけにのぞく郷。
店員「あら」
郷に気づくアキ。郷はあわてて立ち去る。
アキ「ママ、ちょっとお願いします」
ママ「いいわよ」
◎道路。
郷に追いつくアキ。
郷「おれ、MATやめてきちゃったよ」
アキ「ホント?」
郷「うん。アキちゃんまでガッカリすることないだろ」
アキ「うん。半分はガッカリだけど、後の半分はうれしいの。だって郷さんが帰ってきたんですもの」
◎坂田自動車修理工場。
アキ「兄さん」
郷「こんちわ」
アキ「郷さんね……」
坂田「加藤隊長から連絡があった。郷を返すと言ってきた」
郷「坂田さん。流星2号をつくりましょう。きっと優勝します」
アキ「賛成だわ」
坂田「やめろ」
アキ「だって、レースの優勝は兄さんの執念だったはずでしょ。5年前、優勝寸前にスピンして足をケガして……」
坂田「アキ!」
郷「坂田さん」
坂田を追う郷。
◎同・事務所。
郷「坂田さん。いったいどうしたんです。マシンのこととなると夢中になったあなたが」
坂田「おれはもう、おまえと組むつもりはないんだ」
郷「何ですって」
坂田「これから5年として、おまえはいったい、いくつになるかな。レーサーとしてはとうが立ちすぎている。組むんなら、おれはもっと若いやつと組む」
郷「それ本当ですか、坂田さん」
坂田「鈍いなあ、おまえも。その気がないんなら、何でおまえをMATへなんかへやるか」
郷「ちきしょう」
出ていく郷。
アキ「ひどいわ兄さん。あんまりよ」
坂田「アキ!今一番、郷に必要なことは、一人で考えることだ」

◎港。
子供たちが遊んでいる。
子供A「ウルトラマンだぞ。ビビビビビ」
近くで寝ころんでいる郷。
郷『おれは確かに思い上がっていた。ウルトラマンであることを誇らしく振り回そうとした。その前に、郷秀樹として全力を尽くし、努力しなければならなかったんだ』
郷の耳に怪獣の叫び声が聞こえる。

◎海底。
海底プラントを襲うタッコング。パイプラインにかみつき、石油を飲み出す。
◎調整室。
作業員A「おい。油圧が下がってる。第1ポンプを調べてみろ」
作業員B「よし」
◎MAT司令室。
岸田「隊長、もしかするとこれは……」
加藤「怪獣のしわざか」
岸田「やつは傷を負っています。どんなことをしでかすか」
加藤「よし、岸田、上野、偵察に行け」
両名「はいっ」
◎川崎港。
MATアローで調査する2人。
◎岸田機。
岸田「こちら岸田。川崎沖に相当多量の原油が浮上しています」
丘『了解。そのまま偵察を続行せよ』
岸田「了解」
◎川崎港。
海中より出現するタッコング。
◎岸田機。
上野「あっ」
岸田「こちら岸田。怪獣が出ました」
◎MAT司令室。
加藤「了解。すぐ現場へ急行する」
南「ようし」
加藤「君は残れ」
南「えっ、いや、私も行きます」
 加藤「ケガ人は足手まといになる。丘くん」
丘「はい」
出ていく2人。
南「隊長、隊長」
包帯をとって腕を曲げてみる南。
南「ようし」
◎川崎港。
港に上陸する怪獣。
◎岸田機。
上野「発射」
岸田「発射」
攻撃を加えるMATアロー。
◎工場。
 地上の加藤。
丘「隊長。地下の機関室に、作業員が閉じこめられたままになっているそうです」
加藤「よし、私が行く」
南「隊長」
加藤「南か」
南「私が行きます」
加藤「大丈夫か」
南「大丈夫です」
◎機関室。
建物が崩れ、通路がふさがれてしまう。
南「廊下はふさがれてしまった。他に出口は?」
作業員「あそこだけです」
ハシゴが見える。だが、不気味な震動が起こる。
◎川崎港。
 迫るタッコング。
◎機関室。
 ハシゴからオイルが流れこむ。
南「あれは何だ?」
作業員「オイルだ。オイルタンクがやられた」
南「くそう。出口なしか。よし、みんな行くぞいいか」
だが、全員煙にやられて倒れてしまう。
◎工場。
加藤「遅いなあ。南は」
◎川崎港。
港を破壊するタッコング。走る郷。
◎工場。
 丘「隊長、郷さんです」
加藤「必ず来ると思った」
◎機関室。
マンホールを開けてハシゴを降りる郷。
郷「南隊員。南隊員、大丈夫ですか。南隊員」
上野「郷か。この人たちを早く……」
郷「おい、しっかりしろ」
作業員をかつぐ郷。
◎川崎港。
 港は火の海となる。
◎工場。
加藤「郷」
郷「隊長」
かついだ作業員を降ろす。
加藤「よし」
郷「お願いします」
加藤「郷、これ以上は無理だ」
郷「最後まで、最後までやらしてください」
加藤「郷!」
◎機関室。
再び地下へ向かう郷。
郷「大丈夫か、しっかりしろ」
作業員をかつぐ。やがて地下にまで火が及ぶ。必死で火を消す郷。上空に光が輝き、郷は手をのばしてウルトラマンに変身する。

◎川崎港。
キックを加えるウルトラマン。さらにチョップを加える。
◎工場。
救出された南や加藤たちも見守る。
◎川崎港。
タッコングの口を開くウルトラマン。口からオイルを吹き出す怪獣。苦しむウルトラマン。怪獣に馬乗りになって、右手をもぎ取るウルトラマン。逃げるタッコングにスペシューム光線を当てる。爆発する怪獣。

◎坂田自動車修理工場。
坂田自動車工場へMATビハイクルで現れる郷と加藤。
次郎「わあ、かっこいい」
アキ「いらっしゃい」
郷「やあ」
次郎「すげえなあ」
加藤「坂田さん」
坂田「やあ」
加藤「今日はお礼にうかがいました」
坂田「お礼?」
加藤「ええ。あなたの所から戻った郷は、立派に立ち直ってました。もう非の打ち所のない立派なMATの隊員です」
坂田「そりゃよかった。ところで、私の方からもお願いがあるんですが」
加藤「ほう、何でしょう」
坂田「休暇の時でけっこうです。郷を貸してください。流星2号をつくりたいんです」
郷「坂田さん。本当ですか、それ」
坂田「うん。おれたちの夢なんだ。大事に育てよう」
アキ「よかったわね」
坂田「バカ、泣くやつがあるか」
郷「だってうれしいんだ。うれしいんですよ」
ハンカチを渡すアキ。
加藤「承知しました、坂田さん。レースの日には私も応援に行きますよ」
坂田「よろしくお願いします」
笑い出す一同。
MATビハイクルで去る郷と加藤。
アキ「次郎。お小遣いあげるわ」
次郎「ええっ。チャッカリ屋のねえちゃんが珍しい」
アキ「はい」
次郎「ああ」
アキ「一番星を見つけたからよ。ほら」
次郎「ホントだ」
坂田「幸せなんだなアキは」
アキ「あら、どうして?」
坂田「一番星は、幸せな人間にしか見えないと言われているんだ」
アキ「幸せよ。とっても」
上空に笑い顔の郷が見える。


第3話 『恐怖の怪獣魔境』

◎霧吹山。
N「霧吹山。霧吹山は魔の山とよばれ、原因不明の転落事故で死ぬ者が続出した。それでも勇気ある若者は、冒険を求めて霧吹山を目指すのであった」
岩を登る2人の若者。
若者A「おおい。霧が出たぞ。はやいとこ、登っちまおう」
若者B「ああ。OK」
頂上にたどり着く若者B。
若者B「すごい霧だなあ」
若者A「ちくしょう。せっかく登ったっちゅうのに」
頂上につく若者A。
若者A「やったあ」
その時、奇妙な音が聞こえる。現れる怪獣サドラ。
若者B「うわーっ」
驚いて転落する若者B。

◎霧吹山・上空。
上空を飛ぶMATアロー。
N「そのころ、郷隊員と上野隊員は、霧吹山近くの上空をパトロール中だった」
怪獣の鳴き声を聞く郷。
郷「おい。何か聞こえないか?」
上野「ん?何が?」
郷「怪獣がほえるような。」
上野「おいおい。ここは4000mの上空だぜ」
郷「うん。それもそうだ。あっ!怪獣だ!」
上野「何だって!」
下界を見る上野。
上野「何にも見えやしねえじゃないか」
郷「もっと接近します」
上野「よし」
加工するMATアロー。機体が揺れる。
上野「乱気流だ。こっぱみじんにされちまうぞ。早く上昇しろ」
上昇する。
郷「よし。こうなったら写真だ」
上野「怪獣の幽霊でも見たのかね。ノイローゼだよ。怪獣ノイローゼ」

◎MAT司令室。
上野「おれの目は両方とも1.5だ。見間違うなんてことはない。怪獣なんていませんでした」
郷「いや、確かにいたんだ」
加藤「郷が見たという同じ時刻ごろ、城南大学の学生が二人転落死している。原因は落石によるものと断定された」
指令室に入ってくる丘。
丘「郷隊員が霧吹山でとったスライドができたわ」
スライドをセットする丘。
丘「準備OKです」
スライドを見る。
上野「見ろ!カメラにとったってこの通りじゃねえか」
郷「あっ!これ、これですよ。こいつが怪獣の尻尾です」
加藤「そういえば、怪獣の尻尾のようでもあるな」
上野「いや。こいつは岩肌ですよ。隊長」
南「うん。岩肌にも見える」
岸田「郷は、霧吹山の伝説に毒されてるんじゃないのか」
郷「伝説?」
岸田「霧吹山には昔から龍がいて、山へ入った者はみな食われてしまうというんだ。その先入観で見るから、木とか岩が怪獣に見えるんだ」
南「ははは。幽霊の正体を見たりか」
郷「いや。おれはこの目で確かに」
丘「よく見ると怪獣の尻尾に見えるわ」
加藤「よし。南、岸田、上野。それに郷。これから霧吹山へ行け」
各人「はいっ」
ふくれる上野。
上野「隊長!」
加藤「君を信用しないわけではない。だが、10のうち1つの疑問があれば、それを調査し解明するのがMATの任務だ」
上野「ちぇっ」

◎霧吹山。
岩を登る隊員。
南「いいか。ここは落石事故の多いところだ。十分に気をつけろ。いくぞ」
郷「はい。あっ危ない」
落石が起こる。
岸田「がんばれ。上野」
◎同・頂上。
頂上につく隊員。上野は腕を負傷している。
南「いやあ。霧吹山とはよく言ったもんだ」
上野「どこまで行ったっていやしませんよ」
岸田「この視界じゃ、道に迷いこむ恐れもあるぞ」
南「おい。痛むか」
上野「おれは大丈夫です。もし怪獣がいると思うんでしたら、どこまでもつきあいますよ」
岸田「どうする南」
南「よし引き上げよう。郷、行くぞ」
その時、郷の耳に怪獣の声が聞こえる。
郷「聞こえる。怪獣の声だ」
南「何!怪獣の声なんかしないじゃないか」
上野「いつもこの調子なんだから」
郷「いや。ほら、聞こえるでしょう」
上野「バカバカしくなってきたぜ」
岸田「南」
南「よし。行こう」
郷「待ってください。この先にいるんです。南隊員。岸田隊員」

◎MAT司令室。
郷「本当に聞こえたんです。怪獣ですよ。ありゃ」
加藤「郷だけに聞こえたっていうのも不思議な話だ」
上野「幻聴ってやつですよ」
郷「いや。あれは怪獣の声だ」
岸田「郷!みっともないぞ。子供みたいにいつまで肩意地はってるんだ」
郷「だって……」
岸田「上野ばかりでなく、おれや南の目や耳も信用できないというのか」
郷「おれだってウソをついたみたいでいやです。隊長。おれを霧吹山へ行かせてください。確証をつかんできます」
加藤「待て!」
立ち上がる加藤。
加藤「南」
南「はあ」
加藤「君の意見は?」
南「はあ。霧はスクリーンの役目をします。光線の角度によっては、山影や飛行機の影が、怪獣に見える時もあります」
加藤「うん」
南「郷の耳にだけ聞こえた声は、おそらく谷をわたる風の音かと……」
郷「そんなあ」
加藤「もういい」
郷「しかし隊長」
加藤「今夜は遅い。みんな休め」
指令室に一人残る郷。

◎坂田自動車修理工場。
坂田「パワーユニットは2リッター。ミクニインデクション装置つきといきたいんだ」
郷「ええ」
郷の耳に怪獣の声が聞こえる。
郷『おれは間違っていない。確かにあれは怪獣だ』
坂田「どうしたんだ」
郷「え?いえ……」
坂田「今日のおまえは変だぞ」
郷「ウイングをつけたらどうでしょう」
坂田「うん。となるとこのスノーコーニツはとっぱらうことになるな」
郷「そうですねえ」
かけよる次郎。
次郎「郷さん。MATの話聞かせてくれよ。怪獣と戦う時ドキドキする?」
郷「ああ」
坂田「うるさい。勉強まだすんでないだろ」
次郎「勉強しにきたのさ。おれ、将来MATに入るだろ。そのためにもいろいろ知っておきたいんだ」
坂田「いうこと聞かないとこうだぞ」
次郎をかつぎあげる坂田。
次郎「いやだよ。何すんだよ。ひどいよ。こんなところに入れて」
タイヤの中に次郎を入れる坂田。
郷「はっはっは」
郷の耳に怪獣の声が聞こえる。
郷『おかしい。霧吹山で聞こえた声だ』

◎霧吹山。
N「そのころ、加藤隊長は単身霧吹山へ登っていた。霧吹山の怪獣をめぐって対立する郷と他の隊員たちとのわだかまりをなくすため、自分の目で確かめたかったのだ」
削れた岩肌に気づく加藤。怪獣の声に気づき見上げる。現れる怪獣サドラ。岩を崩す。逃げる加藤。足に岩が当たる。
加藤「こちら加藤。加藤。本部応答せよ。本部応答せよ」
電波が乱れて通信できない。
加藤「狂ってる。この辺一帯の岩石は、磁石になってるんだ」
洞窟に逃げこむ加藤。

◎坂田自動車修理工場。
怪獣の声が耳からはなれない郷。
坂田「おい」
郷「すみません。怪獣の声が聞こえたもんですから。でも、もう大丈夫です」
坂田「今日はもうやめた」
設計図をしまう坂田。
郷「坂田さん」
次郎「兄ちゃん楽しみにしてたんだよ。明日は郷さんが来るって」
事務所まで坂田を追う郷。
◎同・事務所。
郷「おれの休みは今日しかないんです。続けましょうよ坂田さん」
ギターを持って入ってくるアキ。
アキ「郷さん。ここんとこ教えて。ここのDmの後んとこ」
郷「悪いけど、そんな気分じゃないんだ」
アキ「ごめんなさい。後にするわ」
坂田「アキ」
アキ「もういいの。おじゃまさまでした」
坂田「教えてもらえよ」
アキ「本当にいいの?兄さん」
坂田「ああ」
郷「坂田さん」
坂田「おまえは疲れてんだよ。こいつの顔はこんなチンチクリンだが、怪獣を見てるよりは気が休まるぞ」
アキ「チンチクリンなんてひどいわ。これでも横顔にはちょっと自信があるんですからね」

◎アイキャッチ。

◎空き地。
ギターを引くアキ。
郷「違うよ。そこはラーラララー」
郷『どうして怪獣の声が聞こえてきたんだろう。何か悪いことでも起こらなければいいが』
立ち上がる郷。
郷「帰ろう。こんなムダをしてる時じゃない」
アキ「郷さんにはムダでも、私にはとっても大切な時間よ。一年に一度あるかないかの貴重な時よ」
郷「アキちゃんを無視したわけじゃないんだ」
アキ「わかってるわ。郷さんの頭の中は流星号やMATのことでいっぱいだってことくらい。でもちょっと、いえ5分でいいわ。私と一緒に歌ってちょうだい」 郷「わかった。だからそんな悲しそうな顔すんなよ」
トランシーバーが鳴る。
郷「はい。郷です」
丘「加藤隊長の消息が不明です。ただちに本部に集合してください」
郷「了解」

◎MAT司令室。
司令室に入る郷。
郷「隊長が行方不明だって?」
丘「ええ。朝出かけたっきり。定時交信も入ってこないの」
郷「うん。霧吹山だ」
上野「何だって?」
郷「霧吹山へ行ったんですよ。隊長は」
岸田「証拠でもあるのか」
郷「そんなものありません。でもきっとそうです。南隊員、さっそく救助隊を」 上野「おい、郷。隊長が霧吹山へ行ったって証拠は何一つない。おまえ一人の勝手な推測だけで、またあんな所へ行かせようっていうのか」
 南「隊長は物事をいい加減に判断する人ではないから、もしかすると自分の目で確かめにいったのかもしれないなあ」
出て行こうとする郷。
岸田「どこへ行くんだ」
郷「霧吹山です」
岸田「バカ。この暗い中をどうやって登るつもりだ」
郷「何とか行ってみます」
南「よし。おれが送ってやろう」

◎霧吹山・上空。
霧吹山上空へ向かうMATジャイロ。乱気流で機体がゆれる。
◎南機。
南「やはり着陸は無理だ。朝を待って登った方がいい」
郷「パラシュートで降ります」
南「やめろ!きさま死ぬつもりか」
郷「とても朝まで待てません」
南「郷、郷!郷!」
パラシュートで降りる郷。
◎霧吹山。
山を登る郷。
郷「隊長!」
岩につまづく郷。
郷「隊長!」
ヘルメットをとる郷。横になる。
郷『隊長は、ここへ来なかったのだろうか』
回想する郷。
少年時の郷「お父さん」
N「郷秀樹の父は山が好きだった。大自然の息吹を愛した。しかし、郷秀樹が13の時、仲間と二人山へ登ったまま行方不明になった。10日たっても発見できず、捜索は打ち切られることになった」
郷『その時、父さんは100m先の岩影で救助隊を待っていた。負傷して動けなかったのだ。あと100m先を捜してくれたら、父さんは助かったに違いない。隊長もきっとこの山のどこかにいる。きっといる』
ヘルメットをする郷。
◎同・洞窟。
足を引きずりながら洞窟から出てくる加藤。洞窟の外にサドラが待っている。迫る怪獣。洞窟の中に逃げる加藤。MATシュートを撃つ。立ち去る怪獣。隊長を探す郷。洞窟の前を通る。
郷「隊長!隊長!」
加藤「郷!ここだ」
郷「隊長!しっかりしてください」
加藤「来てくれたのか」
郷「ええ。きっと霧吹山だろうと思ってました。来てよかった」
加藤「バカもの。こんな恐ろしいところへ一人でくるやつがあるか」
郷「おれはある賭をしたんです」
加藤「ん?」
 郷「隊長がおれが信じる通りの人なら、きっと霧吹山へ行っている。隊長はやっぱり、おれの思った通りの人でした」
加藤「私は隊長として当然なことをしたまでだ」
郷「MATへ入隊してよかった」
足が痛む加藤。
郷「しっかりしてください。さあ」
加藤「すまん」
加藤に肩を貸して洞窟を出る郷。外には何もいない。
加藤「郷。今だ」
岩を崩して別の怪獣デットンが現れる。
郷「ああっ!」
加藤「郷!」
岩影に隠れる二人。MATシュートを撃つ。
郷「隊長」
加藤「うん」
逃げる二人。追う怪獣。
加藤「ここは私にまかせろ。郷、早く逃げろ」
郷「何を言うんです」
加藤「二人は無理だ。一人なら助かる」
迫る怪獣。
郷「くそう」
手流弾を投げる郷。
郷「隊長。今です」
加藤「よし」
逃げる二人。
郷「ああっ!」
反対側から現れるサドラ。洞窟へ逃げる二人。二匹の怪獣はお互いに間合いをとって激突する。
郷「しっかり」
加藤「大丈夫だ」
もみ合う怪獣。岩が崩れ、郷が下敷になる。
郷「早く本部に連絡を」
加藤「よし。郷、ここで待ってろ。すぐ戻る」
場を離れる加藤。怪獣は戦うのをやめ、共に加藤の方へ向かう。
郷「隊長。隊長!」
岩をどけようとする郷。ウルトラマンに変身する。

◎霧吹山。
二匹の怪獣の前へ飛び降りるウルトラマン。サドラにつかみかかり、デットンをキックする。倒れるデットン。サドラを投げようとするが、振り払われる。二匹の怪獣にはさまれるウルトラマン。だがすばやくかわし、二匹の怪獣を激突させる。二匹の怪獣の頭をかかえるウルトラマン。サドラをキックで倒す。デットンにチョップを加えるが、反撃される。デットンにスペシューム光線を与えようとするが、後ろからサドラに殴られるウルトラマン。倒れるウルトラマン。けるデットン。ウルトラマンののどをハサミでつかむサドラ。
N「ウルトラマンのカラータイマーが青から赤に変わると、ピンチの印だ。あと30秒で動けなくなってしまう」
キックでデットンを払うウルトラマン。さらにキックでサドラも払う。よろめくサドラ。突進してくるサドラの角をつかみ、キックするウルトラマン。倒れるサドラ。振り返り、逃げるデットンにスペシューム光線を与える。爆発するデットン。さらに、サドラへ八つ裂き光輪を与える。首が落ち、倒れるサドラ。飛び去るウルトラマン。

◎同・洞窟。
郷の所へ戻る加藤。だが郷がいない。
加藤「郷!」
後ろから現れる郷。
加藤「大丈夫か」
郷「隊長の方こそ」
加藤「何。怪獣ごときには負けはせんよ。はっはっは」
二人を救助にきた隊員を見つける郷。
郷「あっ、おーい!」
南「あっ、隊長」
隊員たち「隊長!」
丘「大丈夫ですか」
加藤「大丈夫だ」
上と下とで手をふる隊員たち。
第4話 『必殺!流星キック』

◎MAT基地。
N「怪獣現わるの連絡がMATに入った」
◎MAT司令室。
加藤「いいか、みんな聞いてくれ。今、怪獣がいるのはここだ。この2km先には第1原子力発電所がある。こいつをやられたら東京の電力は完全にストップ。大混乱が起こる。何としても怪獣をやっつけるんだ。いいな」
隊員「はいっ」
◎MAT基地・格納庫。
出撃するMATアロー。
◎上空。
 隊長機にVサインを送る郷。
◎山中。
 怪獣に攻撃を与える。怪獣に接近しすぎる郷。
◎郷機。
郷「ああっ!」
◎山中。
怪獣が口から吐く光線にやられるアロー。
◎加藤機。
上野「郷がやられた」
◎山中。
墜落するアロー。現れるウルトラマン。

怪獣にキックを与えるウルトラマン。倒れるが立ち上がる怪獣。怪獣の角へチョップするウルトラマン。だが、怪獣の角からバリアーが生ずる。ダメージを受けた手を押さえるウルトラマン。突進する怪獣。すばやくかわす。振り返る怪獣。間合いをとるウルトラマン。突進する怪獣。首をつかんで投げるウルトラマン。怪獣の角をつかみにかかる。だが、怪獣の角から光線が発せられ、手がしびれる。怪獣の突進を受け、倒れるウルトラマン。角でせめる怪獣。キックで何とか逃れるウルトラマン。光線を吐く怪獣。手で受け止めるウルトラマン。スペシューム光線を与える。だが、角から発するバリアーで防がれてしまう。向かってくる怪獣。八つ裂き光輪を与えるウルトラマン。これもはじかれる。再びスペシューム光線を与える。だが、効き目がない。
N「ウルトラマンのエネルギーは3分しか続かない。エネルギーが切れると動けなくなってしまう。カラータイマーが青から赤に変わるとウルトラマンの危険信号だ」
向かってくる怪獣。飛びかかるウルトラマン。怪獣は角から光線を発する。苦しむウルトラマン。もがくウルトラマンに突進する怪獣。足に角が刺さる。倒れるウルトラマン。突進する怪獣。踏みつぶされる。チョップを与えるが、あまり効果がない。何とかはいでて立ち上がるが、胸に角の攻撃を受け倒れるウルトラマン。消えるウルトラマン。

◎加藤機。
上野「ウルトラマンが……」
加藤「信じられん。無敵のウルトラマンがやられてしまうなんて。南、岸田。ただちに郷を救出に向かってくれ」
南『了解』
◎山中。
地中に逃げる怪獣。

◎病室。
病室の郷。
郷『ウルトラマンが負けた。それにしてもバリアーで防御するなんて何て恐ろしいやつだ』
立ち上がる郷。足の傷が痛み倒れる。
郷「ちくしょう。いったい、いったいどうすりゃいいんだ」
看護婦が入ってくる。
看護婦「まあ。一週間は絶対安静です」
郷「冗談じゃない。一週間もこんな所に寝てられるか」
立ち上がる郷。だが、やはり傷が痛む。
郷「ああっ」
看護婦「ほら。やっぱり寝てなきゃダメなんですよ」
郷「ちくしょう」

◎山中。
怪獣が現れた地点を調査する隊員の報告を待つ加藤。
加藤「加藤だ」
南「MATアロー2号の機体から多量の放射能が検出されました。怪獣はおそらく放射能光線を吐くものと思われます」
◎MAT司令室。
加藤「放射能光線?」
上野「そうか。それで原子力発電所を襲ったんだ。やつはウランが大好きなんだ」
加藤「そうかもしれん。南、怪獣はまた第1原子力発電所を襲うだろう。厳重に警戒してくれ」

◎山道。
警官に道をたずねるアキと次郎。
 警官「国連病院なら、すぐそこですよ」
アキ「どうも」
警官「20分くらいですから。じゃ、気をつけてね」
自転車で去る警官。
アキ「あと20分も歩くんだって」
次郎「ざまあみろ。郷さんに会うからって新しい靴買ったりするからだよ」
アキ「あーあ。もう我慢できないわ。ああ痛い」
靴を脱いではだしで歩き出すアキ。後ろからMATビハイクルが来る。
丘「お乗りになりません?」
次郎「うわー。かっこいい」
丘「どうぞ」
アキ「すいません」
 乗りこむ二人。
◎病室。
何度も立ち上がる練習をしている郷。ドアが開いてアキたちが入ってくる。
次郎「郷さん」
郷「よう。来てくれたのか」
アキ「思ったより元気そうだわ」
郷「なあに。このくらいの傷じゃへこたれんよ」
次郎「はい、これおはぎ。ねえちゃんが早起きしてつくったんだよ」
郷「ああ、こりゃありがたい。さっそくいただこうかな。こりゃうまそうだ。丘隊員、その後怪獣の動きは?」
丘「今の所、別に異常は」
郷「やつはきっと出てくる」
丘「その後の調査結果……」
郷「仕事の話なんだ。ちょっとはずしてくれないか」
アキ「帰ります。あたしたち」
郷「すまんがそうしてくれ」
アキ「次郎。帰りましょ」
丘「もうしわけありません」
アキ「いいえ」
次郎「郷さん、このおねえちゃんが好きになったんだろ」
郷「なあにを言うんだ。こいつう」
次郎「そうに決まってらあ」
アキ「次郎。そんなこと言うもんじゃないの」
次郎「だってねえちゃん、電車賃出してはるばる来たんだよ」
アキ「いいのよ。お大事にね」
郷「うん」
次郎「ん」
花を渡す次郎。
次郎「ああ」
出て行く二人。
郷「怪獣について何か?」
丘「その後の調査結果、放射能光線を吐くことがわかりました」
郷「放射能?となると次は第1発電所だ」
丘「隊長もそれを心配なさっています」
郷『よし。今度出てきたら何としても……』

◎空き地。
一人でギターをひく秋。
坂田「アキ!」
次郎「ねえちゃん。腹へったよ。早くご飯にしてくれよ」
アキ「もうそんな時間?ごめんごめん。すぐつくってあげるわね」
坂田「どうしたんだ?アキ」
アキ「どうもしないわ」
次郎「ねえちゃんショックなんだ。な!」
アキ「何が?」
次郎「郷さんにふられたから」
アキ「次郎!」
次郎「べーだ」
坂田「アキ。そんなことを気にしてたのか。郷ってやつはそんな薄っぺらな男じゃない。どうやったら怪獣を倒せるか、そのことで頭がいっぱいなんだよ」
アキ「わかってる」
坂田「それならいいんだ」
アキ「おいで次郎」

◎病室。
病室で眠る郷。夢にうなされている。怪獣が角から発する光線を受けるウルトラマン。足に角が刺さる。怪獣の体当りで倒れるウルトラマン。
郷「はっ!夢か。そうだ。やつを倒すにはバリアーを飛び越せばいいんだ」
怪獣の声が聞こえる。
郷『どこかでやつがほえている』
◎山中。
地中より現れる怪獣。再び地中へ消える。
◎同・翌日。
放射能測定をするMAT隊員。
岸田「隊長、やっぱり放射能です」
加藤「やつのしわざに間違いないな。やはり第1発電所に接近している」
トランシーバーが鳴る。
加藤「私だ」
丘「大変です。郷隊員が病院から姿を消したそうです」
加藤「何だって?」

◎坂田自動車修理工場。
MATビハイクルで現れる加藤。
加藤「やあ」
坂田「やあ。これは隊長」
加藤「郷は来てませんか?」
坂田「いえ。郷が何か?」
加藤「病院からいなくなったんです」
坂田「え……。アキ!」
アキ「はあい」
坂田「次郎!おい」
アキ「こんにちわ」
加藤「やあ」
坂田「郷を見かけなかったか?病院から姿を消したそうだ」
アキ「ええ?!あの傷でどこへ?」
加藤「連絡がつきましたら戻るように言ってください。隊のことは心配するなって」
坂田「はあ。そう伝えます」
加藤「はあ。怪獣が動き始めたんです。それじゃあ私はこれで」
坂田「どうも」
去る加藤。
次郎「どこ行っちゃったんだろう、郷さん」
坂田「待てよ。もしかするとあそこへ」
アキ「どこ?どこなの?兄さん」
坂田「平井峠」
アキ「平井峠?」
坂田「間違いない。アキ、おまえが行け。そこで郷が何をしてるかその目で確かめるんだ」

◎アイキャッチ。

◎平井峠。
N「そのころ郷は、平井峠で自分をきたえていた。ウルトラマンが勝てないのならおれが勝ってやる。そのためにはまず足腰をきたえ、そして怪獣キングザウルス3世のバリアーを飛び越すだけのジャンプ力をつける必要がある。郷はそう考えたのだ」
大木をかつぐ郷。大木を落とす。かつての自分と坂田が目に浮かぶ。
坂田「もっと気合いを入れて走らんか。どうしたんだ。その程度の体力じゃ、とてもフォーミュラのレースには勝てんぞ。立つんだ郷。立つんだ。立つんだ」
再び立ち上がり大木をかつぐ郷。テントを怪獣に見立てて飛び越す練習をする郷。テントを飛び越すが、足の痛みに倒れる。
郷『もっとジャンプ力をつけなきゃだめだ』

◎上空。
N「加藤隊長を初めとするMATは、恐るべき地底怪獣キングザウルス3世の出現に備えて特別訓練をしていた。バリアーに邪魔されないために真上からの攻撃を考えたのである」
飛行訓練を続けるMATアロー。

◎平井峠。
平井峠への道を行くアキと次郎。
次郎「こんなとこで郷さん何やってんだろう」
アキ「さあ……」
次郎「ねえちゃん、郷さんだ。郷さーん!」
アキ「次郎」
次郎を座らせるアキ。
郷『飛び越えてみせるぞ。必ず』
土手から土手へ飛ぶ郷。
郷「たあー!」
アキ「あ!」
 だが一歩足らず、土手の下へずり落ちる。足を押さえる郷。
 郷「くそう……」
 怪獣の姿が目に浮かぶ。
 郷「こい!」
再び土手から土手へ飛ぶ郷。うまく着地できる。
郷「やった!やったぞお!やったぞお!」
帰途につくアキと次郎。
次郎「ねえちゃん、何で郷さんあんなことするんだ?」
アキ「怪獣に勝つために自分をきたえ直しているのよ。よっぽど強い精神力じゃなきゃできないことだわ」
次郎「へえー」
アキ「私ってバカね」
次郎「どうしてバカなんだ?ねえちゃん」
アキ「どうしても。次郎、かけっこしよう。ふふふ」
次郎「いったいどうなっちゃってんのかね?待ってよ!ねえちゃん!ねえちゃん!」

◎第1原子力発電所。
N「第1原子力発電所。怪獣の襲来に備えて厳重なパトロールが続けられていた」
MATビハイクルから下りる隊員。
南「異常ないか?」
警備員「ありません」
南「了解」
岸田「大丈夫らしいな。定時交信の時間だ」
マイクをとる岸田。雑音が入る。
岸田「ん?」
南「おい、どうした?」
岸田「おかしいな」
無線の様子がおかしい。そして怪獣の声が聞こえる。
南「あ!」
岸田「あ!」
現れる怪獣。
南「こちらパトロール、こちらパトロール。本部応答願います」
◎MAT司令室。
出動する加藤たち。
◎平井峠・上空。
 現場へ急行するMATアロー。
◎平井峠。
 下で見ている郷。
郷「MAT編隊だ」
 ヘルメットを持ってかけだす郷。
◎第1原子力発電所。
 怪獣に攻撃を加えるMATアロー。発電所に近づく怪獣。
◎加藤機。
丘「あ!郷隊員が」
加藤「バカもの!無茶しおって」
◎第1原子力発電所。
怪獣に向かってジャンプする郷。
郷「たあー!」
怪獣にはじかれる郷。ウルトラマンに変身する。

間合いをとるウルトラマン。すべての光線がはねかえされた前回の戦いを思い出している。
◎加藤機。
丘「なぜあんなに離れているの?」
加藤「さあ……。一度敗れているからな」
◎第1原子力発電所。
回りにバリアーを張る怪獣。
N「カラータイマーが赤に変わった。またしてもウルトラマンは負けるのだろうか。あと30秒で動けなくなる。負けるな!ウルトラマン」
怪獣に向かって走り、飛び上がるウルトラマン。上から怪獣の角へキックし、角を折る。バリアーがとける。ふりかえる怪獣。キックし、チョップを入れるウルトラマン。首をつかんで持ち上げ、投げる。立ち上がる怪獣。逃げ出す。スペシューム光線を与えるウルトラマン。倒れる怪獣。飛び去るウルトラマン。

◎加藤機。
加藤「郷を救出しよう」
◎第1原子力発電所。
着陸するMATアロー。倒れている郷。かけつける隊員。
南「隊長!あ、郷!郷!しっかりしろ!」
加藤「郷!」
郷「隊長!」
岸田「郷!」
上野「郷!」
加藤「よくやった。立派だったぞ」
上野「でもウルトラマンが来なかったらやばかったぞ」
加藤「いや、今日はウルトラマンだけの活躍ではない。我々が心を一つにして戦ったおかげだ。上野、いわば君もヒーローの一人だよ」
上野「おれもですか?」
加藤「そうだ」
 上野「うー」
加藤「ウルトラマンと我々MATとのチームワークの勝利だ。これで東京も停電せずにすんだ。さあ行こう!」
     第5話  『二大怪獣東京を襲撃』

◎工事現場。
作業員「3号車、発射オーライ」
トラックから大きな岩石が落ちる。通りかかる次郎たち。
次郎「こんな所に貝殻がある」
友人A「この辺も昔は海だったからな」
 次郎「まてよ。この貝、見たことがあるぞ。そうだ。アンモン貝の化石だ」
友人B「アンモン貝って何だい?」
次郎「今からざっと1億年も昔に生きていた貝だ。中性代、ジュラ紀のものと思われる」
友人B「坂田は怪獣に強いからな」
次郎「えへん。それほどでもねえけどよ。まてよ。この貝がアンモン貝だとすれば、この物体は何だろう」
作業員「こらっ。ここは危ないから、あっち行って遊びな」
次郎「これ、怪獣の卵かも知れないんだ」
作業員「怪獣の卵だと?」
次郎「おれ、MATに連絡してくる」

◎MAT基地。
郷「怪獣の卵?」
◎電話ボックス。
次郎「そうだよ。MATとしてもほっとけないと思うんだ」
郷『場所は?』
次郎「地下ショッピングセンター近くの工事現場」
◎MAT基地。
郷「よし、わかった。ありがとう」

◎工事現場。
かけつけるMATビハイクル。
次郎「これ」
郷「ああ」
 次郎「郷さん、これだよ」
作業員「怪獣の卵なんて、ホントですかねえ?」
岸田「付着しているものが、アンモン貝の化石であることは確かです」
 次郎「でしょ」
スコップで叩く岸田。
岸田「こりゃ岩だな」
郷「わかるんですか」
岸田「見ろ。ビクともしてない。そんな卵ってない。ちょっとどいて」
マットシュートで撃つ岸田。
岸田「念のためにマットシュートで焼いておきました。ご安心ください」
 作業員「やっぱり、ただの岩だったんですね」
岸田「じゃあ、失敬」
郷「待ってください」
岩に耳を当てる郷。
 岸田「おい。何やってるんだ」
 郷「岸田隊員、この岩石もっと調べる必要があるんじゃないでしょうか」
岸田「その必要はない。さあ行くぞ」

◎MAT司令室。
岸田「郷。おれの処理の仕方が不満なのか」
郷「もっと慎重な配慮が必要だったと思います。マットシュートで撃つだけでよかったかどうか」
岸田「じゃあ、戦車でも出動させろと言うのか」
郷「そうではありません。同じ処理をするにしても、もっと科学的な調査、分析が必要だったんじゃないでしょうか」
岸田「たかが石ころ一つをあっちこっちもって回れと言うのか」
郷「必要があればそうすべきです」
岸田「何?」
加藤「おい。二人ともそういきりたつな。いいかね。我々の仕事は、即断即決、臨機応変に対処しなけれればならん局面が多い。その場合、隊員一人一人の判断を信頼するしかない。岸田はその物体を無害なものとして判断した。私は岸田の判断を信じる。おまえも信じてやれ」
岸田「そんなにおれが信用できなければ、自分で行って調べろ」
南「岸田。そう、ムキになるな」
警報が鳴る。
丘「隊長。第2採石場で異常な地震が続いているそうです」
加藤「南、上野。偵察に行け」
両名「はい」

◎第2採石場。
崩れる採石場。その奥に赤い光が見える。そして中から怪獣が現れる。到着するマットジャイロ。
◎南機。
南「いやあ。すごい砂塵だなあ」
上野「何にも見えねえや」
 上野「何でしょうね。怪獣だ!」
南「こちら南。第2採石場に怪獣が出現しました」
◎第2採石場。
怪獣に攻撃を加えるマットジャイロ。
◎南機。
上野「あっ、来た」
◎第2採石場。
かけつけるマットアロー。
◎岸田機。
南『MN爆弾来たか。よし、ドカンとぶちかましてやれ』
岸田「作業員の避難は?」
南『全員、無事避難したとの報告があった』
岸田「よし。そうだ。こいつはグドンだ」
郷「グドン?MN爆弾をかましましょう」
岸田「なるだけ正面に向かって接近する。顔面のあたりを狙って発射しろ。慎重にな」
郷「了解」
岸田「おれがよしと言うまで撃つな」
郷「了解」
岸田「さあ、行くぞ。もっと接近してからだ。まだまだ」
地上に少女の姿を見つける郷。
郷『発射しちゃダメだ』
岸田「発射!どうして発射しない。郷!発射しろ!」
郷「ダメです」
岸田「バカやろう!なぜ発射しない」
郷「子供がいたんです」
岸田「どこに?」
郷「あそこです」
岸田「何を寝ぼけてるんだ。誰もいやしないじゃないか」
郷「本当にいたんです」
南『おい。何ボヤボヤしてるんだ』
地中へ逃げるグドン。

◎MAT司令室。
岸田「郷はおれに反感を持ってた。岩石の一件以来、おれに反発する機会を待ってたんだ」
郷「違います!おれはホントに……」
上野「おれは郷を信じる。一瞬子供が危ないと思った。そりゃ怪獣を逃がしたのは残念だけど。しかし郷のとった処置も正しいと思います」
岸田「そんなきれいごとでごまかそうとしてもそうはいかんぞ。郷はおれ個人に対する反発から、MATとしての任務を怠ったんだ。隊長、前線において今日のようなことが起こると、今後任務をすみやかに遂行することはできません。郷に対する断固たる処置をお願いします」
南「おい岸田。何もそこまで」
岸田「いや、この際キチンとしておいた方がいいんだ」
郷「おれは懲罰されてもかまいません。しかし、パトロール中の岸田隊員の判断は甘かったと思うし、それにおれは今でも採石場で子供を見たという確信があります」
 岸田「きさま!」
加藤「岸田!やめろ!郷。君は今日、岸田の命令にそむき、怪獣を撃ち損じた。したがって、3日間の自宅謹慎を命ずる」
上野「それはひどい」
岸田「隊長は決裁をくだされた。郷はそれにしたがえばいいんだ」
一礼して出て行く郷。
上野「郷!」
丘「隊長、第5農場が大地震に!」

◎第5農場。
男「何か床が持ち上がるように揺れたんです。するとみるみる……」
上野「おかしいな。地震観測所ではその時間に地震は記録されてないって言うんですがね」
加藤「ということは、地震はこの農場を中心に極めて小さな地域だけに起こったことになるな」

◎工事現場。
郷「こんちわ」
作業員「やあ」
郷「ここにあった岩石は?」
作業員「怪獣の卵なら、あの穴の中だよ」
郷「はあ」
郷「この岩石おれに預けてください。もう一度調べて見たいんです」
作業員「そんなこと言ったって、もう埋まっちまってるんだから」

◎坂田自動車修理工場。
郷「こんにちわ」
坂田「さえない顔をして。だいぶ謹慎がこたえているようだな」
郷「どうしてそれを」
坂田「加藤隊長から連絡があった」
郷「おれは確かに見たんです。それを……くそう」
坂田「おれにも経験がある。小学校4年の時だったかなあ。おれは職員室の窓ガラスを割ったというので廊下に立たされた。いくらおれじゃないと言っても信じてくれないんだなあ。そこでおれは、一週間学校に行かずに抗議した。とうとう一週間目に、真犯人のガキ大将が名乗りでたわけだ。スパナ」
坂田「少女を見たんなら、どこまでも見たと押し通すべきだ。3日や4日の謹慎くらったって、胸を張ってればいいよ」
郷「ええ。そうします」
アキ「あらっ、郷さん来てたの?」
郷「やあ」
アキ「ちょうどよかったわ。そこのショッピングセンターまでつきあって」
郷「女の買物は長いからなあ」
友人A「アキちゃんお給料もらったんです。それで郷さんにシャツ、プレゼントしたいって。ですから、アキちゃんといてあげてください」
郷「せっかくだけどおれ、3日間の謹慎中なんだ。むやみに工場から出ちゃだめなんだ。すまん」
アキ「しょうがない。じゃあこの二人で我慢するか」
友人A「あら?二人って私たちのこと?」
友人B「許せないこと言うわね」
友人A「ねえ」
アキ「ごめん。思わず出ちゃったんだ。さあ、行きましょ」
地震が起こる。
アキ「この頃地震が多いわね」
 友人A「うん」
郷「おい。アキちゃん」
アキ「行ってくれるの?」
郷「そこのショッピングセンター行くのやめろよ」
アキ「あら?どうして?」
郷「別に。そのう。ただ、そんな気がするんだ」
アキ「郷さんにあうサイズ、その店でしか売ってないもん。普通サイズじゃおヘソが出ちゃうしね。行こ」
郷『あの埋められた岩石……』

◎アイキャッチ。

◎ショッピングセンター。
アキ「ねえ、これどうかしら」
友人B「いいんじゃない」
アキ「これください」
店員「はい。ありがとうございます」
アキ「すみません」
地震が起こる。
友人A「きゃあ、恐い」
アキ「早く」
◎地下街。
逃げる客。
男「火事だ!火事だぞ!」
アキ「煙に巻かれたらおしまいよ。急いで!」
引き返すアキたち。生き埋めになる。
◎ショッピングセンターの上。
地面が持ち上がり、地中より巨大な卵が現れる。

◎坂田自動車修理工場。
男A「怪獣の卵が出たぞ!」
男B「でっけえたまごが出たってよ。ショッピングセンターの方だ」
男A「怪獣の卵だ」
かけだす郷。
次郎「郷さん」
◎ショッピングセンター入口。
かけつける郷。
 郷「やはりこいつか。そうだ。もしかしたら、アキちゃんたちはこの下に」
 階段を降りる郷
男「おおい。だいじょうぶかあ」
郷「中に誰かいるんですか」
男「ああ、逃げ遅れたらしいんです。助けを呼んできます」
ガレキをどける郷。
郷「おおい。誰かいるのかあ。返事しろ。元気か」
◎地下。
倒れているアキ。
友人A「ここにいます。ケガ人もいるんです。早く助けてください」
郷のシャツを握りしめるアキ。
◎ショッピングセンター入口。
駆けつける坂田と次郎。
坂田「アキは?アキはどうしたんだ」
郷「それが、ケガをしている様子です」
坂田「何?」
かけつける救助隊員の金テコを取る郷。
郷「貸してください」

◎MAT司令室。
N「この頃、MAT本部に、岸田地球防衛庁長官が、何の前触れもなく姿を現した。これは極めて異例のことであった。この岸田長官は、MATチームの岸田隊員のおじである」

◎ショッピングセンター入口。
アキの救出活動を続ける郷。トランシーバーが鳴る。
郷「郷です」
丘『非常召集命令です』
◎MAT司令室。
長官「岸田隊員、あの卵を放っておけばどういうことになるか、報告したまえ」 岸田「はい」
文献を開く岸田。
岸田「ええ……。第2採石場に出たグドンと、あの卵とは関係があるということです」
加藤「グドンが卵と関係ある?」
岸田「この文献の通りであれば、あの卵はツインテールの卵と思われます。怪獣グドンは、ツインテールを常食としていたんです」
長官「うむ。この文献から推察すれば、原因不明の陥没は、グドンが東京へやってくるためにできたものだ。グドンはツインテールを食うためにやってくるに違いない」
岸田「長官のおっしゃるとおり、ツインテールが生まれる前に卵を焼き払っておかないと、とんでもないことになりますよ」
長官「ただちにMN爆弾を使い、あの卵を焼き殺すんだ」
郷「待ってください。MN爆弾の使用を待ってください」
かけつける郷。
岸田「何を言うんだ」
郷「卵のある地下道には5人の人間が生き埋めになっているんです。彼らの救出が終わるまで、MN爆弾の使用を待ってください」
長官「MN爆弾は地上で使うんだ。地下に閉じ込められている者なら心配することはない」
郷「しかし、もしものことがあっては」
長官「東京一千万都民の安全を守るためだ。この際、その5人のことは忘れよう」
郷「5人も一千万人も、命に変わりはありません」
上野「そうだ。まず5人を救出してから、MN爆弾を使用すべきだと思います」 長官「君たちはわしの命令に反抗するのか。長官の命令にそむく者はどうなるか、知っておろうな」
郷「知っております」
MATのバッチをはずし、長官の前に置く郷。
加藤「郷」
出て行く郷。
上野「おい。郷」
司令室を出る郷。追う上野。
◎MAT基地・通路。
上野「郷」
上野のつかんだ手をふりほどく郷。
上野「おまえ、MATをやめるつもりか」
 郷「やめる。あんな長官のもとで働けるか」
上野「何を言う。甘ったれたこと言うんじゃないよ」
郷「何が甘ったれだ」
上野「そうじゃないか。何か気にくわないことがあれば、すぐやめるのか。腹が立つのはおまえだけじゃない。おまえ、何のためにMATに入った。MATに入って何をしたっていうんだ。帰る所があるからって、これじゃあ無責任すぎるじゃないか」
出て行く郷。

◎MAT司令室。
長官「いいか。これはわしの命令だ。ただちに出動して、MN爆弾作戦を実行したまえ。なあに。いざという時は必ずウルトラマンが来てくれるさ。心配いらんよ。はっはっはっは」
出て行く長官。
岸田「隊長。長官の命令通り、ただちに出動しましょう。隊長」
加藤「5人の救出が終わったら、行動に移る」
岸田「隊長。長官命令にそむくつもりですか」
加藤「私はMATの隊長だ。MATが犯した不始末は、MATのやり方で収拾をつける」
岸田「隊長」

◎地下。
友人A「アキちゃん。しっかりして、もうすぐ助かるのよ」
友人B「助かるのよ。助かるのよ」
◎ショッピングセンター入口。
アキたちの救出を続ける郷。かけつける上野。
上野「郷」
郷「上野」
上野「おれはおまえのように帰る家がない。だから絶対にMATはやめん。これでもMATに命を賭けてるんだ。MATへ戻れよ。一緒にやろう」
協力して作業する上野。
◎地上。
 卵が発光して、地震が起こる。階段を登る次郎。卵が割れ、中からツインテールが現れる。
次郎「あっ。怪獣だ。こっちへやってくるぞ」
坂田「何てことだ。もう少しで救出できるのに」
郷「くそう」
階段をかけあがる郷。
坂田「郷、危ないぞ」
上野「郷!」
郷「よおし」
ツインテールに向かう郷。街を破壊するツインテール。
◎地下。
 生き埋めになったアキたちにさらにガレキが降り注ぐ。
◎地上。
ツインテールに向かって走る郷。ウルトラマンに変身する。

 ツインテールにチョップを加えるが効果がない。足にかみつかれ、首に尾をからまれるウルトラマン。電撃を与えてほどく。
◎ショッピングセンター入口。
アキの救出を続ける坂田たち。
上野「隊長」
加藤「どうだ」
上野「まだ中に」
加藤「坂田さん」
坂田から金テコをとる加藤。
上野「隊長。郷は怪獣に向かっていきました」
加藤「何?」
◎地上。
ツインテールに飛びかかるがかわされるウルトラマン。尾で反撃を受けるウルトラマン。カラータイマーが点滅する。ツインテールを飛び越し、後ろから暴れるツインテールを押さえるウルトラマン。地中より新たにグドンが現れる。ツインテールに投げられるウルトラマン。2匹の怪獣に間合いをとるウルトラマン。
N「大東京に恐怖の時がやってきた。二大怪獣が出現した時に、都会の機能はことごとくマヒしてしまった。東京はどうなる。地下に閉じこめられたアキたちの運命は。そして二大怪獣に攻撃されたウルトラマンは、はたして勝てるのだろうか。ウルトラマン」


   第6話  『決戦!怪獣対マット』

N「東京都内の工事現場から出てきた岩石は、怪獣ツインテールの卵だった。そのために、地底怪獣グドンが、ツインテールを食うために東京に出現したのだ。2大怪獣のために大都会の機能はマヒし、坂田アキは友人と共に地下道に閉じこめられてしまった。このピンチの2大怪獣の前に立ちはだかったのは我らがウルトラマンであった。しかしウルトラマンも」
グドンにけりかかるウルトラマン。後ろからツインテールの尾にからまれる。グドンの突進をキックで避け、ツインテールの尾を振り払うウルトラマン。しかしウルトラマンの突進はグドンにはねかえされる。2大怪獣の前に倒れるウルトラマン。エネルギーが尽きて消えてしまう。

南「あっ。ウルトラマンが敗れた」
加藤「よし。こうなったら我々が戦うしかない」
マットシュートを抜く一同。
加藤「行くぞ」
一同「はいっ」

戦う二大怪獣。

上野「あっ。郷だ」
怪獣の前に倒れている郷。
上野「よし、おれが行く」
南「おれも行く」
加藤「ようし、気をつけろ」
 両名「はい」

上野「郷、だいじょうぶか」
 南「郷、しっかりしろ」
上野「だいじょうぶか」
ツインテールの尾によって郷たちの上に大きな岩石が降り注ぐ。
南「上野、だいじょうぶか」
上野「だいじょうぶです」
郷をかついで逃げる両名。
南「しっかりしろよ。郷」

戻ってくる3人。
丘「早く座らせて」
加藤「だいじょうぶか」
 上野「はい」
郷「MATをやめたおれを……。すいません」
南「何を言ってるんだ。おれたちは仲間じゃないか」
 上野「郷、おまえはMATをやめたつもりだろうが、おれはおまえをMATの一員だと思っている」
郷「上野」
丘「隊長。怪獣が海の方へ」
南「グドンもツインテールを追っていきます」
上野「ツインテールたのむ。地球の裏側まで逃げてくれよ」

救出され、タンカで運ばれるアキ。
友人A「アキちゃん」
次郎「ねえちゃん」
 坂田「アキ、しっかりするんだぞ。アキ」

医者「絶対安静を守ってください」
出ていく医者。
友人B「アキちゃん、私をかばうために……」
坂田「心配いらんよ。アキは絶対に死なん。最後までこれだけははなさなかった」
坂田からシャツを受けとる郷。
アキ『郷さんにあうサイズ、その店でしか売ってないもん』
郷「ありがとう、アキちゃん」
南「失礼します」
坂田「おい」
郷「どうも」
南「どうだ。容態は」
郷「まだ何とも」
南「そうか。それは心配だな」
上野「郷。おれたちと一緒にMATへ戻ってくれないか」
郷「おれはMATをやめた」
上野「しかし、怪獣はまたいつ現れるとも限らない。おまえの力が必要なんだ」 郷「悪いけど上野。おれは彼女のそばについててやりたいんだ」
上野「じゃあ、怪獣はどうだっていいっていうのか。おまえ、MATより女を選ぶっていうのか。おまえはそんなやつだったのか」
南「上野、病人がいるんだぞ」
上野「だってこいつ!」
南「上野」
郷「何と言われてもいい。今のおれはただ彼女のそばについててやりたいんだ」 上野「見損なったぞ。おまえって男をよお」
南「上野!お大事に。さあ」
出ていく二人。
坂田「帰ってあげろよ。MATに」
郷「いいんです」
坂田「そうか……」
アキの唇が動く。耳を寄せる坂田。
坂田「どうしたアキ!うん。うん。私のことなら心配ないから、MATに帰ってあげろと」
郷「アキちゃん。おれのことなら心配するな。今は、一生懸命元気になることを考えてればいい。いいな」

N「マンモス都市東京は、怪獣のために市の街と化した」
長官「わしの命令通り、MN爆弾を使用していれば、怪獣どもを取り逃がすことはなかった。そうだろ加藤くん」
加藤「はっ。怪獣を討ち果たせなかったことは残念です。しかし作戦の面からいえば、MN爆弾を使用しなくてよかったと」
長官「君はまだそのようなことを言っとるのか。それでよくMATの隊長が勤まるな」
南「長官。加藤隊長はMATの隊長に一番ふさわしく、尊敬できる人物です。ただ今の、隊長を侮辱したお言葉、お取り消しください」
佐川「長官に向かって何たる無礼な態度だ」
南「長官!」
加藤「南、もういい」
南「しかし」
隊員「失礼します。夢の島に怪獣が上陸したそうです」
長官「よし、今度こそ逃がすな。MN爆弾でとどめをさすんだ」

暴れるグドン。接近するマットアロー。
加藤「MN爆弾発射」
爆発するMN爆弾。
南「隊長、やつにはMN爆弾もきかないようです」
加藤「恐ろしいやつが現れたもんだ」
南「やつは地面に潜っていきます」

長官「ウルトラマン敗れ、MN爆弾の効き目もないことがわかった。我々はこれからどうすればよいのか」
佐川「長官」
長官「ん?」
長官に耳打ちする佐川。
長官「そうか。そりゃいいアイデアだ。加藤くん」
加藤「はっ」
長官「怪獣どもをやっつける武器が残っていたぞ」
加藤「怪獣をやっつける武器?」
長官「さよう。最後の切札だ」
加藤「長官。まさかスパイナーを使用なさるおつもりでは」
長官「そのとおり。スパイナーだ」
加藤「スパイナーは、小型水爆と同じくらいの威力を持っています。そんなものを使えば東京は廃墟と化してしまいます」
長官「日本の首都を怪獣にじゅうりんされていて、黙って見ておれというのか。それこそ世界中の笑い者になる。こうなれば、東京決戦あるのみだ」
加藤「しかし長官。東京には大勢の人間が、動けない病人がいます」
長官「ただちに避難命令を出す。自衛隊と協力して、すみやかに都民を安全な地域に誘導する」
加藤「無茶です」
長官「加藤くん。東京決戦に関しては、一切の指揮をわしがとる。君は黙ってわしの命令通り動けばよいのだ」

坂田「何ですって。病院を移動?」
 職員「ええ。当局の命令によって、当病院を伊豆へ移すことになりました。
郷「そんな……。アキちゃんには無理でしょう。あんな遠い所へ移動するなんて」
宣伝カー『都民の皆様にお知らせいたしします。ただ今東京全地区に、緊急避難命令が発令されました。5時間以内に、東京以外の場所に疎開してください。くりかえしお知らせいたします。ただ今、東京全地区に緊急避難命令が発令されました。5時間以内に東京以外の場所に疎開してください』
職員「早く移動準備願います」
坂田「こいつはけっこうです」
職員「じゃあ、東京に残ると」
坂田「自宅に連れて帰ります。
職員「坂田さん」
坂田「こいつもそれを望んでいるでしょう」

病院から避難する人々。

坂田の家でアキを看病する郷。加藤たちが現れる。
 岸田「坂田さん。おたくでは避難することを拒否なさったそうですねえ」
 坂田「ええ。こいつの体じゃあ、とても遠い所への避難は無理です。それに、私もそういうことが、あんまり好きじゃない」
 岸田「こんな所にいると、死んでしまいますよ」
 坂田「昭和20年3月。空襲の時、私はまだ3才でした。私のおふくろは、どうしても疎開するのがいやで、空襲のたびに岩の防空豪に飛びこんで、この子だけは殺さないでくれと、空を飛ぶB29に祈ったそうです。私もおふくろに似てるんですね」
 岸田「しかし、スパイナーの高熱は、鉄やコンクリートも溶かしてしまうんです」
郷「スパイナー!みんなを避難させたのは、スパイナーを使うためなんですか」 加藤「強く反対はしたんだが……」
郷「あんなものを使ったら、東京はいったい……」
廃墟になった東京の光景が浮かぶ。
岸田「だから緊急避難命令を出したんだ」
郷「何とか中止させるわけには行かないんですか」
岸田「長官が決定を下された。いまさら変更はできないよ」
坂田「郷。次郎をたのむ。どこか適当な所へ避難させてくれ」
郷「坂田さんは……」
次郎「いやだよ、にいちゃん。おれも一緒にいる。にいちゃん」
アキの目から涙がこぼれる。
郷「MATの使命は、人々の自由を守り、それを脅かすものと命を賭けて戦う。隊長、そのためにMATはあるんじゃなかったんですか」
加藤「私と一緒に来てくれ。ともにMATの誇りを守り、任務を遂行しよう」
上野「郷!」
郷「うん」

長官「それはダメだ。ウルトラマンでさえ敗れた相手だ。スパイナー以外勝つ方法はない」
加藤「もう一度MATにチャンスをください。必ずしとめます」
長官「そんなこと言って君、具体的な方法でもあるのか」
加藤「はっ。怪獣の目に麻酔弾を撃ちこみます」
佐川「そんな。相手は動いているんだ」
加藤「ですから、10メートルまで接近して発射します」
長官「そんな近くまで接近できると思っとるのかね」
加藤「やってみます」
佐川「不可能な話だな」
加藤「やらしてください。お願いします」
長官「どう思うかね」
佐川「はあ。怪獣に麻酔がきくかどうかもわかりませんし、危険ですな」
長官「うん。わしもそう思う」
加藤「しかし、長官」
長官「危険な勝負は避けた方がいい。スパイナーの方がはるかに威力があるからな」
隊員「長官。第4埋立地で異常震動が観測されました。近くに陥没も」
長官「怪獣だ。スパイナーの発射準備は」
隊員「はい。いつでも発射できます」
加藤「長官。MATにもう一度チャンスをください。お願いします」
長官「佐川参謀」
佐川「はっ」
加藤「長官」
岸田「長官。ぼくからもぜひお願いします。隊長の提案通り、麻酔弾を撃ちこんでみるんです。それがダメならスパイナーを」
長官「なるほど」
加藤「長官」
南「長官」
岸田「お願いします」
上野「やらせてください」
丘「長官」
郷「MATにやらせてください。お願いします」
長官「うん。その代わり、失敗したらMATは解散だぞ。それでいいな」
加藤「はいっ」
長官「やってみろ」
加藤「ありがとうございます」
南「隊長」
上野「隊長」
岸田「隊長、最後のチャンスです。一発勝負といきましょう」
加藤「我がMATは今度の戦いにすべてを賭ける。全力を尽くして戦おう」
一同「はいっ」

2台のジープで待ちかまえるMAT。鳥の声に驚いて振り返る。次の瞬間、地中より怪獣が現れる。エンジンをかける上野。
南「ようし」
同じくエンジンをかけようとするが、かからない丘。
加藤「落ちつくんだ」
丘「はい」
加藤「狙うは目だ。できるだけ接近して撃つんだ。いいな」
一同「はい」
加藤「戦闘開始!」
発進するジープ。地中より現れるツインテール。
加藤「よおく狙って撃て」
郷「はいっ」
加藤「ようし、撃て!」
麻酔弾を発射する郷。左目に命中する。
郷「やった!」
だが、ジープが深みにはまって、動けなくなる。
加藤「丘くん、どうした」
南「あっ、指導車が危ない。早く撃て」
上野「よし」
麻酔を発射する上野。だがはずれてしまう。
郷「おれがおとりになります」
加藤「郷!」
ジープを降りて、走る郷。マットシュートを撃つ。深みから逃れるジープ。地中より現れるグドン。南たちのジープに岩石が降り注ぐ。グドンの尾でジープがはねとばされる。転がってマットシュートを撃つ南。怪獣に向かって走る郷。ウルトラマンに変身する。
ウルトラマンの体当りで倒れるグドン。
逃げる南たち。
キックを加えるがはねかえされてしまう。ツインテールに巻きつかれるウルトラマン。それを利用してツインテールを前へ投げ飛ばす。グドンにキックを与える。
加藤「ウルトラマンを援護しろ」
怪獣に突撃するMAT。麻酔を腹に受けるグドン。ツインテールに手流弾を投げる上野。グドンに投げ飛ばされるウルトラマン。ツインテールにしがみつくウルトラマン。加藤がツインテールに麻酔を撃つ。右目に命中する。苦しむツインテール。退却するMAT。全員がマットシュートを撃つ。もがくツインテールがジープをはねとばす。爆発するジープ。ツインテールが接近してきたのを見るや、グドンからはなれるウルトラマン。グドンはツインテールに攻撃を加える。グドンの尾にかみつくツインテール。ツインテールをはなして尾にかみつくグドン。ツインテールを投げ飛ばす。ぐったりするツインテール。
グドンに飛びかかるウルトラマン。グドンを投げ飛ばす。逆に投げられ、さらに投げ飛ばす。馬乗りになって攻撃を加えるウルトラマン。だが、はねとばされる。頭にキックを加えて、投げ飛ばすウルトラマン。スペシューム光線でグドンを倒す。
砂煙の中から加藤が現れる。
加藤「おーい。みんな大丈夫か」
次々と現れる隊員たち。
一同「隊長」
加藤「よかった。本当によかった。上野、ありがとう。丘くんありがとう。郷。本当にありがとう」

気がつくアキ。
次郎「ねえちゃん」
坂田「もう大丈夫だぞ」
カーテンを開ける坂田。
坂田「いい天気だ。ほら」
アキ「青い空ね」
坂田「青い空」
次郎「鳩だ。見える、ねえちゃん」
うなづくアキ。



第11話 『毒ガス怪獣出現』

水を飲む上野。
岸田「捜索を打ち切るか続行するかは、隊長の決めることだ。そんなことより帰投命令もでない先にどうして独断で帰ってきた」
上野「だからスルメイカは……。水くらいゆっくり飲ませてくださいよ」
岸田「上野。きさま、MAT精神を忘れたのか。怪獣がいようがいまいが、あくまでもチームワークを保持し規定の任務を遂行する」
上野「わかってますよ」
岸田「それじゃあ、なぜ帰ってきた。のどが渇いたくらいで。少数精鋭主義のMATで各自が勝手な行動に出たらいったいどうなる。私が変わる」
上野「そんなあ。私がまた行きますよ」
岸田「きさまは水でも飲んでろ」
出ていく岸田。
上野「堅物!堅すぎるよ岸田隊員は。MATは昔の軍隊とは違うんだ」
丘「おじさまが防衛隊の長官をなさるくらいだもの。岸田家は誇りたかき軍人一家なのよ」
入ってくる加藤。
加藤「どうしたんだ。岸田がプリプリしながら出ていったぞ」
上野「はい」
加藤「はは。またやられたのか。責任感の強いのがあいつのいいところだ。まあ、薬のつもりでありがたく拝聴するんだな」
上野「はい」

N「怪獣らしきものが出たという営林署職員の報告を受け、MATが捜索に乗り出したのは、これから3日前のことであった。MATの隊員たちは連日連夜交代で怪獣の張りこみを続けたが、その影すらも発見できなかった」
MATジャイロでパトロールする郷と南。
郷「営林署の人が見たという怪獣の影って、何かの幻影だったのでは」
南「うん。そうかも知れんな。夜だと大木や雲の流れも怪獣に見える時があるんだ」
トランシーバーが鳴る。
郷「こちらMATジャイロ。郷」
岸田『こちらアロー2号機、岸田』
郷「あれ?いつのまに上野と代わったのかなあ」
岸田『東南の山中に人間が大勢倒れているのを発見した。すぐこちらへ』
郷「了解」
急行するMATジャイロ。

倒れている時代劇の撮影隊。死体の上に黄色い粉がかかっている。カチンコを拾う郷。テープレコーダーは回り続けている。ウサギの死体を持ち上げる岸田。
岸田「変だな。撃たれた形跡がない」
南「郷。隊長に報告。すぐに遺体を運ぶんだ」
ボンヤリしている郷。
南「郷!何ボヤボヤしてるんだ。早く本部に連絡をとるんだ」
郷「はいっ」
カメラに向かう岸田
郷「郷です。本部応答願います。本部応答願います」

N「映画撮影隊遭難現場から持ち返ったフィルムは、MATの手によってただちに現像が行われた」
フィルムをセットする。
南「さて……」
加藤「何が起こったか、このフィルムがすべてを語ってくれるはずなんだが。上野、テープを頼む」
上野「はい」
郷「スタンバイOK」
電気を消す丘。
加藤「さあ。始めよう」
映画が映し出される。娘の乗った篭の前に侍が現れる。
娘「兄上……」
切り合いになる侍と回りの男。侍にやられて男たちが倒れる。その時回りから黄色い煙が吹き出す。役者たちは苦しみ出して倒れる。
役者A「水をくれ」
役者B「助けてくれー。誰かー」
スタッフが助けに入る。
南「何でしょう。この霧みたいなものは」
郷「ウサギや山鳥もこいつにやられたんだ」
スタッフも倒れる。息を飲む隊員たち。
加藤「ん?あれは何だ」
巨大な生物の影が映る。
上野「くそう。怪獣はやっぱりいたのか」
フィルムが終わる。そしてテープから奇妙な音が聞こえる。
加藤「この音は何だ」
南「私たちもこの音を聞きましたが、怪獣がほえてる声だったのか」
加藤「明りを」
丘「はい」
郷「南隊員。あの山崩れは、地底怪獣の出た跡だったんですよ」
南「ああ。どうりで妙な崩れかたをしていると思った」
加藤「黄色い霧と怪獣。この二つは何か密接な関係がありそうだな」
入ってくる佐竹参謀。
丘「いらっしゃい佐竹参謀」
佐竹「やあ。やあ諸君。例のロケ隊遭難者の解剖結果が出た。死因は致死性の強い毒ガスだ。死後4日経過しているいうことだ」
岸田「毒ガス!」
加藤「なるほど。フィルムでみるとほとんど即死です」
佐竹「速攻性の強い神経ガスらしい」
丘「薄気味が悪いわ」
郷「隊長。早く怪獣を見つけ出して退治しなければ。毒ガスは怪獣が吐いているんですよ、きっと」
南「私も郷と同じ意見です。毒ガス怪獣が出現したんですよ。これ以上被害が出ると大変だ」
佐竹「毒ガスは、旧日本軍が開発したイエローガス弾だというんだ。例えほんのわずかでも呼吸器官内に入りこんだら10秒以内に即死すると言われ、非常に恐れられた兵器ガスだ。敵の開発したマスタードガスやVX弾に対抗して製造されたものだが、使用しない前に終戦を迎えてその毒ガスは廃棄処分になったらしい」

MATビハイクルで実家へ向かう岸田。
N「旧日本軍の開発した毒ガス。原水爆同様に人類から恐れられている忌まわしい毒ガス。佐竹参謀の言葉が、なぜか鋭く岸田の胸に突き刺さった。彼のはるか遠い記憶の中に、軍人だった父の姿が浮かび上がったのである」
実家の書斎で物件を調べる岸田。『GAS』の文字が見える。入ってくる岸田の母親。
岸田の母「文夫さん。どうしたんです?ただいまも言わないで。びっくりするじゃありませんか」
岸田「母さん」
岸田の母「どうしたの?そんなに恐い顔をして」
岸田「教えてください。親父は戦時中、毒ガスの製造に携わっていたんではないですか?正直におっしゃってください。親父がイエローガス弾の開発に手を貸したことが、兄さんの自殺の原因ではなかったんですか?」
岸田の母「文夫。今さらそんなことを聞いて、どうしようというんです」
岸田「知りたいんです。ボクもこの家の人間です。母さん、教えてください」
引出しから日記を出す岸田の母。
岸田の母「お父さんもずいぶん苦しまれたんだよ。時代がお父さんを無理矢理に……」
 出ていく母親。
岸田の父『8月2日。ガス弾の製造中止命令が下る。これまでに製造された570トンのガスも廃棄処分と決定。この忌まわしいガスが、使用されずにすんだことは日本のためにも喜ばしい。廃棄をどこにどのような方法で行うか問題である。一応仲間と乾杯。みんな久しぶりに明るい顔。戦争の終わりも近い』
父の肖像画を見る岸田。
岸田「父さん……」

木を切る男たち。かけつけるMAT隊員。
上野「やめてください。この山には怪獣がいるんです。危険ですからすぐ山を下りてください」
郷「おじさん!怪獣!怪獣なんだよ!」
男A「え?何だって?」
電気ノコギリの電源を切る郷。
男A「何すんだ」
郷「この山のどっかに怪獣が潜んでいるんだよ。電気ノコギリの音を聞きつけて向かってきたらどうすんだ。さあ頼むよ、おじさん」
男B「おう!あんたたち。怪獣だか何だか知らんけど、こちとら今日中にこれだけの木を倒さねば飯の食いあげなんだ。仕事の邪魔をしないでくれ」
郷「相手は鳥や獣じゃないんだぜ。怪獣なんだ」
男B「わかったよ。おい仕事」
男A「ああ」
仕事を再開する男たち。
郷「わからず屋たちだなあ」
上野「郷、あきらめよう。上空を堅めるんだ。さあ、早く行こう」
立ち去る二人。上空を飛ぶMATアロー。現れる怪獣。
男B「ああっ怪獣だ!」
男A「ああ!」
男C「逃げろ!」
男A「か、怪獣だ!」
男B「助けてくれ!」
逃げる男たち。ガスを吐く怪獣。倒れる男たち。
男たち「苦しい」
上空を飛ぶMATアロー。
郷「しまった。やっぱり電気ノコギリの音で目を覚ましたんだ」
岸田「郷、見ろ。毒ガスはやはり怪獣が」
アローに向かってガスを吐く怪獣。
岸田『これはまぎれもないイエローガスだ。しかしわからん。怪獣はなぜ父の製造したガスを。わからない』
郷「攻撃開始!」
岸田「よおし。郷行くぞ!」
攻撃するアロー。口から何かを吐き出し、地中へ逃げる怪獣。

男たちが倒れた現場を調べる隊員。割れた陶器を調べる郷。
岸田「かわいそうなことをした」
郷「岸田隊員。これですよ、やつが吐いたのは」
陶器に日本の国旗がかかれている。
岸田「怪獣はガスを食って生きているんだ……」

書斎で地図を探す岸田。
岸田「あった」
岸田『毒ガスは山崩れのあった地点に埋められたんだ。それを地底怪獣が食った。やっぱり父の残した過去の忌まわしい毒ガスが、怪獣のために再びこの平和な日本に。父の犯した罪は息子である自分が償わなければ……。そうだ。この手で怪獣を倒すんだ』

加藤「今までにも幾度か経験してきたように、地底怪獣の行動範囲はそう広くはない。しかし今度の場合、相手は毒ガスを持っている。一度ガスを吐けば風向きによっては30km四方が危険にさらされる。したがって、こっから一歩たりとも怪獣を動かしてはならん。南、上野。君たちはこの一帯を」
両名「はいっ」
加藤「郷、岸田。君たちはここだ」
ボンヤリしている岸田。
加藤「おい岸田。いいな」
岸田「あ、はい」
加藤「丘くんと私はこの一帯を」
丘「はい」
加藤「今度地上へ出てきたら、MATの総力を結集して必ず怪獣を倒す。いつも言うようにMATはチームワークだ。攻撃に際しては一致協力し、決して単独行動には出ないよう謹んでもらいたい」
郷『岸田隊員の様子が変だ。いつもなら作戦会議で真っ先に発言する彼が……』 山中を飛ぶMATアロー。地中より現れる怪獣。攻撃を始める岸田。
郷「岸田隊員、気でも狂ったんですか。やめてください」
攻撃をやめない岸田。
郷『やめてください。単独行動に出ています。どうかしたのですか。聞こえているんですか。岸田隊員、返事をしてください』
岸田「郷!この怪獣だけはおれの手で倒したい。倒さなきゃならないんだ」
郷「なぜです。なぜMAT全員じゃダメなんです」
岸田「行くぞ」
怪獣にはじきとばされるMATアロー。
岸田「ああっ」
郷「ああっ岸田隊員!」
不時着するMATアロー。

病室で眠る岸田。
加藤「で、どうなんです容態は」
岸田の母「はい。やっと意識を取り戻して、今眠ったところです」
加藤「そりゃよかった」
岸田の母「私の今申し上げたことは、どうぞ誰にもおっしゃらないでいただきたいのです。この子が死のうとまで苦しんだ岸田家の恥なのですから」
郷『岸田隊員。先輩に代わって必ずこの郷が毒ガス怪獣を倒してみせます』

怪獣に向かうMATアロー。
郷「見てやがれ。毒ガスが吐けないようにしてやる」
 ネットを発射する郷。口が開けなくなる怪獣。
加藤「郷、無茶するな!」
郷『大丈夫。口を封じこめてしまえば、地上でも戦えますよ』
着陸するMATアロー。マシンガンをもって怪獣に向かう郷。着陸する隊長機。ガスマスクをして怪獣に向かう加藤と丘。攻撃する郷。倒れる怪獣。突進する郷。もがく怪獣の口からネットがはずれる。毒ガスを吐く怪獣。
郷「あっ!はあっ!」
加藤「郷!」
変身する郷。

怪獣の口を押さえるウルトラマン。突進する怪獣をヒラリとかわす。勢い余る怪獣。振り返って戻ってきた怪獣の首をつかんで投げようとするウルトラマン。しかし逆に首を押さえられる。頭を攻撃してはなそうとするウルトラマン。だがその右腕をかまれてしまう。左手で怪獣の目を攻撃してはなれるウルトラマン。腕の痛みに苦しむウルトラマン。突進してくる怪獣をキックで払う。倒れる怪獣。上へ乗りかかるウルトラマン。放電する怪獣。ショックで動けなくなるウルトラマン。またも突進する怪獣。宙へ飛び、ウルトラスピンキックをしようとする。だが避けられ、背中の上に覆いかぶさる。再び放電され、よろめくウルトラマン。毒ガスを吐く怪獣。苦しむウルトラマン。キックを仕掛けるが怪獣まで届かない。再び毒ガスを吐く怪獣。もがくウルトラマン。立ち上がろうとしたところへ怪獣に攻撃される。
N「怪獣の吐く毒ガスは、ウルトラマンの生命をも刻一刻と奪おうとしていた。立て!ウルトラマン」
急行するMATジャイロ。
南「あっ。ウルトラマンが危ない!」
上野「加燃ガス投下用意よし」
南「投下!」
投下されたガス弾からガスが吹き出す。驚く怪獣。
N「カラータイマーが赤になった。ウルトラマンがんばれ!」
南「さあ、ウルトラマン。スペシューム光線で点火するんだ!」
ガス弾にスペシューム光線を与えるウルトラマン。燃え上がるガス。毒ガスを吐く怪獣。だが炎に包まれてあまり効果がない。怪獣に突進しチョップを与えるウルトラマン。反撃をかわし投げ倒す。立ち上がらせて再び投げるウルトラマン。毒ガスを吐く怪獣をすばやく接近して投げるウルトラマン。立ち上がる怪獣。飛び上がってウルトラスピンキックを与える。倒れる怪獣。飛び去るウルトラマン。 
退院する岸田。
岸田「チームワークを乱して申し訳ありませんでした。隊長」
加藤「もう何も言うな。怪獣は死んだんだ。毒ガスという名の憎むべき怪獣もな。これでみんな安らかな眠りにつける」
 岸田「はい。ホントに」
郷を見る岸田。ウインクする郷。
加藤「さあ、行こうか」
MATビハイクルに乗りこむ隊員たち。岸田に手を貸す郷。郷の肩を叩く岸田。 
第13話 『津波怪獣の恐怖 東京大ピンチ!』

N「海神丸の今度の積荷はマグロではない。東京で開催される世界宝石展に出品するオパールやサファイヤの原石3トンをオーストラリアから運ぶ特別便なのだ」
酒盛りをする船員たち。高村船長が歌を歌う。
船員A「いやー、よくわかんねえ歌だけどうまいなあ、おやじさん。なあ」
高村の歌を録音したテープをとる船員B。
船員B「帰ったら、これ、陽子ちゃんに聞かせてやる。喜ぶぜ」

操舵室に行く高村。
舵手「やあ、おやじさん。マグロと格闘するわけじゃなし、ご機嫌でしたね。今度の航海は」
高村「積荷はマグロよりも高価なものだ。荷主に渡すまでは油断できんよ」
舵手「みんなの楽しそうな顔、日本が近づいてる証拠だなあ」
高村「おまえも行って歌ってこい」
舵手「え?いいんですか?」
高村「赤道も無事突破。現在フィリピン海峡も波静かだ。行け」
舵手「すいません。じゃあ、お願いします」
前方の奇妙な影に気づく高村。突然揺れる海神丸。
舵手「どうしたんだい」
船員C「浸水です」
舵手「何だって」
水がどんどん入ってくる。
舵手「おやじさん。おやじさん、浸水です」
高村「早く処置するんだ」
舵手「はい。おい、みんなついてこい」
必死で舵をとる高村。前方に怪獣の頭が現れ、その角が光る。
高村「シーモンス!」
海中に消える怪獣。転覆する海神丸。

上空を跳ぶマットアロー。海上を漂流する救命ボート。
船員D「おやじさん。おやじさん、しっかりしてください」
高村「シーモンス……。シーモンス……」
ボートに気づく郷。
郷「見ろ。救命ボートだ」
上野「漂流している。海上保安庁に知らせなきゃ」
N『海神丸の生存者は、遭難して10日目に救助された。海神丸は船体が真二つに割れ、珊瑚礁に座礁していた。高村船長はその責任を追及された』

記者A「航路を誤って、珊瑚礁に乗り上げたんじゃないですか」
記者B「川崎操舵手が死んだ今、それを確認することはできませんがね」
高村「シーモンス……」
記者A「え?シーモンス?何です、それ?」
船会社社員「いやあ、遭難してからずっと言い続けてるそうですよ。シーモンスってねえ」
陽子「シーモンスは、西イリアの島々に住むと言われている怪獣です」
記者B「怪獣?」
陽子「そうです。遭難の原因は父さんのミスによるものでなく、おそらくシーモンスのせいですわ。私は子供の頃からよく聞かされました。シーモンスとシーゴラスは仲のよい夫婦怪獣で、シーモンスは4つ足のメス怪獣、シーゴラスは2つ足のオス怪獣」
記者A「そりゃ、お父さんの作り話でしょ」
陽子「作り話ではありません」
記者A「いや、MATに聞くといい。怪獣退治の専門家だ」
記者B「どうなんです。そんな怪獣が実際にいるもんですか」
首をひねる郷と上野。
郷「シーモンスなんて初めて聞いたもんで……。信じられないなあ」
高村「シーモンス……。シーモンス。シー……」
せきこむ高村。
陽子「父さん。みんな出てって。出てってください」
郷「どう思う」
上野「どう思うって……」
郷「怪獣の話さ」
上野「さあねえ。見ない人間の方が多いんじゃ、作り話にされてもしょうがないよ」
郷「状況証拠が弱いなあ」
船員B「あのお……。事故の直前に録音したものです」
高村の歌を聞かせる船員。
上野「南洋の土民の歌みたいだな」

N「高村船長の歌は、さっそく言語分析機で分析することになった」
テープを取り出す丘。
丘「隊長」
加藤「シーモンスは島の守神。シーモンスは気だてのやさしい怪獣。だが、シーモンスが海を渡る時は気をつけろ。恐ろしいことが起こる」
郷「シーモンスが海を渡る時は気をつけろ。恐ろしいことが起こる……」
上野「シーモンスという怪獣は実在するんだろうか」
加藤「とにかく、シーモンスの歌はあっても、シーモンスが実在するという確証はない。MATとしても動きようがないな」

夜釣りをする2人の男。海中より怪獣が現れる。

N「八丈島に怪獣が出たとの知らせを受けたMATは、シーモンスについて本格的な調査に乗り出すことになった」
郷「船長が見たというシーモンスかもしれない。船長」
上野「無理だな。まだショックから抜け出していていない」
郷「いや、シーモンスの歌の続きだけでも聞かせてください」
船員C「おやじさん。おやじさん。大変だ。陽子ちゃんが八丈へ行くってよお」 郷「八丈へ?」
船員C「ああ。怪獣がシーモンスかどうか確かめるって言って」
モーターボートで港を出る陽子。
上野「無茶だ。八丈近海はものすごくしけてたぞ」
船員C「ええっ」
郷「連れ戻そう」
上野「よしっ」
かけだす2人。
船員C「おやじさん……」
だがうつろな目の高村。

ボートを走らせる陽子。追う郷たち。
上野「おーい」
郷「陽子さーん。止まれ。そのままでは無理だ」
上野「止まれー」
郷「沈没するぞ。ボートでは無理だ。死にたいのか。陽子さん。上野頼む」
上野「よし」
操縦をかわり、陽子のボートと接近する。飛び移る郷。
郷「戻るんだ」
陽子「いやっ、はなして」
郷「こんなボートで行けると思ってるのか」
陽子「死んでもいいの」
郷「バカ」
平手打ちする郷。
郷「八丈へ行っても証拠がつかめると思っているのか。誰もまだ見たことのない怪獣なんだ」
陽子「シーモンスの角は光るそうです」
郷「角が光る?」
陽子「あれを見て……。嵐でもビクともしない父さんが、あんなになってしまったわ。父さんの潔白を証明したいのよ」
郷「わかった。シーモンスに関しては我々MATにまかせてくれないか」

シーモンスの歌を録音する陽子。
丘「はい」
陽子からマイクを受け取る丘。コンピューターにセットする。
加藤「お父さんはなぜこの歌を?」
陽子「昭和19年、倒産はニューギニア戦線へ兵隊を運ぶ輸送船に乗っていたんです。途中、魚雷攻撃を受けて、船は沈没しました。やっとモロタイ島に泳ぎ着いて、そこで島の人たちに助けられたんです」
コンピュータが結果を出す。
丘「岸田隊員」
岸田「シーモンスをいじめるな。シーモンスをいじめると角光る。角光ればシーゴラスも怒り……」
郷「シーモンスをいじめると角光る。角光ればシーゴラスも怒り……」
岸田「海も天も地も……」
警報が鳴る。
丘「緊急情報。東京湾B海域に怪獣出現」
加藤「よし。ただちに出動」
一同「はいっ」
郷「丘隊員。陽子さんを頼む」
丘「はいっ」
飛び立つマットアロー。

出現する怪獣。攻撃するマットアロー。上陸する怪獣。高圧電線に触れ、建物を破壊する。怪獣の角が光る。
郷「あっ、角が光った。隊長、怪獣はシーモンスです。間違いありません」
加藤「すると歌のとおり、海を渡ったっていうことか」
郷「海神丸を襲ったのも、きっとこいつです」
加藤「うん」
郷の頭に陽子の歌が聞こえる。
郷「隊長、シーモンスの攻撃を中止すべきです」
加藤「ん?」
郷「シーモンスをいじめると、シーゴラスが怒る。何か恐ろしいことが……」
南「しかし、怪獣は上陸しているんだ。ほおっておけば東京は全滅だぞ」
郷「でも、歌のとおりだとすると、身の毛もよだつ何かが起こります」
工事現場に落ち着いて、土砂を鼻でつつくシーモンス。
加藤「攻撃中止。しばらく様子を見る」
去るマットアロー。

静観するMAT隊員。
工場長「隊長。いったいいつまで怪獣をほっておくのだ」
加藤「なるべく刺激しないつもりです」
工場長「冗談じゃない。我々は操業ができず、大損害だ」
加藤「ヘタに攻撃して都心に被害が及んではいけません。しばらく様子を見ましょう」
工場長「MATは怪獣を退治するためにあるんじゃないか。よしっ。もうMATなんかあてにはせんよ」
立ち去る工場の職員たち。

爆薬の準備をする自衛隊員。
自衛隊員A「第2小隊、準備完了!」
自衛隊員B「了解。第2小隊準備完了しました」
かけつけるMATビハイクル。
南「怪獣を爆破するつもりだ」
郷「そんな!すぐやめさせなければ」
南「よし!」
自衛隊員B「了解。第1小隊終わりました。これで準備はすべて完了です」
自衛隊員C「よし!」
郷「待ってください!シーモンスを刺激してはいけません。やめてください」
自衛隊員C「君はわしに指図するつもりかね。爆破開始!」
爆薬のスイッチが入れられる。シーモンスの周囲で爆薬が爆発する。暴れ出すシーモンス。シーモンスの鳴き声を聞いて、海上に別の怪獣シーゴラスが現れる。ともにほえる2匹の怪獣。シーゴラスのまわりの風が強くなる。次第に嵐となり、津波が起こる。海岸へ迫る大津波。逃げる人々。陸地を洗う大津波。家が破壊されていく。

隊員A「MATにつぐ。伊豆沖に津波怪獣が現れたそうです。付近の漁港が高潮の被害を受けています」
加藤「了解」
郷「シーゴラスだ!」
岸田「身の毛もよだつ恐ろしいことというのは津波のことだったのか!」
上野「大変だ!東京も津波に!」
加藤「シーゴラスを東京湾に入れてはいかん。いくぞ!」
各人「はいっ」
 丘「隊長!陽子さんが怪獣を見ると言って……」
加藤「何!」
郷「シーゴラスかどうか確かめるつもりなんだ」
加藤「郷!さがしだせ」
郷「はい」
加藤「いくぞ!」
各人「はいっ」
郷「おれがさがす。君は早く避難者を」
丘「ええ」

東京へ迫るシーゴラス。急行するMATアロー。
加藤「攻撃!何としても津波を防ぐんだ。いいな」
攻撃するMATアロー。

シーモンスを見る陽子。シーモンスの角が光る。
陽子「やっぱりシーモンスだわ」
互いにほえるシーモンスとシーゴラス。シーゴラスのまわりに津波が起こり、港へ迫る。港を襲う津波。倉庫を破壊する。逃げる人々。
工員A「大変だ!みんな逃げろ」
さらに大きな津波が迫る。呆然と立ち尽くす陽子。かけつける郷。
郷「陽子さん!早く逃げろ!陽子さん!」
変身する郷。

津波の前に立つウルトラマン。ほえる2匹の怪獣。迫る大津波。
N「東京に押しよせる大津波。東京を占領せんとする2大怪獣。はたしてウルトラマンにどんな作戦があるのだろうか」


第14話 『二大怪獣の恐怖 東京大龍巻』

N「津波怪獣シーゴラスが謎の伝説怪獣シーモンスによばれ、大津波を巻き起こしながら東京湾に現れた」
津波の前に立ちはだかるウルトラマン。猛スピードで回転し始める。ウルトラバリアーをつくり、津波をはじき返すウルトラマン。逆流する津波。
N「ウルトラバリアーで津波をはじき返すことに成功した。しかしそのためにウルトラマンは著しくエネルギーを消耗したのだ」
倒れるウルトラマン。シーモンスの突進を受け、宙に飛ばされる。倒れるウルトラマン。再びシーモンスの体当りを受けて倒れる。ウルトラマンを背中にかついで何度も宙へ投げるシーモンス。消えるウルトラマン。

陽子の歌を再び分析するMAT隊員。
N「津波の一件以来、シーモンスをうかつに攻撃することはできなくなった。MATはシーモンスを追放するためにシーモンスについて研究を続けていた」
加藤「シーモンスをいじめるな。シーモンスをいじめると角光る。角光ればシーゴラスも怒り、海も天も地も怒り、この世は地獄となる」
郷「海も天も地も怒り、この世は地獄となる」
岸田「海は怒った。残るは天と地の怒りがどんな怒りなのかだ」
モニターのスイッチを入れる加藤。シーモンスは相変わらず土砂を鼻でつついている。
加藤「攻撃しなければ、ああやっておとなしくしている」
丘「隊長!自衛隊の火器部隊がシーモンスを」
加藤「何だって!」

攻撃体勢にはいる戦車部隊。かけつけるMAT隊員。
工場長「止めようとしてもムダだ。あいつのためにわが社は倒産寸前なんだ」
加藤「工場長。シーモンスを攻撃したために東京は津波の危機に瀕したんです」 工場長「でもウルトラマンが助けてくれた。いざという時、我々には強い正義の味方がついてる」
郷「しかし、あの怪獣には謎の部分が大過ぎます。なぜ海を渡り、何のためにじっとしているのか。まずそれを知るべきです」
工場長「早く復旧作業にとりかかりたいんだ。そんな悠長なことは……」
加藤「せめて3日間待ってください」
工場長「3日すれば退治してくれるのかね」
加藤「努力します」
工場長「じゃあ、3日間だけ待とう」
自衛隊員C「攻撃中止!」

郷「それはどう言うこと?」
陽子「シーモンスが船を襲う理由がないっていう……。そのために保険金の3分の1は父さんが」
郷「そりゃひどい。船長、知っていたら教えてください。なぜ海を渡るのか。天と地の怒りとは何か」
陽子「父さん。天と地の怒りって何なの?ショックから立ち直ってくれたら、お役に立てると思うけど」
海を見つめる高村。
郷『船長をもう一度船に乗せてやりたい。そのためにも早く怪獣の謎を解かねば』

N「2日が過ぎた」
アキ「はい、アイスクリーム。次郎」
坂田「怪獣に居座られて困ってるそうだな」
郷「ええ。助太刀怪獣がいるもんですからね」
アキ「でも怪獣ながら頼もしいと思うわ。女性のピンチを救ってくれるんですもの」
郷「そんなロマンチックなもんじゃないよ。シーモンスがなぜ海を渡るのか。今その謎を解くのに一生懸命なんだ」
次郎「シーモンスのおしり囲ってさ、怪獣動物園をつくればいいと思う」
郷「怪獣動物園?」
鳥かごに手を入れる次郎。
次郎「いて!」
アキ「どうしたの?次郎」
次郎「鳥にかまれちゃった」
アキ「卵にさわろうとするからよ。今ひなをかえそうとして一生懸命なんだから。見て。こんなにかわいいのよ」
郷「卵か。怪獣もは虫類だから卵生だ。とするとシーモンスは卵を生みに……」 坂田「その可能性は十分にあるな」
アキ「卵を生むためにわざわざ生みを渡って?」
次郎「魚だってウナギだって卵を生むために遠い海からやってくるんだよ」
郷「間違いない。シーモンスは産卵に来たんだ」
アキ「じゃあ、船を襲ったりしたのは?」
郷「船を襲った理由か。違うかな……」
アキ「思いついたの?」
郷「こんなのはどうだろう。鳥は卵の殻をつくるために小石や貝殻をついばむ。海神丸には卵の殻となるべき宝石の原石が積んであった」
坂田「郷、きっとその通りだよ」

加藤「なるほど。鳥でも産卵時期には母鳥は気が立っているというな。日頃おとなしいシーモンスが海を渡る時は気をつけろという意味がわかったぞ」
岸田「するとセメント工場を襲ったのも宝石があるからかも知れないなあ」
上野「郷!これでシーモンスが海神丸を襲った理由も成り立つわけだ」
加藤「高村船長の潔白は証明された。早く知らせてこい」
郷「はい」

病院に着くMATビハイクル。出てくる高村や陽子たち。
郷「船長。喜んでください。シーモンスが船を襲った理由がわかりました」
陽子「もういいんです」
郷「え?」
陽子「郷さんのご親切は一生忘れません」
立ち去る高村と陽子。
郷「陽子さん!」
船員「親父さんのショックはもう直らないんだ」
郷「そう診断されたのか」
船員「ああ。船に戻れず一生廃人同様だってよ。ちくしょう」
社員「そのかわり、賠償金は支払わなくてすむんだ。何が幸いするかわからんもんだ。ははは」
船員「じゃ」
トランシーバーが鳴る。
郷「はい、郷です」
丘『ただちに第2地区に急行してください。自衛隊が急にシーモンス攻撃を開始すると言い出したんです』
郷「何だって!」

攻撃体勢に入る戦車部隊。
加藤「約束の期日は明日のはずです。それをなぜ急に」
工場長「海底探索の結果、東京湾にはあの津波怪獣がいないことがわかったんだ」
加藤「何ですって?本当ですか」
うなずく自衛隊員C。
工場長「津波の心配さえなければ、後はこっちのもんだ」
郷「そうはいきません。まだ天と地の怒りがあります」
工場長「何だね?その天と地の怒りって」
加藤「今、その謎を解いています。謎さえ解ければ攻撃の方法も発見できます」
工場長「待てないな!」
自衛隊員C「攻撃開始!」
攻撃を始める戦車部隊。暴れるシーモンス。
上野「シーゴラスは本当に逃げちまったんだろうか」
地中より現れるシーゴラス。
郷「シーゴラスだ!」
加藤「いかん!シーゴラスは地中へもぐっていたんだ」
シーモンスの角が光る。シーゴラスの角が光る。空中で放電し、暗雲が立ちこめ風が強くなる。
岸田「隊長。天と地の怒りとは」
加藤「ああ」
郷「津波より恐ろしいことが起こるぞ」
2匹の怪獣の近くに龍巻が起こる」
南「龍巻だ!」
加藤「危ない!避難しろ!」
各人「はいっ!」
土砂や建物そして自動車が舞い上がる。崩れるビル。舞い上がる河原。逃げるMAT隊員。工場職員。
加藤「まさに天と地の怒りだ」
倒れる観覧車、ビル。津波も起こる。大木が折れ、倉庫が舞い上がる。角を光らせるシーゴラス。風がおさまる。あたりが静かになり、空からトラックが落ちてくる。
N「東京は2大怪獣に占領された。都民は避難し、大都会は死の町と化した」
夕方になり、なおもじゃれあう2匹の怪獣。

岸田長官「MATはいったい何をやっとるか。東京は怪獣園ではないんだぞ」
加藤「何しろ相手は龍巻を」
岸田長官「だから君たちMATの手でやらなければならんのだ。怪獣撃退の具体策はどうなっとるか」
加藤「はっ。現在新兵器を開発しております」
岸田長官「新兵器?」
加藤「はっ。どうぞこちらへ」
模型をセットする南。
加藤「これがいま開発中のレーザーガンSP70。怪獣が放電する瞬間を狙って、この角の部分を撃ちますと……。おい」
南「はい」
角の模型が放電を始める。レーザーガンの模型からレーザー光線が発射され、角の模型の片方が破壊される。
岸田長官「怪獣の角を破壊して、龍巻を止めさせようというのか」
加藤「はっ。そうです」
長官「技術的には可能だとしても、実際的には効果があるのか?」
加藤「それはやってみなければ」
長官「いつできる」
加藤「一週間」
長官「遅い。技術陣の総力を結集して2日で完成させろ。一刻も早く都民に安らぎを。わかったな」
加藤「はっ」
長官「都民の間ではMAT不要論すらささやかれておる時だ。しっかりしてくれよ」
 
N「これより2日後、レーザーガンSP70が完成した。いよいよ二大怪獣と決戦の時がきた」
加藤「上野」
上野『はいっ』
加藤「郷」
郷『はいっ』
加藤「作戦開始」
郷『了解』
急行するMATアロー。
郷「許せ。おまえたちは力を持ちすぎた」
上野「さあいくぞ!」
2匹の怪獣に攻撃するMATアロー。
加藤「よし。出発!」
発進する2台のMATジープ。
加藤「地上攻撃を開始する。上野、郷。退避せよ」
上野「了解」
郷「了解」
シーゴラスの角に照準をあわせる加藤。
加藤「スピードを落とせ」
丘「はい」
2匹の怪獣の角が光る。レールにジープのタイヤがはまる。レーザー光線が発射される。だがはずれてしまう。
加藤「あっ」
暗雲が立ちこめ、雷が鳴り、龍巻が起こる。
南「今だ、撃て!」
岸田「よし」
シーモンスの右目にレーザー光線を命中させる。
加藤「丘くん。退避だ」
丘「はいっ」
激しい風で建物が破壊される。
南「ううっ」
暴れる2匹の怪獣。接近するMATアロー。建物の影に隠れる加藤と丘。
加藤「上野、郷。龍巻は危険だ。その場を離れろ。離れるんだ」
 上野「了解」
郷「了解」
2匹の怪獣を見にくる高村と陽子。
陽子「父さん。あれがシーモンスとシーゴラスよ。いつも見たがってたでしょ。父さん」
2人に気づく郷。シーゴラスの角が光る。光に目を押さえる高村。ショックで我にかえる。
高村「あれだ。あれが天と地の怒りだ」
陽子「父さん!」
高村「陽子……」
泣き出す陽子。
郷『陽子さん……』
龍巻に巻きこまれ、きりもみ状態になるMATアロー。
上野「郷!郷!郷!隊長、郷がやられました」
ウルトラマンに変身する郷。

回転し、暗雲をまきちらすウルトラマン。明るくなり、風がおさまる。
丘「隊長。風がおさまったようです」
加藤「よし」
シーゴラスの首をつかんで投げるウルトラマン。迫るシーモンス。シーモンスの首をもって持ち上げ、後ろへ投げるウルトラマン。迫るシーゴラス。抱えこんで投げつけるウルトラマン。そのまま押えこむ。持ち上げようとするが、シーゴラスの方がそのまま倒れてしまう。再びつかみあげて投げ飛ばすウルトラマン。後ろからシーモンスの体当りを受けるウルトラマン。そのままシーゴラスの前へ転がり、シーゴラスにけられる。立ち上がろうとするウルトラマン。シーモンスが頭の上にウルトラマンを乗せて宙へ投げる。倒れるウルトラマン。
南・岸田「隊長!」
加藤「いくぞ」
両名「はいっ」
2匹の怪獣に交互に体当りを受け、転がるウルトラマン。2匹の怪獣の間でふらふらと立つウルトラマン。2匹の怪獣はそれぞれ角を光らせ、ウルトラマンに放電する。ウルトラマンのカラータイマーが点滅する。レーザーガンを発射する加藤。吹き飛ぶシーゴラスの角。怪獣の攻撃からのがれてシーゴラスにせまるウルトラマン。のどへチョップを加え、片手で投げつける。さらにチョップを加え、投げる。シーゴラスを持ち上げ、投げるウルトラマン。逃げ出すシーゴラス。追うシーモンス。海へ去っていく2匹の怪獣。飛び去るウルトラマン。

上野「郷……」
照明弾が撃たれ、海上に救命ボートにのった郷が見つかる。
郷「おーい。おーい」
上野「郷。この野郎!」

出航する船。
陽子「父さーん」
高村ら船員「おーい」
陽子「父さーん」
高村ら船員「おーい」
シーモンスの歌を歌う高村、陽子。

第16話 『大怪鳥テロチルスの謎』

夜のヨットの上で踊る若者たち。潜水服で近づく三郎。
横川「おい。飲めよ」
船にたどり着く三郎。
横川「楽しいかい?」
由起子「ええ、とっても。まるで夢を見てるみたい」
爆弾を取り出す三郎。
由起子「これ何かしら?雪だわ」
横川「真夏の雪。はっはっは。ロマンチストだな。由起子さんは」
船に爆弾を取りつける三郎。海へ潜る。上空から奇怪な音が聞こえる。
若者A「ん?何だ?」
上空から巨大な鳥が急接近する。風圧で海へ飛ばされる由起子と横川たち。その直後、船は爆発する。

警官A「ええ……こちらヨットハーバーの現場。死者3名、重傷2名です。ええ……破壊された船の破片に硝煙反応あり。ええ……ダイナマイトの爆発と思われます」
警官B『はい了解』
助け出された由起子と横川。泣き叫ぶ由起子。

バンを運転する三郎。
三郎「ヘッ。ザマあみろ。おれにだってやれるんだ。はっはっは」
前方の検問に気づく三郎。
警官「止まれ!止まれ!危ない!」
検問に突っこむバン。パトカーの前で止まる。取り囲む警官。
警官「待て!」
三郎「ちくしょう!はなせ!ちくしょう。はなせ!」
手錠をかけられる三郎。
N「逮捕された松本三郎は犯行を自供した。そして事件は落着したかにみえた」 
電話が鳴る。
上野「はい、こちらMAT。ああ郷ですか?いますよ。おい、恋人からだぞ」 郷「恋人?」
上野「うん」
郷「はい郷……。あっ何だ、アキちゃんか。どうしたんだい?えっ?おれに会わせたい人がいる?」
アキ「私の友達でね、小野由起子って人なの。ほら、この前のヨット爆破事件の人よ。ぜひ郷さんに会わせてくれって頼まれちゃってるの。何か怪獣を見たとか言ってね。かわいそうなくらい、しょげちゃってるの」
郷「怪獣を見たっていうんなら、会わないわけにいかないな。よし、すぐ行く」 
郷「郷です」
アキ「こちらお友達の……」
由起子「小野由起子です」
郷「怪獣を見たそうですね」
由起子「ヨットに襲ってきたんです」
郷「おかしいなあ。あのヨットはダイナマイトで爆破されたはずだ。犯人も犯行を自供したでしょう」
由起子「サブちゃんが仕掛けた爆弾は、その後で爆発したんです」
郷「君は一週間もそのことを黙ってた。どうしてです。答えたまえ。犯人は君を殺すためにダイナマイトを仕掛けた。そのために3人の若者が死に、2人が傷を負った。君は今その犯人をかばうような発言をしている」
アキ「由起子さんとそのサブちゃんて子、幼なじみなのよ。一緒に東京へ出てきたんですって」
由起子「サブちゃんのことはどうだっていいんです。でも私は見たんです。黒い気味の悪いものが空から」
横川「何をバカなことを言ってるんだ。松本三郎はぼくたち二人の中をねたんでいる。婚約を発表したんで、それで逆上したんだ。すべてやつのせいですよ。君は疲れてるんだよ。これから別荘へ行こう。なあに、青い海とたわむれてればスカッとした気分になるさ。さあ行こう。失礼」
アキ「あの人、YM工業の跡取り息子でしょ」
郷「ダイヤモンドに目がくらみってわけか」
アキ「どう思う?由起子さんの話……」
郷「さあ」
アキ「サブちゃんて子があんな恐ろしい犯罪を犯したんで、気にしてるんじゃないかしら」
郷「一応調べてみる」
アキ「郷さん」

船を調べる郷。
郷『これは上からの圧力でできた傷だ。ダイナマイトは船の横で爆発したのだから、圧力は下から上の方へかかっているはず。やはり何かが襲ったのだろうか』 ちらつく白い雪を見る郷。
郷「まるで雪だ」

取調べ室。
三郎「おれ、MATになんか用はねえぜ」
郷「正直に答えてほしい。君は本当にヨットを自分の手で爆破したのか?」
三郎「あたりめえだ。おれが一人でやったんだ」
郷「君のつくった時限爆弾はそれほどに威力がないはず」
三郎「バカにすんな!おれがつくったんだ。1月かけてな」
郷「そんなに由起子さんがにくいのか」
三郎「にくいねえ。あいつおれのこと、かっこ悪いから嫌いになったと言いやがった。ガキの頃からずっと一緒にいて、結婚する約束をしてたんだ。おれはこれっぽっちも後悔なんかしちゃいねえぜ。死んでせえせえした気持ちよ」
郷「由起子さんは死んじゃいないよ」
刑事「困るなあ。それを言っちゃ。MATだから特別便宜をはかったって言うのに」
三郎「おい!いま言ったことは本当か!由起子は生きているんだな。横川は死んじゃいねえんだな」
刑事「おい。むしろ喜ぶべきことじゃないか」
三郎「冗談じゃねえやい。やつらをこのまま元気にのさばらしておいてたまるか!ちきしゅう!ちきしょう!ちきしょう!」
刑事「連れてけ!」
三郎「待ってくれ。おれがやったんじゃねえんだ。ホント言うと、あれは怪獣がやったんだ」
郷「怪獣?」
三郎「空からよ、黒いもんがよ」
刑事「バカもん!いいかげんなことをぬかすな!」
三郎「でも……ホントなんだ。信じてくれよ。信じてくれよ」
刑事「連れてくんだ」
三郎「ホントなんだ。おれじゃねえんだ。おれじゃねえんだ」
出て行く三郎。
郷「空から黒いものが……。小野由起子も同じことを」
刑事「いやあ。べっぴんを恋人にもつと悲劇ですな。小野由起子も同じ工場に勤めてたんですがね。ある日会長の息子、今の婚約者です。その目に止まって本社の秘書課にひっこぬかれたってわけです。松本とすりゃあ一緒になるつもりでいたんですからなあ。カッとくるわけです」
郷「失礼します」

海岸の由起子。
由起子「郷さん」
郷「君の言ったこと調査して見たいんだ。協力してくれるね。ヨットハーバーへ行こう。あの夜のことを全部知りたいんだ」
うなづく由起子。ボートに乗る郷。
郷「さあ」
横川「おい、待ちたまえ。あの事件は刑事事件として決着しているはずだ。それを今さらほじくりだしてどうなる」
郷「今、一人の人間が死刑になるかどうかの瀬戸際に立っている。ほおってはおけないよ」
横川「やつは3人の人間を殺している。死刑になって当然だ」
郷「君はこのことについて一週間悩んだはずだ。どうする」
横川「行くな。由起子さん」
白い雪がちらつき出す。一人ボートに乗る郷。エンジンをかけるとエンジンから赤い煙が吹き出す。郷を追う由起子。
由起子「待って!郷さん!」
横川「君、待ちたまえ」
海に入る由起子。止まるボート。
横川「由起子さん!」
目を押さえる由起子。
郷「どうしたんだ!おい、しっかりしろ!さあ」
由起子「痛い、目が……。目が痛い!」
横川「どうしたんだ!」
由起子「目が……。目が痛い」
郷「大丈夫か。しっかりしろ」
由起子「目が……」

病室の由起子。
N「由起子が海岸で目を痛めた。その時ボートの排気ガスが赤くなっていたのはなぜか」
入ってくるアキ。
アキ「どうなの?」
郷「猛毒性のガスに目をやられたらしい」
アキ「由起子さん、痛む?」
由起子「大丈夫よ」
郷「しかし、どうしてこんなことになったのかなあ」
横川「何を言う。君のせいじゃないか。だいたいMATが刑事事件に首を突っこむからこんなことになるんだ」
由起子「郷さんをせめないで。ボートに近づいていったのは私よ。ああっ」
頭を押さえる由起子。

空を飛ぶ旅客機。
副操縦士「東京着陸10分前です」
機長「了解。あれは何だ!」
接近する巨大な鳥。
副操縦士「鳥だ!」
巨大な鳥と激突する旅客機。爆発する。

N「MATは謎の事故を起こして墜落した旅客機についての調査を開始した」
上野「これがコントロールタワーでキャッチしたテープです」
再生する上野。
機長『あれは何だ!』
副操縦士『鳥だ!』
爆発音。
加藤「鳥か……。郷が扱ってる事件に関わりがありそうだな」
丘「旅客機の残骸の写真ができました」
郷「バラバラになってる。やはり何物かと激突したんだ」
岸田「郷。旅客機を襲ったのがその鳥だとすると、ヨット事件との共通点は何だ」
郷「共通点。それは二つの事件が夜に起こっているということ。推測が許されるなら、そいつは夜行性で音に対して凶暴性を発揮する」
南「音に対して?」
郷「ヨットハーバーであのヨットだけが襲われたのは、パーティで音楽を大きく出していたからだと思います」
上野「旅客機の爆音もすごいもんだ」
電話が鳴る。
丘「はい。郷隊員、電話です」
郷「はい。はい、郷です。え?松本三郎が脱走した?」

逃げる三郎。病室に着く郷。
刑事「松本は、まだここを知らんようです」
由起子「郷さん」
郷「ああそうだよ」
由起子「私、恐い。殺されます」
郷「大丈夫。警察が警備してるよ」
由起子「私を殺すためにサブちゃんは脱走したんでしょ」
郷「ヨット事件の確証がつかめそうなんだ。松本くんにこれ以上犯罪を犯させないようにするからね」
病室に入るアキ。
由起子「あっ。待って、郷さん。行かないで。この間、郷さんが海に来てくれた時、私はあなたを選びました。いつまでもそばにいて。お願い」
郷「由起子さん」
見ているアキ。後ろから横川が肩を叩く。外へ出る二人。
横川「郷隊員の態度どう思う?」
アキ「どうって?」
横川「朝から晩までああやっていちゃついてるんだ。あんた恋人なんだろ?しっかりつかまえといてくれよ。困るよホントに」

指令室に入ってくる郷。
岸田「よう。松本は逮捕されたのか」
首をふる郷。
加藤「郷。ちょっと来てくれ」
郷「何か……」
加藤「実はな、今日YM工業の社長から抗議があってな。MATの隊員が息子の婚約者をそそのかして困ると言うんだ」
郷「調査に協力してもらっているだけです。心外だなあ」
加藤「君の仕事熱心がそういうふうに受け取られては大変なマイナスだ。脱走犯は警察にまかせて、君は怪鳥を追うんだ。いいな」
郷「はい」
加藤「南、上野。パトロールに出てくれ」
両名「はいっ」

パトロールするMATアロー。
南「こちら南。現在パトロール中、異常なし」
丘『了解』
都市の上空を飛ぶ怪鳥。口から白い糸を吐き出す。ビルの屋上に巻きつく白い糸。接近する自衛隊機。
自衛隊員A「見ろ」
自衛隊員B「高度を下げろ」
攻撃する自衛隊機。
上野「あっ。南隊員、ほら!」
怪鳥に激突する自衛隊機。
南「なんて恐ろしいやつだ」
 飛び去る怪鳥。

歯をみがく次郎。
次郎「あっ。夏なのに雪が降ってらあ。あっ!」
ビルの上空に怪鳥の糸でできた銀の城ができている。
次郎「大変だ。郷さんに知らせなくちゃ」

銀の城を見守る人々。かけつけるMAT隊員。
岸田「いったい何だろうな」
丘「何かの巣みたいね」
南「夕べこの一帯を怪鳥が飛んでいたんです」
加藤「おそらくその鳥がつくったんだろう」
走り回る自動車。電工掲示板に空気の汚染度が表示されている。銀の城から赤い煙が吹き出す。倒れる人々。
加藤「毒ガスだ。マスクをしろ」
隊員「はいっ」
郷「由起子さんが目をやられた時もこんなガスが!」
加藤「排気ガスと化合して猛毒になるんだ。この辺一帯の交通を遮断しろ。特に風下の地域は厳重にな」
隊員「はいっ」

カサを逆さにして白い雪を集める次郎。
次郎「わー。すごいすごい雪だ。ほら、ねえちゃん。こんなに集まったよ」
アキ「ホントに雪みたいね」
坂田「おい二人とも。郷が今調べに行ってるから、それまであんまりさわったりしない方がいいんじゃないのか?」
アキ「郷さんは仕事仕事で私達のことなんか考えてないわよ」
かけつける郷。
郷「坂田さん。雪がなくなるまでエンジンをかけないでください」
雪のたまったカサをほおりすてる郷。
アキ「何するの!」
郷「これは雪なんかじゃない。排気ガスと化合すると猛毒になるんだ」
アキ「郷さんの知ったことじゃないでしょ」
郷「バカ!」
アキをたたく郷。電話が鳴る。
郷「いったいどうしたんだ。素直なアキちゃんはどこへいったんだ」
坂田「アキ、電話だぞ。由起子さんからだ」
由起子「あなたから郷さんに伝えてほしいの。今降ってる雪、かすかに硫黄のにおいがするでしょ」
アキ「うん、はい。わかったわ。じゃそう伝えるわ」
雪のにおいをかぐ郷。
郷「確かに硫黄のにおいがする。それから何と言ったんだ?由起子さん」
アキ「ヨットが襲われた時も同じにおいがしたって」
郷「これで怪鳥と雪がはっきり結びついた。しかしなぜ硫黄のにおいがするんだろう」
アキ「由起子さんは子供の頃登った硫黄山と同じにおいがするって言ってたわ」 坂田「火山だな」
郷「わかったぞ。こいつを運んでくる気流をさかのぼり、噴火口を見つけりゃいいんだ。じゃあ、おれはさっそく」
坂田「気をつけろよ」
郷「はい」
立ち去る郷。
坂田「東北あたりでは風花と言ってね、青空なのに雪がちらつく時がある。まるで花びらのようにヒラヒラ舞うんだな。その風花を見ると、ああもう冬が来たんだなってそう思うんだ」

船で島へ向かう郷。
船頭「悪島まではまだまだあるぞ。発動機を起こそうや」
郷「目がつぶれてしまってもいいのかい?」
船頭「ふぅー。ここんとこ漕ぎつけんから、きついのお。ほら、あれが悪島だ。悪島は悪魔の島っちゅうて誰も近よりもせん。おまえさんは変わったお人じゃあ」 島に上がる郷。
船頭「じゃあ、気ぃつけんなせえよ」
郷「どうもありがとう」
船頭「ああ」
山を登る郷。山が揺れる。
郷「ああっ」
噴火口へたどりつく郷。中に怪鳥がいる。
郷「こちら悪島の郷です。怪鳥を発見しました」

加藤「よし、ただちに出動する。さあ、大公害のもとを絶つんだ」
隊員「はいっ」
急行するMATアロー。
加藤「よし。噴火口へロケット弾を撃ちこめ」
加藤『やつが出ないうちにたたきつぶすんだ』
南「了解」
攻撃を始めるMATアロー。銃をもって近づく郷。山が崩れ、中から怪鳥が出てくる。
郷「出たな怪鳥め!」
攻撃するMATアロー。飛び上がる怪鳥。風圧で崖に宙ずりになる郷。空を飛ぶ怪鳥を追い攻撃するアロー。力尽きて落ちる郷。ウルトラマンに変身する。

空飛ぶ怪鳥に光線を当て、地上へ落とすウルトラマン。怪鳥の首をつかむウルトラマン。だがその大きな翼のために倒されてしまう。飛んで逃げる怪鳥。立ち上がるウルトラマン。反転して体当りする怪鳥。持ち上げられるウルトラマン。空中から落とされる。飛び続ける怪鳥。飛び上がって追うウルトラマン。空中で激突する。
N「夏の雪を降らしていたのは怪鳥テロチルスだった。東京にできた巨大な銀の城はいったい何の目的でつくられたのか。そして三郎に狙われる失明した由起子の運命は」
空中でもみ合う怪鳥とウルトラマン。空中から突き落とされるウルトラマン。降下して倒れたウルトラマンを攻撃する怪鳥。
N「ウルトラマンに変身した郷隊員は、テロチルスとの壮烈な戦いを展開していた」
怪鳥をキックして立ち上がるウルトラマン。首をつかむ。突進した怪鳥へチョップを与える。

第17話 『怪鳥テロチルス東京大空爆』

N「突然、一晩のうちに東京にできた銀色の城。それは大都会が吐き出す亜硫酸ガスと化合すると、恐ろしい毒ガスとなる白い雪のような粉の塊であった。それをつくった怪鳥テロチルスが悪島火山の噴火口に潜んでいることを突き止めたMATは、悪島に乗りこみ決戦を挑んだ。今、ウルトラマンとテロチルスとの壮烈な戦いが続いている」
怪鳥の首をつかむウルトラマン。振り払う怪鳥。怪鳥の背中へチョップを与えるウルトラマン。続いてキック。倒れる怪鳥。怪鳥の足をつかんで振り回すウルトラマン。飛んで逃げる怪鳥。追うウルトラマン。光線を発するウルトラマン。だが怪鳥には当たらない。空中で激突するウルトラマンと怪鳥。再びはなれ、向きを変えて向かい合う。スペシューム光線を発するウルトラマン。怪鳥に当たるが、あまり効果がない。鼻から怪光線を発する怪鳥。苦しみ海へ落ちるウルトラマン。飛び去る怪鳥。飛ぶMATアロー。
加藤「南、岸田。郷を手分けして探すんだ」
南「郷!」
岸田「郷!あっ郷だ!郷!」
海から現れる郷。
郷「おーい!おーい!」

司令室。
加藤「鳥を相手に空で戦ったのはまずかった。あのスピードを制して倒すのはなみたいていのことじゃない。岸田、怪鳥について何かわかったことは?」
岸田「はい。怪鳥の学名はテロチルス。白亜期にテラノドンと共に生息していた巨大翼竜です。肉食の凶暴なやつです」
丘「東京にできた銀の城がどういう目的でつくられたのか早く解明すべきだと思います」
上野「うーん。おれはあれはやつの巣だと思うな」
丘「巣は悪島の噴火口なんでしょ」
加藤「巣だと断定するのはまだ早い。上野、郷」
両名「はいっ」
加藤「地震研究部へ行って、最近の悪島火山の活動状況を調べてくれ」
両名「はいっ」
加藤「南」
南「はっ」
加藤「銀の城の処理法は?」
南「はっ。火炎放射器で焼くことも考えたのですが、ガスが発生する恐れがあります。そこでこの熱線砲で焼くことにしました。これなら毒ガスが出る心配はありません」

N「松本三郎。ヨット爆破事件の容疑者である。彼は殺したはずの由起子と横川宏が元気でいることを知り、警察を脱走した。今や復讐の鬼と化し、入院した由起子と横川を再び狙っているのだ」

地震研究部。
研究員「最近この火山帯の活動が活発化してきました。特に悪島の胎動が激しくなりました」
上野「じゃあ、噴火の恐れが……」
研究員「ええ、ありますね」
郷「噴火を予知して巣を移そうとしているんだ」
上野「しかし、なぜわざわざ東京を選んだんだ」
研究員「それは条件がよく似ているからじゃないでしょうか」
上野「条件が似ている?」
研究員「ええ。東京の気温は毎年のように上昇していますからね」
郷「テロチルスは東京を住みかにしようとしているんだ」

N「MATは銀の城を怪鳥テロチルスの巣であると判断した。ただちに強力な熱線砲が現場へ運ばれた」
熱線砲を輸送するMATジャイロ。

警官が警備する病院。バイクが現れる。
警官A「待て!止まれ!」
三郎「どけ!」
バイクの三郎を追う警官たち。
玄関の前で止まる。取り囲む警官。
三郎「よるな!」
ジャンバーを脱ぐ三郎。体にダイナマイトを巻きつけている。
三郎「このダイナマイトのスイッチを入れれば、病院ごとふっとぶぜ」
刑事「撃っちゃいかんぞ」
刑事の銃を奪う三郎。
三郎「案内してもらおうか。行け。行け!」
病室に入る三郎と刑事。
由起子「郷さん?宏さん?」
三郎にさわって正体に気づく由起子。
由起子「ああっ!」
三郎「横川はどこだ?」
刑事「彼はこのところ来ない。おまえに脅されてな」
三郎「ふふふ。別荘へ行ったんだな。よし来い」
由起子「どうしようって言うの?」
三郎「別荘へ行くんだよ!」
由起子「いやよ。はなして」
由起子をたたく三郎。
三郎「おれの体にはダイナマイトが20本くっついているんだ」
由起子「えっ?!」

バイクに乗って町を走る三郎。後ろに乗る由起子。
由起子「お願いよサブちゃん。これ以上罪を重ねないで。お願い」
三郎「しっかりつかまってなきゃアウトだぜ」
由起子「お願い。宏さんまで殺さないで!」
三郎「うるせえ!」
前方に検問がある。
三郎「くそお!」
警官B「止まれ!」
途中で曲がって別の道に入る三郎。追う警官。路地に入る三郎。

熱線砲を空輸するMATジャイロ。
南「丘隊員。もっと右だ。右右」
屋上へ熱線砲をおろす。
南『熱線砲スタンバイOKです』
加藤「よおし。そのまま待機しろ」
南「了解」
バイクで現れる三郎。マンションの入口の前で止まるバイク。
刑事「松本!待て!」
加藤「バカ!そこは危険地帯だ!」
郷「由起子さん!」
三郎「来るな!来るんじゃねえ!」
郷「松本くん!バカなマネはやめたまえ!」
加藤「おい。そこは怪鳥テロチルスの巣だ。いつ毒ガスに変化するともかぎらん。戻ってこい」
刑事「松本!おまえは完全に包囲された。おとなしく来い!」
バイクのエンジンをふかす三郎。赤いガスが吹き出す。
郷「危ない!危ない、下がって!」
加藤「このままだとあの二人はガスでやられてしまいます。時間をかけて説得しましょう」
郷「それがいい」
刑事「わかりました。警官隊はさがれ!」
警官C「さがれ!」
中へ入る三郎と由起子。
由起子「郷さん!」
郷「由起子さん!」
加藤「戻ってこい!」
郷「よし。おれがつれてくる」
刑事「やつはダイナマイトを身につけている。刺激したらかえって危険だ!」
上の階から顔を出す三郎たち。
加藤「あそこだ!」
刑事「夜になれば忍びこめます。それまで待った方がいいでしょう」
南『隊長!巣を焼くわけにはいきません』
加藤「ああ。人命の安全が大事だ。しばらくこのまま待とう」

夕刻。トランシーバーが鳴る。
加藤「私だ」
丘『隊長。テロチルスが現れました』
加藤「何!」
丘「自衛隊機が攻撃を始めます」
 怪鳥に攻撃する自衛隊機。怪鳥に激突し爆発する。
丘「たいへんです。テロチルスが東京へ向かっています」

夜。マンションの前で待つMATと警察。
加藤「松本くん聞こえるか。聞こえたら返事をするんだ!もうすぐテロチルスがやってくる。早く逃げるんだ。松本くん!危ないぞ!」
三郎「そんな脅しにのるもんか」
加藤「松本くん。聞こえるか!」
岸田「あっ!テロチルスだ!」
現れるテロチルス。
 加藤「攻撃!」
郷「はいっ」
銃を撃つMAT。怪鳥の起こす風で立てなくなる。マンションの上へ降りる怪鳥。ゆれるマンション。
三郎「くそお!あん時の怪物だ」
由起子「ヨットを壊した怪鳥よ!サブちゃんは無実なのよ。早く逃げましょ。私が証言するわ。サブちゃんの無実を」
三郎「信用できるもんか。おれは心事ねえ。おれの信じられるのはこのダイナマイトだけだ」
由起子「サブちゃん……」
三郎「ここが一番安全な場所かも知れねえな。誰も来ないし」
泣く由起子。かけつける機動隊員。
機動隊員A「射撃用意!」
郷「待ってください。テロチルスは夜行性です。暴れたら手のつけようがありません」
加藤「MATは明朝を期して反撃に転じます。今夜中に付近の住民を避難させるんだ」
各人「はいっ」
糸を吐く怪鳥。

避難の準備をする坂田兄弟。
坂田「光化学スモッグだの毒ガスだの東京も住みにくくきなったもんだ。おいアキ。何をボンヤリつっ立ってるんだ。早く乗んなさい」
郷「この前ぶったことをまだ起こってるのかい。おれもついカッときたもんで……。ごめん、このとおり謝るよ。だからきげんを直して。さあ」
車に乗るアキ。
アキ「郷さん。由起子さんを必ず助けだしてね」
郷「うん。必ず」
次郎「出発進行!」
坂田「よおし」
郷「坂田さん気をつけて」

糸を吐き続ける怪鳥。
加藤「松本。明朝を期してテロチルス攻撃に移る。そのままではとても危険だ。早く降りてこい」
横川「警察はいったい何をしてるんです。早く由起子さんを取り戻してくださいよ」
刑事「君、ホシはダイナマイトを持ってるんだ」
横川「犯人を射殺してでも取り戻すべきだ」
加藤「ここにはテロチルスがいる。ウカツには行動できん」
横川「MATもMATだ。あんな鳥の化物一匹殺せなくてどうします」
上野「何!?」
横川「そう言われたくなかったら退治してみせてくれ。こうなったの元はといえば君が悪いんだよ」
郷を指す横川。
上野「あっ、松本が!」
ベランダに出てくる三郎たち。
三郎「横川!」
由起子「宏さん!」
横川「由起子さん!」
三郎「由起子がほしかったらここまで登ってこい。話し合おうじゃねえか」
刑事「松本がああ言っている。早く、一緒に行きましょう」
横川の手を引く刑事。だが、横川は動こうとしない。
由起子「宏さん!」
刑事「今、彼女を救えるのはあんたしかいない。さあ、行きましょう」
三郎「どうした!由起子を取り戻したくはねえのか」
刑事「横川さん!」
横川「ウソだ。返すなんてウソだ。ぼくを殺すつもりなんだ。ぼくはいやだ」
逃げ出す横川。
三郎「逃げていったぜ。あいつはそういう男なんだよ。ばっきゃろう!」
泣き叫ぶ由起子。糸を吐き続ける怪鳥。

歌を歌う由起子。
由起子「夏になればわらしこ泳ぎ……」
三郎「うるせえ!静かにしろ!」
由起子「何?これ?」
三郎「雪だよ。真夏の雪だ」
由起子「このにおいはやっぱり硫黄のにおいね」
三郎「まったく怪鳥さまさまだ。まるでおれたちの守神みたいなもんよ」
由起子「サブちゃん。覚えてる?なまはげ。あの日もずいぶんふぶいてたわね」 回想。雪の中、なまはげが家に来る。
なまはげ「はっはっは。あやつらはどこだ」
母親「ご苦労さまでなんしぇ。どうぞ上がってくだせぇ」
なまはげ「あやつらはどこだ」
母親「それがそこらへんで遊んどるんし。三郎!由起子!」
物置の戸を開けて入ってくるなまはげ。隠れていた子供の頃の三郎と由起子。
なまはげ「おまえ何してるんでぇ!」
泣き出す三郎。三郎を助けようとする由起子。
子供の頃の三郎「恐いよお!助けて!」
なまはげ「はっはっは」
子供の頃の三郎「由起ちゃん、助けて!」
三郎「あん時は恐かったな。だけどおまえは泣きもしなかったな」
由起子「私、臆病なくせにいざとなると恐くないの。ずうずうしいのかな。ふふふ」
加藤「松本くんにつぐ!あと30分で攻撃を開始する!とても危険だ。すみやかに降りてこい」
三郎「帰んな」
由起子「サブちゃんは?」
三郎「おれはいいんだ。早く行けよ」
由起子「いや。私もここにいるわ」
三郎「バカ。これから大変なことになるんだぞ」
由起子「サブちゃんのそばにいたいの。自分でそう決めたの」
三郎「死んでもいいのかよ」
うなずく由起子。由起子を抱く三郎。
由起子「サブちゃんの顔がみたいわ」
由起子の包帯を取る三郎。三郎の顔が見える。
三郎「おれ自首するよ。おまえを死なせたくないもんな」
由起子「サブちゃん」
ベランダへ出る三郎。
三郎「おーい。これから……」
射撃する機動隊員。腕に当たる。
由起子「サブちゃん。あっ!」
南「やめたまえ!」
郷「待て!撃つのをやめろ!」
暴れ出す怪鳥。マンションが崩れていく。
郷「由起子さん中へ入るんだ!」
飛び上がる怪鳥。攻撃するMAT。崩れるマンション。
三郎「この野郎!」
ダイナマイトを怪鳥に投げる三郎。爆発する。マンションへ近づく怪鳥。
郷「くそう!」
加藤「郷!戻れ!戻るんだ!」
マンションに入る郷。
由起子「郷さん!」
郷「由起子さん!」
崩れるマンション。落ちてきた天井の下敷になる郷。攻撃するMAT。
加藤「右側へ回るんだ」
南「はいっ」
郷「由起子さん!」
ウルトラマンに変身する。

上野「あっ。ウルトラマンだ」
加藤「何!」
飛び上がるウルトラマン。ウルトラスピンキックを与える。倒れる怪鳥。崩れるビル。立ち上がる怪鳥。くちばしを振り回して攻撃しようとする怪鳥。口を押さえるウルトラマン。翼で攻撃され、倒れるウルトラマン。崩れるビル。立ち上がったウルトラマンへ再びくちばしで攻撃しようとする怪鳥。口を押さえるウルトラマン。翼で攻撃しようとするが、それも押さえ首を持って投げ飛ばす。上から飛びかかるウルトラマン。足を持って振り回し投げ飛ばす。地面にたたきつけられた怪鳥の背中に飛び乗るウルトラマン。両翼をつかむ。翼を動かし、ウルトラマンを振り払う怪鳥。倒れるウルトラマン。飛び上がる怪鳥。体当りをかわすウルトラマン。飛び上がる。空中で怪鳥の足をつかむ。回転して怪鳥を投げ飛ばす。地上へ落ちる怪鳥。飛び去るウルトラマン。

救急車に回収される三郎
由起子「サブちゃん。サブちゃん。サブちゃん」
郷「由起子さん」
由起子「郷さん。サブちゃんが」
加藤「郷!」
郷「隊長!」
由起子「サブちゃん。サブちゃん」
三郎「由起ちゃん。好きだよ」
息絶える三郎。
由起子「あ……」
加藤「熱線砲発射」
怪鳥の巣に熱線を当てる。解けていく銀の城。

墓参りする由起子。
由起子「どうもありがとうございました」
アキ「どうするの?これから」
由起子「初めからやり直しよ。サブちゃんの分までがんばるわ」
郷「君なら大丈夫。やれるよ」
由起子「お世話になりました。お先に」
アキ「さよなら」
由起子「さよなら」
アキ「私も初めっからやり直すわ」
郷「何を?」
アキ「何もかも」
郷「何もかも?」
アキ「そう。何もかも」
郷「おい!アキちゃん!」
アキを追う郷。二人そろって歩いていく。


第18話 『ウルトラセブン参上!』

加藤「このあいだ奥さんにあったよ。来月だって?おめでた……」
梶『なに?来月生まれるのか。おれはまだふた月あると思ってたんだがなあ』
加藤「おいおい 、親父になる男が無責任だぞ」
梶『時間の観念がボケてるんだよ。こんな所で長く暮してるとな。はっはっは』
コーヒーを持ってくる丘。
加藤「赤ん坊ができたら、今度こそおとなしく地上勤務に移ることだな。なんならおれと代わってやってもいいんだぞ。マジメな話……」
梶『ご好意はありがたいが、地上はおれのガラに合わないんだよ』
指令室に入ってくる郷。
加藤「そういつまでも独身気分でいるもんじゃないよ。少しは奥さんの身にもなってやるんだな。ああ?はっはっは」
郷「誰と話してるの?隊長」
天井を指す丘。
郷「え?」
丘「宇宙よ」
上野「MATステーションの梶キャプテンさ。はっはっは」
郷「MATステーションのキャプテンと?」
上野「うん」
岸田「隊長とは親友なんだ。大学時代からの」
郷「はあ……」

N「地球を隔たること1000Km、MATステーションでこの日信じられない異変が起こった」
梶「はっはっは」
隊員A「キャプテン!」
梶「その話は今度会った時に。じゃあまたな」
通信スイッチを切る梶。
隊員A「ステーション構内の電圧が急速に下がっています」
 梶「発電機を点検してくれ」
隊員B「はい」
隊員C「酸素計に異常あり。信じられません。ステーション内の酸素が外へ流れ出しています」
梶「計器室よりコントロール室へ。液体酸素タンクを点検せよ」
隊員D『レーダー室より計器室へ。ステーション頭上500mの位置に浮遊物体発見。垂直に接近中』
梶「浮遊物体?」
計器を見る梶。
隊員A「キャプテン、あれを」
隊員C「何だあれは!」
窓に奇怪な生物が付着する。ステーションにはりつく怪獣ベムスター。
梶「攻撃開始!」
ステーションから怪獣のくちばしへレーザーが発射される。
隊員C「レーザー光線を吸収しています」
隊員E『コントロール室より計器室へ。エネルギー反応炉の動力が、浮遊物体に吸収されています』
梶「何てことだ。ステーション内のエネルギーがすべて吸い上げられているわけか」
隊員B「MATステーションよりMAT本部へ。非常事態発生。MATステーションよりMAT本部へ。非常事態発生。MATステーションよりMAT本部へ。宇宙空間より怪獣襲来。正体は……」

通信が切れる。
加藤「MAT本部よりMATステーションへ。応答せよ。梶。応答せよ」
郷「宇宙に……怪獣が?」

怪獣によってステーションの窓にヒビがはいる。
梶「全員退避」
宇宙へ吸い出されようとする隊員を助ける梶。
隊員F「キャプテン。第3ハッチが破壊されました。この先は行けません」
ステーションを飲み込むと、地球へ向かうベムスター。

加藤「遠隔レーダーが、成層圏内を浮遊中の物体をキャッチした。MATステーションを飲み込むほどのやつだ。巨大な生物に違いない。慎重に。見つけ次第撃ち落とせ。ミスは許さん。南、上野、頼むぞ」
両名「はいっ」
出撃するMATアロー。
上野「高度6万メートル」
南「MATアローより本部へ。MATアローより本部へ。北緯56度、東経25度。高度6万5000メートル上空に浮遊物体発見。接近します」
加藤「了解。必ずかたきはとってやる。梶。アロー2号機にミサイル搭載。ただちに発進」
郷・岸田「はいっ」
南たちの前方に現れるベムスター。攻撃を加える。角から光線を発射する怪獣。かわすアロー。逃げるアローを追うベムスター。再び光線を発し、アローに命中する。
郷「MATアロー発見」
郷機、岸田機共に攻撃を加える。光線を発する怪獣。激しい攻撃も効果がない。
郷「ミサイルをくらってもまだ生きてやがる」
岸田『ミサイル弾では撃墜不能』
加藤「岸田。南、上野も傷を負った。帰還せよ」
岸田「了解」
帰還する2機。

病室で眠る上野。
加藤「大丈夫か」
南「はあ、大丈夫です」
加藤「敵の力は我々の想像をはるかに越えたものらしい。すまなかった」

梶家へ向かうMATビハイクル。帰宅途中の梶夫人を見て止まる。
加藤「郷」
降りる加藤。
加藤「奥さん。梶が……」
梶夫人「主人に何か?」
車から見る郷。ショックでよろめく梶夫人。
加藤「奥さん……」

N「ベムスターはその姿をくらました。加藤隊長自らベムスター探索に乗り出したが、しかし、その行方を突き止めることはできなかった。その間にも基地ではMATアローがとらえた航空写真を元にベムスターの正体が明らかにされつつあった。
加藤「こいつは明らかに宇宙怪獣だ。名称はベムスター」
郷「ベムスター……」
加藤「カニ星雲の宇宙生物だ。カニ星雲は1054年に爆発を起こして以来、現在もなお驚異的な速度でガスが飛び散っている。MAT航空医学センターの分析資料によれば、ベムスターは、水素、窒素、ヘリウムなどのガス源をエネルギーとしている」

夜のガスタンク。サイレンが鳴り、上空からベムスター出現。逃げる人々。ガスタンクのガスを吸い始める。飛来するMATアロー。
岸田「住民はすべて退避させました」
郷「ガスを吸い上げてます」
レーザーで攻撃するアロー。炎上するガスタンク。ベムスターの光線が岸田機に命中する。
加藤「岸田!攻撃中止。郷、岸田を救出するんだ」
郷「はいっ」
暴れ回るベムスター。岸田を救出する郷と加藤。
加藤「岸田、大丈夫か」
岸田「大丈夫です」
加藤「今度は必ず息の根を止めてやる」

N「ベムスター攻略のため、MATでは実験段階にあったシュミット工学ミサイルを次の戦闘に備えて待機することになった」
喫茶店の郷。店員はジューサーでジュースをつくっている。
郷「ねえ、コーヒーまだ?」
店員「ああ、すいません。あれ?ガスが止まってらあ。ガスの元栓開いてんだけどなあ」
郷「どうしたんだ?」
店員「いえね、ガスの火がつかないんですよ」
その時、地震が起こる。
店員「あっ、地震だぞ。気をつけろよ」
かけだす郷。MATビハイクルに飛び乗る。

丘「隊長、今度は第2地区のガスタンク付近に現れました」
かけだす加藤。
燃えるガスタンク。暴れるベムスター。逃げる人々。急行するアロー。
加藤「ベムスター。見てろよ梶」
攻撃するアロー。かけつける郷。ウルトラマンに変身する。

体当りするウルトラマン。倒れるベムスター。乗りかかるウルトラマン。つかみかかるが、振り払われる。ベムスターの攻撃をヒラリとかわすウルトラマン。飛び上がってウルトラスピンキックをしかける。しかし、かわされてしまう。向かってくるベムスター。再び、スピンキックをしかけるが、今度もかわされてしまう。体勢を立て直す間もなくけられるウルトラマン。立ち上がり、スペシューム光線を発射するウルトラマン。だが、ベムスターに吸収されてしまう。カラータイマーが点滅する。ベムスターの体当りを受けるウルトラマン。倒れたところを踏みつぶされる。
N「カラータイマーが点滅した。残されたエネルギーはあとわずかだ。ウルトラマンがんばれ」
何とか逃れて、飛び去るウルトラマン。

加藤「ウルトラマンも敗れた……」

太陽へ向かうウルトラマン。
ウルトラマン「太陽。この私をもっと強くしてくれ。おまえがおまえの子である地球を愛しているなら、この私にベムスターと互角に戦える力を与えてくれ」
謎の声「ウルトラマン。それ以上太陽に近づいてはならない」
ウルトラマン「誰だ。私を呼んでいるのは」
謎の声「引き返すのだウルトラマン。太陽の引力圏にとらえられたら最後だ。引き返せウルトラマン」
太陽に引き寄せられていくウルトラマン。突然、ウルトラセブンが飛来しウルトラマンを助け出す。
ウルトラマン「ウルトラセブン!」
ウルトラセブン「おまえにこれを与えよう。ウルトラブレスレットだ。これさえ身につけておけば、いかなる宇宙怪獣とも互角に戦えるだろう。さあ、地球へ戻るのだウルトラマン」
飛び去るウルトラセブン。地球へ戻るウルトラマン。

破壊を続けるベムスター。攻撃する加藤。ベムスターの光線を受け、墜落するアロー。上空から戻ってきたウルトラマンが受け止める。地上にアローを置くウルトラマン。
加藤「ウルトラマンが、帰ってきた……」
向かってくるベムスター。体当りするウルトラマン。両翼で風を起こすベムスター。砂煙で前が見えないスキに襲いかかるベムスター。しかし、反撃するウルトラマン。上空へ逃れるベムスター。追うウルトラマン。地上へ降りるベムスター。ウルトラブレスレットを投げるウルトラマン。ベムスターの両翼と頭を切り落とす。ブレスレットを受け止めるウルトラマン。爆発するベムスター。
加藤「やったぞ。梶……」
N「MAT対ベムスターの戦いは終わった。それは、MATが初めて体験した宇宙怪獣との死闘であった」

負傷した足を引きずって車へ向かう加藤。
郷「隊長!隊長!」
かけつける郷。
加藤「おう」
郷「本部へ帰りますか」
加藤「いや」
郷「でも、早く帰って傷の手当をしないと……」
加藤「梶の奥さんに知らせたい」
うなずく郷。MATビハイクルに乗り込む二人。
 


第21話 『怪獣チャンネル』

N「地上6000m。果てしないこの大空にはまだ計り知れない多くの謎がひそんでいる」
飛行する旅客機。前方の雲の中から奇妙な光が見えてくる。目を覚ますミカコ。 N「午前4時。世田谷区に住む会社員坂井信夫氏の末っ子ミカコちゃん5歳はつけっぱなしのテレビを消しに起きた。その時、事件は起こった」
ソファーで寝ている父親。テレビを消そうとするミカコ。
ミカコ「あっ、映った」
飛行中の旅客が映る。
N「真夜中のブラウン管に、東シナ海上空を飛行中の民間機の画面が映し出されたのである」
ミカコ「パパ、パパ、パパったら起きてよ。パパ、パパ、パパ」

電話が鳴る。郷が目を覚ます。
郷「もしもし」
南『郷か?すぐテレビをつけるんだ』
郷「南さん。どうしたんです」
南『早くテレビをつけろ』
郷「テレビ?こんな時間にやってるわけないでしょ」
南『それが映ってるんだよ。だから早くつけてみろと言ってるんだ』
テレビをつける郷。旅客機が映る。
郷「南さん!
南『そっちにも映ってるか?』
郷「信じられませんが、確かに映っています。あれは日本の旅客機じゃないですか?」
チャンネルを変える郷。映像は変わらない。
郷「あっ危ない!」
謎の光線を受け、爆発する旅客機。
郷「あっ!」
南「あっ」
元通り何も映らなくなるテレビ。
郷「夢じゃない」
チャンネルを変える郷。何も映らない。

N「謎のテレビ中継から1時間後の午前5時。MAT隊員全員に非常召集がかかった」
南「テレビのカメラは、ちょうど獲物を狙った生き物のようにゆっくり旅客機に近づき、そのカメラの下の部分から怪光線が発射して、旅客機はたちまち墜落しました」
加藤「そのテレビを見ていた時間は?」
郷「映像が切れた時、4時10分でした」
南「本当にこの目で見たんです」
郷「ぼくも見ました」
加藤「その同じ時間、東シナ海上空を飛行中の日本の民間機が原因不明の爆発を起こして墜落したんだ」
岸田「1時間前、航空センターから連絡があった」
南「あれはやはり事実だったのか」
郷「すると爆発のテレビ中継を見たんですか?我々は」
丘「東京都下だけでも、100軒を越える家庭が同じテレビを見てるんです」
加藤「おそらく東シナ海上空から発射された強力な電波を通信衛星が、自動的に中継して世界中に流したらしいんだ」
郷「しかしいったい何物が、どんな方法であんな位置からテレビカメラを……」 加藤「それを突き止めるのが我々の任務だ。ニューヨークでは午後3時、ハワイでは午前9時、モスクワでは午前10時。いずれも同じ映像が中継されている。見ろ、各国支部から調査依頼がひっきりなしだ」

N「ただちにMATアローが東シナ海上空へ飛んだ」
郷「アロー1号から本部へ。まもなく東シナ海上空に到着します」
上野「あ?」
レーダーに異常が起こる。
上野「レーダーが故障したらしいぞ」
郷「え?」
上野「バカな!電波が吸収されている」
郷「電波が!」
上野「あ!あれは何だ!」
前方の雲の中から現れる怪獣。
郷「あっ怪獣だ!」
上野「郷!本部へ連絡しろ!」
郷「はい。アロー1号より本部へ。アロー1号より本部へ。アロー1号より本部へ。通信ができません」
上野「そんなことあるものか。こちら上野、本部応答願います」
雑音が起こる。
上野「うわっ。あっ!信じられん。電波が怪獣に吸収されている」
接近するアローと怪獣。攻撃するアロー。目から光線を発する怪獣。
郷「あっ。あの怪光線。あの怪光線で旅客機もやられた」
上野「いくぞ!」
攻撃を続けるアロー。雲の中へ消える怪獣。
郷「逃げたか」
上野「航空写真は撮ったか?」
郷「ああ、撮った」
上野「よし。ひとまず引き返そう」

N「午後1時。怪獣の正体が明らかになった」
加藤「仮にビーコンとよぼう。ビーコンは電離層に住む宇宙怪獣で、空中の電波を吸収する特性を持っている。つまり電波を食ってそれをエネルギーにしている新種の怪獣だ」
岸田「電波が食えるんですか?」
加藤「うーん。レーダーなんかに使用されているミリ波だって、空中の酸素や水蒸気に吸収されているんだ。しかもこのビーコンは独自の電波を発信する機能を備えているらしい。つまりビーコンの体全体が一つのテレビ局の機能を持っていると考えればいいわけだ」
郷「あのテレビ中継もビーコンのしわざだったんですね」
南「だが、ビーコンにとっちゃ東京は食糧倉庫みたいなもんだ。やつは必ず東京へ来ます」
加藤「うん。言っとくが、ヘマをするんじゃないぞ。我々の戦いが、ビーコンのカメラアイを通して世界中に中継される恐れがあるんだ」

努「CQフィフティーン。CQフィフティーン。CQフィフティーン。CQフィフティーン。あれ?ジスイズJA1JRQ。ジスイズJA1JRQ」
N「午後2時。江戸川区に住む土建業、中村伸さんの長男努くん11歳がコールしていた21メガヘルツのハムの電波が突然途絶えた。努くんはやっと電話級の資格をとったばかりで、今日はアメリカにいる親友のジョージくんと交信の約束をしていたのだ」
テレビの昼メロを見る努の母親。
女優「晴彦さん。わかってくださいましたね」
男優「早苗さん。ぼくは……」
女優「もう何もおっしゃらないで」
努「あれ?テレビは映ってらあ」
努の母親「ダメよ。昼間のチャンネル権は母ちゃんにあるんだから。努、無線はどうしたのよ?」
努「それが変なんだ。通じないんだ。戦争ものやってるんだけどさ。変えてもいい?」
努の母親「ダメ!」
努「ちぇっ。つまんねえな」
男優「あなとにとってそれが一番よいことだと信じていたからです」
女優「晴彦さん。私は主人と別れることができないんです。父の仕事は主人の後ろだてがなければ続けられないんです。父のことを考えると……」
男優「それではあなたの幸せはどうなるんです?愛してもいないご主人とははっきり別れるべきです。早苗さん……。少し歩きましょう」
突然電波が乱れ、空が映る。
努の母親「努!これ何よ?」
努「おれが変えたんじゃないぜ。よー。旅客機だ!」
副操縦士「管制塔、応答せよ。応答せよ。管制塔、応答せよ。応答せよ」
電波が乱れる。
副操縦士「送信不能だ!」
別の飛行機が迫る。
乗組員「北極圏パトロール機より基地管制塔へ。方向器に異常あり」
接近する2機。騒ぐ乗客。
スチュワーデス「大丈夫ですから落ち着いてください。ご心配なく」
副操縦士「ダメだ!操縦不能だ!だー!」
激突する2機。近づくMATアロー。雲の中から現れる怪獣。攻撃するアロー。 努「あっ。MATアローだ。かっこいい!」
攻撃を続けるアロー。怪光線を発する怪獣。
丘「MATアロー、応答願います。MATアロー!通じません」
加藤「ビーコンが電波を食ってるんだ」
怪光線にやられるアロー。
努「弱いなあ。MAT……」
テレビが元に戻る。
女優「晴彦さん。私たちもうお会いできないのね」
男優「早苗さん!」

司令室。
南「勝手に攻撃を加えたりしまして……」
加藤「仕方がない。電波は怪獣に吸収されたんだ」
上野「地上ではあいつが飛び回る1km四方のありとあらゆる電波が食い荒されている。すべての機能がマヒしています」
岸田「近づけば、電波を食われて盲同然の状態で戦うことになる。レーダーも無線もコンピューターもなしにあいつと戦うことは困難だ」
郷「東京上空の、できれば日本中の電波の発信をストップさせたらどうでしょうか」
南「そんなことしたら、それこそ地上は大混乱になるぞ」
郷「しかし、今はビーコンを東京上空から追い出すことが先決だと思います。すでにあいつのために旅客機が2機も墜落させられてるじゃありませんか」
加藤「郷。ビーコンを海上へ誘い出す方法はあるか?」
郷「ビーコンにとって電波はエサです。そのエサで誘いだします」
上野「どうやって?」
郷「東京中の電波を封鎖した後、MATアローだけが電波を流しながら海上へ飛びます。やつは必ず食らいついてきます。海上へ誘い出したら、ミサイルでしとめます」

N「午後5時。東京中のあらゆる電波が発信を止めた。そしてただ1機南隊員を乗せたMATアローが、高周波を発射しながら太平洋に向かって飛び立った」
南「さあ。ついてこい、ビーコンめ」
加藤「本部よりMATアローへ。この通信が切れたら、それがビーコンがエサに食らいついた証拠だ。通信が切れたらただちにMATアロー1号機にミサイルを搭載して発進する。それまで通信を続けるんだ」
南『了解。ただ今、桜島上空通過。通信はまだ切れませんか』
丘「まだ切れません」
上野「レーダー正常」
南『MATアローより本部へ。通信は正常ですか?』
丘「まだ正常です」
郷『おかしい。もう食らいついてもいい頃だ』
上野「たいへんだ!江戸川区から別の電波が流れている」
郷「何だって!」
上野「21メガヘルツの高周波だ」
郷「アマチュア無線!」

努「CQフィフティーン。CQフィフティーン。あれ?また切れちゃった」
町に現れる怪獣。超低空を飛んでいる。
努「CQフィフティーン。CQフィフティーン。こちらJA1JRQ。こちらJA1JRQ。CQフィフティーン。CQフィフティーン。どうぞ」
飛行を続けるMATアロー。
加藤『南、ビーコンが江戸川区に現れた』
南「何ですって!」
加藤『ただちに帰還せよ』
南「了解」
逃げる人々。急行するMATビハイクル。
岸田「郷、応答せよ」
郷『こちら郷、どうぞ』
岸田「ハムの発信地は大和町2丁目あたりと判明した」
郷「了解。ただちに大和町2丁目に向かいます」
方向を変えるMATビハイクル。住宅地の上を飛ぶ怪獣。建物を壊して通り過ぎる。崩れるビル。燃え上がる家屋。地面を張って進む怪獣。電波の出所を探す郷。逃げる人々。攻撃する岸田、上野。怪獣は努の家へ接近する。
努「ジョージくん、ジョージくん。聞こえますか?ジョージくん。あ!」
家が揺れ始める。崩れる家。入ってくる郷。
郷「おい、しっかりしろ。大丈夫か」
努の母親「努!」
郷「早く逃げてください」
建物の下敷になる郷。ウルトラマンに変身する。

怪獣を持ち上げた体勢で現れる。怪獣を投げるウルトラマン。だが空中で方向を変えて戻ってくる。体当りを受け倒れるウルトラマン。崩れる建物。地面に降りて地上を張って進む怪獣。ジャンプするウルトラマン。怪獣の上へ降りようとするが、すばやくバックする怪獣。上昇する怪獣。怪光線を受け倒れるウルトラマン。目を押さえながら立ち上がる。ジャンプして怪獣にウルトラスピンキックを与える。だがはじき返され、建物の上へ落ちる。急降下する怪獣。キックではじき返すウルトラマン。立ち上がった体勢になる怪獣。立ち上がるウルトラマン。飛び上がる怪獣。飛びつこうとするウルトラマン。位置が入れかわる。怪光線を発する怪獣。スペシューム光線を発するウルトラマン。お互いの光線が空中でぶつかる。殴りかかるウルトラマン。倒れる怪獣。攻撃を続けるウルトラマン。飛び上がり、足でウルトラマンを攻撃する怪獣。倒れるウルトラマン。急降下して、ウルトラマンの上へ乗る怪獣。怪獣と接触した部分から火花が飛ぶ。ダメージを受けるウルトラマン。目の光が消える。だが、カラータイマーは点滅を続ける。上昇する怪獣。様子を見る。ウルトラブレスレットが夕日に輝き、ウルトラマンの目に光が戻る。立ち上がるウルトラマン。ウルトラブレスレットを投げる。怪獣の顔に命中するブレスレット。地上へ落ちる怪獣。消えていくウルトラマン。
N「日没。戦いは終わった」

寝ているミカコ。4時になって起きてくる。テレビをつけるミカコ。
N「ミカコちゃん。もうねえ、テレビは映らないよ。ビーコンはウルトラマンにやっつけられたじゃない。早くベットに戻らないとパパやママに見つかったらお尻パンパンされちゃうぞ」
部屋へ戻っていくミカコ。 第22話 『この怪獣は俺が殺る』

飲み屋街を歩くピエロ。路地へ来る。やるせなさそうに座りこむ。そこへ来たアベックにビラを渡す。ビラを捨てる男。ビラを拾うピエロ。近くのゴミ箱を開けると中に詰めこまれたゴミがあふれ出す。あわてて元に戻すピエロ。不審そうに見る警官。ゴミ箱を持って逃げ出すピエロ。ゴミ箱につまづいて倒れる。
ピエロ「わー!」
ゴミまみれになるピエロ。風で舞い上がるゴミ。明け方の夢の島。ゴミをかついで現れるピエロ。ゴミに足をとられて倒れる。ゴミを元に戻す。
ピエロ「ゴミ……。ゴミ。あーっと。ゴミ。ゴミゴミゴミ。ゴーミ。ゴミ!」
奇妙に声に気づくピエロ。
ピエロ「ああっ?」
ゴミの中から現れる怪獣。
ピエロ「あああああー!」
ブルトーザーを倒す怪獣。崩れるゴミの山。
N「江東区15号地、別名夢の島。このマンモスゴミ処理場で、酔っぱらったサンドイッチマンが行方不明になった事件を知る者は誰もなかった」

N「そして同じ日。その日はMAT隊加藤隊長が、地球防衛庁の辞令によりMAT宇宙ステーションへ転任していく日であった」
加藤を乗せてジープを走らせる郷。川辺に止める。
加藤「どうした?」
双眼鏡を渡す郷。
加藤「ん?あいつらまだ追っかけてくるのか」
双眼鏡をのぞく加藤。対岸を別のジープが走っている。
南「隊長!」
丘「隊長!」
 南「さようなら!」
丘「お元気で!」
手をふる隊員たち。ふり返す加藤。
南「お元気で!」
上野「隊長!」
南「さようなら!」
郷「寂しいんですよ、みんな」
加藤「何を言ってるんだ、郷。これでMATも大きくなるんじゃないか。後任の伊吹隊長は私の上官だった人だ。頭も切れるし勇気もある。歴戦の勇士だよ。本部からあれだけの人物が隊長として来るってことは、それだけMATの地位が高く評価されている証拠じゃないか」
郷「はい。それにしても新隊長の到着が5時間も遅れているということが、気になるんです」
加藤「うん。出発間際にニューヨークのゴミ処理場で異変が起こって出撃したんだ」
郷「ゴミ処理場?」
加藤「ニューヨークMAT隊が総動員で出撃したそうだから、かなりの大事件だろう。隊長がいないといってもたかが数時間だ。伊吹隊長が到着するまで、くれぐれも事故のないようにたのんだぞ」
郷「まかせといてください」
隊員たちに敬礼する加藤。発進するジープ。
加藤「よし、行こう」
N「こうして加藤隊長は去った」

N「一方、新隊長の到着を待つMATでは……」
上野「ゴミ処理場にMSミサイルを5発も撃ちこむなんて、わかんねえなあ。いったいニューヨークでは何が起こったんだ」
岸田「もっとわからんことがある。出動した伊吹新隊長の戦闘機の風防ガラスが、上空で溶けたという報告だ。風防ガラスはアクリル系のプラスチックでできているんだ。プラスチックはそう簡単に溶けるもんじゃない」
南「まあ、くわしいことは新隊長が到着してから聞いてみないとわからないね」 岸田「隊長機は今どのへんを飛んでるんだ?」
丘「日本まで5時間といえば、ハワイ上空を通過したころじゃないかしら」
飛行するMATアロー。

次郎を探しに外へ出るアキ。
アキ「次郎、次郎。しょうがないわね。ランドセルほおりっぱなしにして遊びにいったきりなんだから」
ゴミ箱の中に隠れている次郎と友人A。
アキ「次郎!次郎!」
郷「アキちゃん!」
アキ「あっ、郷さん」
ジープで現れる郷。
郷「転任になった加藤隊長を送りにいってたんだ」
アキ「あら、今日出発なさったの?」
郷「どうしたんだい、こんな所で」
アキ「次郎を探してるのよ。さっきまで、このへんにいたらしいんだけど」
突然立ち上がる次郎と友人A。
次郎「わー!」
アキ「きゃっ!」
郷「ははは」
アキ「次郎、何してるのこんな所で!」
次郎「逃げろ!わー!」
ポリバケツをかぶったまま逃げ出す次郎たち。
アキ「次郎!次郎ったら。郷さん捕まえて!」
ジープを走らせる郷。乗りこむアキ。
アキ「ほらあそこ!」
逃げる拍子に転ぶ次郎たち。
次郎「起きられないよお!」
友人Aを起こす郷。
郷「ははは」
次郎「助けて!早く!」
マイクを持つフリをする郷。
郷「MAT本部ですか。ただ今ポリバケドン2匹捕まえました。いたずらな怪獣でどうしようもないやつらです」
アキ「しょうがないわね」
次郎「助けて!」
次郎を起こす郷。
次郎「あー、おもしろかった。隠れてんのねえちゃん、わかんねえでやんの」
ポリバケツをぬがす郷とアキ。
アキ「こんなゴミバケツで遊んだりして!汚いわね」
ポリバケツを見る郷。穴だらけになっている。
郷「次郎くん、この穴どうして開けたんだ?」
次郎「最初っから開いてたんだ。な!」
友人A「うん、こうするとすぐ折れちゃうんだ。このポリバケツ腐ってんだ」
アキ「ポリバケツが腐るはずないじゃないの」
郷「うん、確かに腐ってるみたいだな。次郎くん、これどこで拾ったんだ?」
次郎「埋立地で拾ってきたんだ」
郷「次郎くん、そこへ案内してくれないか」
次郎「うん!いいよ!」

ゴミ回収車が続々と到着する。
清掃局の男「この埋立地はねえ47万平方m。野球場がすっぽり14個も入る広さだ」
次郎「へー。広いんだなあ」
ジープに乗って埋立地を見る郷たち。
清掃局の男「ま、この10年間で東京都23区の人工は1.4倍ですからね。ゴミは2.5倍になってます。まあ、みんなぜいたくになったんですかね、それとも無駄なものを買わされてるんでしょうかねえ。毎日6700tのゴミが運ばれてきてますからねえ」
次郎「6700tも?」
清掃局の男「ええ。東京23区900万人の都民が捨てる1日のゴミ量の約半分ですよ」
次郎「郷さん、ここだよ」
郷「プラスチック製品のゴミはどう処理してるんですか?」
清掃局の男「どうもこうもあいつにだけはお手上げですよ。いえ、ご承知の通りね、焼くことも壊すこともできないんだから」
郷「焼却炉でもダメなんですか?」
清掃局の男「焼却炉の方がいかれてしまいますよ。しかし世の中には物好きなやつがいるもんですねえ。こんなもん何に使うのか、こっからもちだしてくやつがいるんですよ。しかも大量にね」
郷「プラスチックだけを?」
清掃局の男「ええ。ここの所、急速に減ってるんですよ」
郷「あの煙は?」
 清掃局の男「ああ、あれねえ。この地下が異常発酵で熱を出してるんです。メタンガスを発生してるんでしょうね。この地底はね大変な熱ですよ。ねえ」
突然地震が起こる。
清掃局の男「あ、地震だあ!」
崩れるゴミ。すぐに治まる。
清掃局の男「早く戻ってください!危ないですよ!最近ここはね、よく揺れるんです。大地震の前触れですからね!早く!」

N「郷が15号地から持ち帰ったプラスチックのゴミはただちにMATの科学実験室で分析され、その結果意外な事実が明らかにされた」
南「あんな場所からプラスチックを食うウィルスが出てくるなんてなあ」
岸田「形あるものはすべて滅びる。人間に壊せないものはちゃんと自然が手伝ってくれるんだ」
上野「結局人間には永久に残るものを創り出すことはできないんだな」
郷「15号地の地底を一度徹底的に調査してみる必要があると思います。あの地底から発生するガスや地鳴りは普通じゃないと思うんです」
南「それは新隊長が到着してからの方がいいと思うがな」
郷「伊吹隊長は何時に着くんだ?」
丘「んー、あと3時間ね」
郷「3時間……」
郷『その間に異変が起こらなければいいが』

N「郷が恐れていた異変が早くも起こった。15号地地底に大量にたまっていたガスが自然発火を起こしたのだ」
清掃局の男「大変だ、大変だ!とうとう始まった。だからぼくはね、前から危ないって言ってたんだよ」
上野「おい、郷がMATジャイロで消火に出動したぞ!」
南「何!」
南『郷隊員、どうしたんだ!郷隊員!』
埋立地に消火剤をまき、火を消していく郷。
清掃局の男「さすがMATだ。やるねえ!」
だが、その時地震が起こる。

N「郷隊員が15号地の火災を消化した直後、はるか太平洋上空の伊吹隊長機より、突然通信が入った」
 伊吹『こちら伊吹、応答せよ』
岸田「伊吹?」
上野「新隊長だ」
南「こちらMAT基地、どうぞ」
伊吹『およそ2時間で基地に着く。異常はないか?』
入ってくる郷。
南「はっ、えー……。15号地のゴミ処理場で地下変動が起こり、ガスの出火がありました」
伊吹『指令を出す。発火地点にはただちにMS小型ミサイルを投下すること。間違っても消火液類を先に使用してはならない』
郷「MAT隊員郷秀樹。消火にはすでに炭酸ガス消火液を使って消火させました」
伊吹『郷隊員には3日間の出動禁止を命ずる』
郷「出動禁止?」
 伊吹『他の隊員たちは、これよりただちに戦闘体勢で15号地に出撃せよ』
郷「待ってください。なぜ消火液を使ったのがいけないんです」
伊吹『郷隊員、君の行為で地下の敵は酸素を閉ざされてしまった。敵は必ず酸素を求めて地上に現れる』
郷「敵?敵とは何のことです」
伊吹『私は数時間前、同じ敵と戦ってきた。敵はプラスチックを養分としている怪獣だ』
通信が切れる。
岸田「あのウィルスは怪獣の……」

埋立地に現れる怪獣。飛び立つ鳥の群れ。
作業員「大変だ!怪獣だ!逃げろ!」
清掃局の男「やっぱり怪獣だったんだ。だからぼくは前から言っていたんだよ」 小屋を踏みつぶす怪獣。出動しようとする郷。
南「郷、待て」
郷「止めないでください。ぼくの責任です」
南「おれたちにまかせとけ」
上野「大丈夫。おまえの分までやってきてやるよ」
出撃するMATアロー。怪獣に接近する。
南「よし、撃て!」
ミサイルを口で受け止める怪獣。吐き捨てる。地上で爆発するミサイル。続いてミサイルを発射する。またも口で受け止めてしまう。さらに攻撃を続ける。転がって手でミサイルを受け止める怪獣。2発のミサイルを捨てる怪獣。爆発が起こる。口から奇妙な液を吐く怪獣。アローにかかる。
南「操縦不能!うわー!」
墜落していくアロー。
岸田『今、1号機がやられた。でやー!』
丘「岸田隊員!」
墜落していく岸田機。
丘「岸田隊員!岸田隊員!」
岸田『大丈夫だ。脱出する』
出て行こうとする郷。
丘「郷さん……」
郷「命令を無視したらどうなる」
丘「その制服を脱ぐことになるわよ」
郷「自分でまいた種は自分で刈りたい」
出撃するMATジャイロ。
郷『これが最後の戦いか』
工場に近づく怪獣。地上を走るMAT隊員。
南「いくぞ!」
攻撃するMAT。
上野「あっ、郷だ!」
南「あいつ!」
ミサイルを発射する郷。ヒラリとかわす怪獣。攻撃するMAT。ミサイルを発射する郷。1発を受け止め、もう1発を避ける怪獣。持っていたミサイル投げ捨てる。怪獣の液をあびるジャイロ。
 岸田「郷!」
郷「ああー!」
MATジャイロをつかむ怪獣。握りつぶそうとする。
郷「くそう。ああっ!」
ウルトラマンに変身する。

怪獣の手の上に現れるウルトラマン。顔をキックする。倒れる怪獣。ウルトラスピンキックをあびせる。倒れている怪獣の頭を続けて攻撃する。だが、怪獣に投げ飛ばされる。立ち上がり怪獣の足をつかむ。倒れる怪獣。怪獣の上に乗って足を引き、背骨を折ろうとするウルトラマン。あきらめて向きを変え背中を攻撃する。怪獣の頭を地面へたたきつける。背中を動かしてウルトラマンを振り落とす怪獣。よつんばいになったまま、ものすごい勢いで逃げる怪獣。ゴミが飛び散る。立ち上がり、ブレスレットを投げようとするウルトラマン。だが、突然右腕が痛む。
N「プラスチック怪獣ゴキネズラにMATジャイロがつぶされた時、郷隊員は右手を痛めた。そのためにウルトラマンは苦しい戦いを展開していた」
液を吐く怪獣。避けるウルトラマン。さらに液を吐く怪獣。逆へ逃げ、怪獣のふところへ潜りこむ。倒れる怪獣。怪獣を捕まえようとするが立ち上がる怪獣。投げ飛ばすウルトラマン。チョップを加え、さらに立ち上がった怪獣に体当りする。倒れる怪獣。向かってくるウルトラマン。液を吐く怪獣。まともに受けるウルトラマン。苦しむウルトラマン。カラータイマーが鳴る。怪獣の体当りを受け、倒れるウルトラマン。
上野「あれは!」
岸田「MATアロー!」
南「伊吹隊長!」
急行するMATアロー。捕まえようとする怪獣。だがヒラリとかわす。液を吐く怪獣。これもヒラリとかわす。宙返りする伊吹機。ゴミの中から現れる清掃局の男。液を吐く怪獣。なおもかわすアロー。着いていく怪獣。クルクルと飛び回るアローを追って液を吐き続ける怪獣は、ついにそりかえりすぎて倒れてしまう。倒れたまま液を吐き続ける怪獣。自分の体にどんどんかかる。弱ってくる怪獣。立ち上がるウルトラマン。旋回してミサイルを発射するアロー。口で受け止める怪獣。スペシューム光線を発するウルトラマン。ミサイルが爆発し、頭が吹き飛ぶ怪獣。
上野「やった!やったぞ!」
倒れる怪獣。風がゴミをまき散らす。ゴミの中から現れるピエロ。あわてて逃げ出す。
ピエロ「ゴミだ。ゴミゴミ……」
飛び去るウルトラマン。

整列するMAT隊員。一人づつ握手していく伊吹。
南「南です」
岸田「岸田です」
上野「上野です」
丘「丘です」
郷「郷です」
握手を求める伊吹。ためらう郷。
伊吹「出動禁止を命ぜられたことが不服なのかね?」
郷「いえ、決して。確かに軽率でした。反省してます」
伊吹「じゃあ、握手してくれ」
郷「はあ」
強く郷の手を握る伊吹。
郷「あっ、いてててて!」
伊吹「どうした!」
郷「いえ、何でも……」
伊吹「丘隊員!」
丘「はい」
伊吹「郷隊員の右手を治療してやりたまえ。強い打撲傷をおってるらしいからな」
丘「はい」
南「隊長!郷隊員の右手の傷は、つまりその……、戦闘によるものではなくて、その……」
伊吹「階段から転げ落ちたんだろ?」
南「はは、そうです」
伊吹「なら、それでいいじゃないか。私も気をつけるとしよう。MATの階段をかけあがる時にはな。解散!」
出ていく伊吹。
上野「よかったな郷!」
郷の右手を強く叩く南。
郷「あー!痛い痛い!」


第24話 『戦慄!マンション怪獣誕生』

落下する隕石。
N「信州の山中に落下した隕石から小さな宇宙怪獣が出現した。地元の調査隊はこの小怪獣を生け捕りにして、MATの研究所に送った」

マンションの秋夫の部屋。怪獣のおもちゃで遊ぶ秋夫。
秋夫「ガオー。ガオー。ガオー。ガオー。やった!」
秋夫の母親「おやめなさい。何度言ったらわかるの?そんな気味の悪いもの買ってきてあげるなんて、パパもパパだわ。さあ、ママ出かけますよ」
秋夫「パパ、今どのあたり航海してるかなあ。アテンション島、セントヘレナ島……」
秋夫の母親「メキシコ湾を昨日出航したばかりだから、まだ北大西洋よ」
秋夫「バハマ諸島、バーミューダ諸島」
秋夫の母親「秋夫ちゃん、秋夫ちゃん。夕ごはんにオムライス頼むわよ。それから9時には間違いなく寝なさいよ」
秋夫「はーい」
秋夫の母親「それからおやつにはクッキーと牛乳をおあがんなさい」
秋夫「日曜日なのに行くの?」
秋夫の母親「雑誌社は原稿の締切前が一番忙しいのよ。寂しいの?」
秋夫「ぼくちっとも寂しくなんかないよ」
秋夫の母親「そうね。小学校の3年生ですものね。行ってきます。秋夫ちゃん、外で遊ばないようにね。交通事故にでもあったらママとっても悲しいから。そのかわりお友達に来てもらっていいわ。家の中を汚さないようにおとなしく遊ぶ。わかったわね」
秋夫「行ってらっしゃい」
秋夫の母親「行ってきます」
出ていく秋夫の母親。
秋夫「ちぇっ」
窓から外を見る秋夫。エレベーターから出てくる。公園へ行く秋夫。
友人A「おいガラモン。おまえも入るか?」
秋夫「ぼくんちおいでよ。ぼくんちの怪獣電池式で動くんだ」
友人A「やだよ。おまえんとこの管理人おっかねえもん。いつもコラッてどなるんだから」
友人B「遊びたいのなら、仲間に入ればいいじゃないの」
秋夫「んー。でも……」
次郎「おーい」
友人A「何だよ」
次郎「大ニュースだぞ。宇宙怪獣が運ばれてきたんだって。MATの研究所に」 友人B「近くじゃない」
次郎「郷さんにたのめば、見せてくれると思うんだ」
友人A「行こう行こう」
次郎「すぐ出発だ」
友人A「よし」
かけだす少年たち。
秋夫「ぼくも行くよお」

オリに入れられた怪獣。
 次郎「もしちゃうの?宇宙怪獣」
郷「そう。宇宙怪獣はその性格がまったくわからない。今はあんなにおとなしくても、これから先どんなに恐ろしい怪獣に変化しないともかぎらない。そうならないうちに処分するんだ」
上野「この位置でいいかな」
南「よし、いいぞ」
上野「はい」
レーザーをかまえる上野。
秋夫「オリをこわして逃げればいいのに」
南「撃て!」
レーザーを撃つ上野。爆発する怪獣。飛び散る破片。
郷「大丈夫か?」
目の前に落ちた怪獣の破片を拾う秋夫。
秋夫「宇宙怪獣のだ」
南「隊長。宇宙怪獣の処分を終わりました」
伊吹「バカもん。ただバラバラにしただけじゃないか。宇宙怪獣なんだぞ。早く焼くんだ」
破片を集めるMAT隊員。
南「よし。もうないな」
郷「君たちはここを離れた方がいい。早く向こうへ行ってなさい」
次郎「おい、帰ろうぜ」
友人A「うん。帰ろう」
南「撃て!」
銃を撃つ岸田。燃え上がる怪獣の破片。

マンションに戻ってくる秋夫。
秋夫「君にも見えるウルトラの星……。こんにちわ、おじさん」
エレベーターに乗る。
管理人「ん?」
家に入る。
秋夫「帰ってきたぞ、帰ってきたぞ、ウルトラマン。帰ってきたぞ、帰ってきたぞ……」
ポケットから怪獣の破片を取り出す秋夫。
秋夫「宇宙怪獣だ。すごいなあ」
ノリで壁に張りつける。
秋夫「ガオー。ガオー。ガオー。ガオー。ガオー。ガオー。あ、おやつの時間だ。また来るからね」
変化を始める怪獣の破片。牛乳を飲む秋夫。はっとして部屋に戻る。壁に先刻爆破されたはずの怪獣の形をした染みができている。
秋夫「あれ?おまえ弱い怪獣だな。人間につかまえられてバラバラにされちゃって。だらしのない宇宙怪獣だよ。強い怪獣にならなきゃ。そうだ、背中はレーザー光線もはじき返すよろいよりも硬いこうらをつけた方がいい」
染みに変化が起こり、怪獣の背中にこうらができる。
秋夫「やっ、染みが動いたぞ。よおし、口にはキバをつけろ。いいぞいいぞ。鼻に鋭い角。そうだ、背中にも角が2本。怒るとクルッと回って前を向く。普段は後向きでいい」
秋夫の言う通りに変化していく染み。
秋夫「次は尻尾をどうするかだ。そうだ、戦う時尻尾から熱光線を出す。次は名前だ。強そうな名前がいいな。そうだ、キングストロン。学名キングストロン。宇宙怪獣と地底怪獣のあいのこ」

管理人「あっそうですか。さっそく調査します」
電話を切る管理人。
管理人「てやんでえ。マンションに怪獣がいるわきゃねえじゃねえか」
怪獣の吠える声が聞こえる。
管理人「ははあ。あのガキのしわざだなあ。んー、怪獣気違いめ。まったく人騒がせだぜ、もう……」
エレベーターを降りる管理人。秋夫の家の方から声が聞こえる。
管理人「やっぱりそうだ」
ブザーが鳴る。起きてくる秋夫。ドアを開ける秋夫。
秋夫「誰?」
管理人「君だろ!怪獣のうなり声させてんのは。テープレコーダーか何か鳴らしてんじゃないのか」
秋夫「何のこと?おじさん、ぼく寝てたからわかんないや」
管理人「ん?寝てた?ホントに寝てたのか。おかしいな。やっ。やっ、ん」
出て行く管理人。部屋へ戻る秋夫。うなり声に気づく。壁の怪獣の染みの尻尾が発光している」
秋夫「生きている。キングストロンが大怪獣になるんだ」

次郎「おいガラモン。おまえホントに怪獣創ったのか?本物の怪獣?」
秋夫「うん。名前はキングストロン。宇宙怪獣と地底怪獣のあいのこだよ」
友人B「ホント?」
友人A「ウソに決ってらあ。人間に怪獣が創れるもんか」
秋夫「ウソだと思ったらぼくんち来てごらん、見せてあげるから」
次郎「よし行こう」
一同「うん」
次郎「これゃ行ってみる価値がありそうだ」
友人A「行こう」
次郎「行こう」
かけだす次郎たち。マンションに近づく。
秋夫「ちょっと待ってね」
次郎「うん」
管理人がいないことを確認して手招きする秋夫。
次郎「行こう」
エレベーターから管理人が降りてくる。
一同「出た!」
管理人「こら!おまえたちはまた!ここへ来るなと言ったはずだぞ。ん?」
次郎「高田くんの部屋でみんなで宿題をやるんです」
管理人「ん?おまえの顔にウソだと書いてあるぞ」
次郎「え?!」
顔をさわる次郎。
管理人「それ見ろ。ウソじゃねえか。ん?」
秋夫「ぼくの家で遊ぶんだからいいでしょ、おじさん」
管理人「ああっダメダメ。さあ帰れ帰れ、帰るんだ。帰った」
秋夫『覚えておくといい。今にキングストロンが大きくなる。こんなマンションなんかイチコロに壊してみせる』
部屋に入る秋夫。
秋夫「キングストロン、ただいま」
さらに大きくなっている怪獣。
秋夫「もっと大きくなれ、もっと大きくなれ。大怪獣になって壊すんだ。何もかもな」

帰宅する秋夫の母親。部屋の中が目茶苦茶になっているのに気づく。何かが爪で壁をひっかいた跡もある。
秋夫の母親「まあ……。秋夫!起きてらっしゃい。秋夫ちゃん!秋夫。秋夫ったら秋夫」
起きてくる秋夫。
秋夫「あれ?」
秋夫の母親「これはいったい何なの?どうして、こんなひどいことをしたのよ?自分でいたずらしておいて知らん顔するつもり?いつからこんなに悪い子になったのよ」
秋夫「ぼくじゃないよ」
秋夫の母親「あきれた子ね。あなた以外に誰が入るっていうのよ。ひどいことになって……」
秋夫「キングストロンがやったんだ」
秋夫の母親「何ですって?何でこんなに傷をつけたのよ。いったいどうしたの?秋夫ちゃん」
秋夫「ぼくじゃないよ」
秋夫の母親「この部屋はね、まだ私たちのものじゃないのよ。まだ何年間も毎月毎月お金を払っていかなきゃならない。そのためにママも無理して働いてるんじゃないの。さあ、どうしてこんな悪いことしたのか正直におっしゃい。言わないの?言わないのね。言わないのならママにも覚悟がありますからね。さあ、いらっしゃい」
秋夫「やだよ。やだよ。ぼくじゃないよ。ママ、やだよ」
秋夫の母親「じゃあ正直におっしゃい」
秋夫「ぼくじゃないんだ」
秋夫の母親「もう知りません」
秋夫「やだよ、やだよ」
秋夫の母親「出てってちょうだい」
家から追い出される秋夫。
秋夫「ママ開けてくれよ。ぼくじゃないよ」
怪獣の声に気づく秋夫の母親。秋夫の部屋に入る。怪獣に気づく。
秋夫の母親「あー!怪獣です!誰か!誰か!誰か来てください」

壁の怪獣を調査するMAT。
岸田「全長2mしかない。問題はどうしてこんなヘンテコリンな物ができたかだ」
郷「正直に言ってごらん。この怪獣はどこから来た。どうしてできたんだ。なぜ黙っている。正直に言いたまえ」
秋夫「ごめんなさい。拾ったんです」
郷「拾ってきた?」
秋夫「この前、宇宙怪獣がバラバラになった時」
郷「宇宙怪獣のかけらを拾ってきてこの壁に張りつけたのか!君は何てことをしたんだ。MATですら宇宙怪獣には警戒を重ねてるんだ。この前見てよくわかったろう」
岸田「この前の宇宙怪獣とわかれば心配はない。ここで処理してしまった方がいいだろう。さあ、みんなどいて」
秋夫「やだ、ぼくのキングストロンだ!」
郷「このままほおっておけば、どんな恐ろしいことが起こるかわかんない。早く始末した方がいいんだ」
秋夫「キングストロンはMATシュートなんてきかないよ。レーザー銃だってはね返ってしまうんだ」
岸田「さあ、みんなどいて」
MATシュートを撃つ岸田、郷。ビクともしない。雷が光り、怪獣の染みが発光を起こす。崩れ始めるマンション。
郷「ああっ危ない!早く逃げてください」
秋夫「キングストロン!」
郷「危ない。一緒に来るんだ」
秋夫「やだ!キングストロンと一緒にいるんだ」
実体化する怪獣。マンションを踏みつぶす。逃げる人々。
岸田「さあ、みんな早く!」
崩れていくマンション。逃げる人々。誘導する郷。
郷「大丈夫ですか」
引き返す秋夫。
秋夫の母親「あ、ああ、秋夫!秋夫!秋夫ちゃん!秋夫!」
郷「どうしました」
秋夫の母親「秋夫がまた!」
郷「ボクが行きます!」
エレベーターに乗る秋夫。
郷「危ない!行っちゃダメだ、秋夫くん!」
秋夫「キングストロン、待ってろよ!」
階段を登る郷。窓が割れ、マンションの中から怪獣の角が現れる。途中で止まるエレベーター。いろいろボタンを押す秋夫。
秋夫「キングストロン!ぼくを助けてくれよ!」
エレベーターのドアをこじ開けようとする郷。マンションを破壊しながら次第に現れる怪獣。
秋夫の母親「秋夫!秋夫!」
現れるMATビハイクル。
岸田「わずか一片の肉からあんな巨大な怪獣が」
伊吹「細胞分裂を繰り返したんだ」
マンションから抜け出す怪獣。急行するアロー。
岸田「南、攻撃を中止してくれ。中に郷がいるんだ」
南「了解」
エレベーターシャフトをつたって下へ降りる郷。揺れるエレベーター。
秋夫「開けてくれ!開けてくれよ!キングストロン!頼む!キングストロン!助けにこい!」
伊吹「怪獣を建物から離すんだ」
各人「はいっ」
秋夫の母親「秋夫!」
攻撃する南、丘。向かってくる怪獣。だが、すぐに向きを変えマンションを破壊する。エレベーターの屋根におり、天窓を開ける郷。
秋夫「郷さん!」
郷「大丈夫か」
秋夫「うん」
郷「秋夫くん、ちょっとどいて」
中へ降りる郷。
郷「大丈夫か。さあ、そこにつかまるんだ」
秋夫を持ち上げる郷。上に上がる秋夫。マンションを破壊する怪獣。
郷「危ないぞ!早く逃げろ!ああっ!」
秋夫の母親「秋夫!秋夫!」
マンションに入る伊吹。怪獣に気づく秋夫。
秋夫「あ……。キングストロン……。わーっ、恐いよお!恐いよお!」
伊吹「秋夫くん、大丈夫か!」
怪獣を攻撃する伊吹。
伊吹「さあ、来るんだ」
秋夫「恐いよお」
伊吹「郷!」
エレベーターシャフトが次々と切れていく。
郷「あー!」
ウルトラマンに変身する郷。

怪獣の前に立ちはだかるウルトラマン。崩れる前に脱出する伊吹。
秋夫の母親「秋夫!秋夫ちゃん!秋夫ちゃん!秋夫……」
飛び上がり反対側へ降りるウルトラマン。向きを変える怪獣。怪獣のこうらに手をついて反対側へ着地するウルトラマン。ひっくり返りもがく怪獣。起き上がり、火を吹く。怪獣の突進を受け、倒れるウルトラマン。立ち上がる間もなく、怪獣が背中に乗せてウルトラマンをほおり投げる。川に落ちるウルトラマン。上にのしかかる怪獣。はいだすウルトラマン。向かってくる怪獣。逃げるウルトラマン。両手を振り回し風を起こす。動けなくなる怪獣。両手で怪獣の頭の角を折るウルトラマン。さらに背中の角をつかんでほおり投げる。地面に落ちる怪獣。尻尾から光線を放つ怪獣。光線を胸に受け苦しむウルトラマン。ヒラリと起き上がってウルトラマンの足にかみつく怪獣。怪獣の頭をはなそうとするウルトラマン。カラータイマーがなる。頭をキックして何とか逃れる。怪獣の突進を受け倒れるウルトラマン。立ち上がるがよろめく。ウルトラブレスレットを投げようとするが、怪獣の突進のため落としてしまう。倒れながらスペシューム光線を発射する。だが効果がない。
秋夫「ウルトラマン!キングストロンの弱点は背中の角だ。角を後ろにすると動けなくなるんだ」
向かってくる怪獣。怪獣の背中の角をつかむウルトラマン。強引に角を後ろへ引っ張る。すばやくブレスレットを拾い、怪獣の腹の下へ投げる。爆発。たちまち白骨化する怪獣。
秋夫「やった、やった。勝った!いいぞいいぞ」
飛び去るウルトラマン。

郷「おーい!おーい!」
丘「郷隊員!」
上野「郷!」
郷「おーい!」
秋夫「郷さん」
郷「よかったな。よいしょ」
秋夫をかつぎあげる郷。
N「もし君が宇宙怪獣のかけらを持っていたら、危険ですからすぐMATに届け出てください」

第25話 『ふるさと地球を去る』

◎マンション建設現場。
作業員「地震だ!逃げろ!」
崩れていくマンション。壁に亀裂が入り、爆発を起こす。バラバラになった破片が空へ上昇する。舞い上がる土砂。

◎MAT司令室。
南「地震が構築中のマンションだけを集中的に襲い、現場近くの商店街ではネズミが走るほどの震動も受けていないんです。ただの地震や龍巻の起こる現象ではないことだけは明らかです」
郷「隊長。上空に舞い上がったコンクリートの破片群をレーダーで追っかけたんですが……」
伊吹「どうだった」
郷「それが、ものすごいスピードで大気圏を突破して宇宙へ……」
伊吹「宇宙へ?!」
郷「はあ。こちらも急いで遠隔レーダーに切り換え、今なお追跡中です」
上野「ビルの構築現場には、ひとかけらのコンクリートのかけらも残ってないんだ」
岸田「ひとかけらもか」
南「残っているのは鉄骨だけだ」
郷「鉄骨は残ったてるんですか」
南「ああ」

◎マンション建設現場。
残された鉄骨を見るMAT隊員。かけつけるMATビハイクル。
郷「隊長、コンクリート群の行き先がコンピューターでわかりました。銀河系第3惑星のザゴラス星。ザゴラス星の引力で引っ張られてるんです」
伊吹「ザゴラス星の引力に?」
南「わからん。そんな遠い星の引力が、どうしてこのビルの一角だけに集中したんだ」
岸田「セメントや砂利に関係があるんじゃないでしょうか」
作業員「砂利は確か群馬県の愛野村から運んできたもんなんですがね」
伊吹「愛野村?」

◎MAT司令室。
岸田「セメントの線はないようですね」
丘「隊長。愛野村ではマンションの異変と同じ時刻に地核変動が起こっています」
伊吹「よし、愛野村の地質調査を始めよう」

◎愛野村上空。
N「愛野村へ郷、南の両隊員が地質調査に飛んだ」
飛行するMATジャイロ。
郷「愛野村です」
南「畑しか見えないなあ」
郷「人口が200名たらずだといってましたからね」
南「んー、小さい村だねえ。おれの故郷によく似ているよ」
郷「長野でしたよねえ。南さんのくに。腕白だったんでしょうね」
南「はは、とんでもない。ガキ大将からは泣かされっぱなし、先生からは怒られっぱなし。じゃみっ子じゃみっ子って、さんざんだったよ」
郷「じゃみっ子?何のことです?」
南「蚕を知ってるだろう」
郷「まゆをつくるさなぎの?」
南「中にはまゆをつくらないさなぎもいるんだ。親から糸を吐くことを教えられなかった、誰からもかまわれない子供のことをそう呼んで下げすむんだ。じゃみっ子……」

◎愛野村の小学校。
女教師「じゃあ、みんな気をつけて帰ってね。まっすぐ帰るのよ」
児童たち「はーい、さようならー」
女教師「さよならー。さよなら、気をつけてね」
◎同・廊下。
 バケツを持たされて立たされている六助。
悪友A「おーい。じゃみっ子がまた立たされてるぞ」
悪友B「おい、じゃみっ子。宿題忘れたんだろ」
悪友C「女の子泣かせたんだろ」
悪友A「こいつが女の子泣かせるもんかよ」
悪友D「女の子に泣かされたんだ」
悪友B「バケツ重いかあ?」
うなずく六助。
悪友A「よおし。じゃあ、おれが軽くしてやるよ。ほら」
バケツの水を六助の頭にかける悪友A。
悪友A「ははは。おい持てよ、ほら」
悪友C「どうだ、軽くなったろう」
悪友D「何とか言えよ、この弱虫」
悪友B「もっと軽くしてやらあ」
もう片方のバケツの水もかけられる。
悪友A「ははははは。おい、軽くなったろう。じゃあ礼を言えよ」
六助「ありがとう」
悪友B「手をついて言えよ」
手をつく六助。
六助「ありがとう」
悪友A「ちぇっ。どうしようもねえなあ、こいつ。おい、じゃみっ子何とか言えよ。ほら」
悪友E「あっ先生が来る」
悪友A「いけね!逃げろ」
逃げる悪友たち。
先生「六助!何だその格好は。またビショビショにして。進たちにいじめられたのか?」
首をふる六助。
先生「じゃ、どうしたんだ。おまえがわざとやったのか。どうなんだ。まったくしょうがないじゃみっ子だなあ、おまえは」
◎同・校庭。
銅像の上に昇る六助。

◎山中。
山を登る郷、南。
南「誰とも一度も戦ったことがなかったんだ」
郷「MATガンの名手、南さんからは想像もつかない話ですね」
南「ある日、村に熊が出てなあ」
郷「熊?」
南「うん。隣にいた漁師の家から猟銃を持ちだして、熊と対決したことがあるんだ」
郷「何でそんな無茶を?」
南「おれが正真正銘の弱虫だったからさ。無茶っていうものはねえ、逃げ場がないくらいいじめられ、追いこまれたものにしかできないんだ。逃げ場があるうちは逃げ回れるからねえ」
郷「熊は射止めたんですか?」
南「さすがに面と向かったら腰が抜けてしまってねえ。熊は猟師が射止めてくれた。だが、それで自信がついたんだ。やろうと思えば、熊とでもやれるという自信がなあ。それからいじめっ子たちも一目置くようになったよ。ははははは」

地核変動の跡を見る郷、南。
南「こいつは一、二回の地震でずり上がったもんじゃないな。ここ数カ月の間に少しずつ隆起したもんだ」
郷「まるで円を描いて村全体がせり上がってるみたいな感じですね」
南「見ろ。表面の5mまでは赤土だが、それから下は緑色の岩石だ。こんな岩石を見たことあるか」
地面が揺れ始める。
南「ああっ、地震だ。おい、逃げろ!」
 揺れながらせり上がっていく愛野村。

◎小学校・校庭。
銅像にしがみつく六助。悪友たちが引きずり降ろそうとしている。
悪友「降りろよ」
怪獣の声に振り返る六助。
六助「あっ!」
驚いて飛び降りる六助。倒れる少年たち。
悪友A「あっ怪獣だ!」
逃げ出す少年たち。よつんばいになって逃げる六助。
◎山中。
 暴れる怪獣。上昇するMATジャイロ。
南「愛野村地中より怪獣が出現しました」
◎MAT司令室。
通信に驚く隊員たち。
◎山中。
火を吹く怪獣。攻撃を始めるMATジャイロ。
◎小学校・校庭。
木にしがみつきながら見ている六助。
◎山中。
 攻撃を受ける怪獣。火を吐く怪獣。燃える山。

◎実験室。
N「怪獣は地底にその姿を消した。愛野村の岩石はMATの地質科学班によってその分析調査が行われた」
科学者A「我々が知る限り、地球上のマグマの分裂でこのような組成の地質が作り出された歴史はありませんな」
伊吹「んー。やはり地球上のものではないということですな」
科学者A「この岩石が放射能元素と緑色の鉱物メリライドを含んでいる点から考えて、有史以前にザゴラス星から落下した隕石とみて間違いないようですな」
郷「隕石?」

◎愛野村上空。
飛来するMATアロー、MATジャイロ。
◎愛野村。
 着陸するMATアロー、MATジャイロ。
N「MATはただちに作戦本部を愛野村近在の丘に移し、さっそく村の代表を召集した」
◎作戦本部。
かけつける村の人々。
悪友A「おーい。立入禁止だってよ、見てみようぜ」
郷「こらっ、危ないぞ!」
悪友A「ねえ、見してよ。ねえ、見してくれよ」
郷「ここは危険なものが置いてあるから近よっちゃだめ!」
悪友A「ねえ、いいじゃない。見してよ!」
草影に隠れている六助。こっそりテントに近づく。村人に説明している伊吹。
伊吹「ザゴラス星の隕石は直径3kmの巨大な岩石で、愛野村はこの隕石の真上に位置しております」
村人A「この村が隕石の上にあるとおっしゃるんですか」
伊吹「ええ」
警官「村の地震とその隕石とどんな関係があるんですか?」
伊吹「隕石の母胎であるザゴラス星の引力が、隕石に含まれている放射性元素、及びメルライドに作用して、これを引っ張り上げようとしているんです。村全体がせり上がっているのはそのためで、ほおっておけば村ごと隕石とともに宇宙に運び去られてしまうでしょう」
警官「えらいこっちゃ」
村人A「困ったなあ」
村人B「じゃあ、あの怪獣は何だね。やっぱり隕石の中に住んでたんかね」
伊吹「おそらく隕石の中に紛れこんだ地底の微生物が隕石の放射線を受け、突然変異をしたものと推測されます」
◎武器庫。
武器を見る六助。ケースからMATガンを取り出す。
六助「ああっ。すごいなあ。よおし」

◎愛野村。
 逃げる人々。誘導するMAT隊員。
上野「急いで!急いでください!」

◎作戦本部。
伊吹「MATガンが盗まれた!?」
A 南「もうしわけありません」
伊吹「すぐ探せ!」
南「はい」
郷「はい」

◎小学校・校庭。
トラックの荷台に乗る児童たち。
◎同・廊下。
オルガンを運ぶ悪友たち。
先生「早くトラックに乗れ!残ってるのはおまえたちだけだ!」
悪友A「先生!おれたちオルガン運びたいんです」
悪友たち「そうです!」
先生「そうだったのか。なんて心のやさしい生徒たちだ」
◎同・校庭。
かけてくる六助。
六助「おまえたち逃げるのか!」
先生「六助、何うろうろしてるんだ」
六助「おれは逃げたりなんかしないぜ。怪獣と戦うんだ。おまえたち、ついてこないか」
先生「手に持ってるのは何だ」
六助「MATガンです」
先生「そんなおもちゃ、こっちによこしなさい」
六助「やです」
先生「よこしなさい」
六助「やです」
先生「いいからよこしなさい」
六助「やです」
先生「よこせ」
引金に指がかかる六助。吹き飛ぶ銅像。
◎小学校前の道路。
止まるMATビハイクル。
南「あの音は?」
郷「校庭の方から」
南「よしっ」
◎小学校・校庭。
腰を抜かしている先生。悪友たちにMATガンを向ける六助。逃げる悪友、先生。
悪友「わー!」
◎同・階段。
かけあがる郷、南。
◎同・校庭。
六助「みんなついてこないなら、おれ一人でもやるぜ」
かけだす六助。
先生「六助、六助!」
悪友A「じゃみっ子!」
先生「戻るんだ!待て!」
かけつける郷、南。
南「どうしました」
悪友A「じゃみっ子がMATガンを!」
南「え!じゃみっ子……」
かけだす南。
郷「先生は生徒をつれて早く!」
先生「はいっ。さあ、みんな早く早く!」
◎山中。
走る六助。追う南、郷。地面が揺れ始める。揺れながらせり上がっていく愛野村。

◎作戦本部。
岸田「住民はすべて退避させました」
伊吹「よし」
南「ザゴラス星の引力は急速に強くなっています」
伊吹「南と郷はまだか」

◎アイキャッチ。

◎山中。
息を切らして立ち止まる六助。近づく郷、南。振り返る六助。
郷「こっちへよこすんだ」
首をふる六助。
郷「MATガンで何をするつもりだ」
六助「怪獣と戦うんだ」
郷「お母さんが心配するぞ」
六助「母ちゃんは出稼ぎに行って村にはいない」
郷「お父さんは」
 六助「父ちゃんは死んじゃったい」
南「じゃあ、君は一人っきりなのか。それでじゃみっ子か」
MATガンを向ける六助。
南「弱虫だね、君も」
MATガンを静かに降ろす六助。
南「友達からいじめられても、ケンカなんか恐くてやったことがない。先生からは一度もほめられたことがなく、しかられてばかり。郷、この子に戦わせてやってくれないか。多分生まれて初めて何かと戦おうとしてるんだ」
郷「しかし……」
揺れる地面。現れる怪獣。MATシュートを抜く郷。
南「さあ、撃つんだ!さあ、撃て!」
MATガンを撃つ六助。MATシュートを撃つ郷、南。
南「よし、二手に分かれよう」
六助の肩を叩く郷。
郷「頼んだぜ」
南「よし、行くぞ!さあ」
攻撃しながら怪獣に近づく南と六助。
南「もっと接近するぞ。恐くないか」
六助「こわくなんかありません!」
南「ようし、レッツゴウ!」
山を登る二人。
南「行くぞ」
六助「はいっ」
攻撃する二人。一方、様子を見る郷。
郷「学校の裏山で怪獣と応戦中。南隊員は少年を連れています。救出お願いします」
◎作戦本部。
伊吹「了解。丘隊員はMATジャイロで3人を救出」
丘「はい」
伊吹「他の者は怪獣を地底へ追いこむんだ。怪獣を村の外へ出してはならん」
隊員「はいっ」
 発進するMATアロー、MATジャイロ。
◎山中。
崩れていく村。燃える家。狙いをつける南と六助。
南「あっ、危ない!」
がけ崩れが起こる。下敷になる二人。
南「大丈夫か」
同じく下敷になっている郷。飛来するMATアロー。
◎伊吹機。
伊吹「攻撃開始!」
◎岸田機。
 岸田「了解!」
◎山中。
攻撃するMATアロー。隆起して斜めになった愛野村。家屋をけとばす怪獣。隆起したがけを飛び降りる怪獣。
◎伊吹機。
伊吹「怪獣が村の外へ出る。食い止めろ!」
◎岸田機。
岸田「了解。発射!」
◎山中。
 攻撃するMATアロー。倒れる怪獣。せり上がる愛野村。崩れる山。岩の中から手を上げる郷。ウルトラマンに変身する。

怪獣を背中からつかみ村の方へ引き戻すウルトラマン。首にチョップを加える。間合いをとって隆起した村に登るウルトラマン。後ろからつかみかかる。投げ飛ばす怪獣。倒れるウルトラマン。突進する怪獣。怪獣の頭をキックするウルトラマン。ふらつく怪獣。立ち上がるウルトラマン。後ろからチョップして、投げ倒す。倒れた怪獣をつかんで村の方へ投げ飛ばすウルトラマン。揺れる村。大地から離れ上昇する隕石。
◎愛野村上空。飛行するMATアロー、MATジャイロ。呆然と飛んでいく巨大な隕石を見ている隊員。地上に大きな穴が見える。
◎隕石上。
しがみつく南と六助。ものすごい風を受けている。
南「大丈夫か!」
風で吹き飛ぶ家屋。よろめく怪獣。隕石の上に飛び乗るウルトラマン。ころげながら怪獣の足をキックする。倒れる怪獣。ものすごい風によろめくウルトラマン。
南「さあ、あそこの木の所へ行ってつかまるんだ」
よろめきながら立ち上がるウルトラマンと怪獣。風の勢いに乗って体当りする怪獣。倒れるウルトラマン。立ち上がるが、腕に払われてまた倒れてしまう。足でけろうとする怪獣。転がりながら逃げるウルトラマン。木にしがみつく南と六助。木が倒れ空中にほおりだされる。
南「わー!」
六助「助けてー!」
隕石の縁まで追いこまれ、しがみつくウルトラマン。手を踏む怪獣。スキを見て隕石の上に飛び乗り、ブレスレットを投げるウルトラマン。
◎空中。
カプセルの中におさまる南と六助。
◎隕石上。
倒れているウルトラマンにのしかかる怪獣。裏返して、立ち上がらせるウルトラマン。さらに投げ飛ばす。倒れた怪獣に、ひざで攻撃する。さらに立ち上がらせ、怪獣の首をつかんで隕石から飛び降りるウルトラマン。
◎上空。
怪獣を抱えたまま飛ぶウルトラマン。大きく円を描いて戻ってきて、隕石めがけて怪獣を投げる。隕石と激突する怪獣。爆発する。飛び去るウルトラマン。

◎山中。
 飛来するカプセル。気がつく南と六助。
 六助「ウルトラマンが助けてくれたんだ」
南「うん。よく戦ったな。よくやった。はは、よくやった。……。郷は?」
郷「おーい!」
六助「あっ」
南「郷!」
かけてくる郷。
南「無事だったか」
郷「ええ。よくやったな」
ポッカリと開いた大きな穴を見る3人。
郷「故郷を失って寂しくないかい?」
六助「寂しく何かありません」
南「故郷はなくしても、故郷で戦った思い出だけは一生忘れないよ。これから先どこの地に移り住んでも、くじけそうになったら思い出すんだ。ぼくは昔、故郷で怪獣と戦ったことがあるんだってな」
六助「また起こらないかな。今度はもっと撃ちまくってやる」
空中に向かってMATガンを撃ちまくる六助。
南「もうよせ!」
 MATガンを取る南。
 南「もういいだろ」
上空を見る郷。
郷「MATジャイロだ」
◎上空。
手をふる隊員たち。
◎山中。
手を降る郷、南、六助。
第28話 『ウルトラ特攻大作戦』

◎東京。
N「今日もまた東京の空は厚いスモッグに覆われていた」
走る郷の車。
アナウンサー『甲州街道では烏山でトラックの積荷が崩れまして、上り方向が渋……』
ラジオを切り換える郷。
郷「東京じゃだめですね。試運転にならない」
坂田「しかし、安定がいいだろ。コーナリングの」
郷「ええ」
坂田「ケツについてるおれの発案によるスタビライザーのせいだ」
郷「ごきげんだなあ。これだけの改造で車が安定するなんて」
坂田「風だよ。風圧を支配するんだ」
郷「どうするんです?この車」
坂田「もうちょっと、いじりたいんだ」
アナウンサー『それでは天気予報をお伝えします。グァム島駐屯の米軍沿岸警備隊の哨戒機より気象台への連絡によれば、サイパン島の東北500kmの地点で台風が観測されました。中心気圧は950mb』
郷「また台風か……」

◎MAT司令室。
鼻歌を歌いながら入ってくる郷。
岸田「よう、どこ行ってた」
 郷「ええ、ちょっとね。坂田さんの試運転につき合ってたんですよ」
岸田「すぐパトロールだぞ」
郷「え?」
丘「はいっ」
写真を受け取る郷。
郷「何だ、台風じゃないか」
丘「気味が悪いでしょう」
伊吹「ゴーストガードからの台風発生の第一報が午前10時、自衛隊ならびに気象台への連絡がちょうど正午」
郷「いまこっちへくる途中、ラジオで聞きました。台風パトロールまでMATはやる必要ないんじゃないですか?」
伊吹「うん。ふふ。この写真の撮られたのは午後1時にサイパン島の北のこの位置だ。ところがその後、台風が突如消えた」
郷「消えた?」
入ってくる南、上野。
南「ただ今、帰りました。第1回パトロール異常ありません」
上野「ミクロネシア一帯を広範囲飛びましたが、台風の兆しはないようです」
伊吹「ご苦労」
岸田「という次第なんだ、郷。これからおれたち2回目のパトロールだ」
郷「しかし、これは台風の写真でしょ?こいつが短時間に消えるなんて……。そんなバカな」
伊吹「郷、岸田。第2回目のパトロールに出発!」
郷、岸田「はいっ」

◎上空。
飛行するMATアロー。
岸田「何もないじゃないかなあ」
郷「快適ですねえ。世はすべて事もなし」
岸田「気取るなよ」
郷「気取ってるわけじゃありませんよ。台風が消えたのはむしろ喜ぶべきことです。騒ぎほどのこともなし。自然の出来事は自然にまかせればいいんです」
岸田「哲学的だな。はっ!」
前方から急接近する戦闘機。
岸田「気をつけろ!」
紙一重で避ける。
岸田「危ないなあ。完全なニアミスだ。ぶつかったりでもしたらMATの予算も削られるとこだぞ」

◎坂田家。
レースのテレビを見る次郎。
坂田「しかし、台風が消えたってのは怪談じみてるな」
次郎「天気予報なんか当たらないんだ。進路が狂っただけだよ、きっと」
郷「でも、今日パトロールしてきたけどホントになかったよ」
次郎「どこまで行ったの?」
郷「グァム島まで」
次郎「わー、かっこいい。グァム島ならまだ泳げるでしょ」
郷「うん」
テレビにニュース速報が入る。
次郎「ああ、ニュース速報だ」
郷「小笠原の南50kmの海上で、大型のタンカーが龍巻に巻きこまれて……」 次郎「行方不明だって」
坂田「変だな。台風が消えたってのに」

◎海上
N「その頃、東京をはるか離れた海上で局地的な転校異変が起こっていた。大龍巻に襲われた船は空中に舞い上がり、バラバラに破壊された」
舞い上がる船。黒い雲の向こうに光る怪しげな目。
◎山村。
嵐が吹き荒れ大木が折れる。上空から降ってくるタンカー。つぶされる家。

◎翌日・同じ山村。
家の上にタンカーの破片などが落ちている。調査する人々。かけつけるMAT。 伊吹「MATのもんですが」
村人A「ああ、こりゃどうも。寝とったら急にドカーンと……。この世の終わりかと思いました」
村人B「出て見りゃ船だ。空から船が降るんなんてどういう陽気なんでしょうね」
村人C「停電にはなるし、暗闇の中で振るえておりましただ」
岸田「しかし山ん中に入って船を見るとはなあ」
郷「人間の尺度で計っちゃいけませんよ。何しろ自然は偉大ですからね」
岸田「くー」
調査員のそばによる伊吹。
伊吹「ご苦労さん」
調査員「ああ伊吹さん。この船の破片、気がつきませんか?無論ほんの一部だけど」
伊吹「何か?」
調査員「破片から判断して風によるものとだけは考えられません。直接的衝撃によると思われる異様な裂け方です」
郷「直接的?」
調査員「風による場合、接合部のねじれが一番問題となるんだが、この板は規則正しく裂けている」
伊吹「うん」
調査員「風のせいではありませんな」

◎東京。
走るMATビハイクル。ラジオのスイッチを入れる郷。
岸田「仕事中のカーラジオは不謹慎だぞ」
郷「いやあ、広く情報を求めなきゃねえ」
アナウンサー『このところ快晴に恵まれた東京では、断片的な風の影響で光化学スモッグもどこへやら、連日0.001ppm以下の住みよい東京になっています』
岸田「へー。風のおかげか」
郷「自然は偉大ですねえ」
岸田「わかったよ」
郷「ははは」
アナウンサー『一方、問題の台風は小笠原近辺に……』
◎気象台前。
車から降りて歩く郷、岸田。
郷「東京で深呼吸をしたくなるような空気のうまさ」
岸田「自然の功罪あい半ばってとこだな」
◎気象台。
電話に出ている局員A。
局員A「気圧……。本当ですか?ああ館長!館長!」
館長「ちょっと待て」
郷、岸田の所へ行く。
館長「やあ、お待たせしました。とにかく台風が突然消えたというのは前例のないことで」
 岸田「もう一度、ここ一週間の台風発生以降の天気図をおってご説明願えますか」
館長「はあ」
岸田「それと風の方向と速度についても」
官庁「はあ、これを」
書類を手渡す館長。
局員A「館長、海上自衛隊より緊急電話です。新しい台風らしきものが紀伊半島で観測されました。しかも突然の発生らしく、進路は北々東なんです」
郷「突然の発生?」
局員A「ええ」
郷「そんなバカな」
岸田「関東にまともに来るな」

◎漁村。
激しく動く風向計。走ってくる漁民。
漁民「ああ、あそこだ!」
海の向こうに2つの明るい光が見える。
漁民A「漁火じゃねえか?」
漁民B「いやあ。あんなに光りゃあしねえぜ」
漁民A「おい、とにかく警察へひとっ走り知らせてこいや」
漁民C「何せ風も強いし、用心に越したことはねえぜ」
漁民D「何かよくねえことが起こりそうな気がするなあ」
漁民C「ああ」

◎MAT司令室。
郷「隊長、こりゃ人知の及ばぬ自然現象として解釈すべきですね」
伊吹「うん。そうは言っても、新しく変化する自然にも対処しなけきゃいかん」 郷「はあ」
岸田「ぼくは消えたと思われた台風が、実は新しい紀伊半島のやつに続いた。つまりいったん勢力を弱めつつ、またぶり返したとする説が当たってると思うんです」
郷「じゃあ、船が山に降るっていうのはどういうわけ?」
岸田「いいんだよ」
電話が鳴る。
上野「はい、こちらMATです。ええっ?そ、そんなバカな!あなた、国民が混乱するじゃないですか!ええ、はいっ。伝えます」
伊吹「何だね?国民が混乱するとか何とか」
上野「気象庁からです。紀伊半島の台風も突然消えたそうです」
南「消えた?」
上野「気象台ではここ数日のこの異常発生消滅に振り回されて、一般の人にどう発表し処置したものか困っているそうです」
岸田「気象台泣かせか。ははは。ま、たまには薬だ」
伊吹「岸田!口を慎め」
岸田「はーい」
再び電話が鳴る。
上野「はい、はいそうです。MATです。何ですって?ええ、ええ。はい、わかりました」
南「また新しい台風の突然の発生かい?」
上野「いや。今夜、三浦半島で不知火らしい不審な光が発見されたそうです。海上保安庁からの連絡で巡視船は急行していますが、MATの応援も求められています」
伊吹「よし、わかった。夜間パトロールだ」
郷「隊長!こりゃ、台風の消滅や龍巻と関係ありますね。とするとですね……」 岸田「新しい自然の姿か?」
郷「そうそう、そうなんですよ」
岸田「くー」

◎上空。
飛行するMATアロー。
岸田「何だよなあ、もういいかげん飛んでるけどなあ」
郷「何も見あたりませんねえ。第一、不知火めいたものもないし、怪しい光もなし」
丘「照明弾を落としてみたら?」
岸田「よし。やってみるか」
郷「照明弾スタンバイ」
岸田「照明弾スタンバイOK」
郷「発射!」
岸田「発射!」
郷「すべて世は事もなしと」
岸田「おい、また自然説か?」
丘「レーダーにも映らないし」
岸田「結局、何もなしか」
郷「はは。骨折り損のくたびれもうけ」
伊吹『その二人、くだらんこと言ってないで帰投しろ!』
岸田「はいっ!おい、無線のスイッチは切っといてくれよな。百合ちゃん」

◎道路。
再びテスト走行する郷。
坂田「スタビライザーをハンドルと連動して左右2枚に分けたものは前にもあった。今度はそれに飛行機のフラップのような効果を持たせると同時に、垂直尾翼的な風の流れも加えるように改良した」
郷「なるほど。この間よりもぐっといいですね」
坂田「もう少し研究を加えれば、MATアローにも取りつけられる。どんな風の中でも飛ぶように応用できる」
次郎「でも、なんかかっこ悪いね。チンドン屋みたい」
坂田「こいつ」
郷「兄さんの苦心の傑作だ。チンドン屋はないだろ。ん!坂田さん!」
坂田「何だい?」
郷「何か変なものが見えたんです」
止まる車。車から降りる郷たち。丘の向こうに巨大な怪獣が見える。
次郎「あっ、空に浮かぶクラゲ!」

◎アイキャッチ。

◎道路。
怪獣を見守る郷たち。
坂田「まるで波に漂うクラゲだ」
次郎「あっ、目みたいのが光った!」
郷「ホントだ。漁火だ」
次郎「漁火って何?」
坂田「魚を集めるのに使う明りだ」
トランシーバーを取り出す郷。
◎MAT司令室。
郷『こちら郷です。怪獣らしきもの発見。台風との関連もありと思われます。これからただちに戻ります』
岸田「了解」
南「ようし、ただちに攻撃開始ですね」
上野「ようし。ちきしょう。ここんとこ、ずいぶんと世間と天気を騒がせやがって」
伊吹「待て!」
南「何です、隊長」
伊吹「これは思わぬ難物かも知れんぞ。東京の近くに姿を現しているとすると、いいか、もしも今度の台風が怪獣に関係ありとするとだ、ヘタに攻撃して東京の近くで風や龍巻やそれに類する暴れ方でもされたらどうする」
上野「怪獣の生理で台風が起きるんですかねえ、隊長」
伊吹「いや、そうと決まったわけじゃないが、とにかく都民が近くにいる場所でヘタな手出しはできんぞ。南、上野、丘隊員、偵察に飛びたまえ。そして写真を撮ってきて攻撃のポイントを見つけるんだ」
隊員「はいっ」
伊吹「岸田」
岸田「はいっ」
伊吹「君は至急、関係各庁に連絡をとれ」
岸田「はいっ」

◎上空。
飛行するMATアロー。
南「おいっ」
上野「あっ!」
空に浮かぶ怪獣。
南「よし、徐々に接近してくれ。丘隊員、写真の方を頼むぞ」
丘「はいっ」
上野「しかし、こいつはでけえや」
N「台風怪獣バリケーン。その巨大な姿を初めてMATの前に現した」
◎住宅地。
上空に現れる怪獣。逃げる人々。シャッターを閉じる商店。雨戸に釘を打つ人々。

◎MAT司令室。
怪獣の写真を調査する隊員。
 郷「隊長、これですよ。この巨大な触手が原因です」
岸田「恐ろしいやつだなあ」
伊吹「幸い、現在はおとなしい。いつまで続くか、その保証は全くないが」
南「ミサイルで攻撃したらどうでしょうか」
伊吹「待て。もう少しやつの実体を知る必要がある。ご苦労、丘隊員」
丘「はい」
岸田「ちくしょう、台風怪獣め。何かいい方法ないかなあ」
伊吹「おそらく、私の考えでは体にエネルギーを蓄えるためにあいつは今は静にしてるんだ」
南「とすると、おとなしい期間とエネルギーを発散する時期との周期が問題だなあ」
岸田「しかし南隊員、今まで日本に襲った台風の中にだってあいつの起こしたものがあるかも知れないし、その周期はつかめない」
上野「うん。おれもそう思う。ということは即刻攻撃説だ」
岸田「おまえは乱暴な結論を出すな」
伊吹「郷。その後、位置の変動はないな」
郷「はい」
丘「隊長」
伊吹「何だね、丘隊員」
丘「冷凍弾を使ったらどうでしょう」
郷「そう、そうだよ。職種を凍らせてから攻撃するんだ」
伊吹「丘隊員、狙いは正しいよ。しかし大気中における冷凍効果は期待薄だ。それより麻酔弾だよ。麻酔によってやつの機能を停止しておく。それからだ、ミサイルは。攻撃開始!アローには麻酔弾を搭載。丘隊員と南、上野、岸田。麻酔弾作戦開始!」
隊員「はいっ」
郷「隊長、ぼくは?」
伊吹「君は私とレーダーで位置を監視し、ミサイルの照準をあいつにあわせとけ」
郷「はいっ」

◎上空。
アロー2機が怪獣に接近する。
◎岸田機。
岸田「あいつのおかげで東京の空気がきれいになってるっていうのに、ちょっと気が引けるな」
◎南機。
南「岸田、バカなことを言うな。あいつは、でかいだけでもじゃまなんだ」
◎岸田機。
南『おまえのちっぽけな感傷の入りこむ余地はないんだよ』
岸田「しかし、あいつこそ新しい自然かも知れないぜ」
南『いいかげんにしろ。郷にかぶれたのか』
◎MAT基地。
移動するミサイル。
◎MAT司令室。
ミサイルを調整する郷。
郷「スタンバイOK」
伊吹「よし。ミサイルスタンバイ完了。麻酔弾発射!」
◎南機。
南「了解。ようし、撃て!」
丘「はいっ」
◎上空。
2機から麻酔弾が発射される。命中する麻酔弾。
◎岸田機。
上野「やった!」
◎上空。
力を失い、次第に地上へ落ちていく怪獣。
◎南機。
南「隊長、麻酔弾の効果は絶大です。ミサイル発射OK。とどめと行きましょう」
丘「南隊員!」
伊吹『どうしたんだ』
南「やつは町の上に降りていきます」
◎町。
降りてくる怪獣。変電所の上に降り、電流を受ける。力を回復する怪獣。触手を振り回し、駅を破壊する。頭を回転させる怪獣。風が起こり、周囲の瓦が飛ぶ。暗雲が立ちこめ、雷が鳴る。吹き飛ぶ家屋。吹き荒れる雨。
◎岸田機。
上野「隊長!ものすごい風です」
岸田「触手を広げて、ものすごいスピードで回転してます。地上の家は上空へ舞い上がり、大変です」
次々と破壊されていく家屋。
◎MAT司令室。
南『隊長、町の小学校がつぶされています』
丘『風圧が強くてアローは怪獣に近寄れません』
郷「ちくしょう、坂田さんのスタビライザーが完成してたらなあ」
◎町。
燃え上がるガスタンク。
◎MAT基地。
伊吹「ミサイル発射!」
郷「発射!」
◎MAT基地。
次々と発射されるミサイル。
◎町。
怪獣に命中するミサイル。怪獣の頭部が光り、嵐が一層激しくなる。
◎南機。
南「隊長!操縦不能です!」
◎MAT基地。
岸田『アローの尾翼が飛ばされそうです』
上野『わー!ダメです!』
丘『あー!危ない!隊長!』
オロオロする伊吹。立ち上がる郷。
伊吹「アロー1号、2号。退避しろ!防風圏から脱出しろ!アロー1号、2号!アロー1号、2号!聞こえるか!」
ヘルメットを持って飛び出す郷。
◎MAT基地・通路。
外へ出る郷。手を上げ、ウルトラマンに変身する。

◎町。
嵐が吹き荒れる。飛来するウルトラマン。間合いをとって突進する。フワリと浮かび上がり、両足でウルトラマンの体をはさむ怪獣。ウルトラマンに電気ショックを与える。怪獣にチョップを与え、離れる。苦しむウルトラマン。怪獣の頭部が光る。あわてて避けるウルトラマン。爆発が起こる。腹にある口から息を吹き出す怪獣。苦しむウルトラマン。接近する怪獣。飛び上がるウルトラマン。触手で足をつかみ、地上へ引きずり落とす。倒れるウルトラマン。触手で連打する怪獣。泥まみれになるウルトラマン。触手で首をしめる怪獣。立ち上がって触手を振り払うウルトラマン。間合いをとってスペシューム光線を与える。だが、怪獣の口が吸収してしまう。またも頭部を回転させる怪獣。龍巻が起こる。立つのも必死になるウルトラマン。飛び上がる怪獣。後を追うウルトラマン。光線で攻撃する。地上へ降りる怪獣。さらに頭部を回転させる怪獣。飛び上がり、怪獣の上へいくウルトラマン。体を回転させて、怪獣を吸い上げ、そのまま宇宙へ飛んでいく。
◎宇宙。爆発する怪獣。

◎MAT司令室。
岸田「そういえば何だよな。いつもウルトラマンにいいところをさらわれるよな」
丘「何、言ってるのよ。地球の平和はウルトラマンのおかげよ」
郷「いやあ。みんなだって一生懸命やりましたよ。ねえ」
南「当ったり前じゃないか」
伊吹「そういえば郷、私が呆然とした時、君はどこへ行ってたんだ」
郷「へ?へへ。神様にお祈りに行ってただけです」
上野「神様?!」
郷「うん。苦しい時の神頼みってね。ははは」
岸田「おまえねえ。おまえ、本当に自然の神秘を信じてるのか?」
電話が鳴る。
上野「はい、はい。こちらMAT。はい、はい。わかりました」
伊吹「何だね?」
上野「東京一帯にスモッグ注意報が出たそうです。とりわけオキシダントがひどく、外出の際はマスクを着用されたしとのことです。東京都からの連絡です」
岸田「やれやれ、怪獣去ってまた一難か」
郷「岸田隊員、今度は自然の力じゃありませんよ」
岸田「うん」
◎東京。
スモッグに霞む町。 第37話 『ウルトラマン夕陽に死す』

◎宇宙電波研究所・入口。
見学にきている生徒たち。
先生「いやあ、今日はいい勉強になりました」
所長「いやあ、子供たちの目を少しでも宇宙に向けさせ、宇宙の知識を増やすことができたらと考えております」
先生「ありがとうございました。さあ、みんなもお礼を言うんだ」
子供たち「どうも、ありがとうございました」
所長「さようなら」
子供たち「さようなら」
◎同・作戦室。
入ってくる所長。
所長「我々の目的を成功させるためには、どうしてもウルトラマンが邪魔だ。ウルトラマンを倒すためには彼の武器を研究する必要がある。彼の能力を引き出すために一番適した怪獣を選出せよ」
男A「はいっ。かかれ」
コンピューターを調節する男たち。
所長「シーゴラスとベムスターか。郷秀樹は今どこにいる?」
男B「はいっ」
モニターに郷が映る。
所長「見ろ。ウルトラマンは人間と同じ情操を持っている。郷秀樹は人間であって人間でなく、宇宙人であって宇宙人でもない。不思議なやつだ」
◎坂田自動車修理工場。
アキ「さあ、どうぞ」
郷「ありがとう」
アキ「はい、お兄さん」
郷「久しぶりだなあ。アキちゃんのコーヒー飲むの」
アキ「それだけお見かぎりってことよ。近ごろ冷たいんだから」
郷「いやあ、事件続発でねえ。今日だってMATの仕事だろ」
アキ「ねえ、どうなの?兄さん発案のスタビライザーは」
郷「うん。これさえつければ、200kmのスピードでも安定して走れる。坂田さんのおかげです」
坂田「おれだって、自分の考えたものがMATの車に採用されてうれしいよ。これをつけたことで高速中の事故がぐっと減ると思うんだ」
郷「さっそくテストしてみるか」
坂田「うん」
アキ「ねえ、私もつれてって」
郷「ダメだよ。これはMATの仕事なんだぞ」
アキ「テストなんだからいいでしょ」
坂田「アキ。郷は今、勤務中だぞ。公私混同しちゃいかん」
アキ「はあい」
郷「正月休みに蔵王に連れてってやる。スキーを磨いておくんだな」
アキ「ホント?」
郷「うん。アキちゃんにウソついたことあるかい」
アキ「わー。最高だわ。郷さんと一緒に銀世界滑れるなんて。わー、うれしい。忘れないでね。うれしいわあ」
郷の腕をつかむアキ。郷の腕時計がはずれてしまう。
アキ「あらあ、ごめんなさい」
郷「いいよ。前からおかしかったんだ」
アキ「私、取りかえてきてあげる」
郷「アキちゃんが?」
アキ「まかしといて。抜群なもの選んできてあげるから」
郷「じゃあ、頼む」
無線が鳴る。
郷「はい、郷です」
丘『本日、午後より特別任務があります。作業すみ次第、帰隊してください』
郷「了解」

◎MAT司令室。
南「たった一滴でタンカー船を爆破……」
伊吹「ああ。ニトログリセリンの6000倍の威力があるといわれている。たったこれだけの量で富士山がふっとばせるそうだ」
上野「こりゃすごい。サターンZとはよく名づけたもんだ」
伊吹「これはMATがミサイル用液化火薬として開発したもんなんだが、放射能が出ない特質を持っている。そこで国土開発に使うことになったんだが、まあ、平和利用っていうことだな」
岸田「へー。それでダム建設を」
伊吹「うん。今まで裏日本と呼ばれていたのは、この中央連山が太平洋からの暖かい風を止めていたからなんだ。この連山を崩して潅漑用ダムつくっていけば、気候は温暖、水は豊富に、日本はますます緑で豊かな国になるってわけだ」
南「しかし、隊長。現地まで400km。どうやって運びますか?」
伊吹「その心配はない。輸送プランはできている」
入ってくる郷。
郷「ただ今、戻りました」
伊吹「ご苦労。次に輸送計画の細部なんだが……」
隊員A「報告します。東京湾一帯の異常潮位は、怪獣のしわざであることが判明しました」
伊吹「怪獣のしわざ?」
隊員B「隊長!東京湾にシーゴラス出現!」
伊吹「何?」
◎海上。
暴れるシーゴラス。荒れる海。押しよせる津波。
◎漁村。
逃げる人々。
南「早く!」
丘「早く!さあ、早くしてください」
◎MAT司令室。
伊吹「郷、上野、丘、すみやかに避難しろ。津波がくるぞ!」
◎漁村。
押しよせる津波。
◎上空。
攻撃するMATアロー。
◎港。
倉庫を破壊する津波。
◎漁村。
走る郷。ウルトラマンに変身する。

津波の前に立ちはだかるウルトラマン。ウルトラバリアーをつくり津波をはじき返す。
◎海上。
逆流する津波。
◎砂浜。
シーゴラスの腕をつかむウルトラマン。振り回して投げ飛ばす。スペシューム光線を発するウルトラマン。頭に命中する。
◎町。
向かってくるベムスター。ウルトラスピンキックをしかけるウルトラマン。避けるベムスター。倒れたウルトラマンをけとばすベムスター。
上野「ベムスターまで現れた!」
丘「まるでウルトラマンをねらいうちしてるみたい」
上野「くそう。ウルトラマンを援護しようぜ」
丘「はい」
向かい合うウルトラマンとベムスター。ウルトラブレスレットを投げるウルトラマン。両翼と首が切り落とされるベムスター。

◎宇宙電波研究所。
所長「スペシューム光線の原子は、アルミウム原子3000個に対しクロム原子100個の割合。スピンキックはその瞬間105G。予想以上の能力を持っている。このままだとブラックキングも勝てる保証はない。もう一つ、ウルトラマンの弱点を見つける必要がある」

◎砂浜。
海から上がってくる郷。
上野「郷!」
丘「郷さーん!」
上野「大丈夫か」
郷「ひどいめにあったよ」
丘「波がこんなに静かになったわ。さっきのことが夢みたい」
上野「変だよな。過去の怪獣が幽霊みたいに出てくるなんてよ」
郷『不可解の話だ。まるでウルトラマンの能力を検査するかのように。なぜ』

◎宇宙電波研究所。
男A「所長。MATがサターンZの輸送を開始するようです」

◎MAT基地。
車にサターンZを乗せる隊員。
 隊員C「よろしくお願いします」
南「了解。さあ、配置につこう」
丘「はい」
南「ようし」
岸田「郷、先導をしっかり頼むぞ」
郷「はい」
ジープやMATビハイクルに乗りこむ隊員たち。
◎南車。
南「そろそろ、隊長機が来る頃だ」
上空を飛ぶMATジャイロ。
◎伊吹機。
伊吹「こちら伊吹。一帯に障害物はない。出発せよ」
◎南車。
南「了解。出発!」
◎MAT基地。
発進する車。
N「MATは驚異の爆薬サターンZの輸送を開始した」
◎伊吹機。
伊吹「ポイント120、異常なし」
南『了解』
◎南車。
伊吹『ポイント135、異常なし』
南「了解」
郷『シーゴラスとベムスター。風のごとく現れて消えていった。誰かがウルトラマンの能力を試すために。まさか……』
南「郷、恋人元気かい?」
郷「は?」
南「とぼけるなよ。アキちゃんとかいったな。20歳を過ぎたが、ますますきれいになる感じだ。いいカミさんになるぜ、彼女は」
郷「おれもそう思います」
南「こいつ」
郷「はははは」
◎山道。
前方の山が崩れる。
◎南車。
急停車する。
南「怪獣だ!」
◎山道。
山の中から現れる怪獣。行く手の道路をふさぐ。車から降りて攻撃するMAT。煙を吐く怪獣。
◎伊吹機。
伊吹「輸送車を後方に避難させろ。危険だ」
◎山道。
南「はっ。了解」
ジープに戻る隊員たち。何者かがジープをバックさせている。煙の中に運転席に宇宙人の姿が見える。倒れている隊員。
南「おい、しっかりしろ。おい」
上野「ダメだ。死んでます」
岸田「怪獣をおとりにして計画的に襲撃したんだ」
上野「あっ、怪獣がいない」
◎伊吹機。
伊吹「こちら伊吹。奪われた輸送車はポイント157を南に向かって逃げている。追跡せよ」
◎山道。
南「了解。さあ、行くぞ」
上野「はいっ」
車に乗りこむ隊員たち。
郷「丘くん。この車はおれにまかせてくれ」
丘「はいっ」
猛スピードで発進するMATビハイクル。
◎上空。
輸送車を追跡するMATジャイロ。
◎山道。
逃走する輸送車。MATジャイロが発光し、黒い煙を吹き出す。

◎アイキャッチ。

◎トンネル。
乗り捨てられた輸送車を見る隊員たち。
南「いったい誰がどんな目的で奪ったんでしょうね」
伊吹「計画的に狙っていたことは確かだ」
郷「宇宙人のしわざです」
南「宇宙人?」
郷「さっき、ちらっと見たんです。あれは確かに宇宙人」
伊吹「サターンZが宇宙人の手に入ったとすると……」
郷『そうだ。宇宙人のしわざだ。シーゴラスを出したのも、ウルトラマンを研究して倒すため。奴らの誘いに乗ると危険だ』

◎宇宙電波研究所。
所長「これでMATは恐くない。残るはウルトラマンをどう倒すかだ」
ウルトラマンの写真を見る所長。アキの写真に目を止める。
所長「これだ。郷はこの娘を愛している。この娘を利用して、郷、いやウルトラマンの心理を撹乱する。そのスキをつけば」

◎時計店。
アキ「これかな?こっちがいいかしら」
店員「どんなかたですか?」
明き「そうね。背はスラッと高くて、ハンサムで、やさしくて思いやりがあって、忙しいのが玉に傷。でもとっても素敵な人よ」
店員「はあ……」
◎道。
買った時計を手にあわせながら歩いているアキ。
アキ「早くこいこいお正月。らららららん」
後ろから迫る車。突然止まり、中の男がアキを車内に押しこむ。
アキ「何すんのよ。はなしてよ。はなしてったら。お兄さん!お兄さん!」  発車する車。工場から飛び出してくる坂田。
坂田「待て!」
坂田をはねとばす車。
坂田「わー!」
アキ「あー!」
地面に落ちる坂田。
アキ「お兄さーん!」
横を見るアキ。所長の顔が宇宙人に変わっている。
アキ「きゃー!」
ドアを開けてほおりだされるアキ。服がひっかかって引きずられる。木に体が当たって服がはずれる。走り去る車。泥だらけになったアキ。手に握りしめる時計。離れて倒れている坂田。

◎病室。
かけこんでくる郷。
看護婦「癒着です」
郷「アキちゃん!」
医者「静かに」
郷「はい」
振り返り、坂田の遺体を見る郷。
郷「坂田さん」
医者「悪質なひき逃げです。むごいことをするもんだ」
郷「犯人は?」
医者「目撃車の話では、故意にやったようですな」
郷「故意に?」
次郎「その犯人、おれが必ずやっつけてやる。兄ちゃんと姉ちゃんのかたきをとってやる」
郷「アキちゃん、誰がやったんだ。許せない。許せないよ、こんなこと」
アキ「宇宙……人」
郷「宇宙人?」
うなづくアキ。
郷「アキちゃん。しっかりするんだ。正月にはスキーに行くんだろ。元気を出せ」
ニコリと笑い、握りしめた時計を見せようとするアキ。だが、息絶えてしまう。 郷「アキちゃん!アキちゃん!」
次郎「姉ちゃん!」
アキ『まかしといて!抜群なもの選んできてあげるから』
次郎「姉ちゃん!」
泣き出す次郎。

◎宇宙電波研究所。
所長「郷の心は嵐の海のように荒れ狂っている。今なら勝てる。ブラックキングを出せ」
◎郊外。
地中より現れる怪獣。

◎病室。
トランシーバーが鳴る。
郷「はい、郷です」
丘『東京A地区に怪獣出現。ただちに現場に急行してください』
郷「了解。おとなしく待ってるんだぞ」
うなづく次郎。アキと坂田に礼する郷。
◎病院の屋上。
郷「ようし」
飛び降りる郷。ウルトラマンに変身する。

◎郊外。
かけつけるMATジープ、ビハイクル。暴れる怪獣。攻撃する隊員たち。口から光線を吐く怪獣。燃え上がる枯草。夕日の中、上空から飛来するウルトラマン。怪獣に突進する。はじきとばす怪獣。立ち上がるウルトラマン。
◎宇宙電波研究所。
所長「ウルトラマン。おまえの命もおしまいだ」
◎郊外。
スペシューム光線を発するウルトラマン。両手ではじきとばす怪獣。口から光線を吐く怪獣。ウルトラマンの足元に当たる。キックをしかけるウルトラマン。だがあまり効果がない。チョップを連発するウルトラマン。だが、逆にやり返され倒れる。
ウルトラマン『やはり私の技を研究し、私を倒すために訓練されているのだが負けないぞ。必ず坂田兄弟の復讐をしてやる』
怪獣に突進するウルトラマン。足をつかみ怪獣を倒す。キックを与え、間合いをとる。ブレスレットを投げるウルトラマン。だが、怪獣の体ははじいてしまう。 上野「ブレスレットもきかないぞ!」
 岸田「罠に落ちたんだ」
◎宇宙電波研究所。
巨大化する所長。ナックル星人としての姿を現す。
◎郊外。
現れるナックル星人。振り返るウルトラマン。迫るナックル星人。怪獣との間にはさまれる。ナックル星人にキックし、倒す。さらに攻撃しようとするが、ナックル星人が砂を投げる。苦しむウルトラマン。よろけた所を後ろから殴る怪獣。立ち上がり、膝をついたウルトラマンをキックするナックル星人。背中からつかむ怪獣。連打するナックル星人。飛び上がって怪獣の手を払うが、腹をナックル星人にけられる。投げ飛ばすナックル星人。首を締め、後ろからチョップする。顔を地面にたたきつける。立ち上がらせ、怪獣につかまえさせる。またも連打するナックル星人。カラータイマーが点滅する。
ウルトラマン『太陽エネルギーをくれ。頼む。太陽エネルギーをくれ。私はここで倒れるわけにいかないのだ』
ナックル星人の連打でフラフラになるウルトラマン。怪獣の後ろからの攻撃で倒れる。
N「ウルトラマンはエネルギーの補充が必要だ。だが、今のウルトラマンには夕日のエネルギーではあまりにも光線が弱すぎるのだ」
ウルトラマンを立たせて、持ち上げるナックル星人。攻撃するMAT。ウルトラマンを怪獣に投げつける。地面にたたきつける怪獣。
上野「隊長、ウルトラマンが!」
伊吹「ウルトラマン!がんばれウルトラマン!」
上野「がんばれ!」
ウルトラマンを頭上に持ち上げ、地面にたたきつけるナックル星人。もがくウルトラマン。だが、立ち上がることはできない。
上野「ウルトラマーン!」
さらにキックする怪獣。上空に手をかざすナックル星人。飛来する宇宙船。

◎町。
男「あっ、ウルトラマンだ」
女「あっ、どうしたのかしら」
十字架に張りつけられたウルトラマンが宇宙船に引かれて、町の上空を行く。
所長「ウルトラマンは、我々ナックル星人の手で葬った。ウルトラマンは死んだ!」
男「おかしいなあ。ウルトラマン。どうしたんだろう」
次郎「やだ!ウルトラマン、死んじゃやだ!」
宇宙船に引かれていウルトラマン。
N「無敵のウルトラマンもナックル星人の暗殺計画の犠牲となった。この無限の闇がウルトラマンの墓場となるのだろうか」
第38話 『ウルトラの星光る時』

◎前回のあらすじ。
N「地球侵略をたくらむナックル星人は、ウルトラマンの武器を怪獣たちを使って研究し、それを用心棒怪獣ブラックキングに教え、訓練してウルトラマンと戦わせた。その上、アキと坂田を殺し、ウルトラマンの心の動揺を狙った。さすがのウルトラマンも武器を封じられ、心乱れては勝つことはできない。ウルトラマンはナックル星人の卑劣な手段の前に倒れたのであった」
◎宇宙。
ウルトラマンを運ぶ宇宙船。
N「広大な暗黒の世界をウルトラマンの死の旅は続いている」

◎MAT司令室。
伊吹「ご苦労。丘隊員、郷の捜査に行った岸田からまだ連絡はないか」
丘「ええ、まだです」
伊吹「うん」
丘「隊長、緊急通信です」
伊吹「いかん。宇宙ステーションV1が、宇宙船団の攻撃を受けている」
南「V1が!?」
伊吹「すぐ出動しよう」
南、上野「はいっ」
伊吹「丘くん、スペースアローをスタンバイしろ」
丘「それが隊長……」
伊吹「どうしたんだ」
丘「基地全体が強力な電磁波で覆われてしまいました。宇宙ロケットポートもマヒ状態です」
隊員A「発進機も使用不能です」
南「それじゃあ、手足をもがれたも同然じゃないか」
上野「早く出動しなければV1は!」
南「何とか飛ぶ方法はないのか?」
隊員A「第1ゲートが開かないんです」
南「くそう」
その時、無線が入る。
所長『お困りのようですな、諸君』
伊吹「きさま、いったい何者だ!」
所長『我々はナックル星人だ。まもなく地球は我々のものになる』
伊吹「なに!バカなことを言うな!」
所長『信用いただけぬようですな』
ナックル星人の姿を見せ、元に戻る所長。
上野「この野郎!我々MATがいる限り、おまえたちの自由にはさせないぞ!」 所長『ふふふふ』
上野「何がおかしい!」
所長『いつもウルトラマンの力を借りているくせに』
上野「な、何を!」
所長『だが、おまえたちの守護神ウルトラマンは二度と現れん。今や恐ろしいものは何一つない』
伊吹「サターンZを奪ったのはきさまたちだな」
所長『我々は地球が平和的に栄えることを好まない。サターンZは武器として使用するつもりだ。MATに告ぐ。12時間以内に無条件降伏せよ。でなければ、攻撃を加える』
伊吹「MATがそんな脅しに乗ると思っているのか」
所長『では、面白いものをお目にかけよう』
映像が変わる。宇宙ステーションに迫る宇宙船団。
南「あっ、V1だ」
攻撃する宇宙船団。爆発する宇宙ステーション。
南「ちくしょう。こうなったら弔い合戦だ」
上野「あの宇宙船団は地球に向かってくるんだ」
南「隊長!」
伊吹「我々には他にやることがある」
南「じゃあ、宇宙船団をほおっておけって言うんですか?」
伊吹「おそらくナックル星人は東京近辺に基地を持っている。12時間たったら、やつらはあの船団を迎え入れるつもりだ。それまでに電磁波を逆探知し、秘密基地を突き止めるんだ」
上野「サターンZを奪い返そうっていうわけですね」
伊吹「そうだ。南!」
南「はいっ!」
伊吹「上野!」
上野「はいっ」
伊吹「まず斥候として行け。電磁波を切ったら連絡を入れろ。ただちに出動する」
南、上野「はいっ!」
出動する両名。

◎山中。
走るMATビハイクル。
◎別の道。
走るMATジープ。
◎宇宙電波研究所。
たどり着くMATビハイクルとMATジープ。
上野「あれか」
巨大なアンテナが見える。
南「行くぞ」
◎同・司令室。
南「上野」
無人の部屋に入る。
南「ようし。こいつをふっとばせばいいんだ」
上野「はい」
南「時限装置を」
ケースから時限装置を取り出す上野。
南「よし」
機械に取りつける。
南「いいか」
上野「OK」
南「行くぞ!」
部屋から出ようとする両名。その時、ドアが閉まる。
南「くそう」
上野「開きません!」
南「エレベーター!」
エレベーターを開けようとする両名。
上野「ちくしょう!」
所長『ははははは。自分たちが仕掛けた爆弾でふっとぶがいい』
上野「ちくしょう」
南「スイッチを切るんだ!」
上野「はいっ」
ガスが吹きこみ、動けなくなる両名。

◎ナックル星。
はりつけにされているウルトラマン。
N「ナックル星に運ばれたウルトラマンは処刑の時を待っていた。死人同様のウルトラマンにさらに残酷な処刑を加えようというのである」

◎MAT司令室。
入ってくる南、上野。
岸田「おう。遅かったなあ。心配したぞ」
南「いやあ、すまん。見つからなくってさあ。場所が……」
上野「骨折り損でしたよ」
伊吹「バカもん!子供の使いじゃないんだ。連絡もしないで。それでもおまえたち、MATの隊員か!」
南「何!」
伊吹を殴りつける南。
岸田「南!」
丘「隊長に何するの!」
南「はなせ!」
伊吹の首を絞める南。MATガンで南を殴る丘。MATガンを払い、丘の首を絞める南。手を払い、南を投げ飛ばす丘。同じく、上野を投げ飛ばす岸田。頭を押さえる南、上野。
南「どうしたんだ。おれたち……」
岸田「何をしたか覚えてないのか?」
南「どうしてここにいるんだ?」
上野「確か、宇宙電波研究所に入ったんだがな」
伊吹「おい、宇宙電波研究所だな」
上野「ああ……」
伊吹「岸田、一緒に来い!」
岸田「はいっ」
丘「隊長、二人とも催眠状態にされたんです。気をつけてください」
伊吹「わかってる」

◎宇宙電波研究所・司令室。
伊吹「待て」
部屋の中に爆弾を投げこみ、ドアを絞める。
伊吹「爆発しないぞ」
中に入る両名。ドアが閉まる。強い光が浴びせられ、動けなくなる両名。入ってくる所長たち。
所長「伊吹竜と岸田文夫のデータを出せ」
男A「はいっ」
所長「これでMATもブラックキングと同じように自在に扱える。ナックル星バンザイだ。南と上野に丘隊員を始末させろ」
男A「はいっ」

◎MAT司令室。
丘に襲いかかる南、上野。
丘「南隊員、上野隊員。しっかりして!どうしたっていうの!上野隊員!南隊員!」
逃げる丘。つかみかかる南。
隊員A「やめなさい!」
二人につかみかかる隊員たち。逃げる丘。隊員たちを倒す南、上野。
◎MAT基地。
隠れている丘。探している南、上野。

◎ナックル星。
N「その頃、ナックル星ではウルトラマンの処刑が行われようとしていた」
ウルトラマンがはりつけられた十字架を持ち上げる宇宙船。
ナックル星人「我らが宇宙船団がまもなく地球に到着する。もう地球は我々ナックル星人のものだ。うははははは。さあ、早くウルトラマンを八つ裂きにしろ!バラバラにしてしまえ!」
ウルトラマンを運ぶ宇宙船。上空より現れる初代ウルトラマン。そしてウルトラセブン。ナックル星に降り立つハヤタとダン。握手をする二人。
ハヤタ「ウルトラマンを助けるためには『ウルトラの星作戦』しかない。協力を頼む」
ダン「わかりました。ウルトラの星をつくりましょう」
変身する初代ウルトラマン、ウルトラセブン。宇宙船に接近する。宇宙船の回りを飛び、ウルトラマンを固定している部分で接触する初代ウルトラマンとウルトラセブン。次第に十字架からウルトラマンがはなされていく。光を発し、目の光を取り戻すウルトラマン。カラータイマーが点滅を始める。飛び立つウルトラマン。スペシューム光線とエメリューム光線で宇宙船を破壊する初代ウルトラマンとウルトラセブン。ナックル性に降り立つウルトラマン、初代ウルトラマン、ウルトラセブン。二人に合図するウルトラマン。
◎宇宙。
地球へ迫る宇宙船団。接近するウルトラマン。スペシューム光線で次々と破壊する。

◎アイキャッチ。

◎MAT司令室。
入ってくる郷。
郷「隊長、やっと逃げてきましたよ。ご心配おかけしました。いやあ、宇宙人のアジトに連れこまれたんですよ。宇宙電波研究所は宇宙人の秘密基地です。どうしたんです?みんな変だな。丘くんはどうしたんです?」
伊吹「郷」
郷「何ですか?隊長」
伊吹「おまえはわざと脱走したな」
郷「何ですって!」
伊吹「怪獣との戦いが恐ろしくなり、それで隠れてたんだろう」
郷「そんなバカな!隊長はおれをそんな男だと思ってるんですか」
伊吹「南」
南「はい」
伊吹「郷を即刻、銃殺刑にしろ」
南「はい」
郷の腕をつかむ上野、岸田。
郷「何をするんだ!隊長、どういうことなんですか。これは」
◎MAT基地。
目隠しさせられ、歩かされる郷。
郷『おれを本当に銃殺刑にするつもりだ。しかし、おかしい』
隠れている丘。
丘「郷隊員、みんな宇宙人に操られているのよ」
郷「やっぱりそうか」
目隠しをはずし、隊員を倒す郷。上から飛び降りる丘。伊吹の腹を殴って倒す郷。倒れている伊吹を起こす。
郷「はっ!」
耳の後ろに小さなアンテナのようなものが刺さっている。
郷「これに超音波を当てて操ってたんだ」
丘「みんなそうだわ」
郷「みんなの針をとってくれ」
丘「はい。どこへ?」
郷「電波研究所だ」

◎山中。
走るMATビハイクル。アキと坂田の顔が浮かぶ。
郷「アキちゃん、坂田さん。おれのために……。あっ!」
前方に現れる怪獣。止まるビハイクル。
郷「くそう。今日こそ決着をつけてやる」
 現れるナックル星人。走り出す郷。ウルトラマンに変身する。

怪獣に飛びかかり、角をつかんで投げ飛ばす。後ろから飛びかかるナックル星人。首を絞め、ウルトラマンを倒す。立ち上がるウルトラマン。振り返り、電波研究所のアンテナをスペシューム光線で破壊する。悔しがるナックル星人。
◎MAT司令室。
上野「隊長!」
モニターにウルトラマンや怪獣が映っている。怪獣にチョップを加える。後ろからつかみかかるナックル星人。
岸田「ウルトラマンが生きてるぞ!」
攻撃を加える怪獣。
南「いかん。またやられてしまうぞ」
伊吹「ようし。我々もウルトラマンに続く。決戦だ!」
隊員「はいっ!」
◎MAT基地。
発進するMATアロー。
◎山道。
急行するMATジープ。
◎山中。
倒れるウルトラマンをけるナックル星人。攻撃するMATアロー。逃げるウルトラマン。苦しむ怪獣とナックル星人。ブラックキングにキックするウルトラマン。到着するMATジープ。怪獣とナックル星人にはさまれて、攻撃を受けるウルトラマン。バズーカを持って立ち向かうMAT。崖を登り、バズーカをかまえる。ウルトラマンに殴りかかる怪獣。怪獣の背中にバズーカが命中する。MATガンを撃つ伊吹。振り返り、山を崩す怪獣。隊員に降りかかる土砂。
上野「隊長!」
丘「大丈夫ですか、隊長!」
ウルトラマンの頭をかかえ、山にぶつけるナックル星人。
伊吹「危ない、隠れろ!」
崩れる山。倒れたウルトラマンを起こし、投げ飛ばすナックル星人。土砂に埋まる隊員たち。
伊吹「上野!丘!大丈夫か!」
上野「隊長!」
伊吹「上野!」
上野「大丈夫でーす!」
気を失っている丘。
伊吹「おい、しっかりしろ。丘隊員!」
倒れているウルトラマンに光線を浴びせる怪獣とナックル星人。炎が上がる。
上野「ちくしょう!」
よろめきながら立ち上がるウルトラマン。
N「ウルトラマンのカラータイマーが赤になった」
◎ナックル星の回想。
 N「だが、ウルトラマンは負けない。初代ウルトラマンとセブンの友情が心の支えになっているからだ」
◎山中。
ゆっくりとウルトラマンに向かうナックル星人。弱っていると見せ、突然ナックル星人に殴りかかるウルトラマン。よろめくナックル星人。立ち上がって怪獣にチョップし、首をつかんで投げ飛ばすウルトラマン。倒れたところへさらに攻撃する。後ろからつかみかかるナックル星人。だが、腕を振り払って殴り飛ばすウルトラマン。立ち上がる怪獣。ナックル星人につかみかかるウルトラマン。キックして間合いをとるナックル星人。ウルトラマンに飛びかかるが、よけられる。立ち上がろうとしたところを顔をキックするウルトラマン。さらに顔にパンチを加える。立ち上がらせるウルトラマン。接近する怪獣。だが、キックして倒すウルトラマン。ナックル星人を投げ飛ばし、何度もチョップを加える。今度は怪獣にチョップを加え、下にもぐりこんで投げ飛ばす。倒れた怪獣を持ち上げるウルトラマン。上空に投げ飛ばし、続いて飛び上がるウルトラマン。
上野「やった!」
上空で怪獣の首を腕で切り落とすウルトラマン。苦しむナックル星人の所へ降りてくるウルトラマン。逃げようとするナックル星人をつかみ、かかえたまま飛び上がる。上空で投げ飛ばすウルトラマン。頭からまっさかさまに墜落するナックル星人。降りてくるウルトラマン。
ナックル星人「勝ったと思うなよ。やがて東京中が大爆発するんだ。ふははははは」
光を放って消えるナックル星人。
上野「勝った!はは」
丘「でも、東京が爆発するって言ってましたけど……」
伊吹「サターンZを仕掛けたに違いない」
上野「これから探すんじゃ、とても無理だ」
伊吹「いや。仕掛けたとすれば、おそらくあそこだ!来い!」
上野、丘「はいっ!」
ジープに飛び乗る3名。

◎宇宙電波研究所。
かけつけるMATジープ。サターンZをかかえて中から出てくる郷。
上野「郷!」
伊吹「郷!やりおったな」
郷「危機一髪でしたよ」
上野「し、静かにな。そーっとだぞ。そーっと。静かに」
◎同・しばらくして。
 ジープの回りに集まった隊員。
上野「隊長、今日はみんなで乾杯しましょうよ」
伊吹「やるか!」
南「そいつはいいな。おい、行くぞ!」
岸田「おい。郷、行こうよ!」
郷「隊長」
伊吹「ん?」
郷「ぼくは失礼します」
伊吹「そうか、そうだったな」
上野「よろしくな」
丘「今夜はクリスマスイブよ。忘れないでね」
郷「うん」
立ち去る郷。
伊吹「行こうか」
上野「はい」

◎マンション。
エレベーターから降りる郷。自室のブザーを鳴らすが、返事がない。ドアを開けても誰もいない。
郷「次郎くん」
隣の部屋から次郎の歌声が聞こえてくる。
ブザーを鳴らす郷。
郷「坂田次郎くん、お邪魔してますか?」
次郎「あっ、郷さんだ」
ルリ子「どうぞ。お入りください」
ルリ子の部屋に入る郷。クリスマスツリーに飾りをつける次郎とルリ子。
次郎「郷さん、メリークリスマス」
礼するルリ子。礼する郷。
次郎、ルリ子「きよしこの夜、星は光り、救いの御子は……」
微笑みながら二人を見守る郷。