しゅーくりーむ顛末記 最終回(?)

そして、この時、わたくしは確かに一つのことに気付いたのです。

卵が入りすぎるとどうも脹らまないようだ!!と言うことです。つまり、本にある1/3などの数よりも、餅状だの、木杓子から2,3秒後だのの表現を信じるべきなのだと言うことです。

幸い(?)その場には、わたくしを止められる母の姿はありませんでした。もしも失敗したとしても、明後日の朝御飯が決まるだけ。わたくしは、そのまま三度目の正直!とばかりに、三度目のシュークリーム作成に取りかかったのでした。

手順は先ほどと変わりませんから、スムースに進みます。そして、いよいよ溶き卵をくわえる段階に進みました。先ほどは、入れすぎたこともありますし、今回は用心のため、1/5〜1/4程度で卵を入れるのをやめました。そして、そこで練るのを開始します。

「あ、餅状ってこれかぁ!」

感じとしては、餅つき機でついたばかりのお餅の状態です。それに少しずつ溶き卵をくわえながら・・・・。かなり卵は余りましたけれど、木杓子から2.3秒後に落ちる状態になりました。ここでストップ。

絞り出し袋に入れます。

一つわかったことがあります。これまでの生地は柔らかすぎたのです。今回は、絞り出し口から少しもこぼれ落ちたりしませんから(笑)。成功への期待を胸に、絞り出しました。ちょうど9個を絞り出し、レンジの中に入れます。

今回はちょっとガラス越しにレンジ内をのぞく回数が増えてしまいます。

ちょうど連休中と言うこともあり、妹が甥っ子(3ヶ月)を連れて戻っていたのですが、彼女もやっぱり気になるようで、わたくしたちは、交互で甥っ子を抱きながら、レンジをのぞいていたのでした。

「お姉ちゃん、膨れてきた!」

彼女の報告に、私は彼女に伺いをたてました。

「ちょっと、この子、ここに寝かせておいていい?」

我が家の初の赤ちゃんとして、あちらこちらから可愛がられ、抱く人間には事欠かなかった甥っ子、彼はこの日、人生で初の敗北を喫したのでした。しかしその相手が、シュークリームの皮であったとは!!彼の名誉のためには永遠の秘密にしておくべきかもしれません。

「うん、いいよ」

彼の母親の承諾も得、彼を座布団の上に横にして、わたくしは、妹とともにレンジへと向かいます。その時の甥っ子の不満げな表情、まだ言葉を話せないだけに、わたくしたちの胸に訴えるものがあったのですが、シュークリームの様子を見る、と言う誘惑の前には、あまりに無力でした。

「ほら脹らんできてるでしょ?」

確かに今回は脹らんでいます。一回目とは違い、でこぼこもきちんとつきました。そして、すでに幾つかはひび割れ状になって脹らんでいるものもあるではありませんか!!

卵の量、これは確かに重要なポイントだったようです。

こちらのチャレンジの結果は、9個全部が一応脹らみ、皮にもでこぼこが出来ました。ただし、ひび割れ風の状態にまで、できたものは4個。けれども、これまでの結果から考えても、かなりの好成績と言ってもいいと思われます。

さぁ、この感触を忘れないうちに、もう一度確認のためにもシュー皮を!!

わたくしは、張り切りました。が、そこへさすがに妹から、声がかかりました。

「お願いだから、やめて」

台所中に、ちょっと匂うだけなら幸せの匂い、けれど、濃厚になった今では、かなり「うっ」となりそうな、お菓子作り独特の匂いが漂っています。

そして、用事で出かけていた母も、帰ってきました。

彼女からかけられたのは、「おめでとう」と言う祝福の言葉でも、「やったじゃない!」というねぎらいの言葉でもありませんでした。

「最低でも、一ヶ月間シュークリームを作らないこと」

というシュークリーム作成禁止令だったのです。

・・・・まぁね、テーブルの上に、約30個ものシュークリームとシュークリームもどき(パン状になったものは除く)が山になっていれば、そうも言いたくもなりますわね。

さて、それらのシュークリームとシュークリームもどきは、その後もしばらく食卓を飾り続け、最後の1個が片づいたのは、最初にシュークリームを作成した日より5日後であったことを、謹んでご報告いたします。

 

・・・・今度作ったら絶対上手くいくはず・・・・(笑)

秘かな野望に燃えているわたくしなのでした。

 

いつか、次回に続くことがあるかもしれない(笑)