渋谷迷走記

 

 

その1 道を失うわたくし

思えばわたくしと渋谷の相性は悪かった。昔、初めて渋谷に足を踏み入れたその日も、道に迷い、地図を見ながら何度かあちこちを行ったり来たりした。去年、ちょっと買い物を・・・・と、とある店を探してやっぱり彷徨った。

そして、今。

わたくしはまた彷徨っていた。

雑誌で紹介されていたホテル。・・・・ツアーもいよいよラストだし、最後くらいちょっと贅沢したい。少々お高いけれど、手が届かないって程高い訳じゃない。一度泊まってみたい。・・・・何でそんなことを考えてしまったんだろう?わたくしと渋谷は相性悪かったのに。思いっきり後悔しながら、坂道を上る(渋谷、坂多すぎないかい?と、地形にまで文句を言いたくなる)

渋谷の街を歩いていると、道に迷うことを「道を失う」と英語で表現する気分がよくわかる・・・・。なんてそんなことをしみじみしている場合じゃないのだ、実際は。一本通りをずれちゃったんだろうか。地図を見る。

ずれている。・・・・と思う。

どこかで隣の通りに行かなくては。本当は、こんな場合はそのまま来たとおりに引き返して、駅からもう一度、の方が正しいんだけれども。

で、とにかく多分ホテルはこの辺か?と見当を付けるが。

・・・・なんか違う気がする。というわけで隣の通りへ。あれに見えるは、NHK。ということは、その近くのはずだから、と、また歩き続ける。この大きな通りの隣の通りだから、と角を曲がってまた歩き・・・・歩き続け・・・・いくらなんでもまだ見つからないなんておかしい、と気づきその通りを戻り始める。とにかくしつこく戻り続ける。

「隠れ家的ホテル」なんて、雑誌のコピーを思い出す。大体4階建てなものだから、遠くから見える、というわけにもいかないし。高層ホテルって、窓から夜景が見えるってだけじゃなくって、こういうときにも便利なんだよなぁ、なんて高層ホテルの利点についても今更ながら思いを寄せた。

そして。

隠れすぎだぁぁぁ!!!!背中が、汗びっしょりになってしまったころ。ようやく見つかったぁ!!

つづいて、脱力。・・・・なんか違う気がする、と曲がってしまった角から、数十m。わたくしは、一体何をやっていたんだろう?

NHK、渋谷ビデオスタジオ等からもそんなに遠くない、結構昔からの家の並んでいる一方通行の通りにそのホテルはあったのだった。

回転ドアを開けて、中に入っていくわたくしだった。

 

ちなみに、コンサートの帰りにもやっぱり迷った。

昼間とは何となくたたずまいの違ってしまった渋谷の街中、てくてくてくてく坂を上っていくわたくし。最初は間違いない、と思っていたのにだんだん自信がなくなっていく。あんな店はなかったような・・・・。これはどう考えても違う道、と気づいたとき、目の前にあったのは交番と客待ち中のタクシーだった。

迷わずわたくしはタクシーを選んだ。

だってもうすぐ12時。交番は確かにタダだけど、正しい道を教えられても、もう歩きたくない気分だったのだ。ホテルの部屋に戻ったとき、スマステはすでに終わっていて、翌日スマステの話を聴くたびにずいぶん悲しい思いがした(泣)

しかし、同じく翌日「ラブホテル街とか迷い込まなくてよかったですねー」との指摘に、やっぱり少しは幸運だったのかなぁ?と思いを新たにしたわたくしでもあった。

 

あ、それでも一応コンサートオーラスの日の帰りと、チェックアウト後の駅までの道は迷わなかったんですよ!(自慢することではないですが・苦笑)

ホテルの近所にあった渋谷ビデオスタジオを(あぁ、ここに・・・・)なんて横目で眺めつつ、感慨に浸ることもようやくできましたわ。

 

その2へつづく