××下宿屋木村 行く年来る年××

 

「すもももももももものうち〜〜♪」

TVの画面を見ながら、思わず呟いていた青組さんに、赤組さんはにっこりと笑い、

「飲む?」

とよく冷えた缶ビールを手渡したなり。

「あ、さんきゅ」

青組さんはそれを受け取ると、プルトップを起こしたなり。

「なんて言うかさぁ・・・・」

何となく、缶と缶を軽く乾杯みたいに触れさせてから、何も言わずに二人は2口3口とビールを流し込んでいたなり。

「ほんとだったらさ、実家か大阪のばあちゃんちで年越しするはずだったんだけどなぁ」

ぽつりと言った青組さんに

「でも、それじゃ寂しいじゃん?」

赤組さんは上目遣いにその顔を見ながら返したなり。

「ずっと、一緒だったんだよ?初めて会ったときからさぁ」

それは間違いなく事実だったなり。二人とも初めて会った年から、ずっと大晦日は、先輩のバックだったりあるいはSMAPとしてだったりしたなりが、一緒に仕事をしていたなり。そして、新年はそのまま一緒に迎えていたなり。

「そりゃまぁ、たしかにそうだけど・・・・それにしても、こたつにみかんに紅白って、如何にも日本の大晦日だよなぁ」

青組さんは少し言葉を濁してから、そう言ってビールの缶を空にしたなり。

「まぁ、たまにはいいんじゃねぇ?」

目だけで、「もう一本いる?」と訊きながら、赤組さんが言ったなり。

「どうせ来年はまた紅白でさ、5人勢揃いして年越しすることになるんだろうから、1年くらいこんなのんびりした大晦日があっても」

「そうだな」

新しい缶に口を付けて、にやりと笑いながら青組さんが言ったなり。

「あ、お前ちょっとピッチ早すぎ!これ以上は飲ませねぇから・・・・」

ごくごくと飲んでいた青組さんを赤組さんは慌てて止めたなり。

「何でだよ、今年最後だってのにケチケチすんなって」

「ケチケチって・・・・な。紅白のあとは、初詣って、やっぱり日本の行く年来る年としては欠かせないでしょ?せっかくだしさ、今年はとにかく徹底的にいつもだったら出来ないことするんだから!だからね、つぶれないようにセーブしといてよ」

「ん・・・・」

もうこんな大晦日は二度とない。

来年からはまた、1年いっぱいいっぱいまで仕事に忙しくて、だけど5人で。何より5人一緒で。

だから、だったらこの本当に1度きりの大晦日を思いっきり楽しむことに決めた二人だったなり。

TVの画面では、全員が揃って蛍の光を歌い始めていたなり。

「そろそろさ、出るからちゃんとあったかくしろよ?」

「あぁ、コートでいいよなぁ?」

言いながら、青組さんはTVとこたつの電源を切り、赤組さんはビールの缶を片付けたなり。そしてそれぞれの部屋にコートを取りに行ったなり。リビングには、少し前から眠ってしまったボニータが、すやすやとしあわせそうな寝息をたてていたなり。

 

新たな年がやってくるなり。

新たな年が、今までのどの年よりも素晴らしいものになりますように。