収録の合間に、本日何度目かのあくびを噛み殺した青組さんに、その歌番組のもう一方の司会者は
「何?昨日はイブで、彼女とデート?」
からかうようにそう尋ねていたなり。それに対して、苦笑いして見せながら青組さんは
「違いますって」
小さくそう返したなり。
「えーーっ、でもなんかすごい眠そうだし、怪しいんだよなぁ。じゃ、昨夜は何していたか、ちゃんと言える?」
「言えますよ。ドライブして夜景を見てました」
「ほら、デートでしょっ」
「だから、違いますって」
いつまでも、デートだ、デートだと騒がれるのも何だからと、青組さんは昨夜のドライブの相手の名前をさっさと口にしたなり。
「また、きむ様?」
きょとんとしたような相手に青組さんは苦笑を深めたなり。
「あのねー、SMAPがメンバー間で仲がいいのはよくわかったけど、そんなイベント毎にメンバーでつるんでるって言うのは、絶対さみしいって」
力説されても、仕方がなかったなり。原宿に二人してナンパに出かけてもまだ女の子に相手にされなかった頃から、ずっと一緒に過ごしていたクリスマスイブの夜だったなり。なりから、赤組さんにとっても青組さんにとっても、いつの間にか、仕事が入っていない限りは二人でいるのが恒例になってしまっていたなり。
「仕方ないですよ。もう感覚としては、お正月に初詣に行くようなもんで、そうしないと、何か忘れたみたいに落ち着かないんですから」
「けどなぁ・・・・」
そんなことを言っているところに本番の声がかかって、その話もそれきりになっていたなり。
スマスマを見ながらうたた寝をしてしまった青組さんは、電話の音にぼんやりと目を開けたなり。腕だけを伸ばして、電話の子機を手にすると、そこから聞こえてきたのは赤組さんの声だったなり。
「よかった、ちゃんと部屋にいてくれて」
「うん、そっちはまだ仕事中?」
大抵クリスマスイブは二人で過ごしているとは言っても、それはお互いに仕事がない時と言うことで、今夜は青組さんは早めに仕事を終えていたけれども、赤組さんはまだ下宿屋には戻っていなかったなり。
「いや、もう終わって、今下の道なんだけど・・・・すぐに出てこられる?」
「ん?すぐに?」
「そう、すぐに」
くり返されて、急いでコートを羽織って部屋を出た青組さんだったなり。
路肩に停めてあった赤組さんの車の助手席に乗り込んで、膝を抱えるようにして座ると
「一体、何でそんなに急がせるわけ?」
青組さんは運転席の赤組さんに訊いたなり。
「だってね、さっきすっげー夜景が綺麗に見えるってところ聞いてさ。せっかくだから行ってみようかなって思ったんだけど、これがちょっと遠いんだよ。だから・・・・」
そう言って笑った赤組さんに青組さんは、
「そういうことね」
とうなずいたなり。そしてちょっとだけ悪戯っぽい顔をして、着ていたコートのボタンを2つ3つとはずしていったなり。
「ところでそこって、こんなかっこでも平気なとこ?」
信号停止で助手席を見た赤組さんは、小さく口笛を吹いてみせたなり。
「サイコー」
青組さんの丈の長めのコートの下には、パジャマが隠れていたなり。
「お前が急がせるからさぁ」
「大丈夫、ちょっと寒いかもしんねぇけど、そん時はこの車の中に置いてあるジャケットも貸してやるし、一緒に見よ?」
そう言って、赤組さんはエアコンの車内温度を少しだけ高めに設定しなおしたなり。
「ちょっと時間かかると思うし、寝ててもいいけど?」
赤組さんに言われて、青組さんは首を振ったなり。
「いい。さっきまで寝てたせいかそんなに眠くもねぇし。それよか、忘れてたわ。・・・・ Merry Xmas」
「そうだったな。Merry Xmas」