××下宿屋木村 働く人々××

ピンポンピンポン

しつこいほどに鳴り続けるチャイムの音に、赤組さんは疲れ切った身体を引きずるようにしてドアに向かったなり。

「えっ!ええええっ!!!」

ホテルのドアののぞきあなから廊下を覗いた赤組さんは、一瞬信じられずに思わず声を上げ、そして慌ててドアをあげたなり。廊下に立っていたのは・・・・今日も仕事に忙しかったはずの青組さんだったなり。

「あ、キンロウカンシャ、お疲れさまっ」

赤組さんを見て、そう言って手を挙げると青組さんはずんずんと部屋の奥に入っていったなり。

「眠い・・・・もう寝るから」

青組さんはそのままベッドに突っ伏して、静かに寝息を立て始めていたなり。

あまりに突然の出来事に、赤組さんは何が何やらわからなかったなり。

「キンロウカンシャ・・・・?金狼?官舎???金狼・・・・慎吾?・・・・って、何だ?」

その単語が、赤組さんの中で勤労感謝につながったのは、しばらく経ってからのことだったなり。

「おーーーい、勤労感謝って、一体どうしたんだよ?」

青組さんがこんな時間になってまで、一体、何のために来たのか、一体、どうしたのかとか、訊きたいことは山ほどあったなりが、後はどうしても青組さんは起きてはくれなかったなり。

「まさか・・・・わざわざそれだけを言いに来たとか?」

結局青組さんの寝顔を見つめながらそう推測した赤組さんだったなりが、

「待てよ?こいつ、明日早くから仕事入ってるって言ってなかったか?何時に起こせばいいんだよ?」

やがてそれに気付いて、慌ててマネージャーに連絡を取り始めたなり。

 

「連休真っ最中ですね」

仕事帰りのタクシーで、青組さんはそんな風にタクシーの運転手さんから、声をかけられたなり。

「え?」

「ほら、今日は勤労感謝の日じゃないですか?で、明日明後日土日で2日」

そう言われて今日が勤労感謝の日だったことを思い出した青組さんだったなり。

「勤労感謝の日、ね」

勤労感謝ということで、同時に京都で撮影中の赤組さんのことも、また思い出したなり。

「あ、すみません。さっき行った行き先、変更お願いします。東京駅まで」

その日は青組さんの仕事は、思ったよりも早く仕事が上がっていて、京都行きの最終まで、まだ少しの時間があったなり。何だか無性に仕事に頑張っている赤組さんに会いたくなった青組さんだったなり。