「ちっ、おもしろくねぇ!!」
いかにメイクミラクルとはいえ、九回裏で6点以上の得点があるはずもなく、青組さんは忌々しげにつぶやくとTVを切り、冷蔵庫から、仕事帰りに買ってきたビールの缶を取り出したなり。リビングのテーブルにそれを置き、イライラとプルを開け、中身を一息にのどに流し込んだなり。いつもより、苦みを感じるビールにちょっとだけ顔をしかめて、青組さんは、もう一本の缶に手を伸ばしたなり。
今度はゆっくりと飲み始めた青組さんの上着の裾をボニータが、軽く引っ張ったなり。
「何だよ、ボニータ?」
言ってから、青組さんは気づいたなり。もちろん偶然だったとは思うなりが、
「そうだよなぁ、おまえんちのパパの番組、見てぇよな?」
電源を入れると、ちょうど番組が始まろうとするところだったなり。
「あ、留守電入れてなかった」
青組さんはいつまでも鳴り続く呼び出し音に、仕方なく受話器を取ったなり。
「見てくれた?」
赤組さんだったなり。
「見てる、タモさんが出てるから」
「タモさんって、・・・・俺は?」
「用はそれだけ?切るぞ」
「え?」
「ナイター。15分遅れ。終わってない」
間の悪い電話に単語だけを並べ、青組さんはそのまま電話を切ったなり。