その日、青組さんが目を覚ますと・・・・。

「どこだよ?ここ・・・・」磨き上げられた柱に、床の間には季節の花、趣のある草花の絵をあしらった襖に、どこからかきこえてくる川のせせらぎ。畳の上にしかれたふっくらとした布団の上に寝ている自分。全く覚えのない場所にいることに気づいて、青組さんは首を傾げたなり。

確か昨夜は、収録がいつになく早めに終わって、そのまま赤組さんに誘われて飲みにいって、何だかいい気持ちで杯を重ねて・・・・それから?必死で記憶をたどる青組さんだったなり。

その時、がらりと音を立てて襖が開き、青組さんはあわてて身仕舞いをしてそちらへ向き直ったなり。

「あ、目覚めた?」

部屋に入ってきたのは赤組さんだったなり。

「おまえさぁ、マジに女の子で俺の身内とかだったら、俺、絶対外で酒飲ませねぇよ。つぶれちゃったら、全然目覚まさねぇんだもん、あぶねーよ、ほんと」

言っている赤組さんの言葉の半分も耳に届いていない様子の青組さんだったなり。ようやく青組さんは口を開いたなり。

「・・・・おい、ここどこだ?」

 

「だからぁ」

繰り返される赤組さんの言葉を、信じられない面持ちで青組さんは聞いていたなり。

「またすぐに外国行かなきゃなんねぇし、だから「日本!」って感じのところでゆっくりしたかったの。で、一人っきりじゃ寂しいし、中居に一緒にいてもらうことにしたんだけど」

「俺の意志は関係なしかよ?」

「一応聞いたぜ?「おぅ、どっこでもつき合ってやる!」っておまえ、言ったけど?」

「って、それって酒の席で、じゃねぇ?」

「ん、まぁそれは・・・・」

ちょっと口ごもっていた赤組さんなりが、

「あまり日本にいられない俺のこと、かわいそうだって思わねぇ?」

「それとこれとは・・・・。そもそもこれって、誘拐っていわねぇ?」

そういう青組さんに赤組さんは笑ったなり。

「言わねぇんじゃねぇ?別に身代金要求してるわけじゃねえし、それに、マネージャーには言ってあるよ?」

ため息をついて青組さんは言ったなり。

「で・・・・ここどこだって?」

赤組さんが告げたのは、東京を遠く離れた某県のはずれだったなり。

「げっ」

そう簡単には、東京に戻れそうにないことを知って青組さんは呟いたなり。

「めちゃくちゃしやがって・・・・」

「でも、中居、日曜日の夕方までスケジュール空いてるじゃん」

「空いてたら、勝手してもいいのかよ?」

「・・・・だってほんの二泊三日だし・・・・だめ?」

赤組さんは上目遣いに、「じっ」と青組さんを見つめたなり。

「う゛〜っ」

青組さんは乱暴に頭をかきむしったなり。

「わかったよ」

ぱっ、と赤組さんの顔に光が射したなり。

「でもなぁ、TVもない、んじゃあちょっとまじぃんだよな」

TVは多分わざと置いていないのだろう、上品な部屋を見回した後で、青組さんは少し意地悪そうに赤組さんを見つめたなり。

「何で?たまにはそう言うの全部忘れてって、よくねぇ?」

「よくねぇよ。日曜のスケジュールっておまえも知ってるよな?」

「・・・・サンジャン?」

「そう。ニュース番組チェックしとかねぇと、本番が大変になるんだよ」

「・・・・新聞じゃ、ダメ?」

「新聞?だったら最低でも日刊紙を2種類と、スポーツコーナーじゃ、ぜってーコメントが必要になるから、スポーツ新聞が必要」

「2種類?」

「そ、新聞って社によって結構記事の書かれ方が違ってっから。とにかくそれだけなくちゃ、俺は仕事になんねぇんだよ、誘拐犯」

「・・・・わかりました。ここにいる間は毎朝コンビニに買いに行かせていただきます」

「よっろしく〜!じゃ、早速今朝からね」

にっ、と笑った青組さんだったなり。

 

赤組さんが、そこから一番近いコンビニ(車で片道20分のロー○ン)に買い物に行っている間に青組さんは手持ち無沙汰にしていたなりが、やがて布団を離れると、窓際に移動してぼんやりと外の杉木立を眺めたなり。

「失礼いたします」

声が掛けられたのはそんな頃だったなり。

「はい?」

青組さんの返事を待ってふすまが開けられ、旅館の若女将が部屋に入ってきたなり。「お目覚めになりましたか?」女将は柔らかく微笑むと、丁寧に挨拶をしたなり。それは、青組さんが有名人だからというのではなくて、どのお客に対してもしているのだろうとても上品なもので、青組さんに日頃の慌ただしさを忘れさせるような優しいものだったなり。

「朝御飯は、お連れ様が戻られてからでよろしいでしょうか?」

「あ、はい、お願いします」

「それではごゆっくり」

女将は頭を下げて部屋を出たなり。