ダイビングコーナーコラム   その6  ダイバーを増やす方法を考える
 
 (1)なぜ、日本でダイビングがはやらないのか?
  先のコラム5と同じタイトルで始めてみた。
  そう。日本は、四方を海に囲まれた海洋国家である。釣り/海水浴/水上スキー・バイクと、海がかかわるレジャーは少なからず存在する。しかしながら、釣り以外、メジャーといえる趣味は存在していない。
  ダイビングも同じである。正直言って、どこでも潜れるはずなのに、はやらないのである。
  この趣味をしていて思うのは、「いい趣味だ」といわれる反面、周りに同じ趣味を共有している人がいないことである。つまり、それだけ趣味人口が少ないことを意味している。
  →参加人口が多いパチ・スロや競馬では、仕事仲間をはずしてもそこそこに交友はあり、鉄道系の趣味にしても、付かず離れずで付き合っている友人は結構いる。
  
  今回のコラムでは、はやらない理由を見つけながら、ひとりでも多くの趣味人を育てる方向に舵を切ってもらいたいという業界に猛省を促す記事にしたいと思っている。というわけではじめていく。

 (2)現状を分析してみる
  いい資料はないか、と思って調べていくと、こんなものを見つけた。
  →ダイビング産業の動向及び安全対策に関する調査報告書  http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2009fy01/0018981.pdf
  これを読み込んでいけばおのずと対策は浮かんでくるように思う。
  少々出典が古いのだが、趣味動向調査としてはかなりの部分にまで突っ込んでいるので、役に立っている。

  ここで、早速すごい数字が挙げられる。カード所得者は155万人いるのに対して、アクティブに動いているダイバーは65万人しかいない、ということである。
  ただ、カード保有者は毎年6万人ずつ程度ではあるが増加しているということであり、必ずしも、縮小傾向にあるというわけではなさそうである。
  またここで言う「アクティブ」は、年間7回以上ダイビングをするという人に限っており、正直今の経済状況で7回からをアクティブというのはどうかと思う。
  当方は、趣味として捉えていると考えられる5〜6回の人も含めたい。となると、アクティブは56%。85万人強いると思われ、これくらいはいないと業界としての存続も危ういと見る。
  しかし、もう少しさばを読んで100万人としたところで、人口の1%いるかいないか。100人に一人以下なら、同じ趣味をしている人と出会う確率はかなり少なくなると思われる。

  当方は、この100万人をどうするかと同時に、残るカード保持者についてもある一定の振興策で振り向かせることが可能と考えている。もちろん、キャパシティーを増やす方向も検討してみたいと思う。

  (3)アクティブをどうするか
  ここで言うアクティブの人たちは、完全にダイビングを一種生涯にわたって楽しめる趣味だと認識して付き合っている人たちである。
  なので、彼らに対するアプローチは簡単である。「辞めさせない施策」、これだけである。
  欲張って回数を増やす方向とか、より多額のお金を落とさせる方向に向かわせることは完全に間違っている。
  ではその施策とは何であるか?単純なのだが、店(現地サービス/都市型/器材販売店などすべての業態)からのダイレクトメールやEメール/年賀状といった、通信手段を欠かさないということである。
  「そんなことでいいのか」と思われるかもしれないが、一種の動機付けができているダイバーにとって、連絡をいただけるということは、それだけ自分が特別であると理解するのに十分だからである。
  もちろんそんなところばかりではないのも理解しているが、そういうキメ細やかさなくしては、おなじみさんになってはくれない。
  結局のところ、客が離れるのはお店の努力不足の面も否めない。だから、連絡だけは絶やさないのが吉だと思う。

  (4)休眠ダイバーを復活させるには
  これは、少々難易度の高い設問である。
  休眠ダイバーは、曲りなりでもCカードを持っているが、カード所得後ほぼ潜っていない人を指すわけであるが、そうなってしまった理由を考えさせてくれる場所がどこにもないから、休眠状態が解けないのである。
  そうなる背景には、カード発行団体が、カードの管理・・・特に所得してからの活動状況に無頓着であること・・・がかなり影響していると考えられる。
  運転免許の場合、何年かに一度更新というイベントが組まれているため、たとえペーパードライバーでも、更新しないと失効するからしぶしぶでも試験場に向かわざるを得ない。
  これとよく似た制度をカード発行団体でも導入すれば、また海やダイビングに対する興味が沸いてきて、休眠状態を解いてくれるトリガーになると思う。
  この「カードは持っていても活用できない人」を一人でも少なくすることが、業界の活性化には不可欠であると考える。

  (5)業界繁栄の鍵は「カード未保持者にあり」
  Cカードを持っている人よりもっていない人のほうが圧倒的に多いダイビング業界。
  もっている人に対する振興策もさることながら、持っていない人に持たせる努力をするほうがより重要である。
  そして、今までの常識−−−機材で儲ける−−−がある限り、来てくれるのはその出費に耐えられる/ローンが通る人だけであり、気軽に楽しもうという層にはとても響かない。
  また、非日常の体験=危険、生命にかかわると早合点してしまっている部分があるのも入り口にすら立たない人が多い原因ではないかと思う。
  
  そこで注目しているのが、仕事一辺倒で趣味をほとんど持っていなかった熟年層にターゲットを絞るというやり方である。
  リタイアした世代に対して、いいアプローチができるようになれば、もともとお金を持っている世代だけに、前向きに検討してくれる可能性が高まってくる。
  健康でないとできないスポーツであるだけに、本来なら若年層向けと思われがちなのだが、その若年層が頼りにならないとなれば、30代以降のお金を持っている層に訴えかけるしかない。

  もちろん、彼らに対して、恫喝まがいのローン強制や市価を無視した価格設定などは通用しない。勢い、悪質店は駆逐される方向に向かっていく。そして適正価格ですべてが動き始めるとき、それは今の価格より若干下がっていると考えられる。
  そして「薄利多売」で客をどんどん囲い込む方式をとっていけば、スケールメリットが出てくる。そこに至るまで、我慢していれば、感動した客が客を呼び、いい具合に趣味人が増えていくはずである。
  
  (6)専門店だからしんどい…都市型ショップ
  機材をショップメンバーに買ってもらうことで利益(経費)を捻出するやり方しかできない都市型ショップの最大の欠陥は、収入源が限られていることにある。
  ネット全盛の昨今では、都市型が提示する価格は、ネット通販等で提示される価格より大幅に高く、「あっちで買うわ」といわれるのが落ちである。そうなると、ますます利益が出なくなってしまう。
  ツアーを組むにしても、人件費や交通費も含めて、一人で行くより高いと気づいてしまったら、もうショップ主催のツアーには参加してもらえなくなる。
  つまり「ダイビングで利益を出そうとするから無理が出る」のである。
  実際、ダイビングしかやっていない都市型のうち、小規模の店舗はかなり閉鎖してしまっている。また、大手が吸収するなどしている例も散見されるようになった。
  ちなみに私がCカードを取ったショップは、広告会社の一部門の独立業態。独立にしてしまったおかげで早々に閉鎖してしまったのだが、事業部的な形でやっていたとしたら長続きしたかもしれない。
  一部門としてやっている、いい例が「コナミスポーツクラブ」である。
  もし、ほかの収入源もあり、ダイビングだけで儲けなくていいとなるとどういうことが考えられるか?ズバリ、「客側の目線にたった店舗運営ができる」のである。
  入り口の敷居は低く。体験が無料か、それに近い金額でやることで、「高くないんだ」と思ってもらえる。機材も適度な利ざやを乗せるだけなら文句は言われまい。
  要するに今までの100%ダイビング専門の都市型は、早晩死滅してしまうだろうと言うことである。

  (7)来てもらうだけでいいのか?現地サービス
  私のように、都市型のショップに属さず、もちろんツアーなどに頼らず、一人で若干割高であっても現地サービスに直で予約を入れるダイバーは、ショップの閉鎖などもあいまって増えていると見られる。
  勢い、現地サービスにとっては、腕の見せ所でもあるのだが、実際にいろいろなショップを回らせてもらって気づくのは、「来てくれてありがとう」と言う感謝が感じられるかどうかである。
  たとえば、おなじみ割引を採用している店舗。一度でも来ればおなじみだよ、なんて、なかなかできる話ではない。
  あるいは、キャンペーンを取っている店舗や、連日なら大幅に割り引く店舗。ここまで来ると「連休とってでも行こうかな」と思わずにはいられない。
  感謝の形が金銭に現れる店舗は早々ない。しかし、未保持者の項でも書いたが、薄利多売・・・店側も少し身銭を切るということをすることで、「また来よう」と思わせることができる。
  また、機材に対する提案をはじめ、「話すことが営業につながる」と言う姿勢でゲストに接することができる店舗は正直優秀だと言える。
  お金のかかる趣味であるがゆえに、満足度をあげていくことをしていかないと、現地サービスと言えども閑古鳥が鳴いて閉鎖の憂き目に会うことは必至である。
  特に群雄割拠のポイントでは、客の奪い合いも起こりえるわけで、「選んでくれた」「またきてくれた」を店側も実感することは重要だと思う。
  現地サービスは、結果的に「待ち」の商売だが、「呼ぶ」ことができる方向性を作れれば、意外と長続きするものだと思う。