コラム その8 新・都市型ショップを模索する
(1)なぜ、日本でダイビングがはやらないのか?
先のコラム5/6/7とまったく同じタイトルで始めてみた。え?ネタ切れだろうって?
イヤイヤ、どうして!!むしろ、依然として、この大テーマに対して、回答を見出せていないのが業界全体なのである。
もちろん、毎年それなりの人が新たにCカードを新規で所得している。しかし、その後、趣味として続くかどうか、は、本人しだいであるとは言うものの、周りの環境が後押ししている部分も無視できない。
現在、ダイビング資格所得の際の入り口の一つである、都市型ショップは、功罪相半ばする存在であり、一部の業者によって「もうコネーよ」と言う顧客を量産してしまう結果にもつながっている。
その一方で、現地サービスを利用して、資格所得に動く人たちは、ネット環境が整い始めた昨今、急激に増えているように感じる。
当方も利用している質問解決サイト「OKWAVE」でも、資格所得の際悪徳ショップに引っかかったとか、他店購入品は使えないとか、とんでもない理論をひっさげて客に迫るところもあるようである。
ネットの情報がすべて正しいとは言い切れないが、このままでは「都市型=ぼったくり」と言う烙印を押されてしまいかねない。
そうなる前に都市型ショップは対策を講じるべきである。
(2)利益が出しにくい「人手重視」産業
もし、仮に当方(ただ経営するだけであり、スタッフは公募)がダイビングショップを出そうと思ったときに、越えるべきハードルはものすごくある。
まず、当方自身がガイドなり、安全管理などができる立場に無いため、「給料を出して」外部から人材を募集しないといけない。20万として2名で40万。これはほかの経費を支払わなくても払わないといけない固定費である。
続いて家賃。超一等地に借りるとなったら坪数万円は確実。月20万円としましょうか。送迎に資する車も必要。リースとして5万円、電気ガス水道・・・10万で収まればいいほう。はい、ここまでで75万/月かかります。
で、以前に出しているフィーからの利益計算によると、ざっくり2本で店の実入りは6000円あるかないかである。750000÷6000=125人/月。これでとんとん。利益や、不慮の出費を考えると、200人・月商300万弱はないと、オーナーの利益はまるでないことになる。
月200人=日に6・7人・・・。盛夏の時期であっても、平日にこの数字はそんなに見込めないし、まして、時期である、4-10月を超えると、都市型は実質休眠状態になる。まるで「農家」状態。
まさか半年ごとに契約更新→一旦解雇→また雇い入れ、なんてことをして延命させるのは無理と言うものである。つまり、ガイドとして雇用した人たちの給与はなんとしてもまかなわないといけないのである。
しかし結果的にそれができない・・・だから、器材で暴利をむさぼる/ツアー価格を高めに設定する・・・これでやっぱり「都市型の弊害」がここにあることが改めて理解できた。
(3)都市型=器材売り の概念を吹き飛ばすには・・・
利益の源泉を器材の販売にすえないといけない状況がなくならない限り、都市型ショップの未来は暗いままである。
しかし、逆転の発想で大きく成長している企業もある。「器材売りがショップをやっている」典型例であるmic21である。
ここの場合、ダイビング事業は、はっきり言っておまけである。ツアーを組んだり、もちろんまともに器材を売ったりすることのほうがメインである。これくらい振り切った思想であれば、利潤も追求できるし、ダイビングのほうも成功するだろう。
また、スポーツ関連と言うことで、スポーツクラブの一部門がダイビングに乗り出しているところも散見される。こういったところの場合、マイルドな都市型とも言えるわけで、どぎつい器材営業は控えられている。
そうはいっても、何らかの販売がなくてはお店が維持できないのも事実。誰かの"犠牲"によって店が成り立っているということを感じさせない雰囲気作りも大事である。
(4)新・都市型のモデルを考える
・主眼をダイビング以外に置くことが先決
実は、重器材の"押し売り"は、確かに一気に稼げるので、一種の麻薬と化している。だから誰にでもそのように勧めるし、そしてその高額な出費がダイビングを楽しいものから遠ざけているのである。
しかし本当の利益の源泉は、「日銭」にあることに気づかないといけない。では、ダイビングショップで稼げる「日銭」とは何か?ここでは手っ取り早い「飲食」と言うジャンルに手を出すべきである、といっておきたい。
オフィス街に店を構えているのならなおのこと。ダイビングショップがランチ専門の食堂に変化したり、帰宅時には立ち飲み系の居酒屋に・・・。むしろそういう都市型を一軒も見たことがないのが不思議でもあった。
「じゃあ、平日のツアーとかはどうすんの?」飲食部門を変に閉めるわけには行かないので、土・日に変更してもらうか、その日は「非常勤」のバイトでも雇ってその場をしのぐということも考えられる。
ダイビングショップなのに飲食をやってしまうということになるわけだが、これをすることで、十分に利益は得られる。待ちの商売からは少なくとも脱却できる。
→探してみると、沖縄に一軒、ショップ2階に飲食店を営業しているところを発見。でもまだまだ少数派である。
・ぼったくらない
器材代も、ツアー代金も、適正価格(利潤を少し乗せた価格)であれば、誰も文句は言わない。
「自分でレンタカーまで借りて、向った方が安く上がってしまう」ツアーとか、定価バリバリの器材とかは、もはや情報が蔓延している現在では「時代遅れの商法」として映っているはずである。
ましてや、安価に取れるCカードを釣り餌にして、重器材を買わせるやり方は、確実に通報の対象になってしまっている。
「うちの店で始めてもらえるんだ→即金蔓」と言う色気を出しすぎていたことは大いに反省していただきたいところである。
・店が「多趣味」であることが収益につながる
先ほどは「全くの異業種に進出せよ」と銘打った。しかし、アウトドアに特化した、ダイビングを中心としたスポーツ同好会的な立ち位置で運営していくとするならば・・・。
冬はスキー/スノボ、トレッキングにジョギング、マニアックなところではボルタリングなど・・・。屋内・陸上でもスポーツをやっているわけであり、そういった層にダイビングの魅力を伝えることも可能になっていく。
そもそも、ダイビングからの派生するスポーツといったら、せいぜいフリーダイビングかシュノーケリング。水中系は、そもそも発展形が少なすぎる。サーフィンは、これまたボードが必要になり、お金もかかる。
単に人を集めるということに傾注することで、何人かがダイビングに振り向いてくれたら、儲けもの。趣味人の交流も深まることになり、組織も活性化する。
・「mic21」的なやり方を取ってみる
そんなに器材が売りたいのなら、器材屋がダイビングショップを併設する、と言う”コロンブスの卵”的発想はどうだろうか?もちろん、大手と同じようなラインアップは望むべくもない。
しかし、大手にはできないマニアックな器材をそろえることは可能である。ぶっちゃけ、海外の激安器材を仕入れ→購入店でのみオーバーホールできる仕組みを構築できれば、メンテナンス代だけでもかなりの利益が出ると思う。
今やリアル店舗ではmicの一人勝ちの様相を呈しているが、それゆえに牙城は、ちょっとした攻撃には弱いものである。「ダイビングショップが器材を売る」からの、発想の転換。これ、意外と効果的かもしれない。
(5)結論:結局はダイビング頼りにならないこと
個人としては「ダイビングを趣味」としていくことは続けられても、「経営者としてダイビングショップを続ける」と言うことは、至難の業である。
初期投資である500万程度は確実に必要になるし、開業当初から、ほかの業態にも触手を動かすことにもなるわけで、ダイビング専門と言う立ち位置では、あっという間に資金はそこをついてしまうであろう。
そうなっては本末転倒。よって、他業種のことも勉強しないといけないわけで、ダイビングのことだけやっていればいいや、と言うことにならなくなる。
都市型は、とにかくかかる経費が半端ない。だからといって旧態依然のままの「器材でぼろ儲け」にしか目が行かないようでは、長続きすることはないだろう。
そして、店はなくなり、店のロゴやブランドを冠した器材で潜らざるを得ない状況となる、メンバーだけが宙ぶらりんに放り出されるという結果につながってしまうのである。
そうしないための方策。私のような、業界ずぶのシロートがちょっと頭をひねっただけでもいくつかの提案ができている。
もう「専門店」と言う看板だけではたべられなくなっている都市型。器材偏重型からの脱却をできたところがこれから生き残れるように感じている。