それって、どうなん?
  第五回:格安ツアーバスの実力って、どうなん?
 ことしのGWは、ツアーバスの大規模事故で幕を開けてしまった。本来のルートを外れたバスは、通るはずのない関越道で、防音壁にまさに串刺しになって多くの乗客の命が奪われた。
 高速バスそのものの事故は、これまでもいくつか発生している。たとえばちょっと古いが、2階建てバスによる自然発火事故。これの場合はハードウェアであるバスに問題があったわけで、今でも2階建てに乗るのは私自身完全に信頼し切れていない。
 今回の事故は、よもやの一人乗務/居眠りと言うとんでもない状況での発生であり、格安を武器に旅客をJR新幹線や航空機から奪ってきたバス業界自体に警鐘を鳴らしたことは間違いない。

 さて、すでに既報のとおり、当方は西伊豆/大瀬崎でのダイビングの際に、ツアーバスを利用した。当方が利用したのはこの業界のトップ企業であるウィラー。ピンク色をカラーリングしたバスで、当初、当方は「女性専用ツアーのバス会社かな」と思っていたくらいである。ほかの「路線バス形態」の夜行バスより、格段に安い料金を武器に、関西−関東のドル箱路線では、何便も出せるまでになっている。又、座席のバリエーションが多彩なのも特徴的で、4列シートでも、ゆったり目のシートを配置したものもあり、バスと言う移動手段をある種改革しようとしている旗手でもある。

 それでは、関西−静岡でいろいろと検索してみた結果をここで発表する。
 大阪−静岡   6500円(阪急系とJR系の二社)
 大阪−沼津   7300円(近鉄/富士急)

 willer  大阪−静岡   最安値の正規価格  3600円
      大阪−沼津   最安値の正規価格  3800円(これに早割り(数量限定)、学割、シニア割などが存在する)

 早期割引などを使えば2000円台もありえるわけで、大手の乗り合いバスの価格をはるかに凌駕していることは間違いない。
 ちなみにJR新幹線を使って三島までいったばあい、11750円(ひかり利用/指定席・通常期)はかかるわけで、片道分の料金で往復しておつりが来るのだから利用しない手はない。

 と言うわけで万全の体制を整えて迎えた出発日だったのだが、なんとバスのダウングレードがある、とのメール連絡が入った。
 早割りで3100円/複数便購入で50円引きの片道3050円で購入できたところに、何とのお詫びQUOカード500円分をゲットできると言うのである。そもそも、関東へ向かう便とはいえ、距離的に中途半端で、激込みの予想は到底ない中で、バスがどのクラスになっていたとしても、余裕の乗車率なのは疑いようもない。又、450キロ程度を8時間くらいかけて走行するとあっては、遅れなども考えるほうが難しい。

 かくして、梅田スカイビル1Fにある受付センターに21時50分ごろに入る。もちろんほかのお客さんは、TDR(東京ディズニーリゾート)行きバスの方が大半である。
 受付終了後、23時40分に発車するバスに乗り込む。すると、予定客が全員乗り込んだのであろう、定刻より早くに出発を始めたのである。これには驚いた。まあ、路線バスではないだけに「予約者以外の飛び込み客」が乗り込んでくる可能性は皆無なだけに揃えば出発、は合理的だ。車内は驚くほど閑散。40人以上は乗れるバスで20人は乗り込んでいない。京都でも何人か拾ったが結果的に15人程度ではなかっただろうか・・・もちろん、横一列だぁれもいない状況でごろ寝も可能な状況だった。
 草津PA/浜名湖SAと経由して、浜松で数人が下車。静岡でもおろしたあと、再び東名に入り、日本平PAでの3回の休憩。余裕を持ちすぎていることもあり、なんと40分も早着してしまう有様である。
 三島行きの旅客がいなかったせいもあり、バスはここで打ち切り。いろいろ勉強にもなった初乗車である。

 帰りもダウングレードだったわけだが、更なるおまけが。
 なんと、ほかの車との接触事故を起こしたと言うのである。もちろん、ツアー会社からの携帯連絡で知ることとなったのだが、行きの感じから行っても、小一時間程度の遅延なら、十分に取り返せると判断できるだけに、別段あせる気持ちも起こらなかった。
 バスの運転手の話だと、後ろから突っ込まれたようで(事故の被害を写真にはとどめていなかった・・・)、しかももぐりこんでしまって復旧に手間取ったとのこと。もちろん、大阪駅の指定降車場所には、これまた早着の6時まえに到着。
 激込みでなく、車内は通夜の様に静かであり、すいている車内での旅行も格別と言わざるを得ない。


 ここからは考察である。
 実は、どう考えても、この路線、「平日は」大赤字であることは今までの文面からでも察しが着くであろう。20人/平均運賃3500円として見入りはわずか7万円。高速料金/燃料代だけで軽く3万円は吹っ飛ぶと見られ、二人のドライバー代が果たしていくらなのか、想像するのも恐ろしい。
 しかし、土日はそこそこに満員御礼になっているようでもある。これらから平均して考えても、25人程度が一日一便あたりの利用客と考えられ、やはりぎりぎりのラインで運行していることは間違いない。
 で、willerのほかのルートをいろいろと見ているのだが、神奈川県に行く便が意外に薄いことが判明した(正確には経由地になっている)。三島−横浜間は100キロ程度。横浜に行く人がTDLや東京に行く人と混載になっているようでは、実際に遠距離を乗る人たちをやや圧迫しているようで仕方ない。東京方面便は横浜経由とせず、この三島行きを延長して横浜止めとすれば、横浜に行く人はこちらを利用することになり、勢い乗車率も改善すると考えられる。
 横浜に向かう人にしてみれば、そのダイヤ改正が行われると、座席のバリエーションが選べないと言う不具合も発生するが、「いつも満席/予約が取りにくい」ことより「確実に乗車できる」方がプライオリティは高いように思う。
 逆にミドルクラスの座席を奢ることで乗車率を改善することだって可能なはずであり、その際には、今までのような単価では乗れなくなるが、十分安いのだから、それに越したことはない。

 ちなみに「早割り」表記は大阪−静岡便に関しては、5/末出発以降は表記がなくなっている。さすがに「割引できる路線ではない」と気がついたのだろうか・・・。それでもこの価格でちょっとした旅行ができる。いい時代になったものだ、とどこぞのキャラクターのように言い放っていいものかどうか・・・。デフレが生んだ格安ツアーバス。今後の法改正などでどういう風に変遷を遂げるのか、注視したいところである。