それって、どうなん?
  第11回:ツアーバス終了で業界はどうなん?<続報> 
 2012年のGWにおこった、ツアーバスの大規模事故。本来のルートを外れたバスは、通るはずのない関越道で、防音壁にまさに串刺しになって多くの乗客の命が奪われた。
 深夜での高速バスで事故が起こった場合、乗客は異変に気付くまもなくしかもシートベルトも大半がしていないと思われるので、その際の被害ははんぱない物になると見られる。
 そういったツアーバスの危険性がより多くの過当競争を招き、ダンピングにも繋がっているとして、国土交通省は当初予定を前倒しして、ツアーバス自体の存在を否定=通常の乗り合いバスと同様の営業/安全対策を取るように通達、現行のツアーバス会社は、この通達によって、営業のやり方を根本から見直すことをしなくてはいけなくなった。

 例えば、乗/降車地。これまではどんな路上であっても適当に下車/乗車できるのがツアーバスの強みであった。ところが、今回の法改正では、停留所としてちゃんと整備しなくてはならないことが義務付けられた。これは、用地の問題や、既存の路線バス会社との軋轢を生む結果にも繋がり、結果的にとんでもなく辺鄙な場所に設定される可能性をも秘めている。
 料金形態も大きく様変わりする。これまでは繁忙期/閑散期といった区画わけもせず、へたすると直前割といった格安価格を出していても問題はなかった。これが「幅を持たせた料金体系」となり、価格の設定変更もこれまでのように自由は利かなくなっている(逆に路線バス会社側にすると、急に変えたいと思ったときにその申請に要する期間が短くなり、柔軟に対応できるようになった)。
 又、定期便という観念からすると、仮に途中停留所で乗客が全員降りてしまっても最終目的地までの運行はしなくてはならなくなったわけで、前々回の際の「沼津で全員下車→打ち切り」といった事態はなくなる公算も強い。

 さて、当方が今回の法改正でベンチマークとしてみているのが最大手のwiller。まだかまだか、と思ってみていたのだが、ようやく6/20にHP等も変更がかけられ、7/31発分からの受付が開始になっていた。
 というわけで、ここから垣間見える、いろいろな変更点を探ってみた。
 ・大阪−三島便で見てみる
 別に大瀬に毎度毎度行くわけではないが、大阪−東京便よりはるかに利用価値の低くなっているはずの当該便についてみて見るのが、大きな変化を感じ取れるのではないかと思ったからであるが、意外に収穫は盛りだくさんであった。
 ○乗下車地に変更あり
 なんと、静岡駅が廃止され、代わりに「東静岡」に変更になっている。これは静岡市民にとっては意外な変更になってしまっている。おそらく、静岡駅のロータリーはJRバス東海側がウンといわなかった可能性が高く、泣く泣くとなり駅の東静岡にせざるを得なかったのだろう。
 ○価格も大幅変動
 当方が危惧していたのはこの点である。これまで可能だった、早割り系の料金形態は姿を消し、いつに予約しても料金は変動ナシ、ということで、旨味がなくなってしまった。当該便では、7/30までなら曜日限定とはいえ2500円もでている価格も、最長の大阪−三島で最低価格は4300円から。実質大幅値上げとなるが、あの乗車率ではあげたくなるのも分からないではない。
 ○子どもが半額!
 気にしていなかったのだが、今までのツアーバス形態では、子どもといえどもほぼいっちょ前の料金が取られていた。それが乗り合いバスに変わると通常料金の完全半額になっている。子連れで旅行する層にとってはこれは見逃せない。
 
 他に気になっている便/停留所についてみてみる。
 地元である三宮は「市役所前」→北長狭通に変更。京都も、車寄せではなく、ホテルの前に設置してある停留所に変更に。福岡では、小倉はバスの専用駐車場から新幹線口に、博多駅は、筑紫口のローソン前から合同庁舎前に。天神と博多埠頭へは行かなくなっている。静岡以上に激震なのが神奈川。なんと横浜には止まらず「川崎」での乗降になってしまっている。これには当方も驚きを隠せない。
 停留所が変わる事で、もしかすると運行実績にも影響がでてくるかもしれないが、取り敢えずは大まかながら状況も分かった今回の法改正に伴う運行会社の対応。今後も気になる部分は取り上げていきたい。