円盤発売記念
  「君の名は。」を深掘る
(5) 10月2日を俯瞰する

 入れ替わりが発覚(二人の間で確定する)してからの彼らは、結果的に自分勝手に行動してしまい、瀧は(三葉のせいで)奥寺先輩と緊密になり、一方の三葉は(瀧の男勝りの行動が)周囲の注目を集め始めることになり、生活まで引っ掻き回される事態が起こっている。
 そのシーンの背景には、大ヒット曲でもある「前前前世」が流れ、否応なく雰囲気を盛り上げる。だがそれは、ただ単なる「入れ替わりのある楽しい学園生活」が延々続くことを指し示していたわけではないのだった…

 またしても田舎生活の瀧ちゃん。だが、このとき、彼女(彼)は制服に着替えてしまう。「なんで制服着とんの?」と四葉に言われるまで、学校に行く気満々だったのである。
 向かった先はご神体と呼ばれる、クレーター上の中心にぽつねんとある小さな祠。ここの部分は、後々の大きな伏線ともいえる「ムスビ」のいわれが一葉から語られる、シーンとしてもこの作品の根幹をなすといってもいいくらいの重要な場所である。また、このご神体の場所こそ「あの世」であり、現世と来世を結ぶ(!!)スピリチャルな場所でもある。
 その帰り道…まさにカタワレ時のこと。彗星が見えるかな、という四葉につぶやく瀧ちゃん。だが次の瞬間、一葉に「おや三葉、あんた今、夢を見とるな?」と問いかけられて、意識が現代に急速に着地する。
 その日こそ、瀧本人が奥寺先輩とデートを「させられてしまう」日・・・休日な雰囲気の「2016年10月3日(月)」になっている。

 これまでのストーリーでは、「お互いが同じ日(年代は別として)に入れ替わる」ことが提示されてあった。
 ただ、実際には、画面上では、①瀧の三葉化(瀧ちゃん)→②正常な三葉→③三葉の入った瀧(三葉君/これは2016年9月5日で確定)→④正常な瀧(このとき瀧の周辺は盛大にもめている)と、4日間を通して物語が展開しているかのように見せていた(ここからは、掛け合い漫才のような、お互いを罵倒するような展開にしてあり、冒頭部分の記述に戻る)。
 問題は、デートの立案をしている三葉サイドも10月2日に瀧の体に入っており(この日は日曜日)、その様子を瀧の携帯に「東京生活10」のタイトルで知らせている。
 時系列を論じるとき「同一の日を2回繰り返す」ことは不可能である。当初、2016.10.2が日曜日であること/小説にもその日が休日であることの記述があることなどから、同一日付に移動した、とする結論を出していたわけだが、これをしてしまうと三葉が瀧の携帯に残した文面と日付が違ってしまう。
             「そしてなによりもっ!!」(宮水トシキ談)
 (2016.)10.3をデートの日だと三葉も認識している。このあたりは曜日が一日進んでいると考えておく方が間違いない。

 では、2016.10.3にデートできている=世間一般は休日でもなく、ド平日に瀧は学校をサボってまでデートの約束を取り付けていたのだろうか…

 そこで登場するのが「あんた今、夢を見とるな」の一言である。
 ここからのすべての事象---古川図書館でもう一度一葉の声で「あんた今、夢を見とるな」と声をかけられるまで---が、「夢の中の出来事」のように描写されていたとするならば、どうだろうか?
 もちろん、デートも事実、糸守の写真に心奪われたのも事実・・・しかし、突如として長袖を羽織った奥寺先輩の衣装に注目すると面白い。どこからか、おかしく表現されていることに気が付く。


 解析結果<ただし独自研究>:
 瀧の入った三葉が口噛み酒を奉納したのは2013年10月2日で確定。ただ、寝ること(=一日日付を進ませること)によらない元通りの同一化が図られた結果、2016年10月3日(月)に着地するはずが、休日扱いの「10月3日」にいることが判明する。そして、これ自体が「夢の中の出来事」のように描写されているので、平日にデートをするという、あり得ない選択もある意味肯定されるように描かれている。