第2回:「46.9%」を考える
さて、私の「隠れ趣味」として、アニメーション評論がある。WEBページを立ち上げる段階で、このディープな世界に関してどう取り扱おうか考えていた時期がある。しかし、世の中の、あまたいる先達たちに敬意を表して、発表することを差し控えた経緯がある。
とは言うものの、私自身は、2000年あたりを境にアニメ業界に関わることから遠ざかり始めていた。理由は簡単。大の大人が楽しめる作品が激減したからである。昔は、脚本の質がかなりよく、ストーリーも込み入ったものが多かったが、連続物自体が姿を消し、勧善懲悪系や一話完結系が幅を利かせ、結局お子様向けの作風を選択せざるを得ない状況がここ数年続いている。「燃える」作品に出会えなくなって久しいが、このあたりも影響しているのだと思う。
その中にあって、一応私の気になっているアニメーターといえばこの人…。宮崎 駿氏しかいない。それは、「となりのトトロ」でその地位を確固としたにもかかわらず、その後の作品の中途半端さ加減が気になっているからである。トトロ以前と以後では、ストーリー立ての緻密さがぜんぜん違うのである。そして、記録的な観客動員を得た「もののけ姫」の公開。しかし、それほどの高評価を映画業界はしないままに終わってしまった。ここにも、ストーリー上の素材を活かしきれず、何かしら奥歯に物の挟まったような映像になってしまったところが垣間見られる。
そして、もう一度世間一般を振り向かせるために送り出したのが、「千と千尋の神隠し」である。何しろ「もののけ」の製作発表の時にもう作らないといったようなことを宣言していたにもかかわらず、作ったのだから、「これはすごいことになるのかも」というイメージを植え付けさせ、しかも、「もののけ」で完全に大人達のハートをつかんだことで、リピーターの幅が思いっきりできた。事実、01年8月にさる劇場で拝見したときに、驚く無かれ、初老のカップルが見に来ていたり、30代の夫婦と思しき二人連れも散見された。「もののけ」をはるかに上回る観客動員が可能だったのも、幅広い世代から支持を受けたことが大きいものと思われる。
そして迎えた2003年のテレビ初公開。異例の8時30分からの放送開始にもかかわらず、なんと最高視聴率は46.9%(東京地区/ビデオリサーチ調べ)を記録、それまで長らく邦画のトップに君臨してきた「南極物語」の最高視聴率をも上回ってしまったのである。
正直この数字は恐ろしい、の一言なのである。ちなみに年末の恒例行事「紅白歌合戦」も最近のテレビ離れと他局の趣向に押される形で年々視聴率は減少している。02年の数字も思ったほどよくなかったといわれている(中島 みゆきさんの登場場面が最高だったようだが、11時を回った時点は、すなわち他局からの流入がある時間帯だけに当然の結末)。
普通に考えれば、「出し惜しみ」するくらいでも十分の作品。ところが番組改編期にぶつけず、この1月にこれほど率の稼げる作品を投入したというのが解せないのである。無理やり理由を探そうとするなら、3月まで引っ張りたくなかった、改編期こそ視聴率が分散化するのでここ一番というときに出したかった、DVDもでて、話題性があるうちに公開したかった、同時間帯のドラマ潰し…。まあ、テレビ業界に明るくない私で思いつくのはこの程度の、たわいのないものである。
形や公開時期はどうあれ、ここまで大ヒットした映画が公開終了から1年足らずでテレビに登場し、超高視聴率を稼ぐ。個人的には、この映画、「長く書きすぎてしまって印象が散漫としてしまった」「ラスト2分あまりは書きすぎ」などとあまりいい評価を下していないのが本当のところなのだが、こうも「支持」されているとなると、私も何度かはVTRを見直さなくてはいけないのかもしれない。
46.9%というと、ほぼ、2人に一人はこの映画をテレビで見たことになる。しかし、この数字を見て「あわや」と思ったのは誰あろう、小泉首相その人なのではなかろうか?経済無策を地で行き、北との対話も進まない状況。それどころか寝た子を起こす突然の靖国参拝と、節操のなさがますます鼻についてきている。最新の世論調査(1/28・読売新聞調べ)では、何とか過半数は維持して(53%)、面目は保った形だが、先の予算委員会での「この程度」発言といい、今年の国会は、本筋で風雲急を告げるような気がしてならない。
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