第5回:「世論は世論」なんだぁ・・・
 3月に入って、いよいよ、アメリカ・イギリスの、イラク攻撃が現実のものとなりつつある。こうと決めたら路線転換の考えられない堅物・ブッシュ氏も、米英は運命共同体、と番長の言うことに従順なブレア氏も、気の毒といえば気の毒である。彼らに、議会の外で巻き起こっている、「反戦」と言う言葉は通用しないらしい。
 そして、最も始末の悪い首相は誰あろう、小泉氏である。何しろ、同盟国であるアメリカが、理由はどうあれ戦争を吹っかけようとしているこの期に及んで、「態度保留を続けたまま。そして先日の予算委員会の議場で、彼はとんでもない発言をしてしまったのである。
 「戦争か平和かと問われれば、だれだって平和を望む。世論に従って政治をすると間違う場合もある。それは歴史の事実が証明している」

 私は、思わず、「へぇぇぇ」と唸ってしまった。今まで、世論であるところの世間一般の支持があるから、改革だの、痛みを伴うだのといったことも強力に推進していけたはずである。自身の自論でもあった郵政3事業の先陣を切って4月に郵政公社が立ち上がったのも、世論の後押しなくしては実現不可能だったといっていい。変な時期に靖国参拝しても、世間がとやかく言わないのは、半ばあきらめと同時に、「まだ支持しているから、多少のことには目をつぶろう」と言う支持層の許容があるからに他ならない。
 しかし、ことは戦争である。平和国家を標榜し、もちろん憲法には9条というほかの国には見られない素晴らしい一文も明記されている。日本国内のみならず、今回のイラク攻撃には、釈然としない物を世界が感じているから、反戦といった抗議行動に結びついているのだと思う。イラク側に非がないわけではなく、ことの性急な解決を望む米英に待ったを掛けたい、ただそれだけなのである。
 しかし、そういった世論に耳を傾けようとしない態度に映る小泉首相。こうなると、議会制民主主義とは何たるか、を当の本人に尋ねたい心境である。国民の代表として選ばれている議員達が、このことについて、声高に物を言っていないのも私には釈然としないし、もっといえば、これだけ世論を無視しながら後方支援はしているとなると、その政治姿勢が問われるのは時間の問題である。

 公約は「この程度」と考え、「世論には従わない」と見得を切る首相。つい先日には、自民党議員の裏金疑惑で逮捕許諾が出るなど、政治家のやることなすこと、腹だたしいことばかりである。今回の世論無視発言、自らの首をしめる重大な発言になってしまいそうである。
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