第6回:強硬米英、日和見ニッポン
いまや国際社会は、イラクに武力行使するのかしないのかで意見が交錯している。3月11日に予定されていた、国連の安保理での新しい議決案の採決の直前になって、多数化工作に時間の取られているアメリカが採決の延期を言ってきた。「こうまでして、戦争したいのか」と思わずにはいられない。
そもそも、イラクや北朝鮮を「ならず者」呼ばわりしたのは、誰あろう、アメリカである。狭義的にとればブッシュ政権である。そのブッシュ政権がなりふりかまわない手法で持って、「ならず者」を退治する、保安官を気取っている。しかし、その裏では石油の利権が絡み、実際イラク産の原油をアメリカは輸入している。俗に言うダブル・スタンダードが、この国にも存在しているのである。
「9.11」の事件以来、ブッシュ政権が打倒・フセインに燃える気持ちもわからないではない。しかし、現時点で、イラク政府がテロ組織とかかわっていたという事実は見当たらない、というところも重要である。大量破壊兵器の査察がスムーズに行かなかったことを理由に武力行使だ!と言うのは、あまりに性急過ぎる判断だといわざるを得ない。
私も、当然、査察推進派である。というより、世界各国から大量に査察団を投入すべきだと思うのである。今の限定されたチームでは、イラクの「思うように」査察団も動かされているのが見え見えだからである。つまり、イラク側が混乱するくらい査察団を投入してしまえば、もっときっちりとした査察ができるわけだし、当然ぼろも出てくる。いってみれば、査察団という名を借りた、強襲上陸をしてしまえば、必ずフセイン政権は落ちる、と思うのである。
戦争という直接的な行動こそが解決の近道としか考えられていない、アメリカ/イギリスの考え方の硬直振りは、「戦争以外に解決法がないか」ということを考えた、素人の私が思いつくぐらい、いくらでも上げられるのに、それらを拒否している態度にも表れている。だいたい、「査察継続」で得られる物の方が大きいはずである。空爆で拠点を爆破して得意げになっていたとしても、その施設自体がもともとダミーだったとしたら、それは全くの無駄骨、いや、無駄BOMBといったところだろうか…。
一方、日和見外交が御得意の我がニッポンは、ご存知、「世論に従わない」という今年の流行語にでもなろうかという名言を吐いた小泉首相が、アメリカの手先的な役割を果たそうとしている。何でも、電話会談を諸外国と持ち、アメリカ提案に賛成するよう働きかけているのだという。
「わが国外交も地に落ちた」といわざるを得ない現象だ。どうしてここまでアメリカに媚びる必要があるというのだろうか?「アメリカともフランスとも立場は違う」的な発言をしていても、アメリカ側につくように説得しているのなら、限りなくアメリカに近い行動をとっているわけで、とうとう馬脚をあらわしたか、ともとれる発言と行動である。
ことは重要である。平和憲法が根幹にある日本が、戦争を推し進めようとしている国家の手先になって活躍しようとしているのだ。確かに前回の湾岸戦争とは主役どおしは同じでも、状況が全く違うのである。一部の血気にはやった国だけが直接攻撃といっているだけなのである。もしこのまま行けば、世界が平和→査察継続の雰囲気になっているのに、経済大国・ニッポンは戦争に賛成している、というイメージを植え付けてしまいかねないのである。
唯一の救いは、ロシアが拒否権発動に動きそうなことである。それで提案自体が廃案になり、別の動議をかけなければいけなくなる。査察継続こそがイラクを封じ込める、誰も傷つかず、納得が行く、そして最も経済的で最も平和裏に解決する唯一の方策だと、アメリカイギリス、そして日本の馬鹿政府の要人たちが気づくのはいつのことなのだろう?
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