第8回:何が本当?
4月10日、イラクへの先制攻撃から21日目にして、 アメリカ/イギリスの連合軍は、首都・バグダットを陥れた。正確には、アメリカ軍のみが首都入城を果たしたものであり、実質的にアメリカがこの戦争で首都を攻略したということが言える。
それにしても、ものすごいスピードでの首都到達ということができる。ペルシャ湾の入り口や隣国クウェートからイラク領内に入った陸軍部隊は、途中の砂あらしなどの悪天候による足止めをのぞけば、実質2週間前後で首都に至ったことになる。そのかげに、空爆による陸上部隊の支援や意外にすんなり手に入った国際空港の早期占領が関わっていることはもちろん、イラク側の組織立った抵抗がほとんどなかったことを示している。
そして、世界中に配信された、フセイン大統領の銅像が引き倒されるシーンに視線が集まる。アメリカの装甲車と思しき車両が引っ張ってようやく倒れた時、イラク国民達は憎悪をむきだしにして銅像の顔を足蹴にした。そう!これが、「国民の支持率100%」の大統領の末路だったのである。
「支持率100%でない」ことは確かに明らかになった。しかし「0%でない」こともまた真である。今、彼の側に立つことは勢い自らの立場を悪くする。勝てば官軍、寄らば大樹の陰である。内心アメリカの侵攻を快く思っていなくても、解放してくれた喜びのほうが大きいのだとしたらどうだろうか?時間がたつにつれて、今「アメリカ万歳、ブッシュサンキュー」といっている人たちが、手のひらを返す(もちろんここではフセイン側に寝返るということではなく、アメリカにNoを突きつける)ことだって十分に考えられる。
何より、ブッシュに死をとか言っていた国の住民が、数日を経ずして、親米感情をあらわにするものだろうか?この、ころころ変わる、ポリシーのない大衆に私は注目し、警戒しているのである。
そもそも今回の戦争の目的はなんだったのか、と考えた時に、「イラクの自由」とか言うことを大義名分にしているようなのだが、これは見当違いもはなはだしい。結果としてフセイン政権が倒れてこういう結果になったのだけれども、第一の目的は大量破壊兵器の発見や証拠をつかむことだったはずである。それなのに空爆に大量の兵力を投入、証拠探しそっちのけで首都制圧…。圧倒的優位でアメリカ軍が勝って当然なのである。
今アメリカ側は、ことさらに、「今イラク国民は自由になった」とばかり言っているが、アメリカの監視下にある中での自由であり、本当の自由を勝ち得たわけではない。おそらくそのことにそろそろイラク国民も気づく筈であり、同じことばかりを繰り返し放送している様を見て、「なんだ、所詮フセイン政権とやってることはおんなじじゃん」と思ってしまったのである。
フセイン大統領を囲んで歓喜の声を上げたのが本当なのか、それとも銅像を足蹴にしたのが心のそこから出た行動なのか?今、本当のイラク国民とはなんなのか、が問われ始めているといっても過言ではない。
コーナートップへ