第16回:総裁選で何が変わる?
 改選時期をめぐってすったもんだした自民党の総裁選挙。結局、反主流派の難癖に、首相サイドが居直るような結末をとらざるを得なくなり、党内の対決姿勢がより鮮明になっている。
 そして、再選を狙う小泉氏は、盤石の態勢で反・小泉派を迎え撃つことになる。しかし、その相手はなかなかの凄腕である。そう。あの独特のだみ声、歯に衣着せぬ言動が多いが失言は極めて少ない、亀井静香氏の登場である。
 亀井氏の発言はきわめて鮮明である。「小泉さんの時代でも日本は結局よくならなかった。改革といっているばかりでは日本はよくならない」「小泉氏のやっていることの逆をやれば日本は浮上できる」・・・。何も考えずに聞いていると、「あ、そうなのかもね」と思わせてしまうに十分すぎる論法である。もちろん、詳しく聞いてみると、改革一切なし、予算拡大で国債はバンバン発行、それでいて消費税も上げる・・・。確かに小泉氏とは「逆」だけれど、これは時代の要請から見ても「逆」のような気がしてならない。

 だいたい、日本の政治体系の中で最も納得行かないのが、この「総裁選」である。ほとんど日本の政治中枢に君臨しつづけている自民党。その中で最も「えらいヒト」が必ず首相に任命されるというシステムに、これまでほとんどのヒトは疑問に持つこともなくすごして来たと思う。党内の最高責任者は党の中で決めてもらうのは全く問題ないと思うのだが、国の首長と、政権政党のトップをリンクさせるという過程において、国民は全く不在である。
 そして、この結果=総裁即ち首相という「ニンジン」がぶらさがっているので、党内の派閥の領袖がここぞとばかりに出馬表明、力のないところはポストを見返りに大きいところにくっつくなど、離合集散が繰り返される。そして多数派工作に成功したものだけが勝者として総裁と首相という二つの椅子をゲットできるのである。そして公示された4人の面々。日本をよくしようという考えに基づくのではなく、「参加することに意義がある」的な顔ぶれになってしまっているのがなんとも物悲しい。特に、当選の可能性の低い高村さんには、かなり厳しい選挙戦となることだろう。

 一貫して主張を曲げない小泉氏。本来なら、そこが小泉氏の弱点になって他の候補者に格好の攻撃材料を提供することになるのだが、相変わらず高い支持率、一般受けなどを考えると、他のヒトが総裁になったとして本当に日本が変わるのだろうか、と考えてしまう。それでなくても、党内ではある人の引退宣言で一気に風雲急を告げている。
 野中さんの引退宣言である。小泉批判の急先鋒でも知られ、党内主要ポストも歴任。今回出馬の話があってもおかしくないと見られていた。今回の引退宣言の裏には、派内の統制が取れず、一部閣僚が小泉支持に「寝返った」ことが直接の原因と見られている。しかし、この発言で橋本派は右往左往の状態。1番被害を被るのは、派内から立候補した藤井氏ではないか、と思うくらいである。
 
 何はともあれ、スタートした総裁選。ほぼ、小泉氏の再選という、出来レース状態でことは推移するものと見られている。変わりたくないはずの党が改革路線一本槍の候補者を選ばないといけない現実・・・。政治生命を賭してまで小泉氏と刺し違えるつもりの野中さんの行動が、無駄に終わりそうでならない。
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