第4回 「事」なかれ主義がもたらした悲劇
 新名所が次々出来る東京。お台場、丸ビルときて、森ビルが満を持して送り出したのが、ヒルズこと、六本木ヒルズである。ヒルズのホームページには、【東京は、ニューヨークやロンドン、パリと肩を並べる国際都市であるにもかかわらず、都市文化の成熟度においては、大きく遅れをとっていると言わざるを得ません。】とかかれている。私は、そんなことはこれっぽっちも思っていないのだが、そういう見方も出来るかな、ていどである。
 しかし、ここで一人の、まだ年端も行かないお子さんが、命たたれるような事態が発生しようなどとは、夢にも思うまい。

 とはいうものの、死の前兆は至る所にちりばめられていた。
 1.センサー感度の低下指示が出されていた
 回転式自動ドアは、ホテルや一部スーパーなどでも採用されてはいるものの、慣れないお年寄りなどが戸惑うケースも散見された。また、飛び込んでくる幼少児には対応しきれていないことも事実である。当初の設計段階では、地上80センチから15センチだったのに、120センチから15センチまでに拡大、事故当時は、上部センサーの上限が130センチにまで広げられていた、との現場検証結果がでている。施主の森ビル側が、ドアメーカーに変更を依頼していることもわかっており、両者の責任は免れまい。
 2.頻繁に起こっていた事故
 死亡しないまでも、怪我程度の事故は頻繁に起こっていたことがわかっている。ところが、事故対策としてとったのは、センサーをそのままにして、ポールを立てて、注意を喚起する方法。これがセンサーの誤作動を引き起こすとして、ポールはやめてセンサー感度を落とす方策が採られていた模様である。
 3.実際の注意喚起がどれほど行われていたか疑問
 そもそも、センサーの感度を悪くしているという情報は、入場者には知らされないできていたはずである。幼い子供で反応するかしないかなどは知る手段もなく、また安全に配慮しているとして、知る必要もない情報である。おそらく、現場の回転ドア付近にそういった注意喚起の文言は掲示していなかったと推察される。
 4.事故の報告/広告をまったく行っていなかった
 事故は、起こるべくして起こるもの、という考えがもともとあるのか、入り口回転ドアで頻繁に起こる幼少児の怪我は、件数こそカウントされていたが、どこまで消費者に知らされていたのか、疑問である。われわれの側からすれば、「子供にとって安全でない」ドアがあることを、怪我するまで気付かされないできたことになる。
 
 いろいろ情報を取っていくと、ひどい話ばかりが浮き彫りになる。事故を報告しない施主、施主の求めに応じて危険水域まで感度を弱めたドアメーカー。そのどれもが一流企業である(ちなみに、ドアを製作したのは、三和シャッターの子会社の三和タジマというところであった)。ドアメーカーの会見では、かなりのお歴々が頭を下げていたが、それで事がすべて収まるとは到底思えない。

 ところがもっと驚くべき事実が私の耳に飛び込んできた。『国交省は自動式回転ドアを建築基準法の規制対象にせず、その安全性をメーカーまかせにしてきました。設置の際に安全を確認する検査も行われていません。それどころか、これまで発生した自動式回転ドアでの人身事故なども「把握していない」(国交省建築指導課)という状態です。』(共産党機関紙・しんぶん赤旗HPより転載)。
 ええ〜〜〜!!規制緩和がどれだけいいのか知らんけど、人命にかかわることに法律の規制がかかっていないのは規制緩和でもなんでもない。ただの怠慢である。この事件を機に法律の策定が急がれることだろうが、死んでからでは遅すぎる。実行犯(という言い方は厳しいか)であるビル会社とドアメーカーはいうに及ばず、国の責任まで問われてしかるべきだろう。
 
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