第6回 「巨」の進める球界再編に物申す
降って沸いたような、オリックスと大阪近鉄との球団合併問題。私も言いたい口を持っていながら、今日、7月7日に開かれたオーナー会議まではとりあえず静観しておこうというのがスタンスだった。そして、とうとう、この2球団の合併がほぼ本決まりになってしまった。会議の席上、たいした異論も出ず、ダブル本拠地に難色を示していた阪神にも同じ条件を与えることで反対色がなくなり、すんなり決まったようである。合併に積極的なのは、オリックスの宮内オーナーである。当時の阪急ブレーブスを購入した後もフランチャイズの所在地こそ違え、関西から動かすことなく、一時は優勝するまでに力を蓄えた。他球団の有力選手を獲得するための手段として、球団を吸収してしまおうという、安易な発想で始まったものと思われる。その話にほいほい乗ってしまったのが、赤字で悩む近鉄だったというわけだ。近鉄に関しては、昨年のシーズン終了あたりから、命名権の売却であるとか、さまざまな経営改善策がことごとく失敗に終わっていて、いつやめてもおかしくない状況だった。しかし、この球界再編、どうも「出来レース」くさいのである。近鉄球団を買うといってきた、IT企業のライブドア社がまったく骨抜きにされていることでも明らかである。
そもそも、球団を合併させることによって起こる不具合のほうが圧倒的に多い。まず、この合併でパ・リーグは5球団となり、トーナメント試合の組み立てがままならなくなる。職業人としてやっている選手のほうにとっても死活問題である。そして、最も問題にしなくてはならないのは、その球団をひいきにしているファンの存在である。今回の合併話は、ペナントレース中に出てきたことも非常識ながら、ファンや周辺の人たちに対して何の配慮もなされていないことが重要である。
合併に対するメリットを探してみようとするのだが、これがまったくといっていいほど見当たらない。近鉄はここ最近優勝争いに花を添える程度で、ローズなきあと、低迷。オリックスにいたっては、イチローが抜けた穴をまったく補充できていないばかりか、チーム成績はがた落ち。震災の年にリーグ優勝したとは思えない弱体振りを露呈している。こんなチームが一緒になったところで、成績は一ランク上がればいいところ。両球団とも選手育成のノウハウは違うはずで、一緒になって相乗効果を、なんて考える評論家が誰一人いないことでも明らかである。球団経営に影響する観客動員数でも、チームの成績に比例する形でどちらも激減。両者のファンが呉越同舟状態で球場に足を向けるとは思えず、むしろ合併は客離れを誘発する可能性すら秘めている。
それでも合併が最善の策として、オーナー会議で諮られた(というより、意思確認のためというのが目的)わけだが、その席上もうひとつの合併話・・・これでチームは両リーグあわせて10チーム、1リーグに統合してもおかしくない数字になる−−が水面下で進んでいることを西武の堤オーナーが発言。記者会見の席上、渡辺オーナー会議議長も、このことに触れている。間違いなく、事態は「1リーグ」制に向かっている。
しかし、何もかもが、経営者サイドでそれも急速に進んでしまっている。ファン・選手・それを取り巻く人々を無視した形で進んでいる。なぜそれを急ぐ必要があるのか?球団身売りという別の選択肢を否定しなくてはならないわけでもあるのだろうか?そもそも、経営者側から見れば、条件のいいほうになびくはずで、球団を持ちたいという人に門戸を開かない今の球界全体が、閉塞状況にあるということをわざわざ公表しているようなものである。またたとえ1リーグ制にしたところで、年間に開催される試合数は激減、当然観客動員数のトータルの数字も減少するわけで(約130試合分/約400万人分)、今回の再編が、各球団の、さほどよくない経営状態を回復させる選択とは到底考えられない。
そうなってくると、「再編→1リーグ移行」がすでに規定路線になっていると考えるのが妥当である。だから、買いたいと申し出たライブドアは歯牙にもかけられなかったわけである。なんとなれば、「話がややこしくなる」からである。もし、ライブドアが近鉄を買ってしまえば、今回の再編話は流れるが、もうひとつの合併話にもろに影響が出る。仮にライブドアが独力で野球チームを作ったとしても同様である。自分たちの作ったシナリオ想定外の人物は登場してもらっては困るのである。では、このシナリオ、誰が考えたか?それはあの人・・・ナベツネ氏しかいないではないか?
寡占化が進み、強いチームはより強くなる・・・。ナベツネ氏が考えるのは、巨人がオールスターチームという貪欲なまでの執念である。昨年・今年とあまりにふがいない成績に、こういった荒療治で主力選手の層を厚くするという手段もない事はない。少々考えすぎかもしれないが、ナベツネ氏が裏で糸を引いているかも、とかんぐってしまう。
なんでも急に決めてしまって、後はレールの上を突っ走るだけ。某国の年金制度改革的な、ファン無視の再編。いずれ、観客動員数といった目に見える数字でしっぺ返しは食らうことになるのだろう。
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