第7回 「後出し」が優位に伝えられるわけ
降って沸いたような、オリックスと大阪近鉄との球団合併問題。結局、選手会側の抵抗むなしく、この2球団の合併は阻止されなかった。「12」と「2」にこだわり続けた選手会側の姿勢は、「たかが」といわせてしまうような、軽いものではなかった。最終的には、「合併はしゃあないが、新規球団を来季までに加盟させること」を経営者サイドに了承させたことはストを実際に打ったからに他ならない。球団関係者もそうだが、選手たちのほうが、断腸の思いであの週末を迎えたに違いない。その彼らに対して、損害賠償を求める動きがそろそろ出てきそうである。しかし、ここで銭金のことを言ってくる球団が居るとしたら、なんと了見の狭い、ということになるのではなかろうか?選手が、ストをしたほんとうのりゆうがわからないと公言しているようなものである。いずれにせよ、「金返せ」といってくる球団は今すぐにでも球団を手放したいところだというくらいに見たほうが間違いない。
そして、いよいよ、それまで歯牙にもかけられなかったライブドアが一気にスポットライトを浴びて華々しく登場か、と思った矢先、サッカーチームも持っている「楽天」が突然のように球団創設をぶち上げたのである。しかも、最初にライブドアが目を付けていた宮城県に、楽天も名乗りを上げることとなり、場外での激しいつばぜり合いが始まってしまったのである。いっぱいチームが入ってくることは悪いことではないし、活性化につながるとは思う。しかし、どうも後で言い出した「楽天」側に、恣意的なものを見るのである。
まず、プロ野球再編でとやかく言われているときに、一度も姿を見せていないことがその最大の理由である。「私もやります」と名乗りを上げたのは9月に入ってから。それも野球協約改正で、加盟料など、巨額の初期投資が要らなくなる可能性がでてからの参入表明である。ライブドアが、今年のはじめごろから、近鉄に接触をしていて球団経営に触手を動かしていたのとは、スタート時点からして遅い。一時期は近鉄のファンサイドに立って、もみくちゃにされながらファンと溶け込もうとしたライブドアの堀江社長。一方の楽天の三木谷社長は、そういう直接的なことは一切せず、突然の申し出。「興味はあった」とかいわれても、後から手を上げて掻っ攫う手法はなんともいただけない。球団創設地もどういうわけかバッティング。確かに北が野球的に「熱い」地域であるのは疑う余地はないが、よりによって仙台でかぶるとは・・・。正直後から来たほうに対して嫌悪感を抱くのは当然である。
そしていよいよこの2社の参加を審査する、「審査小委員会」が立ち上がり、2社を審査し始める。しかし、ここでも楽天側には優位に働く力が存在する。トヨタ自動車の奥田碩会長ら財界の有力者12人をメンバーとする経営諮問委員会を設置、いわば、球団の「透明性」を売り物に、そしてビッグネームをバックに球界入りに名乗りを上げたわけである。方や何のバックボーンもないライブドア。審査委員会のメンバーが球団オーナーやそれに近い筋の人間ということになれば、当然どちらを選ぶかは言わずもがな、である。
さて、今回の件、ずっと引きずっている部分がある。「ライブドアが常に一線から外れている」というところである。当初の近鉄買収の件でも、話さえ聞いてもらえず、某オーナーからは「そんなやつしらん」とののしられ、いざ球団をもてるかどうかといった段になって、急に持ちたいといった企業に油揚げをさらわれかねない状況に陥っている・・・。その一方で、楽天の急な球界入りも、裏で糸を引く人間が少なからず居るような気がしてならない。「ライブドアの堀江は気に入らん。どうせ6球団目を作るなら、君、やりたまえ。近鉄にも打診に行ってたんだろ?心配するな、後はいろいろ何とかするから」・・・。三木谷社長が、妙に自信あふれるコメントをあちこちでしているのが、不気味だし、そういう裏の力が言わせているのかとかんぐってもしてしまう。
野球ファンの私としては、球団が増えることに何の異論もない。むしろ13球団になって、あたふたする球界関係者を見たい心境でもある。しかし、現状ではおそらく空いているいすはたった一つ。後だし・楽天がこのまま一気に寄り切ってしまうのか、堀江氏がうっちゃるのか、それとも「両者不戦敗」という結論もあるのか・・・。まだまだ予断を許さない状況が続く。
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