第13回 『電車男』をちょっと考える。
すでに50万部を売り切ったとされる「電車男」の本。インターネット内に存在する巨大掲示板・2ちゃんねるの中から生まれた美談は、ハッピーエンドを迎え、さらに後日談まであったと聞く。
この話が本になった理由はいろいろ考えられる。その最大の理由は、「ヲタク青年に彼女ができた」という、ただそれだけの内容を、2ちゃんねるを覗きに来る人々(=住人)が彼の言動を誘導し、応援し、励ましたことがよいとされてきているからである。
つまり、「ネット社会」「ヲタク文化」「毒男」といった、今の日本が抱える、負の部分というものがある。そこから脱出できた青年の、出会いと育まれた愛が清楚なものだということが、「純愛」に飢え、韓流(はんりゅう)的なドラマの題材にならないか、と画策した出版社とまとめ人とのコラボレーションで書籍になったと考えていたのである。
ところが、不穏な空気がこの本の中にも渦巻き始めた。特に「ノンフィクション」と思われていた(実話だと信じている人はかなり多いはず)内容がかなり胡散臭いことがいろいろな状況証拠で明らかになっている。特に出会いの端緒となった、酔っ払いに絡まれ、交番に一同で向かったというくだり。ここは最も人が絡みまくっている部分である。少なくとも、・車掌 ・電車男を援護したサラリーマン ・酔っ払い爺さん ・エルメス(ここでは隣に座っていた女性と記載) ・おばさん団
・警官 ・その他、この電車に乗っていた乗客また、この日に近郊各駅で夕刻から9時過ぎにかけて、酔っ払いが電車内で暴れ、駅で身柄を確保されているのを目撃した人たち が存在しているはずである。ところが、これら一般人から、「こんなことが本になったんですね、あぁ、あのことぉ」なんていう証言がひとつも聞かれていない。日付も特定されているのにもかかわらず、だ。そして、JR東日本が、この日を含む過去日数日間で酔っ払いによる列車遅延事故は発生していないと、個人の質問に答える形で発表したのである(車掌が絡んでいるので、明らかにダイヤは乱れたはず。その事実がないことが明らかになったわけだ)。
まだある。カップの到着が異様に速いこと。14日の夕刻に事件は起こったにもかかわらず、16日の夕方にカップが届いている。15日1日あれば、品物の選択や配送の手配などはできると思われるが、たかだか痴漢まがいの酔っ払いに関わっただけでペアの、エルメスのティーカップなんて、場違いにもほどがある。菓子折りでも、「送る」のは男性側(迷惑かけたのは、勇気を持って酔っ払いに対応した側)であるべきで、カップを送るという行動そのものも問題がある。
つまり、序章の段階ですでに破綻をきたしている部分が2つもあるのである。このサイトでは、「直証はありませんが、状況証拠なら掃いて捨てるほどあります」と書いているように、いっぱいおかしなところは出てきている(中の人や自作自演関連については言及を控えたい)。→今回、ここまでを書くのに利用したのは、このサイト。電車男の「表と裏」がはっきりわかる。
この時点では、出版社が投稿したとか、完全に捏造している内容なのかという「真贋」については正直言って議論百出で結論が出ないと思う。「ネットで育まれた恋愛物語」という部分で言えば、アメリカ映画「ユーガットア・メール」などが記憶に新しいが、今回の主人公であり、また出演者は「毒男」たる電車男ただ一人。これに幅を持たせるために何人かを登場させているわけだが、何度も書くように、ヲタク趣味の男性が何とかして彼女をゲットするくだりだけでしかなく、後日談など、「うそにうその上塗りしている」ようにしか見て取れない部分もある。また、まとめ人が著作者として名乗りを上げたところもこの本の権利関係をややこしくしている。
まもなく、運命の映画公開を迎える「電車男」。フィクションとしてみるべきなのか、はたまた、実際のラブストーリーとして没入すべきなのか・・・。答えは、映画の、そして立て続けに放映されるドラマの成否にかかっている。
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