第14回  大勝がもたらす「今後」
 9・11は、アメリカにとっては8・15と並んで、国家の特筆すべき記念日に数えられるだろうが、この、アメリカにとって忌まわしい日が、日本の憲政にも刻まれるとは夢にも思わなかった。
 そう。自民党が大量議席を獲得したその日だからである。議席数は300にあと一歩まで迫るという、驚異的な伸びを示し、一党支配としては、過去最高の議席占有率をとるにいたった。
 この背景には、「改革断行」を声高に言う、小泉首相の、「郵政なくして改革なし」という信念に、小選挙区・比例代表並立制という、特異な選挙制度が追い風になったといえる。

 そうは言いながら、ほころびがここかしこに現れている。特に言われているのが、「小泉チルドレン」といわれる、新人議員たちの言動である。そもそも、議員を公募するというアイディアは画期的だが、人選に関して、厳しく選考されていたのか、疑問に思う。別に、杉村氏だけを槍玉に挙げるつもりは毛頭ないが、彼らに要求されるべき、良識・常識が基礎的な面接などで見切れていない、というのがいただけない。政権政党が、この体たらくでは本当に先が思いやられる。
 しかも、10月に入って、ついに小泉氏は、(アジア各国から見れば)「強行突破」といえる靖国参拝をやってのけた。確かに国事行為という色合いを薄めるために本殿への入場や玉ぐし料奉納などの大掛かりな行事を行わなかったあたりは、諸外国に配慮したと受け止められなくもない。「信念の人」というイメージ付けを行うのにはもってこいである。しかし、そんな心情を慮る国々ばかりではない。それがわかっていながらいまだに参拝の方針を変えていない。

 自民党が、ファッショに走ろうとしている流れは、当面は確認できない。このこと自体は、日本の政治がまだ大丈夫なことをさしている。しかし、もはや国の財政は破綻寸前にまで追い詰められている。一部の外国のように、債務不履行という最悪の事態はないだろうが、今抱えている国の借金は、三代先までも残っているであろう。今、小泉政権が起こそうとしている改革で、赤字の削減/国債の発行額の減少が実現できるのか、注視して見守る必要がある。
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