第3回  オジャマモンの真意はどこに?
 例年、1月といえば、それほど忙しいと感じることはない。正月気分も抜けきらずに仕事に入り、比較的だらだらとするからなのだろう。寒さが家路を急がせ、早く寝てしまうところにもあるのかもしれない。
 しかし、今年の1月の特捜の忙しさといったら、未曾有の規模ではないだろうか?この記事を書いているさなかにも、防衛施設庁での談合疑惑を吊り上げ、ライブドアへの強制捜査も含めて、次々に金星を挙げ続けている。
 検察に「正義の味方」ぶってほしくはないが、税金や、善意の投資家を弄する輩は、断固として糾弾していただきたい。

 さて、阪神淡路大震災発生日である、1月17日に証人喚問を受け、補佐人と相談ばかりして、ほとんど言うべきことをいわなかったヒューザーの小嶋社長。1月31日には、とうとう住民から破産を申し立てられ、会社はほぼ絶命した。しかし・・・。小嶋氏は転んでもただではおきていなかった。その前日の30日に、なんと、「建築確認した自治体が悪い」と関係するすべての自治体を相手取って、裁判を起こしたのである。矛先は、検査機関会社のイー・ホームズにまで向けられた。
 最初にこの話を聞いたとき、私はあいた口がふさがらなかった。確かに、もし「本当に何も知らなければ」ヒューザーも被害者である。しかし、どう考えても、会社が偽装の事実を知らなかったとはいえない部分がある。百歩譲って本当に被害者であったとしても、瑕疵担保責任はまず売主が果たすべきもので、解体・払い戻し費用を、自治体からの賠償金でまかなおうという算段は、あまりに無理がありすぎる。
 しかも裁判沙汰にしてしまった。このことは、小嶋氏の立場を延命すると同時に、解決そのものを先送りすることは必至である。どんなに早く結審しても、5年くらいは掛かる今の日本の裁判制度。その間に住民たちの結束が崩れ、「どうでもいいや」的な考え方を持ってしまう住人を増やそうという、姑息な手段とも見て取れる。そもそも裁判にするということは、「勝てる」「取れる」という、妄信にも似た自信がなくては不可能である。「どの面下げて」「不見識」「本末転倒」と、各方面から声が上がるのは当然である。

 以前のテレビ番組でとうとうと「無実」を訴える小嶋氏は、いまや、見る影もない。参考人招致の際、どういう訳か手には数珠を持っていた。あの数珠は、何を意味するのか、いまだになぞである。そして、ついに住民VSオジャマモンの全面抗争が勃発してしまった。おそらく、誰の目にも、国や自治体を含め、かかわった全員が誰も得をしない構図が浮かんでくる。あの11年目に当たるあの日、黙して語らなかった小嶋社長の真意は、訴訟に打って出た今時点でも、闇の中である。
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