第 4回  「舌禍」は仕組まれたものか?
 柳沢厚生労働大臣の「女性は産む機械」発言は、さまざまなところで波紋を呼んでいる。
 直後に行われた地方の首長選挙では、愛知県知事で議席を死守したものの、北九州市長選では野党候補にかなりの差をつけられて敗退している。そのいずれもが、かなり投票率が高かった模様で、政治に関心を持たないはずの無党派層が大挙投票所に向かった結果ともいえる。

 とは言うものの、この発言内容自体が問題なのか、といわれると、実は私も首を傾げざるを得ない。そもそも「機械」という言葉だけが独り歩きしてしまっていると感じるのである。
 まず、当の柳沢氏は、「人口統計学の話をしているときに、イメージとしてわかりやすくするために、女性を、子供を生む装置とたとえた」と弁明。さらに、「機械とたとえたことは失礼に当たると思い、何度か訂正と謝罪をしている」ことは前後の発言からも明らかなのである。言いっぱなしではなく、言った直後に訂正を入れている、ということは、たとえにまずいと思われる部分があったからに他ならないわけで、ほかの議員がしてきたように、後になって訂正とお詫びを入れるという、恥ずかしいことにならないようにしようと思ったはずである。「機械にたとえてごめんなさいね」という、その場での謝罪からは、「もの」にたとえたことが失礼に当たると即座に反応したものであり、蔑視につながるとは考えにくい。また、その気があるなら謝ることなどないはずである。
 ところが、一夜明けると、ICレコーダー風の録音音声は、疑惑部分だけが切り取られたような格好でワイドショーなどが取り上げ始めた。前後の脈絡から考えたときに、生産する機械にたとえることが、突拍子もないこととは言えないし、まして女性蔑視に捉えたような発言とはこれっぽっちも見られない。しかし、この部分だけを聞いた人は、「なんと言う節操のないことを」と憤慨するのは目に見えている。

 何度でも書くが、女性→産む「機械、装置」というたとえは、大臣クラスの人がするべきではなかった。しかも、少子化問題に取り組むべき、厚生労働大臣。いくら筋が通っていても、たとえがまずいとこうなってしまう、しかも、ここまで問題が大きくなってしまうということを肝に銘じて以後発言していただきたいと思う。ちなみに、私は、彼の辞任には否定的である。学術的な説明をしている最中のたとえを、さも女性蔑視のように書き立てる一部マスコミのほうこそ、彼の真意を汲み取った報道をしていただきたいと思う。

 まあ、女性議員、特に野党のかたがたのヒステリックなまでの憤りぶりが、むしろ奇異に映っていると感じているのは私だけではあるまい。申し訳ないが、伝え聞きのワイドショーレベルの情報で、あそこまで怒れるというのは、自分たちの文章読解能力が市井の人々と同レベルであるということを露呈しているということに気づかないといけない。他方、与党サイドから言えば、世話の焼ける閣僚ばかりで、安倍首相も席の温まる暇もないのだが、そんな人を選んだのも自分。果たして、このままで「美しい国」が実現するのか、見ものである。

 コーナートップへ