第 9回  防げそうに無い「第3の被爆地」
 
 日本はご存知のとおり、世界で始めて原子爆弾を使われた国であり、今現在は「最後に使用された国」でもある。
 しかし、平和利用の観点から、原子力発電所も日本には数十箇所あり(基数では、1995年9月末現在運転中の商業用発電炉は49基、と平成7年原子力白書に記載。10年以上前のデータであり、基数はもう少し多いと見られる)、世界的に見ても、電力全体における原子力の依存度としてはかなり高い部類の国に入ると見られる。と同時に日本は地震大国でもある。先般の新潟県中越沖地震でも、震度6強が実際に発生し、死傷者も少なからず出た。とはいえ、もし、あの「柏崎刈羽原発」が大事故を起こしていたとしたら・・・。東電の社長の「想定外でした」といった謝罪の言葉ですんでいたかどうか、大きな疑問である。

 そもそも想定というものは、「低く」見積もるものではない。この言葉を使って一躍時代の寵児に躍り出たあの人が使っていたときには、常人では考えもつかない規模や数値が、彼にとっては「想定の範囲内」だったわけで、この意味で使われる分にはさほど間違っていない。しかし、耐震強度300ガル足らずの原発を、地震の巣といえる断層の近くに建設する、しかもそれが建設基準の範囲内であり、補強の必要性はまったく無いという間違った想定をした中で起こっている。本当に大事故にならずにすんだからよかったようなものの、一基でも爆発なり、大規模な放射能漏れでも起こそうものなら、原子力の信頼は地に落ちてしまうところだったのである。

 とはいえ、ほとんどの原発が、今回程度の規模の地震の直下に見舞われたら、アウトではないか、と思うのである。唯一、浜岡原発だけは、東海沖地震に備えるべく、1000ガルという、かつて無い規模の耐震強度を持つ原発になっているが、他の原発が、現在の耐震基準に見合うだけの補強ができているかといえばそうではないだろう。そして、その「耐震基準」が今回の地震とも照らし合わせて妥当かどうかの判定もなされると思われる。いずれにせよ、ちょっとした地震で事故を起こすことがわかってしまった日本の原発。本当に想定外の大地震が起こってしまったとき、近くに原発があったら、そのときは覚悟するしかないだろう。そして、そこはまさに「第3の被爆地」になってしまうのである。そうならないための施策を早急に立てるべきではないだろうか?

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