第11回  「間」の悪い宰相、遂に・・・
 
 とうとう安倍総理が辞意を表明した。所信表明演説をしたわずか2日後に突然の退職。あまりに急すぎる辞職は、さまざまな憶測を呼んでいる。
 そもそもやめるとわかっているなら、そのタイミングはいくらでもあったはずである。たとえば柳沢厚生労働大臣の「生む機械」発言のとき。このときは彼をかばうような姿勢に政府がなっていた。その後、例の「何たら還元水」問題が発覚、当の大臣が在職中に自殺すると言う緊急事態。次を任された大臣も事務所費問題やら何やらで結局辞職に追い込まれてしまう。初の防衛省トップの「原爆しょうがない」発言でも二人そろってやめることだってできたはずである。
 そういった任命責任をまったく果たさなかったお灸がすえられた。参議院選挙での大敗である。しかし、「改革」と言う錦の御旗を守るべく総理の座に居座り続けた。これがもっとも有効なターニングポイントである。求心力が著しく低下していることに当の本人は気づいていたはずなのに、改造内閣で国民の支持は得られると判断したのだろう。そして迎えた臨時国会の目玉と言える「テロ特措法改正」論議。ここで安倍氏は言ってはならない(影響力の強すぎる)発言をしてしまう。「民主党を始め、野党にご理解をいただくため、職を賭(と)して取り組んでいく」と言ってしまったのである。退路を断ったつもりだったが結局民主党からは話し合いのテーブルに着くことすら拒否され、八方ふさがりになってしまったわけである。
 
 とにかく「間」が悪いことこの上ないのである。まだ自身の支持率が上がりきっていないのに「職を賭して」など、自殺行為もはなはだしい。もっと言えば、参議院選挙のときにやめていれば、「責任取ったのね」と世間も納得するし後継選びももっとスムーズにできたはずである。改造内閣発足からわずか3週間あまり。あの所信表明演説はまったくの机上の空論になってしまったわけだが、逆に言うと、選挙で負けてもやめなかったのに所信表明のわずか2日後でやめなくてはいけない、のっぴきならない事情が勃発したのか?そしてその事情とは何なのか?次期総裁も気になるところだが、突然の辞職の理由もかなりの関心事ということになるだろう。まあ、とりあえず、「坊ちゃん」の退場で少しは政治らしくなることを期待したい。
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