第13回  怪奇行動が指し示すもの
 小沢民主党代表の突然の辞意表明。国民の誰しもが驚いたことだろう。
 選挙に負けたわけでもなく(もちろんそれなら今のタイミングというのは的外れもいいところ)、それどころか参議院では過半数を奪取することに成功したわけで、今後の選挙の結果如何では総理の椅子さえありえるところまで来ていたはずである。しかし、その、優位さが招いた墓穴なのか、あろうことか自民党に連立を持ちかけてしまったとされる(自民側からの提案という説もあるが、私は民主側からと見る)。これが、代表の一存で決められたかのような内容とされ、党内に不協和音が噴出、その責めを負うと言う形でやめると言い出したのである。

 政局がようやく安定に差し掛かったときに、あえて波風を立て、その上自身が代表をしている党のマイナス要因になるとわかっていながら、やめると言い放った小沢氏。彼の直情奇怪な行動が、そのまま、今までの政治家生命とダブって仕方ない。93年の新生党、95年には新進党、98年自由党と、どんどん新党を作っては、その時々の政治に流されてそのどれもが短命な政党である。最終的には現在の民主党に自由党が吸収されて現在に至っている。この吸収合併にしたところで、寄らば大樹の陰。自民党とは袂を分かっているのでそちら側への擦り寄りは考えられない。野党第一党として自民と戦える勢力との合併という選択だったはずである。
 そして、ある種自民の失点によって民主党は躍進できた。なのに、なぜいまさら「大連立」なのか、訳が分からない。もちろんこういうことになればポストの分配も受けられ、政権の座に「着くことができる」という考え方もわからないでもない。しかし、こんな、裏取引のような、姑息な手段をとってまで政権に固執していたのかと思うと、正直がっかりである。正攻法で政権奪取が難しいから、こんな提案をしたんだろうと思うが、ここまで彼があせる気持ち、本心がわからない。

 こんな周りからも不審がられる行動を取らなくてはならないほど彼は追い詰められていたというのだろうか?民主党幹部連中は説得に回っているようだが、彼のこれまでの政治家としての物言いからしても、すんなり復帰とはいかないと思われる。それどころか「民主党から離脱」なんていうマスコミまで現れる始末で、彼がどう動くかで、政局はもとより、与野党の構造すら転換してしまいかねない。いずれにせよ、「政権欲」の塊の小沢氏が自民党に擦り寄ろうとしたことは事実で、彼の人となり/公約に一票を投じた有権者への裏切りとも取れるわけで、彼がどう転ぼうともただではすまないだろう。

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