第15回  粗末に扱ってはいけないものとは何か?
 マクドナルドのFC店で、ラベルの張替えによる賞味期限の偽装疑惑が持ち上がり、ついにここでもか、とマスコミが大挙して取材しまくっていた。
 ここでいみじくも記者会見に応じたマクドナルド本社の担当者は、『「捨てるのがもったいないと思って、ラベルを張り替えた」と聞いている』と、当時のFCの社員からの証言を引用していた。

 実は、かく言う私もFC形態で喫茶店をやっていた経験がある(カフェ・ド・クリエです。首都圏や中部地方ではおなじみ)。在庫管理は厳格に行っており、特に物販に供されるコーヒー豆やドリンク類は、毎日のように賞味期限をチェックし、売れ残ったものは、私の自宅で消費していた。もちろん、賞味期限切れの商品を客に出すことは、全くないと言い切っていい。(30分期限のコーヒー原液すらその記憶がない。基本に忠実にオペレートしていた証拠である)もっといえば、期限切れを発生させるほど在庫は置いておらず、むしろ売れすぎて品切れにしてしまったことのほうが多いくらいである。
 さて件のマクドナルドの事象を考えてみたい。そもそも『もったいない』と考えるのは素人の考え方なのである。利益追求が前提にある中で、品質管理や在庫/商品管理もその中に含まれている。つまり、利益を生まなくなった物は商品でもなんでもないのである。もったいない、と考えるなら、客に出さず、自己消費(正札で買い取る/最悪捨てたと思って持って帰る)しておけば、問題にはなっていなかったはずである。いってみれば、高々300円見当のサラダやヨーグルトごときで、儲けようとしていた企業体質(この場合、問題を起こしたFC企業のそれであって、マクドナルドではないので悪しからず)が問題なのである。

 食べ物を粗末に扱ってはいけない→もったいない→もっかい棚に並べよう、の最後の矢印が企業人として矛盾していることに多くの人はお気づきだろう。事実、コンビニエンスストアでは、毎日のように廃棄される弁当やおにぎり/日配品が大量のごみになるということで社会現象にもなっている。しかしこの行為は、企業の利益と、客に対する安全を守る上でやむなく行っていることである。再商品化で、結果的に、会社の考え方や名誉/尊厳というものを『粗末』に扱ったそしりはまぬかれない。

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