第14回  自民に忍び寄る"死に神"
 
 某新聞が、時の法務大臣をつかまえて、死刑執行をたやすくやりすぎることを「死に神」呼ばわりして物議をかもした。もちろん、法務大臣である彼は職務を遂行しただけなので、ここまで卑下されたものの言い方は、たとえそれが大新聞であっても許されるべきものではない。

 しかし、彼に名づけた死に神が、本当に自民党の中に居座ってしまったかのような報道が昨今見受けられるようになった。特に、一部新聞は今回の衆議院選挙で、自民惨敗をシナリオとして掲げ始めたのである。これは、いわばトピックでもある。
 確かにここ数年の自民党/政府の運営状態は、近年の中でも最悪のレベルを通り越している。特に前政権であった福田内閣当時には、ほとんど実効性のある政策は取られずじまい。確かに参議院と衆議院で与野党の議席数が逆転している「ねじれ現象」があるせいとはいえ、政治的手腕を何一つ発揮できなかった(する気がなかった)のは特筆に価する。まだ、道半ばにして病に倒れた(ことになっている)安倍政権のほうがましであった。
 そして先の総裁選。5人もの候補者が乱立したわけだが、5人が5人とも「次の」総裁ないしは重要ポストをにらんでの立候補というのが見え見え。にぎやかしだけと捉えた人が余りに多く、逆に、そうまでして盛り上げる必要があったのかとこちらから問いただしたい心境である(国政選挙ならまだしも、党内の勢力争いに金をかけている状況が理解できない)。そして、出来レースよろしく麻生氏の圧倒的勝利。敷かれたレールにうまく乗り込んだかに見えた麻生氏だったが、足を引っ張る閣僚たちはいまだ健在。一週間も持たない閣僚を指名するなどどういうことかと早くも野党から突き上げを食らっている。

 実は、私も、この麻生内閣でまた自民党の命脈は尽きるのではないかと思っている。前回は、93年。このときは、当時の新生党・新党さきがけの、自民党からの離反組が要因で過半数を確保できなかった。今回もし自民惨敗となれば、いわば「自滅型」の敗北ということになる。対抗馬となる民主党にも「政権奪取」という並々ならぬ覇気というものを感じないのだが、このままの情勢が続けば、確実に自民党が野に下る可能性は増してくるだろう。そして、そのことが実現してしまったら、自民党は空中分解さながらの分裂症状を起こすであろう。

 すでに参議院で野党に牛耳られている自民党。敗北へのカウントダウンが刻一刻と近づいている気がしてならない。
 
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