第1回  「鶴」は再び飛べるのか?
 
 年明け早々に藤井財務大臣が辞任してしまったことにも驚かされたが、もっともっとびっくりするような出来事が起こりそうなのだ。
 そう、鶴のマークでおなじみ、そして2大フラッグキャリアの一翼を担っていた、日本航空が、事実上の倒産という事態を迎えようとしている。
 この記事を書いている1/12現在では、まだ会社は存在している(株式は売り買い可能である)。しかし、約1週間後には会社更生法の適用を受け、100パーセント減資(=株券が効力0になる)となる予定だ。その報道がすでになされて、株価は1/12、大量の売り注文を残して取引を終えた。実は、この日の前場の日航の株価の動きを見ていたのだが、とめどなく売られ続ける日航株を前に、「こんなことがあっていいのだろうか」と、悪夢を見ているかのような異様な心地にさせられた。

 まだ、融資銀行団との最終調整が待っているとはいえ、もはや法的整理やむなし、に企業再生支援機構が傾いていることは間違いない。ここまでしなくてはいけない背景には、日航自体の有利子負債が巨額であり、決算の結果債務超過が判明したからである。勿論会社更生法→上場廃止となると、株の取引はもちろんできなくなるし、銀行取引停止となり、当然のことながら手形などが不渡りになってしまう。こうならないために、機構側は巨額の現金を供給して、連鎖倒産を防ぐつもりである。機構の現金の出所はほとんど税金と考えてよく(財務省が出張ってきていることからも想像が付く。ちなみに機構は半官半民の特別立法上存在する株式会社)、事実上「国有化」されて再建を図るわけである。
 と、言うは簡単だが、その道のりは決して平坦ではない。ご存知のとおり、日航には、あの会社内だけで8つにもわたる労働組合があり、突然ストなどをして一部便が止まったなどということをよく耳にしている。また、かなりの数いる、OBたちに支給されている企業年金も会社の収益を大きく圧迫している。何とか了承を取り付けたものの、それだけでことが解決するわけもない。京セラの稲盛氏がCEOに就任というニュースも出たが、ここまで大企業病/親方日の丸体質の会社の舵が取れるのか、はなはだ疑問である。
 航空需要そのものも不透明だ。特に旧JASを吸収したことによる、全国規模のきめ細かい運行体系が、赤字路線の続出という裏目に出てしまっており、実際、稼げるはずのリゾート路線にまで大鉈を振るわないといけない事態にまで発展している。海外路線にしたところでアメリカの企業活動がもう少し活発にならないと、太平洋路線というドル箱が往時の賑わいを取り戻すまでには至らないだろう。

 国際路線は後発ながら、全日空は、そういった経営危機の問題は噴出したと聞いたことがない(お家事情が違うという部分があるにせよ、ここまで切羽詰っていないという認識)。日航のどこが問題だったのか?再生手法も似通っているが、あの世界のGMと同じような道筋をたどって再生されることを願わずにはいられない。
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