第18回  確信犯

 一つ前のエントリーで、こんなことを書いた。

 日本の発電総量の約1/4は原子力である(関西電力はやや比率が高い/ほぼ半分)。もし仮に反原発論者の言い分を信じきってしまい、「今の原発、みーんなやめ」と政府が号令を出したとしたらどうなるだろう?単純に考えて国民生活の1/4は不自由になることは間違いない。しかし、現実的に考えると、とても1/4程度で影響が収まらないことは、今回の計画停電でも明らかである。電力供給の大転換を受け入れる覚悟が反対論者にあるとはとても思えない。
 
 しかし、その「まさか」の号令を首相はかけてしまった。中部電力・浜岡原発の運転停止である。
 もちろん、この浜岡原発に関しては、建っている場所が、発生が懸念される東海地震の震源域の真上にあるという、とんでもない場所であり、もし仮にその地震が起これば、今度は強烈な揺れ+津波という完全なるダブルパンチを食らうだろう、だから止めましょう、という話になったと思われる。

 とはいえ、あまりに唐突な「記者会見」と映った、と見る人は少なくないだろう。もうすぐ夏である。否が応でも電気は使う生活をしてきている現代人に、原発を止めさせて、経済活動も一部自粛して、省エネルックにして、乗り切りましょう、と聞こえはいいのだが、代替の電源案などは示されずじまいである。そして二言目には、「国民の方のご理解とご協力を」という、常套句である。ではもし国民が、中部電力が、中部電力に電気を依存する中部地区の企業が「そんなご無体な」と反旗を翻したら、どうするつもりなのだろうか?また、中部電力の本社に行って恫喝する気なのだろうか?

 原発停止の理由は「国民の安全・安心のため」といった。原発をやめ、電気を極力使わないようにしさえすれば、安全・安心なのだろう。これで今の民主党政権のやろうとしていることははっきりした。電力需給を逼迫させて日本を麻痺させようとしているのだ。今ある原発は止めにさせるための第一歩/人身御供に浜岡原発が選ばれたのだ。いや、もっと言えば、福島原発こそが、布石になっているかもしれない。
 原子力発電に疑心暗鬼になっている国民が多くいる中で、全炉の停止を国が号令をかけてしまう異常事態。タイミング的にもどうして今なのか、また、そのことで一体誰が得をするのか・・・。保安員が安全に対するお墨付きを与えていながら、それらすべてを理解して、発表したとするならば、完全に確信犯である。そして結果がどうなろうとも、政府は痛くもかゆくもない。やるかやらないか…。政治主導が完全なる独善に姿を変えつつある。本性をあらわにし始めた左翼政権の強権的暴走が始まろうとしている。

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