第22回 嘘つきは正直者
国会に出された菅内閣の不信任決議案。民主党内の分裂はほぼ確実に起こり、仮に否決されたとしても次の政局がちと面白い状況になる『はず』であった。
ところが、ふたを開けてみると、大差での「否決」。分裂はおろか、造反とされる賛成票を投じたのは、わずかに2人だけという腰砕け状態。:欠席という態度を示した小沢グループだけが浮き上がる結果になってしまった。
よもやの展開。しかし、その答えは議場で決をとる前に行われた、民主党の代議士会での前首相の「分裂回避の呼びかけ」と、そのまた前の首脳部による密談での菅首相の退陣に言及したということである。
そして、その辞職の前言を反古にするかのように、その後に示された記者会見では、「○○のめどが立つまでは」総理としての職責を全うしたいといい始めたのである。
私としては、「否決=信任」という間違った理解をするかどうかは別にして、「やったぁ、これでしばらくはあの椅子に座れるお」とほくそ笑んでいると思うのだ。現に、あの記者会見での満面の笑みは、自分がどうして不信任案を出されているのか、理解しておらず、ヤレヤレという安堵から、弛緩しきった笑顔になっていると見るべきだ。とはいえ、今までの私の経験上、不信任案が出され否決された直後にああまで喜ぶ表情を見せた首相は記憶にない。
議会制民主主義の根本を揺るがせる、大立ち回りを演じた菅直人という人物。日本の憲政史上、屈指の劣悪振りをいまだに続行中なのだが、とうとう身内まで欺き始めた。官邸は、この「嘘つき」の尻拭いに躍起になっているが、こんなことに注力しなければならない政府に、与党内からも批判は噴出している。しかし、そのうそは、「自分に正直」なものにしかつけないうそである。つまり「まだ首相の椅子に座っていたい」という願望に正直なのである。
息をするように嘘を吐く。彼ならではの処世術を今までの付き合いから知らないはずがなく、その上でルーピーが「本心から」だまされた、嘘つきだ、とわめいているとは到底思えない(そういうあなたも前言撤回など、虚言癖が結構あるんですがね)。だまされたふりをしているのが見え見えの三文芝居。権力にしがみつく自分の欲に正直な者に泣かされる日々はいつまで続ければいいのだろうか?
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