第26回 ある漫画の名言
松本龍・復興担当兼防災担当大臣が辞任したことはすでに述べた。
しかし、どうしても引っかかる部分があるのだ。
彼だって、幾多の閣僚が、しょーもない言葉を使ったためにその座を追われていることくらい、知らないはずがないことだ。たとえば血気盛んな1年生議員だったり、閣僚経験が浅いなど「知らなかった」というのであれば仕方ない部分もある。しかし、彼は当選10回、それも血筋のいい、二世議員でもある。社会党が存在していたころから議員をしていたのだから、間違いなく、舌禍で辞めさせられた閣僚を見てきているはずである。
そして衆人環視とも言える、テレビカメラが回っている最中にあのような口汚い言葉が連発する。本人の弁によれば、「九州人だから」「B型だから」とわけのわからない、言い訳にもならない(むしろ火に油を注ぐ)釈明をしているのだが、これもかなり意味不明なのだ。
そこで、この名言の登場である。「ジョジョの奇妙な冒険」というコミックで、主人公の父が発した名言である。
「逆に考えるんだ」
意味のない行為や発言はない。言葉通りに捉えるとどうしても不可解や腑に落ちない点が出てくる。漫画のひとこと−−逆に考えるんだ−−は、結構この方も使われているのだが、今回の情景を漫画のセリフに当て込むとこういうことだ。
「それは無理矢理役職をやらせようとするからだよ 逆に考えるんだ。「やめちゃってもいいさ」と考えるんだ」
ビジネスライクな会談で、上下の関係のあるなしに関わらず(仮に国が上という認識があったとしても)ああいう高圧的な態度に出ること自体が異常である。だから辞任に対する圧力が強まったのだが、もし「彼が確信犯」だとしたらどうだろうか?つまり「辞めることが前提で、歴史に残る会談をやった」と考えると、意外にすっきりすると考えたのだ。
もしかすると、「辞めたくてしょうがない」と考えての発言ではなかったのだろうか? あるいは、自身が批判していたのにこんな要職につけてしまった某首相に対するあてつけで、心中するつもりで【あえて】あのようにわざわざ悪っぽく見せる演技に至ったのではないだろうか?
そして、その思いは達せられ9日での退任になったわけだ。辞任会見も、続投するつもりと会見した翌日に行ったわけだが、自身がやり続けたいと思っていたのだとすれば、「個人の都合」でやめるという言い方は明らかにおかしい。そもそも辞める必要がないと擁護する人たちもいたくらいである。最初からやるつもりがなかったから、「舌禍のせい」にしたいというのが見え見えな辞任会見という風につなげれば、すべてが納得の行く流れになる。
理由はどうあれ、松本氏の辞任は、「自爆テロ」とまでささやかれる、内閣の汚点になった。後任の復興大臣も決まったようだが、「内閣の復興」が先ではないかとさえ思ってしまう。いや、今の日本を覆う最大の瓦礫に復興はありえない。
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