第28回 チャイナ・クオリティー

 日本でも、2005年に、スピード超過を直接な原因として、間接的にはATCの設置の遅れがあって、急カーブでの通勤電車の脱線転覆事故があった。
 比較的安全といわれている「日本の」鉄道ですら、100人以上が死亡し、乗客全員が死傷するような事象が起こりえるのである。
 それは、安全装置を多重に仕込んでいても、「起こるときは起こってしまう」事故ともいえる。

 それに引き換え、中国で起こった高速鉄道(当方は、今後この件をはじめとして記述する際に、中国側のそれをさすときに「新幹線」という、日本の持つ偉大な金字塔的ブランド名を使わないことにする)での追突事故は、まさに、口をあんぐりさせてしまうような事象が重なっている。
 ダイヤの乱れもあって、先行するべき列車が後ろを走っていることなどかわいいもの。追突してしまうからには、後ろを走っている車両が「前の列車に不具合がある」と知らされていないからに他ならない。それは電子的にも、通信的にも、もっと簡単に信号的にも、知らせる手段はいくらでもあるのにそれがなかったというのが実態だろう。要するに「そんな初歩的なことも出来ていないシステム」で高速鉄道が運行されていることになる。これははっきり言って恐ろしい、のひとことである(信号の不具合があり、「青」現示だったことが判明してしまった。これは重大な問題)。
 
 事故が起こってからの事後処理は、全世界を震撼とさせた。ナント、あろう事か、事故車両を埋めてしまったのである。そしてご丁寧に、運転席をショベルカーで叩き壊して穴の中にぞんざいに放り込んだのである。宙吊りになっていた車両は、丁寧におろされることも無く、地面に、鉄くず同然で叩きつけられ、未確認だが、遺体が乗っかったまま埋められたともされている。その後、あわてて地面から掘り出したわけだが、現場の保全どころか、ナント数日を経ずして(もちろん、原因究明などそっちのけで)、運転が再開されてしまったと言うから、驚きの連続で、あきれ返ってしまった。

 もうとにかく、今回の件で、「中華クオリティー」を如何なく発揮している中国の対応には、さすがの諸外国も「これは普通の国と違うぞ」と身構えるに違いない。早速金で済まそうとする政府の懐柔策も正直裏目に出ているようだし、何から何まで世界の常識とはかけ離れている。これが「経済規模世界第2位」の実態なのである。

 鉄道を趣味として扱っていた手前、事故はどんな規模でも痛ましいものである。しかし、杜撰(ずさん)な管理が元で、命が奪われたとなると話は別である。かの国に原因究明を求めても納得のいく回答など得られないだろうが、大国になろうとするのならば乗り越えなくてはならない試練だと思う。それがまともに出来ないのなら、一から勉強をしなおす必要があるだろう。
 
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