第9回  アスリート?芸人?
 
 お笑いタレントの猫ひろし氏がはれて、カンボジア国籍を所得し、同国のマラソン代表に選ばれた。
 当方としては、『そこまでして走りたいんだな』という程度で、あまり興味を持って接しているほどのニュースでないと思っていたのだが、このたびの記者会見や本人の意気込みを知るにつけ『ちょっと待てよ』といいたくなってしまった。

 J-CASTニュースによるこの一文が当方を憤慨させたのである。

        【ここでは「あくまで芸人として五輪の舞台に立つ」ことを宣言した。スタートの「ニャー」で勢いをつけ、ゴール後に最高の一発芸をかますのだと言う。】

 当の本人は、確かに芸人であり、マラソン競技の代表というアスリートでもある。国籍を移した、とは言っても所詮競技にでるための『緊急避難的措置』であり、未来永劫ずっとカンボジアに住み続けるとまで宣言したとは聞いていない。現に、国籍所得後も日本で生活し、レースなどがあるときだけは帰国するのだという。

 つまり、いずれもが中途半端なのである。百歩譲ってマラソン命で国籍までかえた、というのであれば、少なくともその時点からは『アスリート』として活動なり発言してもらいたいのである。ゴールして一発芸を、マラソン選手には望んでいないし、その光景をカンボジアの人たちは、どんな目で見るのだろうか、と考えたときに、日本人『だった』彼そのものがカンボジアの人々から全否定されると同時に、日本にも帰りづらくなるような気がして仕方ないのである。
 記録も正直平凡で、入賞すら難しく、ただ単に『オリンピックに出たい』という願望だけを当該国民を押しのけてまで実現しようという猫ひろし氏。最初は私も『走ってみればいいのに』と思っていたが、時がたつにつれて、『変に走って、恥の上塗りになるんじゃないかな』とむしろ心配してしまうことしきりである。心の片隅では応援したいのだが、カンボジア本国のアスリートのことも考えると『がんばれ』とは声高に言いにくい。

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