第14回  こんな制度に誰がした
 
 正直、一寸先は闇、の世の中である。事実、実母が5月に心筋梗塞で倒れたときは、やっている店の問題、支払い関係、それらさまざまなことを一手に引き受けなければならず、下手に入院が長引けば、それこそ死活問題になりかねないところだった。
 幸い、生命保険の給付も受けられ、又3週間足らずでの退院で、ほぼ後遺症や生活に支障が出ることにまではならずに済んだのは本当に不幸中の幸いと言わなくてはならない。

 もっとも、それは「すべてがうまく機能したから」に他ならないわけで、当方だって、負け組の象徴でもある生活保護のお世話にならないとも限らない。最低限の生活を保障してくれる生活保護は、もらうに際しての審査がとてつもなく厳しく、よほどのことがない限り満額支給、と言うのはなかなかに難しい。
 ところがどうだろう。ここ最近の、生活保護をめぐる報道の矢面に立っているのは、テレビで活躍している芸人たちなのである。

 確かに吉本興業所属の芸人の給与がとてつもなく安い、と言うことは、とみに知られた話である。しかし、それは、「売れるまでの暫定措置」であり、レギュラー番組やCMキャラクターに採用され始めると、それまでの抑え気味の給与が、一気に桁2つほど変わっていく、「給与上でも本物の芸人」に脱皮していくのである。
 それが証拠に、今回の渦中にある芸人の場合、デビュー当時は年収100万円あるかないか。ところが、今では、どう少なく見積もっても年収1000万は下らないのである(一説には3000とも5000とも。ただ、現状の年収を知られてしまうと税務対策などが煩雑になるため、公表したがらない、と言う側面がある)。これで実母が養えないと言う論理を振りかざして、週刊誌にすっぱ抜かれるまで放置してきたのだから、一部に「保護名目の詐欺」で警察に告発しようか、あるいは逮捕すべきではないか、と言った意見が聞かれるのも当然である。
 ただ、この芸人の場合、対応があまりに遅すぎた。4月中旬に報じられて、謝罪会見を開くまで1ヶ月あまり、何もしていない(正確には、親に保護をとめるように工作してからの会見。だから「5月以降はもらっていない」と強弁できる)。親の扶養そっちのけで外車を買い、一族引き連れての海外旅行。「使うべきお金の使い方」が間違っていると言う認識がなく「もらえるものはもろとけばいい」と言う寄生虫さながらの性根だからできる厚顔無恥ぶりの発露と言える。一説には、出自は「北」とうわさされているこの芸人。さすが、かの国のメンタルクオリティー全開、と言ったところである。

 芸人だから、当初の審査が甘い/収入が増えても「払えない」と言われればしつこくいえない、と言う論点で役所は何とか逃げようとしているのだが、彼らがもらえるのであればほとんどの家庭が、「もらえてしまう」と言うことにどうして気付かなかったのだろうか?現に、別の芸人の問題が発覚した直後に、「所帯を分ける+息子名義の住居に住む」ことが保護受給可能と言うことが明るみに出てしまい、おかげで需給担当窓口はパンク状態だというのである。
 毅然とした態度が役所としても取れない理由に「在日」問題が見え隠れするのも今回の問題の闇の深さを物語っている。なぜ彼らがもらえていたのか、を調査しようとしている自民党議員を脅迫するかのような言動をしたとされる吉本芸人も居る。結局、「もらえてしまえば、後はもらい得」である生活保護。年金より多いその金額自体に疑問を呈する声がようやく上がってきているのだが、本来もらうべき人を差し置いてこういった一部の不心得者がもらえている状況は、勤労意欲をそぎ、結果的にいい面はどこにも見当たらない。
 
 余談になってしまうが、「原発関連ではやかましい」某市長は、自分の市の中の区で4人に一人が生活保護をもらっていると言う恥については、どうしようと言う意見はまったく述べていない。府市統合も結構だが、そうした際に「北」のような保護政策べったりの地区をどうするのかと言う抜本的な対策を述べてから=自分の市のことを先に済ませてから、国政なり、原発問題なりに首を突っ込むべきである。目に見えない放射線に傾注し、貧困問題にはあまり興味のない市長。そんな人を選んだつけは、じわりじわりと効いて来るに違いない。

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